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2013年10月18日 (金)

原発事故の賠償を何故きちんとしないのか(その2)(原発事故の損害賠償を踏み倒す東京電力の態度は許されない)

 「原発事故の賠償を何故きちんとしないのか(その1):原子力損害賠償紛争審査会の新たな方針でも賠償金額が全然足りない」に続いて,「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」に関する損害賠償・補償の問題について,別添PDFファイル(一部添付できませんでした)に若干の新聞記事を集めました。以下,ごく簡単にご紹介いたします。

 

 これらの記事が伝えることに共通していることは,東京電力の姿勢が「記者会見など,公の場では平身低頭の口先謝罪一色でその場を取り繕い,実際の賠償・補償については様々な屁理屈をつけて徹底して踏み倒すし謝罪もしない,仮に支払わざるを得なくなっても支払は可能な限り先延ばしする,被害者を経済的な苦境に追い込めば追い込むほど東京電力自身の負担が結果として軽くなる(被害者側の)「譲歩」「妥結」に持ち込める」ではないかと疑われることです。

 

 そして許し難いことに,こうした最優先されるべき被害者への賠償・補償その他の対策を事実上「踏み倒し」ておきながらも,他方では,東京電力柏崎刈羽原発の再稼働のために,当面,3,200億円もの資金を投入して,フィルター付きベントだの,津波対策としての防潮堤だの,過酷事故時の追加対策だのを,新たに出費して自己資金を浪費しつつ,福島第1原発の汚染水対策に回すべき資金をケチっているのです。その結果は,じゃじゃ漏れの放射能汚染水による海洋汚染と現場作業員の大量被曝です。

 

 一方,もう一人の当事者・責任者の日本政府は,事実上,東京電力の経営を采配できる大株主であり,資金提供者でもあり,かつ最終的な経営責任者・「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」の総括責任者ですから,本来であれば,(1)こうした態度を続ける東京電力の現経営陣に対して,厳しくその経営態度・姿勢・方針の変更を迫り,(2)従わなければ,幹部役職員を更迭し,かつその刑事責任を問い,(3)被害者に対しては,直ちに賠償・補償金の「立て替え払い」を行って,被害者の一刻も早い生活や仕事あるいは経営の再建のスタート台に立っていただくよう全力で支援する,というのが,なすべきことだろうと思われます。

 

 また,大変な被害を受けた汚染地域の各自治体も,東京電力や政府などに遠慮などすることなく,自身が受けた全ての被害の全額賠償を請求すべきであり,また,自治体住民に対しては,浪江町が実施したように,集団提訴を含め東京電力並びに政府への住民の損害賠償・補償の代理又は支援を行い,2014年3月には到来するという時効による請求権消滅がないように,(自治体住民へ,賠償請求と時効の中断手続きの呼び掛け,並びに提訴参加への呼びかけなどとともに)被害者の方々が不安定な状態から早く抜け出せるよう尽力すべきなのです。住民に放射線被曝と分断,賠償切り捨てを押し付ける避難指示区域の再編などをやっている場合ではありません。

 

 しかし現実は,上記で書いたこととはまるで正反対の方向へ,つまり,東京電力の「損害賠償は謝罪も含めて踏み倒せ!! 会社存続が最優先だ」の犯罪的とも言える「本音方針」を,まずは政府が陰に隠れて全面的にバックアップし(賠償額を少なくするのが財務省の仕事・政府の仕事と勘違いをしている),住民に対しては「被害の受入れ・許容」「わずかばかりの代償による請求権の事実上の放棄(要するに,運命だと思ってあきらめろ,ということ:あきらめなければ権力でねじ伏せる)」「これから半永久的に続く恒常的な低線量被曝の押しつけ」を強要する,こんなことはおかしいと思う人に対しては「精神的なカウンセラーをつける」(完璧に人を馬鹿にしている),そして,被害地域の自治体が,それに尻尾を振って,加害者・東京電力や事故責任者・国の立場と同じようなところから被害者住民を慰める,という事態となっています。

