食べものの放射能汚染(1) (近況報告:厚生労働省公表の検査結果から)
前略,田中一郎です。
1.はじめに
このレポートは,毎日,厚生労働省が発表している食品の放射能汚染(放射性セシウム汚染)の検査結果の近況と,若干のマスコミ情報についてのコメントです。
(厚生労働省が発表する食べものの放射能汚染の検査結果については,下記の「厚生労働省:報道発表資料」のサイトからご覧になれます。また,農林水産省のHPから「食品安全エクスプレス」というメールマガジンを申し込むと,誰でも毎日,(放射能汚染以外のことも含む)食品の安全に関する情報を得ることができます。更に,農林水産省のHPでも農林水産物の放射性セシウム検査結果などが見れます:時折,ご覧になられることをお勧めいたします)
*報道発表資料|厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/
*農林水産省-東日本大震災に関する情報
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/index.html#01
<別添新聞記事:一部添付できませんでした>
(1)被災漁船,気仙沼,沖縄,尖閣を経て福井沖で回収(河北2013.8.31)
(2)被ばく不安,果樹農家(東京新聞 2013.7.30)
(3)食卓の魚は大丈夫か(毎日新聞夕刊 2013.9.3)
2.厚生労働省HP「食品中の放射性物質の検査結果について」から(放射性セシウムのみの検査)
(1)2013年9月11日 食品中の放射性物質の検査結果について(第725報)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000022730.html
岩手県一戸町 ナラタケ 野生キノコ 36ベクレル/kg
大阪府東大阪市 レンコン 流通品(茨城県産)8ベクレル/kg
福島県西会津町 干しゼンマイ 製造・加工場所 19ベクレル/kg
福島県二本松市 梅干し 製造・加工場所 54ベクレル/kg
福島県川内村 乾シイタケ 施設栽培 9.5ベクレル/kg
<コメント>
岩手県一戸町といえば,県都盛岡市よりもずっと北の,青森県との県境にある町です。そこの天然キノコから無視できない放射性セシウムが検出されています。天然キノコや山菜・タケノコは,政府や自治体などが行っている環境放射能モニタリングなどよりも,ずっとずっと信頼が置ける放射能汚染モニターです。こんな北の地域にまで汚染が広がっていることはショックです。北海道を除く東日本産の天然キノコは食べないように致しましょう(ちなみに規制値超えの天然キノコの北限は青森市,南限は長野県の南牧村・佐久市あたりです)。
東大阪市で流通していた茨城県産のレンコンから放射性セシウムが検出されているのも少しショッキングです。検出値が8ベクレル/kgと値が小さいので,やや安堵いたしますが,しかし,わずかばかりの検査しかしていませんから,たまたまその検査品の値が小さかっただけである可能性もあります。茨城県はレンコンの産地ですが,要注意だと言えるでしょう(レンコンは放射能汚染が懸念される池や沼に生息していますから,本来であれば,徹底した池や沼やレンコンの検査がなされるべきです)。
福島県産の3つの食品からの放射性セシウム検出は予想通りのものと言っていいでしょう。放射能で汚染された地域で獲れる,キノコ・山菜・タケノコ,乾燥された食品,梅干し・梅加工品などはリスクの高い食品です。福島県郡山市で,汚染されていないダイコンを干して干しダイコンにしたら,3千ベクレルを超える汚染をしてしまったという話も,ついこの間のことでした。川内村の乾シイタケは「施設栽培」である点にも留意して下さい。施設だということは,空間からの汚染ではなく,キノコ栽培用のほだ木か栽培土が汚染されていた可能性が高いということです。ということは,産地に関わらずキノコは危ないということを意味します。
*福島県『郡山市で、大根を軒下に干したら3,421ベクレル-kgになりました』 それだけ空気が汚染されてるってことです。 日々雑感
http://hibi-zakkan.net/archives/19548069.html
