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2013年9月

2013年9月29日 (日)

福島第1原発に対してこれからどうすればいいのか(毎日新聞記事より)

前略,田中一郎です。

 

このほど(2013924日夕刊)毎日新聞に「福島原発の汚染水問題:「7年後」までの解決、処方箋は:空冷、堀で包囲、地下ダム」という解説記事が掲載されました。興味深い記事なので,以下,全文掲載のサイトをご紹介申し上げるとともに,簡単に私見を申し述べます。なお,毎日新聞のウィークデイの夕刊の2面に毎日掲載される,この「特集ワイド」記事は,時折興味深い,注目すべき記事が掲載されていますので,東京新聞の「こちら特報部」記事とともに,注目されておかれるといいでしょう。

 

 <毎日新聞記事:ネット上>

(1)特集ワイド福島原発の汚染水問題 「7年後」までの解決、処方箋は 空冷、堀で包囲、地下ダム- 毎日jp(毎日新聞)

 http://mainichi.jp/feature/news/20130924dde012040074000c.html

 

(2)<福島原発の汚染水問題>「7年後」までの解決、処方箋は 空冷、堀で包囲、地下ダム (毎日新聞) - Yahoo!ニュース

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130924-00000008-maiall-soci

 

(3)福島原発の汚染水問題 「7年後」までの解決、処方箋は 空冷、堀で包囲、地下ダム」(毎日新聞)|大友涼介です。

 http://ameblo.jp/heiwabokenosanbutsu/entry-11622955365.html

 

1.この記事に出てくる「処方箋」についての私の見方

 科学者でも技術者でもない私から見ての素朴な疑問を以下に列記します。

 

(1)(毎日新聞記事)「原子力コンサルタントの佐藤暁さん:圧力容器を内蔵した格納容器の外面と、さらにその外側を覆うコンクリートの間には下から上まで隙間(すきま)がある。そこでコンクリートの上部に穴を開け、風を流すことで空冷にする方法を提案する。佐藤さんの試算では、原子炉内の数百キロワットの熱を風で取るのに必要な空気は最大で毎時約1万5000立方メートル。直径1メートルのダクトで毎秒5メートル強の空気を吸い上げれば足りる。燃料自体に触れないので空気の汚染は少なく、吸い上げたダクトにフィルターをつければ放射性物質の除去は簡単にできる。「事故から2年半を経て熱量が減ってきた今なら検討に値する」

 

 ⇒(田中一郎)溶融した核燃料を水で冷やさない方法を考えろ,ということは,小出裕章京都大学原子炉実験所助教も提言している。私は佐藤氏の空冷よりも,下記の小出裕章京都大学原子炉実験所助教の鉛や重金属による「布団蒸し」の方がベターなように思えるが,どうか? 佐藤氏の提言は「最大で毎時約1万5000立方メートル。直径1メートルのダクトで毎秒5メートル強の空気を吸い上げれば足りる」の部分に恒久性がないように思う=一時的なら考えられる方法か?)

 

*「水で冷やすというやり方はそろそろ諦めるしかない」と私は思うようになりました。小出裕章氏8-23報道するラジオ「福島第一原発事故 汚染水の問題は」(文字起こし) - みんな楽しくHappyがいい♪

 http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-3213.html

 

(小出裕章京都大学原子炉実験所助教:具体的には鉛とかですね、ビスマスとか、そういう重金属の類を、多分溶けてしまって、どこかにあるだろうと思われている炉心のところに送ってですね、その金属の、冷却材というか、熱伝導を使って炉心を冷やそうという、そういう発想があるのです。それが本当にうまくいくかどうかという事も私は確信は持てないし,これまでそんな事をやった試みも人類は経験したことが無いのですけれども、「水というやり方はそろそろ諦めるしかない」と私は思うようになりました)

 

(2)(毎日新聞記事)「(続いて)原子力コンサルタントの佐藤暁さん:「敷地全体をひとつの島にするのがいい」と続ける。現在の計画は原子炉建屋の周辺だけを凍土壁で囲い地下水をブロックするというものだが、それよりも敷地全体から地下水を追い出そうというのだ。具体的には敷地を囲うコの字形に海まで通じる全長10キロほどの堀を造り、堀の底面は海面より3メートルほど下げる。原子炉建屋は海面より10メートル以上、地上タンクは海面より30メートル以上高い場所にあるため、地下水は敷地に入る前に堀を通じて海へ流れ、汚染源の原子炉建屋周辺に直接は到達できなくなる。原発周辺には年間800〜1800ミリの雨が降るが、地上に排水溝を造り堀に流し込むようにする。流れ込んだ雨水が汚染された場合は干満の差を利用して堀に海水を取り込んで希釈し、最後は吸着材を通してから海に戻せば放射能を取り除ける。「この方法なら完成に7年もかかりません。2年半もあれば十分にできます」

 

 ⇒(田中一郎)福島第1原発の敷地のいたるところが高濃度に放射能汚染していることを考えた場合,佐藤氏の「原発周辺には年間800〜1800ミリの雨が降るが、地上に排水溝を造り堀に流し込むようにする。流れ込んだ雨水が汚染された場合は干満の差を利用して堀に海水を取り込んで希釈し、最後は吸着材を通してから海に戻せば放射能を取り除ける」というのは,どうも安直すぎるような気がしてならない。雨水が様々な放射性核種を洗い流して堀に流れ込むと思うので,それを吸着材ですべて除去することはできないのではないか。海をこれ以上汚すような方法は容認できない。

 

(3)(毎日新聞記事)「産業技術総合研究所の丸井敦尚(あつなお)・地下水研究グループ長:敷地付近では海面マイナス10メートルからプラス30メートルの範囲に砂れき層があり、水を通しやすい。この層の地下水は雨水が地面に染みこんだものがほとんどだ。とすれば敷地の表面をアスファルトで固めたり、薬剤をまいてビニールコーティングしたりすれば雨水が染みこみにくく、地下水を減らす抜本的な対策になる」

 

 ⇒(田中一郎)これは検討すべき対策の一つではないか。ただ,私が懸念するのは,アスファルトでは,しばらくするとひび割れして役に立たなくなるのではないか,ということと,こうして敷地全面の表面を「防水加工」してしまうと,後々,他の作業に齟齬をきたさないかという点が心配である。

 

(4)(毎日新聞記事)「産業技術総合研究所の丸井敦尚(あつなお)・地下水研究グループ長:山側から流れてくる地下水の対策も重要だ。広さ約3・5平方キロメートルの敷地はほぼ台形で、地下には台形の斜辺に沿うように「地質の尾根」と呼ばれる部分がある。これは周辺の地質より硬く標高が高いため水を通しにくい。つまり地中の分水嶺(ぶんすいれい)のような役割を果たしているのだ。(中略)台形の上辺の部分にあたる敷地境界に「地下ダム」を造り、敷地内に流れ込もうとする地下水を両側の「地質の尾根」の外側に導いて海に流すのだ=図。「地下ダム」建設は困難に思えるが、敷地境界部では地下水を通す地層が地表付近に出ている部分があり、そこから薬液を入れるだけで地下水の速度を低下させるという。薬液といっても石灰を水に溶いたもので、土の中で固まり、透水性は現在の100分の1以下になる」

 

 ⇒(田中一郎)これも検討すべき対策の一つのように思える,パーフェクトな対策ではないが,深刻度を緩和させる効果はあるのではないか。少なくとも,原発建屋に近いところの井戸から地下水をくみ上げて海に流すという現行の「バイパス方式」=「汚染水を手当たり次第に海へぶん投げる方式」よりはずっといいのではないか。

 それから,今現在検討されている「凍土方式」だが,これは一過性・緊急対策のものと考えて,その凍土壁の外側に,本格的な、「鉛直バリア(ベントナイトスラリーウオール)方式」(民主党・馬渕元総理補佐官)による遮水壁建設を検討すべきではないか(文字通りの「二重の壁」)。また,福島第1原発敷地から港湾外へ,直接,汚染水等が流れる排水路があるようだが,これはすべて早急に改造して,港湾内へ流れ込むようにすべきではないのか。更にまた,港湾内に設けられているシルトフェンスは,何重にも設置することで,少しでも港湾外への放射能流出を止めるよう努力してはどうか。

 

(5)(毎日新聞記事)「今中哲二京都大学原子炉実験所助教:チェルノブイリでは事故後2年半の時点で原子炉内がどうなっているかテレビカメラで調べられたが、福島第1では溶けた燃料がどうなっているか把握できていない。一刻も早く原子炉内の燃料の状態を確認するとともに、汚染水貯蔵タンクに水量計やアラームを付け監視を強めるなど、やるべきことは多い」

 

 ⇒(田中一郎)まったくその通りなのだが,何故,福島第1原発1~3号機の場合には,テレビカメラで原子炉内の状態が調べられないのだろうか。いや,それどころか,福島第1原発事故の原因究明のための現場検証が,どうしていつまでたっても実施されないのだろうか。原発・核燃料施設の再稼働や核燃料サイクル推進の継続を優先するがために,本来あるべきことが権力的に捻じ曲げられているような気がしてならない。

 

2.東京電力主体の現在の取組体制ではもう限界である=新しい体制を新しい考え方で創設せよ

(1)現在の取組体制では,東京電力が原発事故後の対策費用をケチっている=東京電力経営の維持存続が最優先となっていて,安上り・手抜き対策が続き,それが次々と問題を発生させて「モグラたたき」状態となっている。それはまるで,アジア太平洋戦争時の日本軍のガダルカナル島攻略戦のような「戦力の逐次投入」が繰り返され,状況が悪化していると言える。と同時に,皮肉にも経費をケチってきた東京電力が体力をすり減らし,先行きに展望を持てなくなった中核的職員が東京電力を去り,人材が次第に散逸していく状態にも陥っているのである。放置すれば,事態は益々悪化していくだろう。


 

 こうしたことを終わらせるため,政府は一元的な意思決定のできる責任ある体制づくりを早急に行い(これこそ挙国体制だ),人・物・金を集中投入することが肝要だ。中でも重要なのが「人」と「金」。まず「人」のこと=人選を間違うと,一元的で集中的な体制であるだけに,事態悪化の速度を速めるだけに終わる(経済産業省なんぞが前面に出てくるようでは末期症状である。経済産業省はもはや「無用の存在」を通り越して「存在悪」となっており,かつての大蔵省と同様に解体されるべきである)。また逆に,評論家のような人間を多く集めたり,あちこちに検討機関を乱立させると,ああでもない,こうでもないの小田原評定と化すので(会議ばかりを繰り返していた民主党政権のような状態),この両サイドの陥穽へ落ちないことがポイントの一つである。

 

 「金」の方は,原子力ムラや財務省の偏狭と私利私欲(省益・族益)を排除・抑制し,今現在も原子力を支え推進することに使われている財政資金(予算)を,この福島第1原発事故の収束や汚染水処理対策,あるいは,近い将来福島第1原発を再び襲うであろう大地震・大津波対策に用いることが肝要だ。さしあたり,経済産業省や文部科学省の原子力関連の科学技術予算の大半を投入する他,核燃料サイクル関連での積立金(再処理積立金等)を取り崩して使えばよい。そして,(独)日本原子力研究開発機構(高速増殖炉「もんじゅ」他)や日本原燃(核燃サイクル施設)などは,金食い虫の無用な組織にすぎないので,予算を付けずに廃止すればよろしい。組織があると,その組織は自己存続のために(どうでもいい,やらなくてもいい,やらないほうがいい)仕事をつくりだす,の典型だからだ。

 

(2)とにかく,大量の人・物・金を一気に投入し,同時並行で様々な対策を大急ぎでやらないと,次の破局的事態の回避に間に合わないかもしれない。福島第1原発事故対策で最重要なことは,近い将来,発生するであろう再度の大地震・大津波に対して,万全の対策をしておくことである。たとえば絶対に1~4号機の使用済み核燃料プールや,使用済み核燃料用の共用プールが破壊されることがないようにしておかなければならないし(早く「乾式貯蔵」へ移行し,津波の被害が及ばない場所へ避難させよ),汚染水をため込んでいる仮設の貯水タンク群が,タンクもろとも海に流れ出てしまうような事態にならないようにすることが最重要のことである(*)。福島第1原発敷地全体の液状化防止対策も必要不可欠だ(今のままでは,直下型の大地震が来ると福島第1原発敷地が液状化を起こし,建屋や使用済み核燃料プールなどが横転・大破しそうであることに加え,地下から猛烈な汚染水が地上に吹き出し,放射能散乱状態となって人間が近寄れなくなってしまう可能性もある)。

 