 

 そして,こうした「骨太(棄民)方針」を美辞麗句や「安全安心キャンペーン」で「花飾り」し,国を挙げての「原子力翼賛」のレジームづくりに邁進する算段が着々と進められています。福島県の汚染地で開催される各種のお祭り騒ぎや東京オリンピック開催なども,そうした「フクシマもみ消し」の道具とされていくのでしょう。その中核には,原発安全神話にとって代わった「放射線安全神話」が御用学者達の神輿の乗せられて,被害者住民や将来の被害者であろう我々の頭上に君臨するのです。原子力ムラ一族にとっては「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」は「なかったこと」(少なくとも「放射能汚染の影響はない」こと)にしてしまいたいのです。

 

 虐げられたるものは,多くの人達と手を携えて,自らが異議を申したて,反対・反抗・反逆・抵抗する他に,この「原子力翼賛」から逃れる道はありません。深刻な被害者も,被害を受けたけれども幸いにして深刻ではなかった被害者も,そして今回の「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」では被害を受けなかった一般有権者・国民も,全て力を合わせて,この東京電力・政府・自治体・御用学者(及びその広報担当のマスごみ)の創りあげる被害者切捨ての「棄民レジーム」を打ち破る以外に,この事態を打破する方法はありません。

 

 不正と出鱈目と超危険の限りを尽くしている原子力ムラ権力に対して,逃げ回ったり,妥協をしてみたり,愚かな期待を持ってみたり,あるいは,彼らのインチキを受入れて「原子力翼賛」の旗を振ってみたりしても,それが行き着くであろう近未来は「日本国並びに自分自身の放射能汚染地獄と,家族や子々孫々を含む被曝滅亡」でしかありません。原子力翼賛との最終戦争に「逃げ場所」などはないのです。覚悟を決めるのは今です。

 

 繰り返します。原子力ムラに帰属するファシスト・犯罪者集団を除く全ての日本の有権者・国民は,「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」による被害者の賠償・補償をコアとする完全救済へ向けて力を合わせましょう。いい加減な原発管理を繰り返して大事故を引き起こし,地域住民を中心に多くの人達に大損害や大被害を与えた加害者・東京電力や事故責任者・国が,その被害者に対してきちんと償いをする=賠償・補償と再建支援をする,という「当たり前」の「当たり前」をきちんとやらせましょう。それがこれからの日本の出発点だと思います。脱原発=脱被曝は,被害者の完全救済を実現してこそ達成できることです。

 

 <別添PDFファイル:一部添付できませんでした>

(1)横浜・前橋でも東電提訴,原発避難者13821億円求め(東京 2013.9.12

(2)東京電力,損害賠償は踏み倒せ(1):対役所(東京 2013.6.2他)

(3)東京電力,損害賠償は踏み倒せ(2):対個人(東京 2013.6.6他)

(4)宮城,遅れる畜産の賠償(朝日 2013.9.30

 

1.横浜・前橋でも東電提訴,原発避難者138 21億円求め(東京 2013.9.12

http://www.47news.jp/CN/201309/CN2013091101001742.html

 

・・・・・・・・・・・・・・・(上記より引用)

 東京電力福島第1原発事故による福島県から神奈川県と群馬県などへの避難者ら計48世帯138人が事故発生から2年半の11日、国と東電に計約21億円の損害賠償を求める集団訴訟を、横浜、前橋両地裁に起こした。訴状では、東電は地震と津波で事故が想定できたのに対策を取らず、国は東電への規制を怠ったと主張。避難生活を余儀なくされた慰謝料などを求めている。

 

 神奈川県では、17世帯44人が福島での生活を失った慰謝料として1人当たり2千万円など計11億円を請求。群馬県では31世帯94人が1人当たり1100万円、計約10億円を請求。