(2)2013年9月4日 食品中の放射性物質の検査結果について(第720報)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000021665.html
宮城県栗原市 ツキノワグマ肉 野生鳥獣肉(非流通品)240ベクレル/kg
宮城県七が宿町 イノシシ肉 同 上 290ベクレル/kg
栃木県那珂川町 イノシシ肉 同 上 140ベクレル/kg
山形県小国町 エゾハリタケ 野生キノコ(非流通品) 10ベクレル/kg
福島県福島市 イワナ (横川:阿武隈川) 140ベクレル/kg
福島県白河市 梅漬(小梅) 製造・加工場所 14ベクレル/kg
福島県福島市 ドライフルーツ(桃)製造・加工場所 11ベクレル/kg
<コメント>
クマやイノシシなど,野生の動物は,放射能汚染や放射線被曝の影響を検証するための貴重なサンプルです。未だに政府・霞が関各省・自治体にその意識が乏しいのは嘆かわしい限りです。汚染・被ばくの隠蔽体質を告発されてもいたしかたないでしょう。また,上記でも申し上げましたように,天然キノコは政府や自治体などが設置しているモニタリングポストなどよりも,よほど信頼性が高い放射能汚染状況のモニターです。山形県小国町といえば,福島県からはかなり離れた山形県と新潟県との県境の町ですが,こんなところのキノコからも無視できない放射性セシウムが検出されるのはショックです。山形県=安全安心ではないのです。
東日本の汚染地域では,イワナをはじめ,淡水魚や汽水域に生息する魚介類(例:ウナギ)は口にしない方がいいでしょう。キノコ・山菜,ベリー・かんきつ類,乾燥食品,魚介類,内臓肉などと並んで,放射能が蓄積しやすい食品です。また,梅加工品やドライフルーツなど,放射能がたまりやすい素材を使った加工品・乾燥品についても注意が必要であることが上記で分かります。それから上記には書きませんでしたが,福島県産の多くの海産物からは放射性セシウムが検出されておりますし,宮城県産の海産物についても放射性セシウム検出が散見されます。放射性セシウム(ガンマ核種)のあるところ,放射性ストロンチウム(ベータ核種)やプルトニウム(アルファ核種)など,他の危険な放射性物質も存在していると言われます。特に,海産物については放射性ストロンチウム汚染が強く懸念されています。要注意です。
数字の値が小さいのは,さしあたりホッとさせられますが,安心はできません。たまたま測った数少ないサンプルの値が小さかったにすぎない可能性があるからです。安全性の証明など,全くできておりません。
(3)2013年9月3日 食品中の放射性物質の検査結果について(第719報)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000021134.html
北海道札幌市 桃 流通品(福島県産)8.5ベクレル/kg
北海道札幌市 梨 流通品(福島県産)1.7ベクレル/kg
北海道札幌市 ナメコ 流通品(山形県産)1.6ベクレル/kg
岩手県軽米町 牛肉 15ベクレル/kg
岩手県滝沢村 牛肉 12ベクレル/kg
岩手県奥州市 牛肉 16ベクレル/kg
茨城県 牛肉 栃木県産 15ベクレル/kg
福島県南相馬市 小麦 46ベクレル/kg
<コメント>
牛肉については,常々申し上げていますように,検査されている食品の大半を占めています。単純に牛肉の検査ウェイトだけを見た場合,異常と言えるでしょう(牛肉の検査が多すぎるということではなく,牛肉以外の検査が,数も品目も極端に少なく,検査が特定の産品に偏っているということです)。ところで,その牛肉についてですが,①岩手県産の牛肉からは,時折,上記のように無視できない放射性セシウムが検出されます。飼料に問題があるのかもしれません,②牛肉の検査機器は検出限界値が10~15ベクレル/kgのものが多いようなので,きめ細かな検出ができていない様子です,③上記のように,放射性セシウムが検出された牛肉ですが,同じ牛の内臓肉はもっと多くの放射性セシウムや,その他の放射性物質を含んでいる可能性があります。しかし,内臓肉は検査されたためしがなく(少なくとも検査結果は公表されたためしがない),牛肉トレーサビリティ制度の対象外にされ,まるで闇から闇へ消えていくように流通しているようです。内臓肉=いわゆるホルモン焼き等はお勧めできません。