(*)併せて,仮設の貯水タンク群の水の放射能除去をしておくことも,もしもの場合のリスク低減のためには重要なことである。しかし,本日付の朝刊各紙がつたえるところでは,浄化装置のALPSが再びトラブルを起こして停止してしまったらしい。どうもこの機械は調子がよろしくないようだが,何故,何がいけないのかは,情報が公開されていない。かつてフランス(アレバ)から騙されて5百億円以上もかけて購入した同様のインチキ浄化装置も使えないままである。東芝製のALPSにせよ,フランス(アレバ)製の浄化装置にせよ,どうも何かが隠されているような,的をえない報道のされ方である。放射能汚染水の浄化装置ないしは浄化能力について,正直で真摯な情報公開が必要である。隠しごとと誇大宣伝(容易に浄化ができるかのごとき)は,この期に及んでは,まことによろしくない。

 

*<東京電力>汚染水浄化装置「アルプス」に不具合、運転停止 (毎日新聞) - Yahoo!ニュース

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130928-00000043-mai-soci

 

(3)現場で働く人達の身分保障と,無用の放射線被曝回避,そして万全の健康管理・医療体制の確立が必要不可欠なことである。新たな体制ができた後は,東京電力の若手実務者を含めて,福島第1原発の事故後処理に携わる人たちの人権を守り,その人達がエンカレッジされる体制づくりや,職場環境や社会的位置づけなどをきちんとした上で,相応の収入も保障した上で,適切な労働条件や現場環境の下(*)で取組や作業が遂行されなければならない。やりがいと誇りを持って従事していただけるよう,しかるべき体制づくりが必要不可欠である(例えば,新しい体制下で取り組む新会社・新組織が現場の作業員を直接雇用し,被曝管理・健康管理や医療サービスを提供する,被曝限度を超えた作業員の雇用や収入を保障する他)。現状のように,多重下請け・偽装派遣をくりかえし,放射線被曝管理をないがしろにし,場合によっては暴力団が関係しながら,作業員をまるでティッシュペーパーのごとく使い捨てにしている体制は断固として許されない。

 

(*)私は福島第1原発の現場の汚染マップが,どうしていつまでも作成されないのか不思議でならない。汚染マップの作成並びにメンテナンスチームをつくり,早急に福島第1原発敷地及び施設内の放射能汚染マップを作製し,かつ,汚染のひどいホット・スポットや作業員が頻繁に訪れるような場所は,直ちに除染がなされるべきである。作業員確保のためにも無用の被曝回避の体制はしっかりととられていなければならないはずである。なお,汚染マップのメンテナンスが必要なのは,放射能の汚染状況は時々刻々と変化するからである。

 

(4)放射能放出による環境汚染や,それによる多くの人達の放射線被曝,あるいは生態系破壊を許さないという,当たり前のカルチャーを福島第1原発の現場に定着させるよう,新体制下では「汚染・被曝絶対悪」原則が打ち出される必要がある。トリチウム入りの汚染水を海に意識的に投棄するなどというのは論外であることに加え,放置すれば環境への放射能放出が続いていくような事態=たとえば,福島第1原発敷地に降る雨水の無処理・放置状態,あるいは,今も出続けている福島第1原発4基からの大気中への放射能放出,汚染水ダダ漏れ状態の仮設安物タンク群,雑草のトゲですぐに穴が開く安物ホース類,ネズミの遊び場になっている配電盤等々,については,早急に全力を挙げて,その放射能の環境放出を止める等の,トラブル防止の必要がある。


 そもそも,放射能汚染物の排出に関して「濃度規制」しかしていないことは大問題である。放射能の環境放出は,基本的にはゼロ規制が原則であり,やむを得ない場合に限り,濃度規制とともに「総量規制」がなければ話にならない。いくら薄めたところで,全部捨ててしまうのなら,そのまま高濃度で捨てることとなんら変わりはないからだ。「やめて,染めて,薄めて消えて」(大阪じゃりんこ言葉)では,結局は放射能は無限に環境へ捨てることができることになる。馬鹿なことは許されない。

 

 放射能による環境汚染を防ぎ,現世代の無用の被曝を防ぐことは,(放射線被曝がもたらす遺伝的障害を考慮すれば)未来世代に対する我々の義務であり倫理である。とりかえしがつかない放射能汚染の拡大は絶対に許さない,脱原発は同時に脱被曝である,という原子力廃絶の原点を何度も何度も確認しておく必要がある。仮に,放射能汚染や放射線被曝が,大したことはない,被害は限定的である,気にし過ぎるのはかえってよくない,などという認識であるのなら,原発や原子力もまた,廃棄する必要性は必ずしもないということになりかねない。原発安全神話が崩壊した今,原子力ムラ一族が狙う原発延命策の本命が,この中途半端な態度を狙って大宣伝されていることを忘れてはならない。「原発安全神話」を「放射線安全神話」に切り替え,原発・原子力を「必要悪」「善悪両面性を持つもの」として延命させよ,これが彼らの「新戦略」である。

 

(5)政府が体制をつくり,財政資金を大きく投入して福島第1原発事故対策に当たる場合には,東京電力は法的処理を行って,既存株主や大口債権者に相応の負担をさせた上で,新しい体制にシフトさせる必要がある。発送電分離や原子力部門(=廃炉専担部門)の分離などが前提となるだろう。柏崎刈羽原発は当然のことながら廃炉となる(そもそも中越沖地震で痛めつけられ,事実上,破損施設となっている原発7基を,こともあろうに福島第1原発事故を引き起こして,その事故収拾も,除染や賠償も自力でできない東京電力が再稼働を担うなどいうことは,考えられないことである。東京電力から原子力発電の事業認可を剥奪せよ(というより現会社組織に終止符を打て)。

 

(6)最後に,この新体制による新しい考え方での福島第1原発の事故後対策スキームには,原子力ムラの科学者・技術者は原則参加させない,という姿勢で臨むべきである。特に,大学にいる原子力ムラ研究者などは,まったく役に立たない「雑音機」ないしは「壊れた旧式ラジオ」のようなものである。それは3.11直後,TVや新聞・雑誌等に現れて彼らが行った言動を見れば一目瞭然である。原発・核燃料施設の現場を知らない彼らは,事態の改善や打開のための提言をするどころか,原子力ムラの存続やその利益・利害を優先したお門違いの言動を繰り返し,いたずらに時間を浪費したり,より一層困難な事態を招いてしまう可能性の方が高い。仮に傾聴に値する提言がなされたとみなされる場合には,その時にだけ例外的に意見・見解をヒヤリングする体制をつくっておけば十分である,そして,最も大事なことは,こうした悪質な御用学者達を一刻も早く大学から追放することである。(彼らはたいていの場合,電力業界を含む原子力業界から金品や便宜などを享受し腐敗していることが多い:まさに「大学教授」ならぬ「金品享受」である)

早々

 

2013年9月28日 (土)

(国産)木材利用ポイント制度はWTOルール違反である = そんなWTOルールなど,やめたらどうなの?

前略,田中一郎です。

 

 別添PDFファイル(添付できませんでした)は,本日(9/27)付朝日新聞朝刊に掲載されました「国産木材使ったらポイント 日本の促進策「WTOに抵触」という記事です。一見しても,よく理解し難いような,そんなバナナ,のような記事見出しです。でも,これって,我々日本の消費者・国民が,この間約35年間にわたって,市場原理主義に頭がイカレタ連中にだまされ続けてきたことの一つを,非常に象徴的に現していることなのです。以下,簡単にご説明いたします。

 

 <別添PDFファイル:添付できませんでした>

*国産木材使ったらポイント 日本の促進策「WTOに抵触」(2013927日付朝日新聞)

 http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201309260661.html

 

●記事内容の概略

「国産木材をもっと使ってもらうために農林水産省が4月から始めた「木材利用ポイント制度」について、カナダと欧州連合(EU)など5カ国が、世界貿易機関(WTO)のルールに抵触する恐れがあると主張していることがわかった。WTOでは、輸入品と国産品を平等に扱うことを定めている。農水省は近く、WTO事務局に説明書を提出する」

 

「同制度は,スギやヒノキなど地域でとれた木材を一定量使用する新築木造住宅や木材製品を買った場合に,最大60万円分のポイントがもらえる」(中略:商品券や農林水産品と交換可能)「2012年度補正予算で410億円が用意された」

 

「WTOの物品理事会で,ルールに抵触する恐れがあるとカナダとEUが共同提案した。輸入品と国産品の差別を禁じるルール(内国民待遇原則)に抵触するとの主張と見られる。これに,ニュージーランド,米国,マレーシアが口頭で賛同したという」

 

「農水省によると,対象となる木材は,(1)産地証明,(2)資源量が増加している,(3)有識者委員会で対象として適切と認めた,などが条件,外国産を排除する仕組みにはなっていない,という」(田中一郎が要約)

 

「ポイント制度には自動車や家電製品などがあるが,環境によいことが基準になっていたため,WTOの場などでの批判にはならなかったという」

 

●まず,記事に書かれていることで,これは変だと思われること

 記事に書かれていることで,今回の問題の是非以前に,これはおかしいと思われるのは次の2点である。

 

 第一に「対象となる木材」に,「森林認証」またはそれに準じて「持続可能で環境を破壊していないもの」という規定がない。委員会が妥当と決める,などというのは話にならない規定で,妥当と決める基準や判断根拠が明確化されていなければ,恣意的な運用になるのは決まっている。しかも,この委員会のメンバーには,大手広告代理店をはじめ,日本の企業など産業界の代表者たちが入り込んでいるのだから始末に悪い。「利益相反」委員会で,対象木材の「適正性」が決められるのか?(朝日新聞は,何故,この「有識者委員会」のメンバーについて書かないのか?)

 

(木材利用ポイント制度において,この「持続可能で環境を破壊していないもの」という「しばり」は非常に重要で,かつ必要不可欠である。何故なら,製紙会社や合板会社を含む日本の木材産業は,戦前・戦後一貫して,国有林(林野庁)を含む国内の多くの森林(特に山奥の天然林)のみならず,熱帯雨林をはじめ広く世界中の森林や自然環境を滅茶苦茶にして木材を利用・輸入してきたからだ。およそ「持続可能で環境を破壊していないもの」という「しばり」のない木材利用ポイント制度などは,百害あって一利なしの制度である)

 

 第二に,「ポイント制度には自動車や家電製品などがあるが,環境によいことが基準になっていたため,WTOの場などでの批判にはならなかったという」というのは,なんのこっちゃ? でしょう。自動車や家電などよりも,地域の森林からとれる木材の方がよほど環境や健康にはいいはずだ。家電や自動車のポイント制度にはクレームがつかないが,木材にはクレームだらけ,こんな馬鹿な話があるだろうか。

 

(記事の書き方もおかしい。正確には,自動車や家電の場合には,海外からの輸入品にもポイントが付与されていただけの話である。しかし,自動車や家電のポイント制度など,資源の浪費や大量生産・大量消費・大量廃棄を益々促進するだけの,まったくバカバカしい,無駄の塊のような,かつ特定産業の企業や資本のボンクラ経営者にゴマをするだけの,あるいは,わざわざ海外産品にまで事実上の輸入促進ポイントを付与するという,愚策中の愚策だったということではないか。買い替えによって,電気効率は上昇しても,製品そのものは巨大化して従来以上に,より一層エネルギーや電気を消費するものがよく売れていたという。これがほんとに「エコ」なのか? 「エコ」と言えるのか? 