・・・・・・・・・・・・・・・(以上,引用終わり)

 

● 田中一郎コメント

 1人あたり2千万円なんて少なすぎます。原発事故によって,全てを一瞬にして奪われた方々に対しては,この数倍の金額が支払われて当然です。裁判での注目点は,支払の有無だけでなく,支払金額ももう一つのポイントです,日本の裁判システムが機能しているのかどうかが問われているのです。これまでの公害事件等での判決の大半は,損害賠償を請求した被害者が,勝訴とはなっても,意味のある十分な損害賠償金額を手にすることができなかった=つまりは,日本の裁判システムが「正義」の立場に立たない,権力擁護のためのインチキシステムである,ことを立証してきた歴史です。ここでも,日本の司法の正体が問われているのです。

 

2,東京電力,損害賠償は踏み倒せ(1):対役所(東京 2013.6.2他)

(1)環境省,東電提訴を検討,特措法請求:除染費165億円(東京 2013.6.2

http://ameblo.jp/heiwabokenosanbutsu/entry-11543151930.html

 

・・・・・・・・・・・・・・・(上記より引用)

 福島第1原発事故に伴う除染をめぐり、東京電力が負担するべき費用のうち約165億円の支払いに応じる姿勢を見せていないことから、環境省が支払いを求めて提訴を検討していることが1日、分かった。既に法務省と詰めの協議に入っており、方針が固まれば提訴する。

 

 未払いとなっているのは、環境省が放射性物質汚染対処特別措置法に基づいて請求した原発周辺の国直轄除染費や、自治体が実施した除染への補助金など。特措法に基づく除染費用は国がいったん支出した後、東電に請求する仕組み。ただ将来にわたる除染規模や総額が明確になっておらず、東京電力としては膨大な費用を負担し続けるのが困難として、一部の支払いに応じないことで負担枠組みの再考を政府に促したいとの思惑があるようだ。

 

 このまま未払いが続けば、国が肩代わりし続けることになる。環境省は、裁判で支払いが確定し金利が発生することで、東京電力が支払わざるを得ない状況を作り出したい考え。これまで環境省は、事業が終了して金額が確定したものから三カ月ごとに東京電力に請求してきた。請求総額約二百十一億円のうち、東京電力が支払いに応じたのは国直轄除染費の四十四億円で、近く約二億五千万円を追加で支払う予定だが、残り約百六十五億円は「資料の確認に時間が掛かる」などとして応じていない。

 

 特措法に基づく除染費用は二〇一三年度までに約一兆三千億円が計上されている。環境省がこれまでに請求した費用は二〇一一年度に実施された除染事業の一部で、各自治体の二〇一二年度の決算が確定すると、請求額は一千億円を超えるとみられる。東京電力は「特措法に基づき適切に対応している。支払いの状況については当事者間の問題なので答えられない」としている。

・・・・・・・・・・・・・・・(以上,引用終わり)

 

 田中一郎コメント

 この環境省の態度,どうも「芝居くさい」ですね。本当は,たとえば,環境省が東京電力に電話をして「除染費用を請求いたしますが,よろしいでしょうか?」と言い,それに対して東京電力が「今は金がない,除染費用など後回しだ,払ってられねえぞ,東京電力をつぶすつもりか」と答え,環境省が「それは失礼をいたしました」と言って引き下がる,てな具合ではないのでしょうか。なにせ,あの石原慎太郎の息子の石原伸晃が環境大臣をやってますからね。そもそも請求した除染費用が165億円って,何コレ!?。除染費用はとうの昔に1兆円を超えていますよ。有権者・国民の血税を何だと心得ているのでしょう?。

 

(2)福島原発事故,自治体賠償請求466億円,東電支払済み52億円(読売 2013.6.17

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130617-OYT1T00146.htm

 

 田中一郎コメント

 現段階とは言え,全ての自治体の賠償請求金額が合計で466億円というのは少なすぎるよね。何を何に対して遠慮しているのかな? どうも「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」で被害を受けた多くの自治体の動きがおかしい。

 

3.東京電力,損害賠償は踏み倒せ(2):対個人(東京 2013.6.6他)

(1)福島原発賠償,東電,和解後も謝罪拒む,自殺男性の次男「心晴れない」(東京 2013.6.6

http://www.47news.jp/CN/201306/CN2013060501001866.html

 

 田中一郎コメント

 この東京電力の露骨な「本音態度」,許せん!! 手をついて謝れ!!