一方,南相馬市の小麦の放射性セシウムは非常に気になります。これはもう安全とは言えない数値でしょう。何故,南相馬のようなところで麦などを作っているのでしょうか。放射性セシウム以外の放射性物質についても気になります。農林水産省は,農作物に放射性セシウムが滞留するのはコメが最も高く,移行係数(土壌汚染からどの程度作物へ汚染が移行するかの割合)が最高で0.1=10%と見ておけばいいようなことを言っております。しかし,私がここ2年間くらい食品の汚染状況を見ている限りでは,コメだけでなく,ムギ,ソバ,大豆,いも類などが放射性物質をため込みやすい性質があるようで要注意かと思われます。また,麦についてはビール麦=二条大麦はどうなっているのでしょう。福島県は本宮市にアサヒビール工場があります。ここの工場のビールの原料の大麦や水などの放射能汚染はどのようにチェックされているのでしょうか? アサヒビール本宮工場のHPを概観するだけでは分かりません。
*福島工場 行こう!工場見学!! アサヒビール
http://www.asahibeer.co.jp/brewery/fukushima/
一方,札幌市の検査結果は,いわゆる流通過程にある商品の抜き取り検査結果です。札幌市がそのような検査を行っていることは高く評価されていいでしょう。何故なら,他でやっている自治体が極度に少ないからです(東京都くらい?)。結果は,値は小さいですが福島県産の果実と山形県産のキノコから放射性セシウムが検出されました。イエローカードだと言っていいと思います。
(4)2013年9月2日 食品中の放射性物質の検査結果について(第718報)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000021134.html
青森県八戸市 マダラ 三沢市沖 4.2ベクレル/kg
茨城県 ウナギ 涸沼 11ベクレル/kg
茨城県 シラウオ 霞ヶ浦(西浦) 17ベクレル/kg
茨城県 ワカサギ 同 上 16ベクレル/kg
<コメント>
青森県産のマダラが放射性セシウムで汚染されていることは,既にだいぶ前に報道されています。ちなみに,海産魚の中で放射性セシウムがよく検出されるのは,マダラの他に,スズキ,カレイ・ヒラメ,カスベ(えい),海底魚(アイナメやメバルなど)などが挙げられます。これらの海産魚は,福島・宮城・茨城沖合で獲れるものに限らず,広く東日本の太平洋域に広がっています。それから,茨城県産の魚介類についても,福島県産ほどではありませんが,多くの魚介類に放射性セシウムが検出されています。私は,茨城県沖や宮城県沖についても,福島県沖と同様に,当分の間は漁業をやめるべきであると考えております(当然,加害者・東京電力や事故責任者・国が漁業者に万全の賠償・補償をし,移転・移住の支援を行うべきです)。
それから,淡水魚・汽水域魚については,上記の通り危険信号です。関東産・東北産・東京湾産のウナギもまた放射能汚染が検出されています。資源の面から見てもウナギは絶滅の危機にあり,当分の間,食するのをやめましょう。
(5)2013年8月29日 食品中の放射性物質の検査結果について(第716報)
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000019311.html
神奈川県 牛肉 北海道川上郡標茶町産 56ベクレル/kg
福島県南相馬市 かぼちゃ 16ベクレル/kg
同 上 オクラ 9.4ベクレル/kg
同 上 ニガウリ 11ベクレル/kg
福島県南相馬市 カボス 65ベクレル/kg
<コメント>