 

 また,そもそも買い替え需要を含む自動車や家電の購買需要をポイントをつけて「先食い」したって,その後には巨大な売り上げ減が待っていることは明白だ。こうした税金の無駄遣いは,すべて逆累進制度の消費税増税にツケ回しされている。簡単に言えば,貧乏人から税金をまき上げて,自動車や大型家電を買える裕福な層にポイント制度で税金をバラまいてやる,そういう「理不尽」込みの仕組みだったということだ。財政危機を解消・軽減するためには消費税増税はやむを得ない,などと思い込んでいる,お人よしで世の中知らずの人は,政府や自治体などの税金の使い道をよくチェックし,確かめた方がいい。何故なら,まだまだこれからも安倍晋三・自民党政権は,国土強靭化=大土建公共事業をはじめ,使い放題・無駄し放題の財政支出を,消費税増税を原資に用意しているからだ)

 

(しかし,それにしても朝日新聞は,「わざわざ海外産品にまで事実上の輸入促進ポイントを付与するという,愚策中の愚策だった」についても問題視していない。自動車企業・産業界や家電企業・産業界に対して媚びへつらっているのではないか)

 

●これが意味するもの

(1)自由貿易至上主義=「貿易歪曲型」保護政策の排除

 EUやカナダ,米国などが木材利用ポイント制度に異を唱えた理由は,木材といえども国内外の貿易製品や企業は,同等に無差別に扱え,政策的に差をつけるな,という点である。しかし,内外の貿易製品・資本・企業・産業への無差別の政策対応とは,実際には,海外製品・海外資本・企業・産業を政策的に保護したり支援したりするような国(政府や自治体等)は(そんな馬鹿なことをする国は)存在しないので,事実上この主張は,国内製品・資本・企業・産業を保護するな,海外と差をつけるな,政策的に優遇するな,政策支援はするな,ということを意味している。

 

 何故なら,海外の巨大多国籍資本が,ある国に経済進出するにあたって,競争上,その国の国内企業に対してハンディキャップとなり,自身の商売拡大に邪魔だからだ。ちょうど大型トラックが,歩行者や自転車に対して行く手を阻まれて,邪魔だからどきやがれ,もたもたしてんじゃねえぞ,いらんことをすんなよ,と怒鳴りつけているイメージに類似している。

 

 彼らは,こうした国内保護政策や国内産業育成政策,あるいは産業を通じての環境政策・社会政策などを「貿易歪曲型」保護政策などとネーミングして,猛攻撃をしているのである。もちろん,国際取引を先導する巨大多国籍資本の代理人として,各国政府が御用学者やマスごみ,それに「市場原理主義」の呪縛にとらわれた愚かな人間達を総動員して,あらゆる価値の上に「貿易の自由化」=「巨大多国籍資本のビジネスの自由化」を置け,と絶叫しているのである。

 

 しかし,およそ人間の経済活動や社会にとって,「貿易の自由化」=「巨大多国籍資本のビジネスの自由化」のようなものが最も最高位に置かれるべき「価値」なのか。今回の木材利用ポイントについて申し上げれば,そんなことよりも,この木材利用ポイント制度は,林業・木材産業の地産地消を促進し,地域林業活性化による森林の整備が同時で並行で進み,また,(川下)木材産業や木造住宅産業が繁盛することで,地域経済の再生や雇用拡大をも目標にし,一石何鳥もの政策効果を狙ったもの(少なくとも大義名分にしたもの)である。それの何がいかんのか。そんなものは,巨大多国籍資本のビジネスにとっては邪魔者以外の何物でもないから,WTOのルールに乗っ取って,やめてしまえ,というのが今回の5カ国の申し出なのである。余計な御世話だ。 

 

 「貿易歪曲型」保護政策などと,よくも,かような偏向イデオロギー型の造語を思いついたものである。昨今では,市場原理主義御用学者よりも,マスごみのアホダラ記者がこの言葉をよく使っている。それも言うなら,「農林水産業歪曲型」の「多国籍企業商売優先主義政策」とでも言っておけば,この悪だくみの体系=WTOルールの本質・実態をよく表していると言えるだろう。繰り返すが,貿易自由化など,人間の経済や社会にとって,最優先するような価値ではない。

 

(2)チョロマカシの「自由貿易による経済発展」説=市場原理主義アホダラ教条

 たいていはこの辺で,大学で「机上の空論」を教える市場原理主義経済学者が現れて,自由貿易の効能や功徳を切々と述べるところである。いわゆる市場原理主義アホダラ教条である。大学生は「数珠」でも持って大学に通学しなければならない時代になったのだろうか。ともあれ,これについての反論は,かの経済産業省の頭脳明晰官僚の中野剛志氏の下記の著書にお任せして,私からは次の点だけを申し上げておく。

 

*新潮新書『反・自由貿易論』(中野剛志/著)  http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032935468&Action_id=121&Sza_id=C0

 

 上記で「実際には,海外製品・海外資本・企業・産業を政策的に保護したり支援したりするような国(政府や自治体等)は(そんな馬鹿なことをする国は)存在しない」と申し上げたが,実はこれには特異な例外があり,それが戦後一貫して対米従属を続けてきて自立心や独立国家の気概を失い,もはや対米隷属・盲従を「喜び」と感じるまでに至っている変態国家=日本のように,「アメちゃんのためなら,えーんやこら」をやり続ける政府・政権もあるということだ。かつての植民地における傀儡政権・植民地政府と類似した「プチ帝国」である。

 

 それは,たとえば米国だけのためにあるTPPを秘密交渉義務協定まで締結してゴリ押ししようとしていることや,沖縄を米国のなぐさみものに差し出し,かつ米軍再編という他国軍隊の整備にまで自国民の税金を献上する,集団的自衛権などと称して,米軍の引き起した戦争に,自衛隊員の命までをも投げ出して全面協力する体制をつくるなど,売国奴政府たる日本政府が今やっていることを垣間見れば明らかだろう。

 

 また,昨日のメールでご紹介した有機農畜産物の(海外機関による)認証をはじめ,食の安全その他の経済活動の社会的規制を海外の認証機関等に無条件・ノーチェックでゆだねてしまう等(森林認証や格付機関やタクス・ヘイブンや金融商品取引法等々),内外無差別どころか,自国主権を放棄した「海外(企業・ルール)優先」のデファクト・スタンダードが,この日本という国では出来上がりつつあるのである。様々な規制は国内に対してはしやすいが,海外=非居住者に対してはしにくいという自然体に,市場原理主義的ご都合主義というイデオロギーや,国家官僚の無責任・怠慢・不作為などがかぶさり,見るに堪えないグロテスクな経済社会が広がりつつあるのである。

 

(3)つぶされる農林水産業の地産地消と食料主権

 すでに申し上げたように,本来は地産地消が基本である農林水産業は,WTO/FTA・EPAなどの国際自由貿易協定の例外とされなければならない。また,環境や労働,あるいは食品を含む安全に関する社会的規制は,本来は自由貿易ルールの上位に置かれて,その社会的公正が確保されたルールの下で,そのルールからはみ出ない範囲内で,自由で活発な貿易が行われるべきなのである。それが今日の貿易ルールや国際取引ルールでは,貿易当事者である一握りの多国籍大資本の商売や利益が最優先されることで,出鱈目や反倫理的な,およそ許し難い様々なことが横行してしまっているのである。

 

 一つの事例として,食料主権が自由貿易に踏みにじられていることを挙げておきたい。食料主権とは,文字通り,それぞれの国の食料に関することは,その国の主権が決めることであり,貿易自由化を名目・口実にした干渉や権利侵害は許されないという普遍的な国際的原理である。その食料主権が市場原理主義的貿易ルールで侵害されている。

 

(食料主権の具体的な中身は,(1)各国が自給する食料の質(食べ物としての品質や文化など)と量(自給率,何を自給するか)は各国がそれぞれ決める,(2)食の安全基準(例:残留放射能規制)は各国が決める=食の安全性は輸出側・販売側に立証責任がある,(3)食品提供は持続可能でなければならず,そうでないものは拒否する権利が各国にある(持続可能でないシステムからの産品等を輸入禁止とする権利)の3つ)

 

(4)TPPはだめだけど,アジアとの自由貿易やWTOはOK,の愚かさ・お人よし

 論外な内容のTPPはもちろんだが,およそ現在の市場原理主義に毒された国際取引ルールは,WTOもFTA・EPAも,FTAAPも,すべてみな「同じ穴のムジナ」である。ただ,そのひどさに程度の差があるだけで,長い期間をかけてみれば,環境が破壊され,格差が極度に広がり,経済や社会がボロボロになっていくことに変わりはない。

 

 よくTPP反対論をする際に,TPPはだめだが,アジアを相手の自由貿易圏ならOKだ,などという主張を耳にする。しかし,それは「ひどさの程度の差」をことさら強調して,物事の本質を見誤る議論と言わざるを得ない。自由貿易論など,それそもそもがダメなのであて,自由貿易の価値の上に,何が置かれなければならないかをよく考えてみる必要があるのである。こうしたご都合主義は,やがて狡猾な市場原理主義によって「食い物にされる」ことになるだろう。 

 

(5)極論をやめて,資本取引を含む国際取引への良識的で適正な規制の導入=新しいルール作りが必要

 自由貿易論はダメだ,などというと,それじゃ日本のような資源のない島国はやっていけなくなる,日本の発展のためには自由貿易は必要不可欠だ,などと,VSOPの自由貿易賛美論が,未だに返ってくることが多い。不勉強極まる,というか,もう,市場原理主義アホダラ教に洗脳されるのは,マインドコントロールされるのは,願い下げにしたらどうかと思う。極論を言って,時間かせぎしている場合ではないのだ。 

 

 誰も本来あるべき「自由貿易」体制を廃止しろと言っているわけではない。国際(資本)取引や貿易には適切な社会的あるいは経済的規制を盛り込み,経済的な行き過ぎ・偏りを廃し,環境保全や格差是正,公正な社会を守りながらやっていけばいい,と申し上げているだけである。当然,何でもありの,大きいもの勝ちの,勝手にやっとれルールではなくなる。

 

 言い換えれば,やりたい放題資本主義・自由貿易は,我々一般の消費者・国民の生活や安全・健康を世界的規模で破壊し,一握りの金儲け天国をつくるだけの話だということだ。もうだまされるのはやめようではないか。今般の木材利用ポイント制度に対してなされたWTOルールなるものからのクレームが,現下の国際取引ルールの歪みを典型的に現わしている。WTOルール=自由貿易主義にだまされるな,これは今や,日本立て直しのキーワードの一つとなっている。

早々 

 

 

2013年9月26日 (木)

有機農業推進法の基本方針見直しについて雑感 (日本の 「有機」 政策は輸入食品販促のためにあるのか?)

前略,田中一郎です。

 

 このほど農林水産省は,2006年に議員立法で制定された有機農業推進法に基づく基本方針(2007年策定)を,5年ごとの見直しにかけるようである。いい加減で無責任な国会議員達が,やってまっせのPR効果だけを狙って制定した有機農業推進法だが,制定後は有機農業など全くやる気がない農林水産省の役人どもに丸投げしたままほったらかしにし,まもなく前回基本方針策定から5年がたつので,それを形式的にもっともらしく書き替えようというのが今回の話である。

 

 案の定,有機農業は推進法制定後も拡大せず,むしろ縮小・衰退の傾向だ。その最大の原因は,東日本大震災と,とりわけ福島第1原発事故による放射能汚染である。しかし,このやる気なし有機農業推進の当事者たちは,この最も悩ましい有機農業を破壊する原発・核燃料施設の過酷事故と放射能汚染による自然の物質循環の破壊について,何の言及もしないのだ。

 

 「やる気なし」推進体制と「書いただけ」基本方針に加え,放射能汚染による有機農業の破壊により,有機農業のシェアは現状においても0.5%あるかないかのレベル(四捨五入ゼロ)。ただでさえ日本の食料自給率は40%前後と低迷しているが,これが有機産品自給率になると更に自給率は低くなり,10%にも満たない水準になってしまっている。つまり,日本の有機農畜産品(認証)は,事実上,海外からの輸入食品の販売促進のために存在しているという,悲しいばかりに目もあてられない惨状にあることをしっかり認識しておくべきだろう。しかも,その国内有機農業衰退の傾向は,有機推進法ができてから,より一層ひどくなっているのではないか。掛け声だけの,ムードだけの,有機農業・自然農法が蔓延しているのが今の日本の姿ではないか。

 

 以下で,本日付の業界紙の記事を見てみよう。

 

 <『日刊アグリリサーチ』(2013.9.26)より>

 有機農業のシェア現状〇・四~〇・五%を倍増,条件整備から拡大へ=次期基本方針の検討方向

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 農水省は有機農業推進法に基づき「有機農業の推進に関する基本的な方針」(以下基本方針)を平成一九年四月に公表しているが、概ね五年間を対象とする現行基本方針を見直すため、食料・農業・農村政策審議会企画部会に小委員会を設けて検討を進めている。基本方針の改訂は年度内の運びだが、小委員会では「農業者等が有機農業に積極的に取組めるようにするための条件整備を進める」ことに重点を置いた、推進法制定後のスタートラインにたった現行基本方針から、「有機農業の拡大」を目標とする第二段階の基本方針とし、わが国有機農業のシェアを現状の〇・四~〇・五%の倍程度に設定すること等が検討されている。

 推進・普及については、▽技術の開発・体系化を全国段階では先進的有機農業者が持つ技術をもとに栽培技術指導書を作成し体系化が一定程度進んだが、今後は地域段階において新たに有機農業を始める人のために、地域の気象条件や土壌条件に適合した技術の体系化が必要で、都道府県での技術体系確立を新たな目標として設定すべき、▽都道府県の有機農業推進体制は一定程度進んだものの、市町村における推進体制は「有機農業者がいない・少ない」等の理由により依然として推進体制整備が不十分であり引き続き体制整備が必要、▽消費者の理解も必ずしも十分ではなく、有機農業が化学肥料、農薬を使用しないことを基本とする環境と調和の取れた農業であることを知る消費者の割合を五〇%以上とすることを目指すべき、等が指摘されている。

 

 有機農業者等の支援施策については、▽取り組みの支援として、地域における中長期計画に基づくモデル的な取り組みが必要、有機農業拡大にむけマーケットニーズに対応した一定の産地化・ロット形成・低コスト化をはかるための機械・施設への支援が重要、有機農業のための有機種苗は民間での供給が難しいため行政として何らかの支援が必要、有機農業に対する環境保全型農業直接支援対策の継続・拡充、▽新たに有機農業を行おうとする者の支援として、地方公共団体は、地域の有機農業者がどのような農業をしているのかを把握し就農希望者と先進的な有機農業者の間を取り持つことによって就農希望者の相談活動ができるようにすべきであり、国は有機農業のアドバイザーの導入を検討すべき、▽流通・販売面での支援では、有機農業の拡大に合わせて有機JAS認証の活用を促進するため取得のための手続の簡素化や支援が必要、等の議論が行われている。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以上,引用終わり)