 

(2)不明者捜索遅れ,和解,東電,遺族374人に慰謝料支払い(読売 2013.7.24

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130724-OYT1T00007.htm

 

 田中一郎コメント

 記事によれば「遺族側弁護士によると、和解案は、犠牲者1人当たり300万円の上限を設けたうえで、東電側が遺族の続柄に応じて60万~20万円を支払う内容。総額は約28000万円となる。遺族と東電は国の原子力損害賠償紛争解決センターが示した和解案で合意した」そうです。

 

 これも金額があまりに小さすぎます。人の命を何だと思っているのでしょうか。この記事に出てくる「原子力損害賠償紛争解決センター」とは,別名「紛争もみ消しセンター」あるいは「紛争そらしセンター」とでも言っていいような,そもそも被害者の控え目でつつましい賠償・補償請求に,何だかんだといちゃもんをつけては東京電力へ請求が行く前に金額をすり減らすためにある,政府おかかえの「御用組織」のように思えてなりません。

 

 悪名高き「原子力損害賠償紛争審査会」と並び,この「センター」は,いずれ歴史に「人権侵害加担組織」として,その名を刻むことになるでしょう。人員を入れ替えて,「原子力損害賠償紛争審査会」から独立させ,解決方針を抜本的に切り替えるべきです(「原子力損害賠償紛争審査会」が言うように,賠償指針を「最低限」のものとして東京電力に認識させるように動けばいいのです)。東京電力の体制一新・人事更迭(会社更生法適用後)とともに,この「センター」をきちんとしたものにすれば,多くの被害者が完全救済される可能性が出てきます。

 

(3)福島原発事故賠償,個人情報保護法が壁,東電「応じられない」:迫る時効,12市町村,未請求者情報提供要請」(河北新報 2013.9.2

 

・・・・・・・・・・・・・・・(上記より引用)

 福島県浪江町など避難区域の12市町村が,東京電力への損害賠償請求を促す目的で,同社の持つ未請求者の情報の提供を求めたのに対し,同社が個人情報保護法を根拠に応じていないことが分かった。未請求者は現時点で約1万人。市町村は未請求者を特定して請求を働き掛けたい考えだが、同社の協力なしでは難しく、請求権を行使せずに埋もれる避難者が続出する可能性がある。

・・・・・・・・・・・・・・・(以上,引用終わり)

 

 田中一郎コメント

 政府が乗り出して対処すれば,すぐにでも解決できる問題です。また,損害賠償請求権の時効の問題は避難区域の12市町村だけの問題ではなく,福島県のその他の地域を含む,すべての「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」による被害を受けた汚染地域の住民にとっても重要な問題です。これもまた,政府が「時効期限の延長」(あるいは廃止)や「賠償請求手続きの促進」の対策をとれば,事態は大きく改善するでしょう。いったい,復興庁をはじめ,日本政府は何をしているのでしょうか?

