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2013年9月19日 (木)

韓国への汚染魚輸出の強要は筋違いのジコチュー的態度であり,国内向けの「安全・安心」パフォーマンスである

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

 別添PDFファイルは,先般の韓国による関東・東北8県からの水産物の全面輸入禁止と,それに関連した日本国内の動き(漁業団体,政府など)を巡る報道を集めたものです。これに関して,今回の漁業団体や日本政府の韓国に対する対応は,筋違い,かつ,まことに横柄な態度であり,およそ福島第1原発事故で迷惑をかけた隣国への対応としてはよろしからぬ姿勢ではないかと思われます。以下,簡単にコメントいたします。

 

*東京新聞韓国 8県の水産物 全面禁輸国際(TOKYO Web)

 http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2013090602000233.html

 

(東京電力福島第一原発の汚染水漏れ問題で、韓国政府は六日、福島など八県の水産物輸入を全面禁止すると発表した。これまでは禁止対象が計五十種類に限られていたが拡大することになる。昨年は八県から約五千トンが輸入されていた。 

 全面禁輸となるのは青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の八県。従来の禁止対象は、福島産四十九種、宮城産九種、千葉産二種など県別で違ったが、除外されていたホタテやサバなども含めて八県産の輸入すべてを禁止する。韓国政府は「汚染水が毎日流出していることに国民の不安が非常に大きい。日本政府が提出した資料だけでは今後の状況を予測しづらいための判断」と説明した。)

 

*福島第1原発汚染水問題 8県水産物「禁輸解除」、韓国に要請 水産庁、安全訴え- 毎日jp(毎日新聞)

 http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130917ddm008040032000c.html

 

FNNニュース 原発汚染水問題 全漁連、水産庁に韓国禁輸が解除されるよう要請

 http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00253553.html

 

 <別添PDFファイル:添付できませんでした>

(1)韓国輸入規制と福島沖漁業:直近の動き(水産経済 2013.9.19他)

(2)韓国禁輸に対する漁業団体の動き(水産経済 2013.9.17

(3)水産物全面禁輸 韓国に要請(東京 2013.9.17他)

(4)韓国禁輸 正確な情報発信を 東北知事,政府に求める(東京 2013.9.11

 

*(参考)福島原発「トリチウム薄め海に流す」案の危険性を専門家指摘 (NEWS ポストセブン) - Yahoo!ニュース

 http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130913-00000017-pseven-soci

 

*(参考)技術、国際公募へ 政府がトリチウム除去で有効策なし 県内ニュース 福島民報

 http://www.minpo.jp/news/detail/2013091410876

 

(以下,本文)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.韓国輸入規制と福島沖漁業:直近の動き(水産経済 2013.9.19他)

 まず,業界紙「日刊水産経済新聞」その他で,直近の動きを簡単に見ておく。

 

(水産庁:香川謙二増殖推進部長=韓国に直談判に行った役人)

「日本側は輸入規制の撤回を強く要請したものの,具体的な対応や措置の期限を明言しなかった」

「今後は専門家による協議を継続する」

「(輸入禁止とした8県以外の)その他の県においても、セシウムが微量でも検出された場合は,ストロンチウムの検査証明書を提出するよう求めている。日本側はこうした規制強化が「科学的に根拠が乏しく過剰な措置であるとして,直ちに撤回を申し入れた」」

「協議では、原発港湾内と港湾付近の海水の放射能データや,魚種別のモニタリング調査結果,ストロンチウムの検査結果等も詳細に提供,水産物の安全管理対策や汚染水対策を説明した」

「韓国側はこれに対して,「日本産水産物には放射能汚染の可能性があり,今回の臨時特別措置は正当だ,と述べた」

「規制撤廃の条件を問うても「まずはデータの分析が必要」との回答にとどまり,具体的な対応や措置の期限は明言しなかった」

「一部で報じられているWTOの提訴に関しては,「今回の協議はWTOの手続きで定められたものではない。現時点で提訴の方針が決定した事実はなく,今後の対応について予断を持って申し上げることは差し控る」」

 

(地元漁協)

 JFいわき市漁協,及びJF相馬双葉漁協は,ともに926日より「試験操業」を再開の予定。JFいわき市漁協の対象魚種は,スルメイカやメヒカリなど17魚種。JF相馬双葉漁協は,ミズダコ,ヤリイカ,シラスなど17魚種が対象。