 

 これを読んで,すぐに「おかしい」と思うことは,基本方針を見直すにあたって,今までの5年間を振り返り,どういう目標を掲げて,何をやり,それがどうだったのか,また,有機農業の現場にいる生産者・農家や,有機農業の流通の現場にいる人達は,何をどう考えているのか,また,消費者・国民についても,その意識状況や有機農業・有機産品についてどういう認識なのか,といった「方針見直しのためのレビュー」=現状における問題点の適切な把握の部分が全くないことである。誰が見直し委員なのかは知らないが,農林水産省が主導してやっているのだから,どうせロクでもない大学教授や業界関係者や役人OBなどをつれてきて,ああでもない,こうでもない,と「机上の空論」を繰り返している可能性が高い。

 

 この「机上の空論」方式は,今現在,規制改革会議や産業競争力会議で宴もたけなわの「農地制度改革論」と瓜2つである。農地という新しい土地開発のフロンティア(「農地の農地としての活用」ではなく「農地開発」=土建事業・非農業であることに留意)を「農業振興」をお題目にして手に入れ,乱開発をして甘い汁を吸い尽した後に放り出す,その頃には農地も農村もボロボロで,変質した日本農業が提供する農産物は家畜の「餌」並みの品質と価格と安全性,という,そんな近未来を切り開くために,これからの農地制度が日本農業のためにどうあるべきかを棚上げにして,あらかじめ決めてある「市場原理主義ゴール」へ向けて「机上の空論」を繰り返しているのである。簡単に言えば,大企業・大資本に農地を所有させろということだ。それさえ達成できれば,あとのお題目など,どうでもよい。

 

 そこでは,当然のことながら,今まで約15年間の間,農地法やその関連法の規制緩和ばかりを繰り返してきて,その結果がどうだったのか,現場はどのように受け止め,どうあってほしいと考えているのか,現場の悩みとは何のなのか,等々,およそ本当の意味での日本農業の改革,あるいは農地制度のよりよき改正の取組は,全くと言っていいほどなされていないのだ。そもそも農林水産省は,この農地についてはサボリにサボリを続けており,全国で耕作放棄地が一体どれだけの面積になるのか,いや,農地と言われている土地の実際の使われ方はどうなのか,等々の,農地現状調査の基本中の基本さえ,把握しきれていないことを申し上げておく。そして,そのいい加減極まりない農地利用状況把握の上で,コメの「転作政策」が行われている(⇒「減反政策」ではありません=そんなものは既に廃止されています。今あるのは「主食用米の転作政策」です。くれぐれもお間違いなく)。ひょっとすると,とうの昔に荒れ地になったり山林に戻ってしまっている「農地」を名目に,転作奨励金が支払われている可能性はないとは言えない。全く腹立たしいかぎりである。

 

 しかし,そんなことを何百回繰り返しても,くその役にも立たないことは,たとえば食料自給率がいつまでたっても上昇してこないこと一つとってみても,自明のことなのだ。やる気がない,無責任人間達の駄法螺話をいくら積み重ねたって,事態は改善などするはずもない。有機農業が拡大・拡充しなくったって,見直し委員たちにとっては「他人事」であり,また,農林水産省にとっても痛くも痒くもないし,有機推進法を制定した政治家達にとっては「終わった話」にすぎないからだ。この魂の入らない,形だけの「有機農業推進」「基本方針」が見直されようとしている。見直すべきは,基本方針の字句ではなく,この推進体制そのもの=簡単に言えば,やる気のない推進当事者・推進責任者達を総入れ替えすること以外にはありえないのは,誰が見てもわかることではないか。

 

 各論で若干だけ申し上げておけば,有機農業・農畜産品を有機たらしめている「有機認証」=「有機JAS」の評判がすこぶる悪い。簡単に言えば,有機の精神を忘れて,こまごまとした,コストと手間ヒマばかりがかかるだけの形式的・無意味ルールがあまりに多く,バカバカしくてやってられない,というものだ。この際なので,この「有機JAS」の抜本的な見直しをしてみたらどうか。

 

 それから,上記の「有機JAS」=「有機認証」に関連しての話だが,輸入食品の「有機」表示がどうもあやしい。認証機関は農林水産省が認めた所なら海外機関でもいいことになっているが,その海外有機認証機関を農林水産省は,定期的にきちんとチェックをしているのだろうか。輸入農産物や輸入食品で「有機」と表示されたもののうち,農薬や化学肥料などを使いながら,あるいは遺伝子組換え食品であるにもかかわらず,「有機」と偽装表示しているものは,本当にないのか? ちゃんとウォッチ・チェックしているのか,それを農林水産省はどのように実行しているのか,明らかにしてほしいものである。私の直感は,農林水産省は全く何もしていない=ほったらかしで,日本の輸入有機食品は出鱈目三昧の世界になっている,というものだが,はて,いかがなものか?

 

 それからもう一つ,上記の『日刊アグリ・リサーチ』の記事の中に「有機農業拡大にむけマーケットニーズに対応した一定の産地化・ロット形成・低コスト化をはかるための機械・施設への支援が重要」と書かれた部分がある。私は,これはいかがなものか,と疑問に思っている。この考え方=つまり「産地化・ロット形成・低コスト化」という,いわゆる近代農業的な発想で,規模拡大や手間暇カットや大量生産や大量流通などが,そもそも農業のあり方を歪めてきたのではないかと思うからだ。農業とは本来,地産地消であり,少ロット多品種生産であり,旬のものを旬にいただいて,廃棄物は土に返すのが基本であり,従ってまた,手間暇がかかるものであり,自然が与える資源や気候や風土の範囲内で,自然と融合しつつ,食という人間の営みを粛々と続ける,それが「有機」の思想であり,人間が生きて行くことの基礎であるのではないのか。

 

 この記事にある発想は,まさに「有機農業」の農場化・装置産業化・大資本農業による「有機農業」の包摂ではないのだろうか。農薬や化学肥料は使わないかもしれないが,少なくとも,石油などの化石燃料は大量に使われそうな雰囲気である。そして,その行きつく先は,私は,今の規制改革会議や産業競争力会議が提唱している市場原理主義的農業の構造と,ほとんど変わらないように思えてならない。そして,その(悲惨なと言っていいと思うが)一つのモデルが,あの貧困大国・アメリカに現れていると,堤未香氏は岩波新書の中で論じている。下記にご紹介する堤未香氏の著書をご覧あれ。

 

*岩波新書『(株)貧困大国アメリカ』(堤未香著)

 http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032940429&Action_id=121&Sza_id=B0

(P89101をご覧下さい)

 

 それともう一つ,放射能汚染地域の有機農業をどうするのか? 放射能の汚染は,自然のものを使い自然に溶け込みながら農業を営む有機農業が,最も深刻な打撃を受けている。私は,汚染地域の有機農業は,非汚染地帯へ移転をして,そこで再出発するしかないのではないか,除染など,有機の場合は非有機よりも,より一層難しいのではないか,と思っているのだが,これについてどうなのか。記事を読む限りでは,検討課題にも乗せられていない様子である。そんなことで有機農業が推進できるはずもないではないか。

 

(更に,あまり申し上げたくはないが,有機農業者の一部には,汚染地域でも有機農業は可能だ,汚染された農畜産物でも,有機のものは,大人が我慢して食べればいい,有機農業をやれば汚染や放射線被曝ははねとばせる,等々の言論をふりまいている人達がいるようだ。とんでもない話である。私は,放射能汚染の中で農業をやろうとする有機農業者,汚染物を食べてもいい,少なくとも大人は食べるべきである,などとうそぶく有機農業者を信用していない。時には,彼らのあまりの無神経に,一部有機農業者を第二の「フクシマ・エートス」ではないかと思ったりもしている。本当の有機農業者なら,汚染地域から撤退をし,全国にたくさん存在している耕作放棄地など,他の汚染されていない土地へ移って有機農業を再開するのではないか。命と健康のためにこそある有機農業で,放射能汚染物を提供するなど,とてもできないと,本物の有機農業者なら考えるのではないか。従ってまた,農林水産省や自治体など,行政に対しては,有機農業の汚染地域からの移転・移住の促進・支援に対して,もっと力を入れよ,予算をつけよ,と要求すべきなのではないかと思っている)

 

 有機農業の推進のことに限らないが,日本にはずいぶんと格好だけをつけている,口先だけ・魂入らずの「ちゃらんぽらん族」があまりにも繁殖し過ぎたのではないか。その典型は,あの「口先やるやる詐欺」集団の民主党であり,また,霞が関の農林水産省をはじめとする国家官僚たちであり,また,少なくない地方自治体の役人幹部たちであり,嘘八百宣伝部隊のマスゴミ達であるが,そんな「ちゃらんぽらん族」の支配する国になってしまったからこそ,この20年間,毎年毎年ロクでもないことが起きて,日本がどんどん奈落の底へと転落しているような気がしてならない。

 

 有機農業推進の話から,ずいぶんと話が拡散してしまったが,およそ日本の農業政策ほど,いい加減で,出鱈目で,無責任なものはない。これを改めて,まっとう正常な姿を取り戻すには,相当の「荒治療」が必要になるだろう。有機に限らず,農業の推進体制の抜本見直し=それは簡単に言えば,農林水産省と各都道府県の役人幹部どもを「総入れ替え」せよ,ということを意味しているように思えてならない。

 

*有機農業推進法

 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO112.html

 

*農林水産省「有機農業の推進に関する基本的な方針の公表について」

 http://www.maff.go.jp/j/press/2007/20070427press_5.html

 

*ウィキペディア「アベノミクス」

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%99%E3%83%8E%E3%83%9F%E3%82%AF%E3%82%B9

早々

 

 

2013年9月23日 (月)

子どもの緊急避難を求める署名にご協力を

前略,田中一郎です。

「子どもの緊急避難を求める署名」にご協力くださるようお願い申し上げます。


(別添PDFファイル)2013.10).pdf」をダウンロード


日本国総理大臣 安倍 晋三 殿
衆議院長 伊吹 文明 殿 参議院長 山崎 正昭 殿


原発事故からの復興は、子どもの命の復興(憲法で保障されている健康で文化的な生活を享受する権利)が何よりも最優先されるべきものです。 日本国のリーダーとして未来を担う子どもの命の復興を最優先で実行し、子どもたちの命と未来の為に復興税を使うことを求めます。


① チェルノブイリの教訓をいかして、子ども達を1mSv/年以下の安全な場所に避難させること。


② 昨年6月に制定された「子ども・被災者生活支援法」を即時実行すること。

③ 自主避難者に対する手厚い援助を実行すること。


④ 福島県以外の東日本の子ども達に「被ばくに関する検査」を即時実施すること。


 

これ以上子どもを被ばくさせてはならない!


【署名主旨】

 

福島原発事故から2年以上経過しましたが、原発からは 今も、毎日2億4千万ベクレル(東電発表)の放射能が放出され、私たちは日々、被ばくの不安と戦いながら生活しています。

 

仙台高裁は「子どもたちの生命・健康に由々しい事態の進行が懸念される」「被ばくの危険を回避するためには、安全な他の地域に避難するしかない」と認定しながら、「危険と思えば、自主避難しろ」と無慈悲な判決を下し、子どもたちの訴えを退けました。(20134/24、ふくしま集団疎開裁判の仙台高裁決定)

 

福島の子どもたちの甲状腺検査(事故時18歳以下、36万人対象)は、2013731日で一次検査でさえまだ25.6万人が受診したのみです。その中で二次検査が必要とされた1,280人のうち二次検査を終了した625人の中から「甲状腺がん確定」が18名、「甲状腺がん疑い」が25名というチェルノブイリ事故を上回る規模とペースで深刻な事態が進行中です。(8/20開催の福島県の県民健康管理調査検討委員会)

 

また、茨城県東海村が、未就学児(988人受診/2,100人対象)に実施した「甲状腺の超音波検査」では7人が要精密検査と判定(6/26)されました。福島県外の東日本の子ども達にも「生命・健康に由々しい事態」が広がっており、汚染された大地に住む東日本の子ども達に対しても被ばく検査が不可欠です。

 

子どもたちの健康被害が進む一方で、復興費1千億円が「海亀、ゆるキャラ観光PR」などに使われ、国が自治体に返還要請したという6/24報道に深い憤りを感じます。又、復興特別所得税は年間2千9百億円となり、がれき処理、原子力災害復興費用に使われると聞きます。

 

他方、昨年6月制定された「子ども・被災者生活支援法」は国と復興庁の怠慢により、支援内容や費用が一切策定されていません。深刻な病気が進行中の子どもたちの被害を最小にするため、子どもたちを安全な地に避難させるという国家の義務を今すぐはたして下さい。「子ども・被災者生活支援法」を早急に策定し、私たちの税金を子どもたちの為に使って下さい。