 

(4)東電賠償1万人未請求,来秋以降,時効の恐れ(朝日 2013.6.6

http://www.asahi.com/national/update/0606/TKY201306050567.html

 

 田中一郎コメント

 朝日新聞の体質を現す,ずいぶんミスリーディングな記事です。上記でも申し上げたように,損害賠償請求権の時効の問題は避難区域の12市町村だけの問題ではありません。1万人などという人数をことさら見出しで強調することは,避難指示区域以外の被害者に対して,お前達は関係がない,と言っているようなものです。また,時効が到来するのは,来秋ではなく来春(20133月)でしょう?(東京電力が「自己裁量」で「9月」と言っているだけではないのですか? 経営陣などが変われば撤回されかねません)。しっかりしてちょうだいよ,朝日新聞さん。

 

4.(見つめる)宮城、遅れる畜産の賠償 除染や飼料代、基準定まらず 東日本大震災3年目(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130930-00000001-asahik-soci

 

・・・・・・・・・・・・・・・(上記より引用)

 東京電力福島第一原発事故に伴う農家への損害賠償をめぐり、請求額に対する支払額の割合が宮城県で6割にとどまり、全国平均の8割を大きく下回っている。畜産関係の請求が多い宮城県。牧草地の除染や代替飼料への補償について基準が定まっていないことが影響している。

 

 「牧草地の除染で昨年1年が終わってしまった」。宮城県栗原市で酪農を営む男性(63)は、自宅近くに積み上げられた牧草のロールを見つめ、嘆いた。100頭の乳牛を飼い、30ヘクタールの牧草地で収穫した牧草を与えてきた。しかし、原発事故を受けて県は、県内のほぼ全域で2011年産と12年産の牧草の使用を自粛するよう農家に求め、牧草地の除染も促した。……

・・・・・・・・・・・・・・・(以上,引用終わり)

 

 田中一郎コメント

 「牧草地の除染や代替飼料への補償について基準が定まっていないこと」=こんなことは,賠償・補償を滞らせている東京電力の「口実」にすぎません。それをあたかもデファクトであるかのごとく,まともな批判もしないで,記事になどしないでいただきたい。物事を難しくこねまわして複雑にする必要などないのです。

 

 「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」の損害賠償・補償の原則は,全ての被害者に対して,全ての損害の賠償・補償をし,かつ再建費用と,再建までの生活及び経営の維持費用を補償せよ,ということですから,それに沿って,東京電力は粛々と支払えばよろしいのです。

 

 因果関係や必要性などは,一定程度の蓋然性があれば十分であり,それ以上のことは,無関係性(因果関係なし)や不必要性を東京電力に立証させればよいのです(立証できなければ支払う)。被害者への賠償・補償の支払いに,無用の条件をごちゃごちゃくっつけて,それを合理化しないでいただきたい,ということです。どうも朝日新聞を含むマスごみの報道姿勢がよろしくありません。(判例として,1970年前後の公害裁判での被害者の立証責任に関する裁判所の判断があります:イタイイタイ病など)

 

(補足)

 上記をご覧になれば,素朴に「そんなバナナ」「何でそんなバナナなことをするのでしょうか」と思われることでしょうが,しかし,これは「バナナ」ではなくて,原子力ムラ一族にとっては,その翼賛的支配継続のためには必要不可欠な合理性を持った対応・対策なのです。

 

 <何故,加害者・東京電力や事故責任者・国は原発事故の賠償・補償をきちんと行わないのか>

(1)一つは簡単なことで,もし,きちんと支払うことにすると,賠償・補償金額が天文学的な数字になるのは自明のことで(おそらく数百兆円),それを何とか極限にまで小さくしたいからである。

 

(2)被害者住民を汚染地域に定住させ,あるいは帰還させ,縛り付けて動かさないためである(封建時代の農奴と同じ)。賠償・補償をきちんとすると,大半の被害者住民は,汚染されていない土地で新たな生活や仕事を始めるであろうことが予想される。それでは,放射能が危険であることを多くの被害者が態度をもって示したことになり,原子力ムラ一族としては大変困る。これからの原子力推進に大きな支障が出る。

 