神奈川県の,おそらくは流通過程での抜き取り検査で発覚したのであろうこの牛肉の放射性セシウム汚染はいったいどうしたことでしょうか。規制値を下回っているとはいえ,これは危険物です。しかし,我々が分かるのはこれだけのことで,何故,神奈川県はこれについて詳細を発表しないのでしょう? 検査したのは「県衛生研究所」とあります。そもそも,どこの市町村で抜き取ったのかもわからないし,それ以上に,産地が北海道の川上郡標茶町(釧路市の北,丹頂ヅルの飛来地)だというのですから,何故? と聞きたくなります。北海道の牛の肉が何故こんなに汚染しているの? 何故? 何故? これははっきりさせないといけないことではないですか? だって汚染している牛は,この発見されたものだけではないかもしれませんから。
それから南相馬市の野菜類の汚染ですが,やはり上記の小麦の汚染と同様に,南相馬市での農業には無理があるように思えます。カボスなどは危険ゾーンの汚染度です。これだけの汚染が検出されると,作付をしている生産者・農家の放射線被曝が非常に心配になります。「食べて応援,買って支援」することは,生産者・農家を恒常的な低線量被曝(外部被曝・内部被曝=特に呼吸被ばく)の状況下に縛り付けることを意味するのです。何の「支援・応援」なのか,わかりません。
3.昨今の新聞情報から
(1)被災漁船,気仙沼,沖縄,尖閣を経て福井沖で回収(河北 2013.8.31)
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/nation/incident/20130829k0000e040263000c.html
ネット上の記事は毎日新聞の同主旨のものです。驚くべきか,東日本大震災により気仙沼沖で行方不明になった漁船が,太平洋をぐるっと回って,沖縄
⇒ 尖閣諸島沖 ⇒ 経由で日本海の福井県沖にたどりつき,ようやく回収されて気仙沼に帰ってきたという話です。美談として記事を読むのはいいのですが,漁船がそうなら,汚染水も,魚類も,プランクトンやその他の海洋生物も,同じように海を広い範囲で動きまわっていておかしくないでしょう。少し前には,福島県沖のヒラメが,北海道の東・太平洋沿岸で発見されたとの業界記事を見たことがあります。海に「境界」はありません。このままでは,日本の海は東京電力に殺されます。
(2)被ばく不安,果樹農家(東京新聞 2013.7.30)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/tohokujisin/fukushima_report/list/CK2013073002000171.html
「除染作業が進む中で、年間一ミリシーベルト以下の環境に戻すのは難しいことがわかってきた。ゼネコン頼みの除染は、技術と費用の両面で行き詰まったのだ。別の方策を探るときだろう」との記載があります。
全くその通りです。マスコミの記事が,生産者・農家の農作業に伴う放射線被曝への懸念を取り上げるのは珍しいと言えます。東京新聞らしいと言っていいでしょうか。(この記事は東京新聞の福島特別市局の記事のようです。ようやく東京新聞も福島に出先をつくったようです)
(3)食卓の魚は大丈夫か(毎日新聞夕刊 2013.9.3)
http://mainichi.jp/feature/news/20130903dde012040014000c.html
記事に出てくる2人の学者=神田穣太東京海洋大学教授と水口憲哉東京海洋大学名誉教授の話には耳を傾けてもいいかもしれません。でも,私には,素直に「はいそうですね」とはとても言えない不信感があります。そもそも,魚介類・水産物の汚染検査や生態系調査が全く不十分なのではないですか? そんな中で,あまりにはっきりと安全を言う人,信用し難いですね。少なくとも,下記のような飲食にかかる放射能検査・汚染対策についての抜本改善を,大学教授の皆さんにも提言していただきたいものです。
(神田穣太東京海洋大学教授の発言を抜粋)
「警戒すべきはセシウムだけではない。骨への蓄積が懸念されるストロンチウム90が港湾内で検出されている。神田教授によると、減少ペースはセシウムよりストロンチウムの方が遅い。「港湾内に流れ込むセシウムの量が1日30億ベクレルとすれば、最低でもその3倍のストロンチウムが流れ込んでいる。セシウムより土に吸着されにくいので、湾内に流出しやすいからかもしれません」。原発敷地内の地上タンクに保管中の汚染水には特に高濃度のストロンチウム90が含まれる。地上タンクについては8月20日、300トンもの汚染水漏れが発覚した。「まだ魚への影響が出ていないとしても、ストロンチウムのモニタリングを強化すべきだ」と神田教授は強調する。」