早々

 

2013年9月19日 (木)

韓国への汚染魚輸出の強要は筋違いのジコチュー的態度であり,国内向けの「安全・安心」パフォーマンスである

前略,田中一郎です。

(別添PDFファイルは添付できませんでした)

 

 別添PDFファイルは,先般の韓国による関東・東北8県からの水産物の全面輸入禁止と,それに関連した日本国内の動き(漁業団体,政府など)を巡る報道を集めたものです。これに関して,今回の漁業団体や日本政府の韓国に対する対応は,筋違い,かつ,まことに横柄な態度であり,およそ福島第1原発事故で迷惑をかけた隣国への対応としてはよろしからぬ姿勢ではないかと思われます。以下,簡単にコメントいたします。

 

*東京新聞韓国 8県の水産物 全面禁輸国際(TOKYO Web)

 http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2013090602000233.html

 

(東京電力福島第一原発の汚染水漏れ問題で、韓国政府は六日、福島など八県の水産物輸入を全面禁止すると発表した。これまでは禁止対象が計五十種類に限られていたが拡大することになる。昨年は八県から約五千トンが輸入されていた。 

 全面禁輸となるのは青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の八県。従来の禁止対象は、福島産四十九種、宮城産九種、千葉産二種など県別で違ったが、除外されていたホタテやサバなども含めて八県産の輸入すべてを禁止する。韓国政府は「汚染水が毎日流出していることに国民の不安が非常に大きい。日本政府が提出した資料だけでは今後の状況を予測しづらいための判断」と説明した。)

 

*福島第1原発汚染水問題 8県水産物「禁輸解除」、韓国に要請 水産庁、安全訴え- 毎日jp(毎日新聞)

 http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130917ddm008040032000c.html

 

FNNニュース 原発汚染水問題 全漁連、水産庁に韓国禁輸が解除されるよう要請

 http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00253553.html

 

 <別添PDFファイル:添付できませんでした>

(1)韓国輸入規制と福島沖漁業:直近の動き(水産経済 2013.9.19他)

(2)韓国禁輸に対する漁業団体の動き(水産経済 2013.9.17

(3)水産物全面禁輸 韓国に要請(東京 2013.9.17他)

(4)韓国禁輸 正確な情報発信を 東北知事,政府に求める(東京 2013.9.11

 

*(参考)福島原発「トリチウム薄め海に流す」案の危険性を専門家指摘 (NEWS ポストセブン) - Yahoo!ニュース

 http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130913-00000017-pseven-soci

 

*(参考)技術、国際公募へ 政府がトリチウム除去で有効策なし 県内ニュース 福島民報

 http://www.minpo.jp/news/detail/2013091410876

 

(以下,本文)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.韓国輸入規制と福島沖漁業:直近の動き(水産経済 2013.9.19他)

 まず,業界紙「日刊水産経済新聞」その他で,直近の動きを簡単に見ておく。

 

(水産庁:香川謙二増殖推進部長=韓国に直談判に行った役人)

「日本側は輸入規制の撤回を強く要請したものの,具体的な対応や措置の期限を明言しなかった」

「今後は専門家による協議を継続する」

「(輸入禁止とした8県以外の)その他の県においても、セシウムが微量でも検出された場合は,ストロンチウムの検査証明書を提出するよう求めている。日本側はこうした規制強化が「科学的に根拠が乏しく過剰な措置であるとして,直ちに撤回を申し入れた」」

「協議では、原発港湾内と港湾付近の海水の放射能データや,魚種別のモニタリング調査結果,ストロンチウムの検査結果等も詳細に提供,水産物の安全管理対策や汚染水対策を説明した」

「韓国側はこれに対して,「日本産水産物には放射能汚染の可能性があり,今回の臨時特別措置は正当だ,と述べた」

「規制撤廃の条件を問うても「まずはデータの分析が必要」との回答にとどまり,具体的な対応や措置の期限は明言しなかった」

「一部で報じられているWTOの提訴に関しては,「今回の協議はWTOの手続きで定められたものではない。現時点で提訴の方針が決定した事実はなく,今後の対応について予断を持って申し上げることは差し控る」」

 

(地元漁協)

 JFいわき市漁協,及びJF相馬双葉漁協は,ともに926日より「試験操業」を再開の予定。JFいわき市漁協の対象魚種は,スルメイカやメヒカリなど17魚種。JF相馬双葉漁協は,ミズダコ,ヤリイカ,シラスなど17魚種が対象。

 

*「試験操業」9月下旬にも再開へ 相双、いわき市漁協(福島民友ニュース)

 http://www.minyu-net.com/news/news/0907/news1.html

 

2.(日本政府並びに漁業団体の)態度が悪い

 下記の新聞情報をご覧いただきたい。漁業団体も日本政府も,これが商品を販売する=買っていただく「お客さま」に対して,販売する側が言う言葉なのか,態度なのか,と思わざるを得ないような言動ぶりである。水産物の輸入を禁止したとはいえ,福島第1原発事故による海洋汚染と,その後の日本側のいい加減でずさん極まる対応措置が事態を悪化させたことで迷惑をかけている隣国であるところの韓国に対する,この横柄極まる態度や無礼千万の言動はいったい何なのだろうか。常識があるのなら,まずは韓国に対する心からの謝罪から始まるはずである(水産経済新聞

2013.9.17)。

 

(JF全漁連:岸宏会長・長屋信博専務)

「われわれ漁業者が,国産水産物の流通について設けられた国の厳しい基準を順守し,風評被害の拡大防止に最大の努力をしているにもかかわらず,明確な科学的根拠のないままに行われた韓国政府の措置は,わが国漁業者としても極めて遺憾である」

「国は,今回のこの韓国政府の措置に対し,毅然としてわが国水産物の安全性にかかる信頼回復を図り,一刻も早く禁止措置が解除されるように取組むとともに,諸外国に対しても強力な外交努力により,風評被害対策に万全を期すよう要請する」

 

 ⇒ 上記の発言は看過できないほどによろしくない。生産者団体としては発言してはならない一線を超えているように思える。食べものの供給事業者・生産者は,その安全性については徹底して厳格でなければならない。そうでなければ,やがて消費者から見放される=買ってもらえなくなるだろう。

 また,「国の厳しい基準」というのはウソだし,「風評被害」などという言葉は消費者を馬鹿にした言葉だし(消費者が汚染地産の食品を避けることには合理性がある,この言葉はそれを「馬鹿な行為」とみなしている),「毅然として信頼回復」などというのは,独りよがりの何物でもないし,「外交努力」では食の安全と信頼性の回復はできない。安全と信頼性の回復のためには,文字通り,安全を証明できるものだけをきちんと提供することである。

 従ってまた,漁業団体の中央本部としてなすべきは,かような発言をして韓国に八つ当たりすることではなく,福島県の2つの漁協の試験操業をやめさせ(実際,福島第1原発からの放射能流出と海洋汚染は今も続いており,その近海で獲れる水産物は危険である),それに伴う損害を,韓国への輸出の激減による損害と併せて,加害者・東京電力や事故責任者・国に対して賠償・補償させることである。(更には,汚染地域の漁業者の移転・移住と,他の地での漁業再開の促進支援を行うことである)

 

(鈴木俊一農林水産副大臣)

「汚染水問題で,日本はこれまで韓国の要請に対し,ことのほか丁寧に説明し,データを開示してきた。それなのにいきなりこういう態度で水産物の輸入禁止をしてくることは大変遺憾である。しかも,科学的根拠の乏しい判断なので,一日も早く撤回すべきだ」

 

(水産庁::香川謙二増殖推進部長)

「日本側は,こうした規制強化が科学的に根拠が乏しく過剰な措置であるとして,直ちに撤回を申し入れた」 

 

(村井嘉浩・宮城県知事)(東京 2013.9.11

「(韓国政府の対応を批判し)(日本の)国民感情として納得できるものではない」と語気を強めた。

 

 ⇒ この村井嘉治という男も,3.11福島第1原発事故のその日から,(食の)放射能汚染や放射線被曝に対しての認識や態度がよろしくない(2年半前の新聞をご覧あれ)。県知事がいつまでもかような態度を続けていると,やがて宮城県産食品が全国の消費者・国民から避けられてしまう時が来るかもしれない。生産者にとっても迷惑な話である。

 

3.科学的根拠がないのは韓国ではなくて日本だ:科学が証明すべきは「危険」ではなく「安全」だ

 上記で見た通り,水産庁の役人達は「韓国の輸入禁止には科学的根拠がない」と主張している(それを,わけのわからぬ政治家が「オームのものまね」をし,また,生産者団体がそれをはやしたてている)。しかし,それは全く逆の話で,科学的根拠がないのは韓国の方ではなくて日本の方である。

 

 そもそも,食品を輸入するか否かの判断の基準は,その食品が「科学的にその食品が危険であると証明されているから輸入を禁止する」のではなく,(放射能汚染という危険である蓋然性がある中で)「科学的にその食品が安全であると証明されているから輸入を許可する」ということある。食品を輸出する側が「食の安全」の証明責任を買い手側に逆転・転嫁することは許されない。

 

 そして日本側は,輸入禁止された8県の海域で獲れる水産物の安全性を科学的に立証できているのか,答えはノーだ。

 

(1)水揚される水産物の放射能検査体制が貧弱極まりなく,そのほとんどが未検査状態で出荷されている。水産物は個別個別の個性が強く,ロット検査にはなじみにくい。もっと数多くの水産物を検査しなければ,汚染の実態や全容はとうてい掴みきれない。

 

(2)放射性セシウムだけが検査され,格段に危険な放射性ストロンチウムなど,他の放射性核種は未検査のままである。しかも,それらの核種には規制値さえなく,事実上,わずかの水産物に対して放射性セシウムだけが調べられているにすぎない。調査・検査が貧弱で規制値がないような状態で,どうして安全の「科学的根拠」があると言えるのか。

 

(3)厚生労働省が20124月から実施している水産物への残留放射能規制値の数値=100ベクレル/kgは,値が大きすぎて危険である。特に放射線感受性の高い子どもや若者にとっては,かような値の汚染物は安全などとはとても言えない。

 

(4)海の汚染状況はほとんど調査されておらず,今後の見込みも不明のままである(原子力「寄生」委員会がまもなく着手しそうであることが報道されている)。

 

*汚染水データ集約 規制委、海洋調査を強化  :日本経済新聞

 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1303H_T10C13A9EA2000/

  

 従って,韓国が,日本産の水産物の汚染状況を見極めるまで,輸入を禁止するのは当然のことであり,また,放射性セシウム以外の放射性ストロンチウムなどの検査を要求することも,また,当然のことである。

 

 そもそも,水産庁の嘘八百「似非科学」=自民党ボンクラ政治家や漁業団体が「オームのものまね」をしている「科学的根拠」なるものは,本来は日本側が示すべきものである。海を汚し,水産物を汚し,しかも,その汚れたものを韓国に対して買ってくれ,と言っているのは日本である。売る側が,その売り物が安全であることを示すのは,当たり前のことである。

 

4.輸入食品の安全性をどの水準にするかは各国の主権の問題であり,各国がそれぞれに決めることである

 上記で見たように,日本側がやっていることは,(似非)科学主義の名のもとに,立証責任を買い手側・輸入側に転嫁して,安全とは言えないものであっても買って食え,と韓国に対して強要をしているということである。

 

 しかも,食品の放射能と,それを食べることによる放射線内部被曝については,ここまでなら「安全」という閾値は存在しない。従って,どの程度の水準で「我慢するか」を決めるのは,それは輸入するそれぞれの国の「国家主権」事項であって,輸出する側が,似非科学や屁理屈で,それをねじ伏せるような話ではない。韓国に輸入を拒否をされたら,それは致し方のないことである。

 

5.この日本側の韓国に対する傲慢な態度こそが,TPPやWTOなどの国際市場原理主義の正体である。

 実は,今回のこの日本側の韓国への傲慢な態度こそが,TPPやWTOにおける貿易のやり方や「食の安全」の確保の「ルール」そのものである。簡単に言えば,国際間で非常に低いレベルで,さしたる「科学的根拠」もなく,取引される商品の安全性に関して「規制値」や「禁止事項」「遵守事項」などを決めておき,それを超えたら(超えるような厳しい措置をとる場合には),輸入規制措置をする側・輸入を拒否する側がその根拠を科学的に示せ,という,「証明責任の逆転」が「ルール化」されているのである。食べ物は売る側が安全であることを証明しなければならない,証明できていなければ買わない(輸入しない)自由がある,こんなことは当たり前のことだが,それがWTOやTPPなどの国際市場原理主義の下ではひっくり返されて,買う側・輸入する側が,危険であることを科学的に証明させられる仕組みになっている。

 