(3)(2)の原子力推進の危機を逆手に取り,(賠償・補償切り捨てと,汚染地域への帰還・定住促進施策により)住民の汚染地域への縛り付け政策と,「放射線安全神話」や「みんなでふるさと復興」の大宣伝(「安全・安心キャンペーン」「放射能は大したことはない」「気のせいだ・気にする方が体に悪い」「ふるさと復興協力・協賛」「再生キャンペーン」「きずな」「支え合い」「除染と個人線量管理」「放射能との向き合いキャンペーン」「イベント・お祭・国際会議・公共事業・スポーツ大会」等々)をセットで展開し,放射能や被曝の危険性を社会的に消滅させる(見えなくする,もみ消す,ないことにする)。

 

(4)近い将来,再び起きるであろう放射能の大規模環境放出事故時に備え,放射能は環境に出たとしても過度な心配はいらない,放射能や被曝はそれほど危険ではない,という虚偽の認識を日本国内に蔓延させる(有権者・国民を放射線被曝に慣れさせる)。そうすることで,原発・核燃料施設の過酷事故との「共存」が可能となり,もはや今後の「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」のような大トラブルが起きても,社会的に乗り越えられる「耐力」をつけることができる。原子力推進の「安定成長軌道」が出来上がる。

 

(5)放射線被曝が原因の健康被害については,財産的被害や精神的被害以上に,断固として賠償・補償を拒否し続ける(これは今も,原発・核燃料施設の現場労働者の放射線被曝健康被害に対して,労災事件その他で電力会社や政府など,原子力ムラ一族がやっていること)。これを認めれば,放射線被曝の危険性を事実上認めることになるので,被害者を全力でねじ伏せる・切り捨てる。

 

 <そして,ここで最も大事なことは次のようなことである:上記(5)と同じ>

 放射能や放射線被曝の危険性は大したことはない,というのは嘘八百なので,やがて被害者住民の中から健康被害者や遺伝的障害者が多く出てくることになるが,その方々は,今度は,放射能や放射線被曝との因果関係を加害者・東京電力や事故責任者・国によって否定され,あるいは因果関係を被害者の方で立証せよと突き放され,再び健康被害についても賠償・補償が受けられず,闇から闇へと葬り去られていく,ということになるでしょう。そして,まもなく,次の過酷事故と放射能汚染,大量の人々の放射線被曝が起きるのです。

 

 つまり,第一次の「賠償・補償踏み倒し」は財産的被害と精神的被害,第二次の「賠償・補償踏み倒し」は健康被害,第三次以降の「賠償・補償踏み倒し」は(子々孫々の)遺伝的被害,ということです。この最悪状態へのスパイラルを止めるには,全ての原発・核燃料施設の即時廃棄=脱原発,全ての放射線被曝の阻止と加害者責任の明確化・放射線被曝の危険性の徹底周知=脱被曝,そして(原子力推進の)被害者の完全救済,の3つを同時並行して実現する以外に,つまりは原子力ムラ一族の社会からの永久追放以外には方法はありません。

以 上

 

<追>

 東京新聞 原発事故賠償 備え不足 政府 法律見直し放置社会(TOKYO Web

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013100702000124.html

 

・・・・・・・・・・・・・・・(上記より引用)

東京電力福島第一原発事故を受け、二〇一一年八月に国会で原子力損害賠償法(原賠法)を「一年をめどに見直す」と決議したのに、期限を一年以上過ぎても、ほとんど検討が進んでいないことが分かった。重大事故が起きれば賠償額は兆円単位。これに対して、備えはわずか千二百億円の保険のみ。電力各社からは再稼働申請が相次いでいるが、住民への賠償面で大穴があいたままだ。 (岸本拓也)

 

 現行の原賠法では、事故の責任は基本的には電力会社にあるが、巨大な天災などが原因の場合はあいまいになっている。福島の事故では、賠償や除染の事業費で少なくとも五兆円はかかることが確実だが、電力会社が備えているのは一原発当たり上限千二百億円の保険だけだ。

 