 

*「試験操業」9月下旬にも再開へ 相双、いわき市漁協(福島民友ニュース)

 http://www.minyu-net.com/news/news/0907/news1.html

 

2.(日本政府並びに漁業団体の)態度が悪い

 下記の新聞情報をご覧いただきたい。漁業団体も日本政府も,これが商品を販売する=買っていただく「お客さま」に対して,販売する側が言う言葉なのか,態度なのか,と思わざるを得ないような言動ぶりである。水産物の輸入を禁止したとはいえ,福島第1原発事故による海洋汚染と,その後の日本側のいい加減でずさん極まる対応措置が事態を悪化させたことで迷惑をかけている隣国であるところの韓国に対する,この横柄極まる態度や無礼千万の言動はいったい何なのだろうか。常識があるのなら,まずは韓国に対する心からの謝罪から始まるはずである(水産経済新聞

2013.9.17)。

 

(JF全漁連:岸宏会長・長屋信博専務)

「われわれ漁業者が,国産水産物の流通について設けられた国の厳しい基準を順守し,風評被害の拡大防止に最大の努力をしているにもかかわらず,明確な科学的根拠のないままに行われた韓国政府の措置は,わが国漁業者としても極めて遺憾である」

「国は,今回のこの韓国政府の措置に対し,毅然としてわが国水産物の安全性にかかる信頼回復を図り,一刻も早く禁止措置が解除されるように取組むとともに,諸外国に対しても強力な外交努力により,風評被害対策に万全を期すよう要請する」

 

 ⇒ 上記の発言は看過できないほどによろしくない。生産者団体としては発言してはならない一線を超えているように思える。食べものの供給事業者・生産者は,その安全性については徹底して厳格でなければならない。そうでなければ,やがて消費者から見放される=買ってもらえなくなるだろう。

 また,「国の厳しい基準」というのはウソだし,「風評被害」などという言葉は消費者を馬鹿にした言葉だし(消費者が汚染地産の食品を避けることには合理性がある,この言葉はそれを「馬鹿な行為」とみなしている),「毅然として信頼回復」などというのは,独りよがりの何物でもないし,「外交努力」では食の安全と信頼性の回復はできない。安全と信頼性の回復のためには,文字通り,安全を証明できるものだけをきちんと提供することである。

 従ってまた,漁業団体の中央本部としてなすべきは,かような発言をして韓国に八つ当たりすることではなく,福島県の2つの漁協の試験操業をやめさせ(実際,福島第1原発からの放射能流出と海洋汚染は今も続いており,その近海で獲れる水産物は危険である),それに伴う損害を,韓国への輸出の激減による損害と併せて,加害者・東京電力や事故責任者・国に対して賠償・補償させることである。(更には,汚染地域の漁業者の移転・移住と,他の地での漁業再開の促進支援を行うことである)

 

(鈴木俊一農林水産副大臣)

「汚染水問題で,日本はこれまで韓国の要請に対し,ことのほか丁寧に説明し,データを開示してきた。それなのにいきなりこういう態度で水産物の輸入禁止をしてくることは大変遺憾である。しかも,科学的根拠の乏しい判断なので,一日も早く撤回すべきだ」

 

(水産庁::香川謙二増殖推進部長)

「日本側は,こうした規制強化が科学的に根拠が乏しく過剰な措置であるとして,直ちに撤回を申し入れた」 

 

(村井嘉浩・宮城県知事)(東京 2013.9.11

「(韓国政府の対応を批判し)(日本の)国民感情として納得できるものではない」と語気を強めた。

 

 ⇒ この村井嘉治という男も,3.11福島第1原発事故のその日から,(食の)放射能汚染や放射線被曝に対しての認識や態度がよろしくない(2年半前の新聞をご覧あれ)。県知事がいつまでもかような態度を続けていると,やがて宮城県産食品が全国の消費者・国民から避けられてしまう時が来るかもしれない。生産者にとっても迷惑な話である。

 