 国際市場原理主義にとっては,「食の安全性」などは「非関税障壁」そのものであって,百害あって一利なし,WTOやTPPなどの国際協定,あるいはコーデックス委員会などの国際機関で決めた以上のことは,国際取引の邪魔だから一切認めるな,というのが本音である。つまり,企業が儲けるためには,毒まみれだろうが,危なかろうが,文句を言わずに買って食え,というのが,国際市場原理主義の考え方だということである。(実際,途上国など,世界の多くの国では,食の安全性や危険性についての分析や調査をする体制は存在していない)

 

 そして,上記で申し上げたように,守られるべきとされる「食の安全」に関する国際間ルールは,各国の食の事情その他を無視して,供給する多国籍大企業や食糧輸出国などの利益を損ねないように,非常に低い水準で決められている。それがいやだったら,危険であるということを,いやなお前が証明しろ,これが「ルール」である。しかし,冗談ではない,食べものの安全性は,売る側・供給する側が証明しろ!! である。何が国際ルールだ,こんなものは「インチキ科学主義」にすぎないのだ。

 

6.水産庁は,福島・宮城・茨城の各県沿岸・沖合で獲れる水産物の汚染状況と安全管理について消費者・国民に説明せよ

 上記で見たように,水産庁の香川謙二増殖推進部長は次のように語っているという(水産経済 2013.9.19)。

「協議では、原発港湾内と港湾付近の海水の放射能データや,魚種別のモニタリング調査結果,ストロンチウムの検査結果等も詳細に提供,水産物の安全管理対策や汚染水対策を説明した」

 

 何故,輸出先の韓国にはこのように説明して,日本の消費者・国民にはきちんと説明しないのか。つまらぬ「安全・安心キャンペーン」などをやっているヒマがあったら,水産物の安全性について,肝心なことをきちんと説明せよ。

 

7.政府・水産庁,県知事,漁業団体らの発言の矛先は,実は韓国ではなくて日本の消費者・国民だ

 さて,最後にもう一つ,この一連の関係者の言動についてポイントを指摘しておきたい。それは,輸入禁止の「科学的根拠」がない,毅然とやれ,日本は「食の安全」に対して厳しい対応をしているのに韓国の態度は何だ,云々は,実は,韓国に対しては,というよりも国際的には通用する話ではなく,関係者たちはそれを重々承知の上で,実は日本国内の消費者・国民に向かって,「韓国の今回の輸入禁止措置はとても変で極端なことだから,惑わされないでください,我々は頑張っていますから,引き続き8県沖で獲れる水産物を買って下さい」と言っているのである。

 

 彼らのやりたいこと,やろうとしたことは,日本の消費者・国民に「(韓国に)右にならえ」をしてもらいたくない,という,その一点に尽きると言ってもいいかもしれない。だから,少なくとも日本国内では,なりふり構わず韓国を悪者にして,その衝撃的な輸入禁止措置=汚染海域からの水産物は,当面は一切買わない,が国内に波及しないよう予防線を張っていると考えていいだろう。まさに,この態度の悪さと強引さは,国内向け(安全・安心)パフォーマンスなのだ。

 

 この問題に関する正解はただ一つ,放射能汚染物は買ってはいけない,食べてはいけない,である。少なくとも,福島・宮城・茨城の三県の沿岸・沖合で獲れる水産物は潜在的に危険である。特に水産物は,放射性セシウムだけに注目していても,安全性などおぼつかない。日本の今の食品の脆弱な検査体制では,この危険性を排除することは到底できないし,政治も行政も,水産食品流通業者も,そして場合によっては漁業者も,食の安全に対して無責任である。

 

 安心できない時は,買わない方が無難である。無用の放射線内部被曝は避けなければならない。恒常的な低線量内部被曝を続けることは非常に危険なことである。悲しいかな,東日本の太平洋で獲れる水産物は,もはや安全とは言えなくなってしまっているのである。怒りは韓国に向けるのではなく,東京電力をはじめとする原子力村に対して向けよう。

早々

 

2013年9月15日 (日)

「特定秘密の保護に関する法律案」を白紙撤回せよ(これは民主主義や国民主権を破壊する現代の「治安維持法」だ)

前略,田中一郎です。

下記は,「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に関する意見です。ご参考までに。

 

(参考)「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見募集について

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060130903&Mode=0

 

(下記に関係する新聞記事を再度添付しておきます)

● 秘密保全法案の「闇」(2013817日付東京新聞)

 http://blog.livedoor.jp/shootque/archives/51908163.html

 

● 刑事司法改革 盗聴の制限 大甘に(2013829日付東京新聞)

 http://toracyan53.blog60.fc2.com/blog-entry-5363.html

 

●秘密保護法案の危うさ あの国家秘密法と同じ!?(東京新聞:こちら特報部) 播磨

 http://www.asyura2.com/13/senkyo153/msg/771.html

 

(以下は,田中一郎の個人的な意見です)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今般パブコメに付された「特定秘密の保護に関する法律案」に反対する。かような時代錯誤で反民主主義的な法案を策定しているヒマがあったら,現在,不十分なままに放置され,その精神が骨抜きにされてしまっている「情報公開法」を,もっと国民のために機能する法律に書き変える取組を強化せよ。政府のやることを合法的に露骨に隠してしまえ,とする今回の「秘密保護法」など,許されるものではない。有権者・国民が持つ,政府や行政のやることを具体的に「知る権利」=参政権の一種,の権利侵害以外の何物でもない。日本国憲法違反である。

 

1.政府が行うことは,すべて原則「公開」されなければならない。それが,安全保障であろうが,治安問題であろうが,外交であろうが,基本は「ガラス張り」でなければならない。そうしなければ,政府が行うことを多くの有権者・国民がチェックし,その善悪・よしあしを検証することができなくなる。政府が「秘密保護」の大義名分の陰に隠れて,ろくなことをしないことは,これまでの戦後の歴史を顧みれば明らかであって,政府がなすことはすべて正しい,政府は間違うことはない,ことを前提にしたような「秘密保護法」などは認められるはずもない,民主主義政治の破壊そのものだ。「秘密保護」とは,「秘密とは何か」を指定する者たちによる,その権限「乱用」と表裏一体であり,権限を持つものによる反対論者の排除のために使われることも自明である。「知らしむべからず,寄らしむべし」,民主主義を否定する政治=有権者・国民を統治し,差配する歪んだ思想の現れに他ならない。

 

2.仮に,一時的に「交渉中」などを理由に,有権者・国民に詳細を知らせないことがあるとしても,その「一時的」の期間は極力短くすべきであるし,その是非については,政府から独立した組織によって,検証され是非が正される必要がある。そして,公開されたあかつきには,多くの有権者・国民の批判や検証に付されるべきである。

 しかるに,この法案では,「秘密保護」の期間を,ほぼ永久的に長期化できるような内容になっている。この法案を提出した現政権にある政治家達や霞が関の官僚達は,自分達が永久にその政治・行政を牛耳ることができる特権階層か何かと勘違いをしているのではないか。日本国憲法が定めるように,政治はすべて有権者・国民のためになされるのであり,それが担保されるためには,政治家や官僚達が,具体的に何をしているか,何をしたか,何をしようとしているか,が明らかにされ,それが多くの批判や検証にさらされなければ,「有権者・国民のため」は「絵にかいた餅」となってしまうだろう。特定の政治家や官僚達だけに,国の秘密と称することを独占させるわけにはいかない。それは反国民的政治や行政の温床となり,また,ろくでもないことの隠蔽の巣になることは明らかである。

(例えば危険極まりない原発・核燃料施設の実態を隠蔽してきたのは政府だったではないか,更にはまた,売国奴協定などと言われているTPPの交渉を秘密にしてしまい(締結後も4年間秘密),有権者・国民にその内容を知らせぬままに事を決めようとしているのも現政府である)

 

3.そもそも「秘密」の範囲指定が抽象的で,あいまいで,いくらでも政府の権限者の恣意によって拡張が可能であり,場合によっては,政府・政権にとって都合の悪いものは,すべて秘密にすることができるような,そんな「歯止め」の利かない,どうしようもない悪法案である。

 

4.既に日本には,政府や行政に関する「秘密保護」の法的な規定は存在している。むしろ過剰なほどの規定が存在し,「情報公開法」「情報公開原則」に抵触する程度にまで,政府や行政の情報公開度合いは低い。何をいまさら,更に「秘密保護」が必要なのか。むしろ必要なのは,その逆,つまり,冒頭でも述べたように,政府や行政の「情報公開」の徹底だ。

 

5.この「秘密保全法」に違反することに対する罰則規定が異常である。懲役10年など,もはや人権侵害・政治参加弾圧そのもので,およそ民主主義国家がなすべきことではない。政治は,有権者・国民を排除して,特定の特権者でやればよいとする考え方だ。

 加えて,この法案では,その「特定秘密」なるものの取得の仕方までをも罰則付きで規定する他,その取得行為の未遂・共謀・教唆なども処罰の対象にしているというから,これはもう有権者・国民の政治活動や社会活動に対する「脅威」「恐怖」そのものとなってしまう。罰則に値する行為の定義,処罰する人の範囲の規定などが,あまりに漠然としていること,広範囲なことと併せて考えれば,これは戦前の悪名高き「治安維持法」を再現させるものと言っていいのではないか。間違いなく,権力者たちの恣意が働くに違いない。

 罰則強化の規定など,全く不要である。現状の各種法律の規定さえ,その規定を限定する方向で,つまり情報公開を徹底させ,政府などの秘密主義を矯正する方向で再検討すべきことだ。

 

5.更に憂慮すべきことは,上記のきつすぎる罰則規定が,おそらく政治や行政における国民の参加を萎縮させ,一種の「暗黒政治」ないしは「抑圧的」な雰囲気をつくりだすであろうことは十分に推測できる。その結果,政治権力・政権は,有権者・国民からの権力チェックをまのがれて,ややもすれば独善的に暴走し,国の進路を誤ってしまう可能性が高まるだろう。うっとうしい限りである。まさに権力の「威圧」によって,有権者・国民の知る権利を奪い,異議申し立てができぬような状態を創り上げること,ここにこの法律の最大の目的があるようだ。

 

6.特定機密を扱える人間を「適正評価」する,というのも重大な人権侵害である。ある政府の権力を握った人間達が,行政の一般職員や一般民間人を,この人の素生や思想や言動はOK,こっちはダメ,などと「色分け」することなど,およそ許されることではない。思いあがるのもいい加減にしていただきたい。これは,「秘密保護」を口実とした思想選別・人格選別であり,時の権力に都合のいい人間を重宝せんとする,いかにも歪んだ,汚らしい発想が見え隠れしている。まさに権力の乱用だ。

この「人格選別」の結果は,およそ「秘密保護」取扱に留まることなく,行政職員を中心に,有権者・国民が支配権力者たちによって「色分けされていく」という,恐るべき社会情勢をつくりだしてしまうだろう。なすべきことはあべこべ,であって,支配権力や政治家・高級官僚たちこそを,有権者・国民が「色分け」し,選別しなければならないのである。

 

7.今回の「秘密保全法案」でもう一つ重要なことは,日本版国家安全保障会議(NSC)の創設や集団的自衛権の行使と一体的に進められていることだ。また,この法案は,日米相互防衛援助協定(MDA)に加えて,「2007年に米国と締結した軍事情報包括保護協定(GSOMIA)により、米国並みに厳罰を科す秘密保持体制をつくるよう米国に要請されたのがルーツ」とされている。

 簡単に言えば,この法律は,米国の配下にあって,米国に隷属しながら,日本という国が「(米国のために)戦争ができる国」を目指そうというものに他ならない。こうした対米隷属の本音が他方において隠されているという,もう一つの重大な欠陥があることも看過できないことである。

 

8.上記以外にも,たとえば政府や行政のよからぬ行為を裁判に訴えようとした場合に,「秘密保護」の壁に突き当たって証拠提示ができないとか,少し前に発覚した自衛隊による自衛隊批判者の密かな調査などを禁止できなくなるとか,この法律は,日本の民主主義の政治や,適正な行政の実現に,大きな障害物となって現れてくるだろう。まさに,日本という国の形を破壊する天下の悪法である。それを今回,わずかなパブコメ期間を設けて,アリバイ的に有権者・国民の意見を聞いた形をとり,強行突破で法制定に邁進しようとしているのである。

 修正の余地などない,全面白紙撤回せよ。

以 上

 

2013年9月12日 (木)

食べものの放射能汚染(1) (近況報告:厚生労働省公表の検査結果から)

前略,田中一郎です。


1.はじめに

このレポートは,毎日,厚生労働省が発表している食品の放射能汚染(放射性セシウム汚染)の検査結果の近況と,若干のマスコミ情報についてのコメントです。

 

(厚生労働省が発表する食べものの放射能汚染の検査結果については,下記の「厚生労働省:報道発表資料」のサイトからご覧になれます。また,農林水産省のHPから「食品安全エクスプレス」というメールマガジンを申し込むと,誰でも毎日,(放射能汚染以外のことも含む)食品の安全に関する情報を得ることができます。更に,農林水産省のHPでも農林水産物の放射性セシウム検査結果などが見れます:時折,ご覧になられることをお勧めいたします)