 福島の事故を受け、国は急きょ原子力損害賠償支援機構法を成立させ、国が支援機構を通じて東電に賠償資金を支援し、各電力会社が数十年かけて国に返済していく仕組みをつくった。

 

 この仕組みは形式的にはどの原発にも適用できるが、実質的には福島の事故のための暫定的なもの。各社が機構に納めている積立金(負担金)も国への返済に消え、次の事故に備えた積み立てではない。

 

 国会は機構法を成立させる際、国の賠償責任を含め、原賠法を「一年をめど」に抜本的に見直すと付帯決議した。だが、国は原子力政策がまだ決まっていないことなどを理由に具体的な見直しを先送りしている。

 

 一方、東電を含め、五つの電力会社が七原発の再稼働を原子力規制委員会に申請。新しい規制基準に基づく審査は淡々と進んでおり、今冬にも再稼働する原発が出てきそうだ。安倍政権は「規制委が安全と判断した原発は活用する」と再稼働を推進するが、国の賠償責任のあり方を放置したままでは無責任との批判は免れない。

 

<原子力損害賠償法> 日本で原発が商業運転を始める前の1961年に制定。原発事故などで周辺に損害が出た際の賠償制度を定めている。「被害者の保護」とともに、加害者となる「原子力事業の健全な発達」も目的に掲げ、法律の専門家から批判の声がある。福島第一原発事故では東電の能力を超える賠償金が発生、政府は暫定的に原子力損害賠償支援機構を設立し、東電に資金援助しながら賠償している。

・・・・・・・・・・・・・・・(以上,引用終わり)

 

 田中一郎コメント

「原子力損害賠償法」は1961年(昭和36年)に制定された古い法律で,当時は日本に原発関連の技術がなかったため,海外から(特にアメリカから)その技術を急いで導入しようとしていた時期だった。そのため,その技術導入をスムーズに進行させるため,当時から予想されていた原発・核燃料施設の過酷事故に伴う原発メーカーの損害賠償・補償の責任を免責させるため,原発を導入する電力会社にその責任を一元的に負わせることとなった。他方,損害金額は原発・核燃料施設の過酷事故の場合には天文学的な数字の金額になることも,その当時から自明であったため,当時の大蔵省がこの原子力損害賠償のスキームに日本政府が無制限に関与することを拒否し,結局,電力会社に「責任の集中」(原子力産業や政府を免責)と「無過失責任」「無限責任」を負わせた上で,日本政府は政令で定める一定金額まで(現在は1,200億円)の「原子力損害賠償補償契約」を引き受けるに留まった。そして,国内的には,原発・核燃料施設は過酷事故を引き起こすことはあり得ないので懸念するには及ばない,と強弁したのである。

 

この法律は,本来であれば,日本への原子力技術導入がほぼ終わった1980年頃には全面的に見直され,電力会社のみならず原子力産業も含めた事故責任の自己責任を明確にさせた形で改正されるべきであったが(具体的には,原子力損害の具体的な金額査定(付保されるべき保険金額)や原子力損害賠償保険の民営化と,政府の役割の明確化),原子力産業にとっての都合のよさと(損害賠償責任の免責),電力会社にとっても,さしたる保険料を必要としない手ごろさ(あるいは保険金額が巨額になることが公になることの政治的影響の回避)が重宝され,原子力安全神話の上で「そのまんま」にされて,今日に至っている。いわば,原子力関係者一同,原発・核燃料施設の過酷事故は起きないという「えそらごと」の上に胡坐をかいて,それぞれの「賠償・補償」の責任を法律で免責させ,そ知らぬ顔をしてしまったということである。ここに原子力推進の正体が赤裸々に現れていると言えるだろう。

 