3.科学的根拠がないのは韓国ではなくて日本だ:科学が証明すべきは「危険」ではなく「安全」だ

 上記で見た通り,水産庁の役人達は「韓国の輸入禁止には科学的根拠がない」と主張している(それを,わけのわからぬ政治家が「オームのものまね」をし,また,生産者団体がそれをはやしたてている)。しかし,それは全く逆の話で,科学的根拠がないのは韓国の方ではなくて日本の方である。

 

 そもそも,食品を輸入するか否かの判断の基準は,その食品が「科学的にその食品が危険であると証明されているから輸入を禁止する」のではなく,(放射能汚染という危険である蓋然性がある中で)「科学的にその食品が安全であると証明されているから輸入を許可する」ということある。食品を輸出する側が「食の安全」の証明責任を買い手側に逆転・転嫁することは許されない。

 

 そして日本側は,輸入禁止された8県の海域で獲れる水産物の安全性を科学的に立証できているのか,答えはノーだ。

 

(1)水揚される水産物の放射能検査体制が貧弱極まりなく,そのほとんどが未検査状態で出荷されている。水産物は個別個別の個性が強く,ロット検査にはなじみにくい。もっと数多くの水産物を検査しなければ,汚染の実態や全容はとうてい掴みきれない。

 

(2)放射性セシウムだけが検査され,格段に危険な放射性ストロンチウムなど,他の放射性核種は未検査のままである。しかも,それらの核種には規制値さえなく,事実上,わずかの水産物に対して放射性セシウムだけが調べられているにすぎない。調査・検査が貧弱で規制値がないような状態で,どうして安全の「科学的根拠」があると言えるのか。

 

(3)厚生労働省が20124月から実施している水産物への残留放射能規制値の数値=100ベクレル/kgは,値が大きすぎて危険である。特に放射線感受性の高い子どもや若者にとっては,かような値の汚染物は安全などとはとても言えない。

 

(4)海の汚染状況はほとんど調査されておらず,今後の見込みも不明のままである(原子力「寄生」委員会がまもなく着手しそうであることが報道されている)。

 

*汚染水データ集約 規制委、海洋調査を強化  :日本経済新聞

 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1303H_T10C13A9EA2000/

  

 従って,韓国が,日本産の水産物の汚染状況を見極めるまで,輸入を禁止するのは当然のことであり,また,放射性セシウム以外の放射性ストロンチウムなどの検査を要求することも,また,当然のことである。

 

 そもそも,水産庁の嘘八百「似非科学」=自民党ボンクラ政治家や漁業団体が「オームのものまね」をしている「科学的根拠」なるものは,本来は日本側が示すべきものである。海を汚し,水産物を汚し,しかも,その汚れたものを韓国に対して買ってくれ,と言っているのは日本である。売る側が,その売り物が安全であることを示すのは,当たり前のことである。

 

4.輸入食品の安全性をどの水準にするかは各国の主権の問題であり,各国がそれぞれに決めることである

 上記で見たように,日本側がやっていることは,(似非)科学主義の名のもとに,立証責任を買い手側・輸入側に転嫁して,安全とは言えないものであっても買って食え,と韓国に対して強要をしているということである。

 

 しかも,食品の放射能と,それを食べることによる放射線内部被曝については,ここまでなら「安全」という閾値は存在しない。従って,どの程度の水準で「我慢するか」を決めるのは,それは輸入するそれぞれの国の「国家主権」事項であって,輸出する側が,似非科学や屁理屈で,それをねじ伏せるような話ではない。韓国に輸入を拒否をされたら,それは致し方のないことである。

 

5.この日本側の韓国に対する傲慢な態度こそが,TPPやWTOなどの国際市場原理主義の正体である。

 実は,今回のこの日本側の韓国への傲慢な態度こそが,TPPやWTOにおける貿易のやり方や「食の安全」の確保の「ルール」そのものである。簡単に言えば,国際間で非常に低いレベルで,さしたる「科学的根拠」もなく,取引される商品の安全性に関して「規制値」や「禁止事項」「遵守事項」などを決めておき,それを超えたら(超えるような厳しい措置をとる場合には),輸入規制措置をする側・輸入を拒否する側がその根拠を科学的に示せ,という,「証明責任の逆転」が「ルール化」されているのである。食べ物は売る側が安全であることを証明しなければならない,証明できていなければ買わない(輸入しない)自由がある,こんなことは当たり前のことだが,それがWTOやTPPなどの国際市場原理主義の下ではひっくり返されて,買う側・輸入する側が,危険であることを科学的に証明させられる仕組みになっている。