 

*報道発表資料|厚生労働省

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/


*農林水産省-東日本大震災に関する情報

http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/index.html#01


 <別添新聞記事:一部添付できませんでした>
(1)被災漁船,気仙沼,沖縄,尖閣を経て福井沖で回収(河北2013.8.31
(2)被ばく不安,果樹農家(東京新聞 2013.7.30
(3)食卓の魚は大丈夫か(毎日新聞夕刊 2013.9.3

 

2.厚生労働省HP「食品中の放射性物質の検査結果について」から(放射性セシウムのみの検査)

(1)2013911日 食品中の放射性物質の検査結果について(第725報)

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000022730.html

 

岩手県一戸町 ナラタケ 野生キノコ  36ベクレル/kg

大阪府東大阪市 レンコン 流通品(茨城県産)8ベクレル/kg

福島県西会津町 干しゼンマイ 製造・加工場所 19ベクレル/kg

福島県二本松市 梅干し 製造・加工場所  54ベクレル/kg

福島県川内村  乾シイタケ 施設栽培   9.5ベクレル/kg

 

<コメント>

岩手県一戸町といえば,県都盛岡市よりもずっと北の,青森県との県境にある町です。そこの天然キノコから無視できない放射性セシウムが検出されています。天然キノコや山菜・タケノコは,政府や自治体などが行っている環境放射能モニタリングなどよりも,ずっとずっと信頼が置ける放射能汚染モニターです。こんな北の地域にまで汚染が広がっていることはショックです。北海道を除く東日本産の天然キノコは食べないように致しましょう(ちなみに規制値超えの天然キノコの北限は青森市,南限は長野県の南牧村・佐久市あたりです)。

 

 東大阪市で流通していた茨城県産のレンコンから放射性セシウムが検出されているのも少しショッキングです。検出値が8ベクレル/kgと値が小さいので,やや安堵いたしますが,しかし,わずかばかりの検査しかしていませんから,たまたまその検査品の値が小さかっただけである可能性もあります。茨城県はレンコンの産地ですが,要注意だと言えるでしょう(レンコンは放射能汚染が懸念される池や沼に生息していますから,本来であれば,徹底した池や沼やレンコンの検査がなされるべきです)。

 

 福島県産の3つの食品からの放射性セシウム検出は予想通りのものと言っていいでしょう。放射能で汚染された地域で獲れる,キノコ・山菜・タケノコ,乾燥された食品,梅干し・梅加工品などはリスクの高い食品です。福島県郡山市で,汚染されていないダイコンを干して干しダイコンにしたら,3千ベクレルを超える汚染をしてしまったという話も,ついこの間のことでした。川内村の乾シイタケは「施設栽培」である点にも留意して下さい。施設だということは,空間からの汚染ではなく,キノコ栽培用のほだ木か栽培土が汚染されていた可能性が高いということです。ということは,産地に関わらずキノコは危ないということを意味します。  

 

*福島県『郡山市で、大根を軒下に干したら3,421ベクレル-kgになりました』 それだけ空気が汚染されてるってことです。 日々雑感

 http://hibi-zakkan.net/archives/19548069.html

 

(2)201394日 食品中の放射性物質の検査結果について(第720報)
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000021665.html

宮城県栗原市 ツキノワグマ肉 野生鳥獣肉(非流通品)240ベクレル/kg
宮城県七が宿町 イノシシ肉  同 上        290ベクレル/kg
栃木県那珂川町 イノシシ肉  同 上       140ベクレル/kg
山形県小国町 エゾハリタケ 野生キノコ(非流通品) 10ベクレル/kg
福島県福島市 イワナ   (横川:阿武隈川)   140ベクレル/kg
福島県白河市 梅漬(小梅)  製造・加工場所   14ベクレル/kg
福島県福島市 ドライフルーツ(桃)製造・加工場所 11ベクレル/kg

 <コメント>
 クマやイノシシなど,野生の動物は,放射能汚染や放射線被曝の影響を検証するための貴重なサンプルです。未だに政府・霞が関各省・自治体にその意識が乏しいのは嘆かわしい限りです。汚染・被ばくの隠蔽体質を告発されてもいたしかたないでしょう。また,上記でも申し上げましたように,天然キノコは政府や自治体などが設置しているモニタリングポストなどよりも,よほど信頼性が高い放射能汚染状況のモニターです。山形県小国町といえば,福島県からはかなり離れた山形県と新潟県との県境の町ですが,こんなところのキノコからも無視できない放射性セシウムが検出されるのはショックです。山形県=安全安心ではないのです。


 東日本の汚染地域では,イワナをはじめ,淡水魚や汽水域に生息する魚介類(例:ウナギ)は口にしない方がいいでしょう。キノコ・山菜,ベリー・かんきつ類,乾燥食品,魚介類,内臓肉などと並んで,放射能が蓄積しやすい食品です。また,梅加工品やドライフルーツなど,放射能がたまりやすい素材を使った加工品・乾燥品についても注意が必要であることが上記で分かります。それから上記には書きませんでしたが,福島県産の多くの海産物からは放射性セシウムが検出されておりますし,宮城県産の海産物についても放射性セシウム検出が散見されます。放射性セシウム(ガンマ核種)のあるところ,放射性ストロンチウム(ベータ核種)やプルトニウム(アルファ核種)など,他の危険な放射性物質も存在していると言われます。特に,海産物については放射性ストロンチウム汚染が強く懸念されています。要注意です。

 

 数字の値が小さいのは,さしあたりホッとさせられますが,安心はできません。たまたま測った数少ないサンプルの値が小さかったにすぎない可能性があるからです。安全性の証明など,全くできておりません。

(3)201393日 食品中の放射性物質の検査結果について(第719報)

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000021134.html

北海道札幌市  桃  流通品(福島県産)8.5ベクレル/kg
北海道札幌市  梨  流通品(福島県産)1.7ベクレル/kg
北海道札幌市 ナメコ 流通品(山形県産)1.6ベクレル/kg
岩手県軽米町  牛肉          15ベクレル/kg
岩手県滝沢村  牛肉          12ベクレル/kg
岩手県奥州市  牛肉          16ベクレル/kg
茨城県     牛肉 栃木県産     15ベクレル/kg
福島県南相馬市 小麦          46ベクレル/kg


 <コメント>
 牛肉については,常々申し上げていますように,検査されている食品の大半を占めています。単純に牛肉の検査ウェイトだけを見た場合,異常と言えるでしょう(牛肉の検査が多すぎるということではなく,牛肉以外の検査が,数も品目も極端に少なく,検査が特定の産品に偏っているということです)。ところで,その牛肉についてですが,
岩手県産の牛肉からは,時折,上記のように無視できない放射性セシウムが検出されます。飼料に問題があるのかもしれません,牛肉の検査機器は検出限界値が1015ベクレル/kgのものが多いようなので,きめ細かな検出ができていない様子です,上記のように,放射性セシウムが検出された牛肉ですが,同じ牛の内臓肉はもっと多くの放射性セシウムや,その他の放射性物質を含んでいる可能性があります。しかし,内臓肉は検査されたためしがなく(少なくとも検査結果は公表されたためしがない),牛肉トレーサビリティ制度の対象外にされ,まるで闇から闇へ消えていくように流通しているようです。内臓肉=いわゆるホルモン焼き等はお勧めできません。


 
 一方,南相馬市の小麦の放射性セシウムは非常に気になります。これはもう安全とは言えない数値でしょう。何故,南相馬のようなところで麦などを作っているのでしょうか。放射性セシウム以外の放射性物質についても気になります。農林水産省は,農作物に放射性セシウムが滞留するのはコメが最も高く,移行係数(土壌汚染からどの程度作物へ汚染が移行するかの割合)が最高で0.110%と見ておけばいいようなことを言っております。しかし,私がここ2年間くらい食品の汚染状況を見ている限りでは,コメだけでなく,ムギ,ソバ,大豆,いも類などが放射性物質をため込みやすい性質があるようで要注意かと思われます。また,麦についてはビール麦=二条大麦はどうなっているのでしょう。福島県は本宮市にアサヒビール工場があります。ここの工場のビールの原料の大麦や水などの放射能汚染はどのようにチェックされているのでしょうか? アサヒビール本宮工場のHPを概観するだけでは分かりません。

*福島工場 行こう!工場見学!!  アサヒビール
 http://www.asahibeer.co.jp/brewery/fukushima/

 一方,札幌市の検査結果は,いわゆる流通過程にある商品の抜き取り検査結果です。札幌市がそのような検査を行っていることは高く評価されていいでしょう。何故なら,他でやっている自治体が極度に少ないからです(東京都くらい?)。結果は,値は小さいですが福島県産の果実と山形県産のキノコから放射性セシウムが検出されました。イエローカードだと言っていいと思います。

(4)201392日 食品中の放射性物質の検査結果について(第718報)

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000021134.html

青森県八戸市 マダラ  三沢市沖    4.2ベクレル/kg
茨城県    ウナギ  涸沼      11ベクレル/kg
茨城県    シラウオ 霞ヶ浦(西浦) 17ベクレル/kg
茨城県    ワカサギ 同 上     16ベクレル/kg

 <コメント>
 青森県産のマダラが放射性セシウムで汚染されていることは,既にだいぶ前に報道されています。ちなみに,海産魚の中で放射性セシウムがよく検出されるのは,マダラの他に,スズキ,カレイ・ヒラメ,カスベ(えい),海底魚(アイナメやメバルなど)などが挙げられます。これらの海産魚は,福島・宮城・茨城沖合で獲れるものに限らず,広く東日本の太平洋域に広がっています。それから,茨城県産の魚介類についても,福島県産ほどではありませんが,多くの魚介類に放射性セシウムが検出されています。私は,茨城県沖や宮城県沖についても,福島県沖と同様に,当分の間は漁業をやめるべきであると考えております(当然,加害者・東京電力や事故責任者・国が漁業者に万全の賠償・補償をし,移転・移住の支援を行うべきです)。


 

それから,淡水魚・汽水域魚については,上記の通り危険信号です。関東産・東北産・東京湾産のウナギもまた放射能汚染が検出されています。資源の面から見てもウナギは絶滅の危機にあり,当分の間,食するのをやめましょう。

(5)2013829日 食品中の放射性物質の検査結果について(第716報)

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000019311.html


 
神奈川県   牛肉 北海道川上郡標茶町産 56ベクレル/kg
福島県南相馬市 かぼちゃ         16ベクレル/kg
同 上     オクラ          9.4ベクレル/kg
同 上     ニガウリ         11ベクレル/kg
福島県南相馬市 カボス          65ベクレル/kg


 <コメント>
 神奈川県の,おそらくは流通過程での抜き取り検査で発覚したのであろうこの牛肉の放射性セシウム汚染はいったいどうしたことでしょうか。規制値を下回っているとはいえ,これは危険物です。しかし,我々が分かるのはこれだけのことで,何故,神奈川県はこれについて詳細を発表しないのでしょう? 検査したのは「県衛生研究所」とあります。そもそも,どこの市町村で抜き取ったのかもわからないし,それ以上に,産地が北海道の川上郡標茶町(釧路市の北,丹頂ヅルの飛来地)だというのですから,何故? と聞きたくなります。北海道の牛の肉が何故こんなに汚染しているの? 何故? 何故? これははっきりさせないといけないことではないですか? だって汚染している牛は,この発見されたものだけではないかもしれませんから。

 それから南相馬市の野菜類の汚染ですが,やはり上記の小麦の汚染と同様に,南相馬市での農業には無理があるように思えます。カボスなどは危険ゾーンの汚染度です。これだけの汚染が検出されると,作付をしている生産者・農家の放射線被曝が非常に心配になります。「食べて応援,買って支援」することは,生産者・農家を恒常的な低線量被曝(外部被曝・内部被曝=特に呼吸被ばく)の状況下に縛り付けることを意味するのです。何の「支援・応援」なのか,わかりません。 

3.昨今の新聞情報から
(1)被災漁船,気仙沼,沖縄,尖閣を経て福井沖で回収(河北 2013.8.31

http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/nation/incident/20130829k0000e040263000c.html


 ネット上の記事は毎日新聞の同主旨のものです。驚くべきか,東日本大震災により気仙沼沖で行方不明になった漁船が,太平洋をぐるっと回って,沖縄  尖閣諸島沖  経由で日本海の福井県沖にたどりつき,ようやく回収されて気仙沼に帰ってきたという話です。美談として記事を読むのはいいのですが,漁船がそうなら,汚染水も,魚類も,プランクトンやその他の海洋生物も,同じように海を広い範囲で動きまわっていておかしくないでしょう。少し前には,福島県沖のヒラメが,北海道の東・太平洋沿岸で発見されたとの業界記事を見たことがあります。海に「境界」はありません。このままでは,日本の海は東京電力に殺されます。

(2)被ばく不安,果樹農家(東京新聞 2013.7.30) 
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/tohokujisin/fukushima_report/list/CK2013073002000171.html