なお,この法律及び原子力損害賠償については,次の2点についても留意されるべきである。第一に,「原子力損害賠償法」の第3条には,「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りでない(損害賠償しなくてよい)」という条文があり,政府はもちろん,「責任の集中」をさせたはずの電力会社までを含む全ての加害者側の関係当事者が賠償・補償責任を免責される規定がある。つまり,「想定外」の大地震・大津波だと言い張れば,原子力推進関係者一同は何の責任も取らなくていいよ,というのがこの法律の規定である(*)(なお,今般の「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」の場合には適用されず)。

 

(*)正確には,政府は「必要な援助」を行う旨の規定がある(第16条第1項,第2項)

「政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力事業者(外国原子力船に係る原子力事業者を除く)が第三条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき額が賠償措置額をこえ、かつ、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、原子力事業者に対し原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行なうものとする」

「2.前項の援助は、国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内において行なうものとする」

 

まことにふざけた話であるが,自民党や民主党の原子力ムラ代表議員達は,この規定をもっと幅広く適用し,「巨大な天災地変又は社会的動乱」による原発・核燃料施設の過酷事故の場合には,原子力産業や電力会社を免責した上で,政府が賠償・補償や廃炉,除染その他の事故後対処・対策をすべて背負うべきであると主張している。つまり,原子力を国家丸抱えの「親方日の丸」でやれと主張しているのである。とんでもない話である。(モラルハザードやずさんな原発管理は今よりも一層ひどくなる)

 

第二は,政府が限度金額を1,200億円と定めて引き受けている「原子力損害賠償補償契約」の保険金勘定(保険掛け金の受入れ・保険金の支払いを行う特別会計)が「大赤字」状態であることだ。これまで,この「原子力損害賠償補償契約」で政府がまとまった金額の保険金を支払ったことがないにもかかわらず,従ってまた,原発が建設され始めて以降,何十年にわたってこの特別会計に保険掛け金が流入するだけで,積立金が積み上がっていたはずであるにもかかわらず,今般の「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」に伴う1,200億円の東京電力への支払については,これまでの掛け金積立額では全然足りなかったということを意味している。つまり,政府は電力会社から,これまで一貫して,まともな保険掛け金を徴収していなかったということだ。日本という国は,原発・核燃料施設の過酷事故の賠償・補償の法的責任をうやむやにしただけでなく,形だけ創っておいた「賠償保険」の掛け金納入責任すらも事実上「免責」していたのである。(しかも,民主党政権下で,この「真っ赤か」の特別会計の保険掛け金料率の引き下げまでが行われている。全くふざけた話である)

以 上

 

<賠償・補償・再建支援:5原則+α(同時代に生きる人間としての使命・倫理)>

 最後に,私の考え方を下記に箇条書きにしておきます。賠償・補償・再建支援が,この原則に従ってきちんとなされないと,被害者はいつまでたっても救われないことになります。政府は,この問題を加害者・東京電力に丸投げするのではなく,政府自身が「東京電力(福島第1原発)放射能放出事件」の発生責任者として,「立て替え払い」を含む様々な政策的手段で,被害者の完全救済に向けて取り組みを強める必要があります。一刻も早く,被害者に対する万全の賠償・補償及び再建支援が実施されることを願っています(賠償請求権の時効延長または廃止も含めて特別立法が必要)。

 

(1)全ての被害者の全ての被害・損害が何の留保条件を付けられることなく全額賠償または原状復帰されること(逸失利益含む)

 

(2)全ての被害者の生活及び経営が再建されること(費用,段取り,その他の負担のすべてを加害者が負うこと)

 

(3)上記(2)の再建が確認できるまでの間,全ての被害者の生活及び経営を補償すること

 

(4)2011311日以降,上記の賠償・補償・再建費用が実払いされるまでの間,電気料金遅延にかかる遅延損害金と同利率の遅延損害金が被害者に支払われること

 

(5)悪質な交通事故被害の場合以上の慰謝料(迷惑料)が被害者に支払われること

 

(6)(+α)被害者の被害は「お金」に変えられないものも多い。その部分を加害者・事故責任者が万全にフォローすること

以 上

 

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