(水口憲哉東京海洋大学名誉教授の発言を抜粋)
「「小さな子どもには国の基準値の10分の1、1キロ当たり10ベクレル以下の魚を食べさせた方がいい」と言い、現在は流通していない福島県を除いて、主に隣県の宮城、茨城の底魚の数値に注意すべきだと説く。」
<食品の放射能検査について,少なくとも現段階で取られるべき行政的措置>
現状でのいい加減極まる食品の残留放射能検査体制を抜本的に改め,消費者・国民の命と健康をしっかり守るため,少なくとも下記のような行政的対応が必要不可欠かと思われます。科学的な実証的根拠もなく飲食の「安全・安心キャンペーン」が繰り返され,かつ加害者・東京電力や事故責任者・国の賠償・補償負担を軽減する「本当の目的」が隠蔽されたまま,「食べて応援,買って支援」などのインチキ宣伝がなされている今の異常な事態は早期に解消し,事故後2年半経過した今を持ってしても,依然として無用の被曝の危険にさらされている消費者・国民に,「本当のこと」を伝えていく必要があると思われます。
(1)検査数や検査品目を抜本的に増やすこと(現状は検査対象が牛肉やコメや特定の水産物などの特定品目に極度に偏っていて,かつ検査件数が少なすぎるため(全流通量の0.1%未満),食品の汚染状況の全体像は分からない。少なくとも全流通品の半数以上でロット検査を行うこと,生産者段階だけでなく流通過程での抜き取り検査も抜本的に拡大すること,加工食品や外食の検査を業者任せにせず,行政が主体的に計画的に実施すること)
(2)放射性セシウム以外の放射性物質についても綿密な検査を行うこと(特にベータ核種=放射性ストロンチウム等やアルファ核種=プルトニウム等)
(3)検査状況の第三者による抜き打ち検査,検査に関連した利益相反の排除,検査サンプルの抽出の適正性確認など,検査の適正化をはかる仕組みを導入するとともに,検査結果を含め,全ての事項を情報公開すること(検査結果は原則表示する)。
(4)学校給食は,すべての放射性物質について,いわゆる「ゼロベクレル」とすること。放射性セシウムだけではない。
(5)検査体制(人員・検査機器・予算等)の抜本的な拡充を図ること
(6)飲食のみならず,その周辺(食器,肥料,飼料,木材・燃料,医薬品,皮革,調味料,化粧品,食料助材(ぬか等)等)も検査すること。当然,検査体制拡充も必要。
(7)飲食にかかる規制値をさらに引き下げるとともに,子どもなどの放射線感受性の高い世代へのより厳しい規制値を定め,それにより被害を受ける生産者や流通業者・加工業者などの関係者に対して万全の賠償・補償を行うこと(国が立て替えよ)
(8)食品偽装や規制値を超える汚染食品を意図的に流通させたものに対する厳しい罰則を定めること(懲役刑よりも食品表示偽装を無意味にする厳しい罰金等の経済的制裁が重要)
4.厚生労働省が定める飲食品の放射能残留規制値について
別添に厚生労働省が定めた飲食品の放射能残留規制値についての説明ペーパーを添付しておきました。これまでも,多くの方々から様々な批判がなされてきましたが,厚生労働省はそれらの批判に馬耳東風で,全く変えようとはいたしておりません。原子力ムラ一族は,常に自分達のやることについては,いかなる批判に対しても「馬耳東風」です。つまり「馬」だということです。以下,復習の意味で,この飲食品に係る放射能残留規制値の問題点を列記しておきます。