 

 国際市場原理主義にとっては,「食の安全性」などは「非関税障壁」そのものであって,百害あって一利なし,WTOやTPPなどの国際協定,あるいはコーデックス委員会などの国際機関で決めた以上のことは,国際取引の邪魔だから一切認めるな,というのが本音である。つまり,企業が儲けるためには,毒まみれだろうが,危なかろうが,文句を言わずに買って食え,というのが,国際市場原理主義の考え方だということである。(実際,途上国など,世界の多くの国では,食の安全性や危険性についての分析や調査をする体制は存在していない)

 

 そして,上記で申し上げたように,守られるべきとされる「食の安全」に関する国際間ルールは,各国の食の事情その他を無視して,供給する多国籍大企業や食糧輸出国などの利益を損ねないように,非常に低い水準で決められている。それがいやだったら,危険であるということを,いやなお前が証明しろ,これが「ルール」である。しかし,冗談ではない,食べものの安全性は,売る側・供給する側が証明しろ!! である。何が国際ルールだ,こんなものは「インチキ科学主義」にすぎないのだ。

 

6.水産庁は,福島・宮城・茨城の各県沿岸・沖合で獲れる水産物の汚染状況と安全管理について消費者・国民に説明せよ

 上記で見たように,水産庁の香川謙二増殖推進部長は次のように語っているという(水産経済 2013.9.19)。

「協議では、原発港湾内と港湾付近の海水の放射能データや,魚種別のモニタリング調査結果,ストロンチウムの検査結果等も詳細に提供,水産物の安全管理対策や汚染水対策を説明した」

 

 何故,輸出先の韓国にはこのように説明して,日本の消費者・国民にはきちんと説明しないのか。つまらぬ「安全・安心キャンペーン」などをやっているヒマがあったら,水産物の安全性について,肝心なことをきちんと説明せよ。

 

7.政府・水産庁,県知事,漁業団体らの発言の矛先は,実は韓国ではなくて日本の消費者・国民だ

 さて,最後にもう一つ,この一連の関係者の言動についてポイントを指摘しておきたい。それは,輸入禁止の「科学的根拠」がない,毅然とやれ,日本は「食の安全」に対して厳しい対応をしているのに韓国の態度は何だ,云々は,実は,韓国に対しては,というよりも国際的には通用する話ではなく,関係者たちはそれを重々承知の上で,実は日本国内の消費者・国民に向かって,「韓国の今回の輸入禁止措置はとても変で極端なことだから,惑わされないでください,我々は頑張っていますから,引き続き8県沖で獲れる水産物を買って下さい」と言っているのである。

 

 彼らのやりたいこと,やろうとしたことは,日本の消費者・国民に「(韓国に)右にならえ」をしてもらいたくない,という,その一点に尽きると言ってもいいかもしれない。だから,少なくとも日本国内では,なりふり構わず韓国を悪者にして,その衝撃的な輸入禁止措置=汚染海域からの水産物は,当面は一切買わない,が国内に波及しないよう予防線を張っていると考えていいだろう。まさに,この態度の悪さと強引さは,国内向け(安全・安心)パフォーマンスなのだ。

 

 この問題に関する正解はただ一つ,放射能汚染物は買ってはいけない,食べてはいけない,である。少なくとも,福島・宮城・茨城の三県の沿岸・沖合で獲れる水産物は潜在的に危険である。特に水産物は,放射性セシウムだけに注目していても,安全性などおぼつかない。日本の今の食品の脆弱な検査体制では,この危険性を排除することは到底できないし,政治も行政も,水産食品流通業者も,そして場合によっては漁業者も,食の安全に対して無責任である。

 

 安心できない時は,買わない方が無難である。無用の放射線内部被曝は避けなければならない。恒常的な低線量内部被曝を続けることは非常に危険なことである。悲しいかな,東日本の太平洋で獲れる水産物は,もはや安全とは言えなくなってしまっているのである。怒りは韓国に向けるのではなく,東京電力をはじめとする原子力村に対して向けよう。

早々

 

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