(1)まずは「耳タコ」ですが,この規制値に関して決定的に問題な点を申し上げておきます。①規制値の絶対値がまだまだ大きすぎる(そもそも,この程度なら仕方がないという経験科学的・実証的根拠がない),②放射性セシウムや放射性ヨウ素以外の規制値が設けられていない。放射能は放射性セシウムだけではない。厚生労働省の説明では,放射性ストロンチウムやプルトニウムなど,若干のその他の放射性核種は考慮していると説明されていますが,これもまた経験科学的・実証的根拠がなく非科学的です。およそ放射性ストロンチウムなどのベータ核種や,プルトニウム・ウランなどのアルファ核種に対して,規制値を設けない国など,どこにもないでしょう。いずれも内部被曝が強く懸念される放射性核種です),③飲食の検査体制が貧弱なまま放置され,この規制値が厳格に守られることを担保する仕組みがない,検査されているのは,生鮮食品が主で,それも生産地域での検査がほとんどです。都市部などで流通している食品の抜き打ち検査などは,全くと言っていいほど実施されておりません。また,外食や加工品の検査は業者に丸投げです。
(2)放射線被曝線量限度を1mSvにしたといいますが,それは飲食からの内部被曝だけについてそうしたのであって,それ以外の呼吸による内部被曝や外部被曝(あるいは傷口から放射能が体内に侵入してくる場合の内部被曝)は度外視されています。これでは,総被曝量は1mSvを超えてしまいます。(「新たな基準値設定の考え方」の欄に「線量の上限を1mSvとした」とあります)
(3)「食品区分」がいい加減である。日常的に食べる量が多い主食の米や,パン・麺用の小麦,あるいは飲料水など,食べる量に対応して規制値を厳しくしなければならないにもかかわらず,きめ細かな規制値設定がなされておりません。
(4)胎児・乳幼児・子ども・若者・女性など,放射線感受性の高い世代に対する特別の配慮がほとんどありません。配慮がないどころか,厚生労働省の説明に書かれている「ベクレル/kg」の年齢別の限度値の表をご覧いただければお分かりのように,年齢が低いほど食べる量が少ないので,kg当たりのベクレル値(放射性セシウム汚染度)は大きくてもいい(例:19歳以上の大人男子=130ベクレル/kg,1歳未満=460ベクレル/kg,がそれぞれの年齢別「限度値」),という,信じがたい考え方に基づいて規制値を決めています。
そして,多くの人々から子供の内部被曝への懸念が示されたことに形だけ対応するために,ベビーフードや学校給食を意識しながら,乳児用食品と牛乳についてのみ,一般食品の規制値の1/2=50ベクレル/kgを規制値としました。しかし,この数値でも,驚くほど数値が大きすぎます。乳幼児や子どもの食べ物に,この数値はあり得ないでしょう。50ベクレル/kgの飲食を続けていれば,やがて体内には,数千ベクレル~数万ベクレルの放射性物質(放射性セシウムだけではありません)が蓄積・滞留してしまうでしょう。とんでもない話です。
(決め方も,経験科学的・実証的根拠がなく,まるで「エイヤー」と決めています)
(5)お茶(緑茶)については,飲む状態で飲料水の基準が適用されるとあります。飲料水の基準=10ベクレル/kgの値が高すぎることと併せて考えると,これもとんでもない話で,数百~1千ベクレル/kg程度の汚染されたお茶っ葉を使ってお茶を入れてしまう可能性があります。また,お茶っ葉をそのまま食べる(たとえば粉末茶を振りかける,宇治ミルク金時などのかき氷,抹茶入りのカステラ等)場合は,その汚染物をそのまま食するわけですから,冗談ではないことになります。そもそも,緑茶はこうして飲食せよ(お湯をかけて飲む以外はやめろ!),と指示命令されているようで不愉快です。余計なお世話です。日本の茶文化を破壊するなと申し上げたいですネ。
(まだありますが,このへんで終わりにいたします)
*食の安全・監視市民委員会(FSCW)(2011年10月13日)
「放射能汚染から食の安全を守るための意見書」
http://www.fswatch.org/2011/10-13.htm
*食の安全・監視市民委員会(FSCW)(2011年12月20日)
「飲食品の放射能残留規制及び消費者の安全確保に関する意見書」
http://www.fswatch.org/2011/12-20-1.htm
*同上「厚生労慟省のこれまでの放射能汚染食品への対応に強く抗議し、この度提示された食品に含まれる放射性物質の規制値の再検討を求めます」
http://www.fswatch.org/2011/12-27.htm
以 上
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