「除染作業が進む中で、年間一ミリシーベルト以下の環境に戻すのは難しいことがわかってきた。ゼネコン頼みの除染は、技術と費用の両面で行き詰まったのだ。別の方策を探るときだろう」との記載があります。

 全くその通りです。マスコミの記事が,生産者・農家の農作業に伴う放射線被曝への懸念を取り上げるのは珍しいと言えます。東京新聞らしいと言っていいでしょうか。(この記事は東京新聞の福島特別市局の記事のようです。ようやく東京新聞も福島に出先をつくったようです)

(3)食卓の魚は大丈夫か(毎日新聞夕刊 2013.9.3
 http://mainichi.jp/feature/news/20130903dde012040014000c.html

 記事に出てくる2人の学者=神田穣太東京海洋大学教授と水口憲哉東京海洋大学名誉教授の話には耳を傾けてもいいかもしれません。でも,私には,素直に「はいそうですね」とはとても言えない不信感があります。そもそも,魚介類・水産物の汚染検査や生態系調査が全く不十分なのではないですか? そんな中で,あまりにはっきりと安全を言う人,信用し難いですね。少なくとも,下記のような飲食にかかる放射能検査・汚染対策についての抜本改善を,大学教授の皆さんにも提言していただきたいものです。

(神田穣太東京海洋大学教授の発言を抜粋)
「警戒すべきはセシウムだけではない。骨への蓄積が懸念されるストロンチウム90が港湾内で検出されている。神田教授によると、減少ペースはセシウムよりストロンチウムの方が遅い。「港湾内に流れ込むセシウムの量が1日30億ベクレルとすれば、最低でもその3倍のストロンチウムが流れ込んでいる。セシウムより土に吸着されにくいので、湾内に流出しやすいからかもしれません」。原発敷地内の地上タンクに保管中の汚染水には特に高濃度のストロンチウム90が含まれる。地上タンクについては8月20日、300トンもの汚染水漏れが発覚した。「まだ魚への影響が出ていないとしても、ストロンチウムのモニタリングを強化すべきだ」と神田教授は強調する。」

(水口憲哉東京海洋大学名誉教授の発言を抜粋)
「「小さな子どもには国の基準値の10分の1、1キロ当たり10ベクレル以下の魚を食べさせた方がいい」と言い、現在は流通していない福島県を除いて、主に隣県の宮城、茨城の底魚の数値に注意すべきだと説く。」

<食品の放射能検査について,少なくとも現段階で取られるべき行政的措置>

現状でのいい加減極まる食品の残留放射能検査体制を抜本的に改め,消費者・国民の命と健康をしっかり守るため,少なくとも下記のような行政的対応が必要不可欠かと思われます。科学的な実証的根拠もなく飲食の「安全・安心キャンペーン」が繰り返され,かつ加害者・東京電力や事故責任者・国の賠償・補償負担を軽減する「本当の目的」が隠蔽されたまま,「食べて応援,買って支援」などのインチキ宣伝がなされている今の異常な事態は早期に解消し,事故後2年半経過した今を持ってしても,依然として無用の被曝の危険にさらされている消費者・国民に,「本当のこと」を伝えていく必要があると思われます。

(1)検査数や検査品目を抜本的に増やすこと(現状は検査対象が牛肉やコメや特定の水産物などの特定品目に極度に偏っていて,かつ検査件数が少なすぎるため(全流通量の0.1%未満),食品の汚染状況の全体像は分からない。少なくとも全流通品の半数以上でロット検査を行うこと,生産者段階だけでなく流通過程での抜き取り検査も抜本的に拡大すること,加工食品や外食の検査を業者任せにせず,行政が主体的に計画的に実施すること)

(2)放射性セシウム以外の放射性物質についても綿密な検査を行うこと(特にベータ核種=放射性ストロンチウム等やアルファ核種=プルトニウム等)

(3)検査状況の第三者による抜き打ち検査,検査に関連した利益相反の排除,検査サンプルの抽出の適正性確認など,検査の適正化をはかる仕組みを導入するとともに,検査結果を含め,全ての事項を情報公開すること(検査結果は原則表示する)。

(4)学校給食は,すべての放射性物質について,いわゆる「ゼロベクレル」とすること。放射性セシウムだけではない。

(5)検査体制(人員・検査機器・予算等)の抜本的な拡充を図ること

(6)飲食のみならず,その周辺(食器,肥料,飼料,木材・燃料,医薬品,皮革,調味料,化粧品,食料助材(ぬか等)等)も検査すること。当然,検査体制拡充も必要。

(7)飲食にかかる規制値をさらに引き下げるとともに,子どもなどの放射線感受性の高い世代へのより厳しい規制値を定め,それにより被害を受ける生産者や流通業者・加工業者などの関係者に対して万全の賠償・補償を行うこと(国が立て替えよ)

(8)食品偽装や規制値を超える汚染食品を意図的に流通させたものに対する厳しい罰則を定めること(懲役刑よりも食品表示偽装を無意味にする厳しい罰金等の経済的制裁が重要)

 

4.厚生労働省が定める飲食品の放射能残留規制値について

 別添に厚生労働省が定めた飲食品の放射能残留規制値についての説明ペーパーを添付しておきました。これまでも,多くの方々から様々な批判がなされてきましたが,厚生労働省はそれらの批判に馬耳東風で,全く変えようとはいたしておりません。原子力ムラ一族は,常に自分達のやることについては,いかなる批判に対しても「馬耳東風」です。つまり「馬」だということです。以下,復習の意味で,この飲食品に係る放射能残留規制値の問題点を列記しておきます。

 

(1)まずは「耳タコ」ですが,この規制値に関して決定的に問題な点を申し上げておきます。①規制値の絶対値がまだまだ大きすぎる(そもそも,この程度なら仕方がないという経験科学的・実証的根拠がない),②放射性セシウムや放射性ヨウ素以外の規制値が設けられていない。放射能は放射性セシウムだけではない。厚生労働省の説明では,放射性ストロンチウムやプルトニウムなど,若干のその他の放射性核種は考慮していると説明されていますが,これもまた経験科学的・実証的根拠がなく非科学的です。およそ放射性ストロンチウムなどのベータ核種や,プルトニウム・ウランなどのアルファ核種に対して,規制値を設けない国など,どこにもないでしょう。いずれも内部被曝が強く懸念される放射性核種です),③飲食の検査体制が貧弱なまま放置され,この規制値が厳格に守られることを担保する仕組みがない,検査されているのは,生鮮食品が主で,それも生産地域での検査がほとんどです。都市部などで流通している食品の抜き打ち検査などは,全くと言っていいほど実施されておりません。また,外食や加工品の検査は業者に丸投げです。

 

(2)放射線被曝線量限度を1mSvにしたといいますが,それは飲食からの内部被曝だけについてそうしたのであって,それ以外の呼吸による内部被曝や外部被曝(あるいは傷口から放射能が体内に侵入してくる場合の内部被曝)は度外視されています。これでは,総被曝量は1mSvを超えてしまいます。(「新たな基準値設定の考え方」の欄に「線量の上限を1mSvとした」とあります)

 

(3)「食品区分」がいい加減である。日常的に食べる量が多い主食の米や,パン・麺用の小麦,あるいは飲料水など,食べる量に対応して規制値を厳しくしなければならないにもかかわらず,きめ細かな規制値設定がなされておりません。

 

(4)胎児・乳幼児・子ども・若者・女性など,放射線感受性の高い世代に対する特別の配慮がほとんどありません。配慮がないどころか,厚生労働省の説明に書かれている「ベクレル/kg」の年齢別の限度値の表をご覧いただければお分かりのように,年齢が低いほど食べる量が少ないので,kg当たりのベクレル値(放射性セシウム汚染度)は大きくてもいい(例:19歳以上の大人男子=130ベクレル/kg1歳未満=460ベクレル/kg,がそれぞれの年齢別「限度値」),という,信じがたい考え方に基づいて規制値を決めています。

 そして,多くの人々から子供の内部被曝への懸念が示されたことに形だけ対応するために,ベビーフードや学校給食を意識しながら,乳児用食品と牛乳についてのみ,一般食品の規制値の1250ベクレル/kgを規制値としました。しかし,この数値でも,驚くほど数値が大きすぎます。乳幼児や子どもの食べ物に,この数値はあり得ないでしょう。50ベクレル/kgの飲食を続けていれば,やがて体内には,数千ベクレル~数万ベクレルの放射性物質(放射性セシウムだけではありません)が蓄積・滞留してしまうでしょう。とんでもない話です。

(決め方も,経験科学的・実証的根拠がなく,まるで「エイヤー」と決めています)

 

(5)お茶(緑茶)については,飲む状態で飲料水の基準が適用されるとあります。飲料水の基準=10ベクレル/kgの値が高すぎることと併せて考えると,これもとんでもない話で,数百~1千ベクレル/kg程度の汚染されたお茶っ葉を使ってお茶を入れてしまう可能性があります。また,お茶っ葉をそのまま食べる(たとえば粉末茶を振りかける,宇治ミルク金時などのかき氷,抹茶入りのカステラ等)場合は,その汚染物をそのまま食するわけですから,冗談ではないことになります。そもそも,緑茶はこうして飲食せよ(お湯をかけて飲む以外はやめろ!),と指示命令されているようで不愉快です。余計なお世話です。日本の茶文化を破壊するなと申し上げたいですネ。

(まだありますが,このへんで終わりにいたします)

 

*食の安全・監視市民委員会(FSCW)(20111013日)

「放射能汚染から食の安全を守るための意見書」

http://www.fswatch.org/2011/10-13.htm

 

*食の安全・監視市民委員会(FSCW)(20111220日)

「飲食品の放射能残留規制及び消費者の安全確保に関する意見書」

 http://www.fswatch.org/2011/12-20-1.htm

 

*同上「厚生労慟省のこれまでの放射能汚染食品への対応に強く抗議し、この度提示された食品に含まれる放射性物質の規制値の再検討を求めます」

 http://www.fswatch.org/2011/12-27.htm

以 上 

 

2013年9月10日 (火)

記事は小さく出ているけど,見逃してはいけない大事な情報(原発の「出鱈目てんこ盛り」)

前略,田中一郎です。

 

 別添PDFファイル(添付できず)は,昨今の原発・放射能汚染関連の若干の新聞記事です。いずれも新聞紙面上の扱いは小さい記事ですが,よく読むと,見逃せない大事な情報が何気なく書かれています。あっちでも,こっちでも,原発・原子力は「出鱈目てんこ盛り」です。以下,簡単にご説明いたします。

 

 <別添PDFファイル:添付できませんでした>

(1)ストロンチウム3200ベクレル タンク北側(朝日 2013.9.10他)

(2)海近くの井戸でセシウム検出 福島第1原発の汚染水(日経 2013.9.5

(3)リスキーです,言い切るのは(東京 2013.9.15

(4)7か所の下水汚泥,セメント利用可能(河北新報 2013.8.31

 

(1)ストロンチウム3200ベクレル タンク北側(朝日 2013.9.10他)

 http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201309090567.html

 

 この記事は,放射能汚染水が漏れたタンク付近の観測井戸から放射性ストロンチウムなどが,新たに3,200ベクレル/リットル検出され(数日前の650ベクレル/リットルに次いで2カ所目),漏れた汚染水が地下水に広がっていると伝える記事である。しかし,記事をもう少し読み続けると次のように書かれている。

 

「観測井戸から約130m海側には,東電が建屋に流入して汚染する前の地下水をくみ上げて海に流そうと計画している井戸がある」

 

 こりゃ,もうだめだ。地下水は山側から海側へ,高いところから低いところへ流れて行くので,山側の方の地下水が汚染されていて,それで海側の地下水がきれいなわけがない。「地下水が汚染する前」,などということはもうあり得ず,福島第1原発敷地の地下水は原子炉核燃料由来の様々な放射能で汚染されてしまっている。そんなものをくみ出して,海にぶん投げられてはたまったものではない。今のところ,腰抜け・へっぴり腰で頼りにならない漁協系統・漁連も,海へのくみ上げ地下水の廃棄には反対している。しかし,さらに続けて読むと,

 

「東電は汚染の広がりの範囲を特定し,計画に影響がないかを調べる」

 

 このもっともらしい記載内容が最も危ない。「汚染の広がりの範囲を特定」など,できはしない。汚染水が自由に蠢いている地下には,汚染水の行き来を制御する「関所」や「コントロール機械」があるわけではない。ある日,ここまで広がった汚染水は,次の日には,ずっとずっと広く広がっているかもしれない。こんな「特定」などしてみても無意味だが,しかし,東電や政府は「汚染はここまでしか広がっていないから,こっちから地下水をとった分は大丈夫だ,さあ,ぶん投げよう」と,いずれ言い出すに決まっている。そこに原子力「寄生」委員会という「インチキおじさん達」が現れて,屁理屈によるお墨付きを与えるという段取りになっている。現に田中俊一委員長は,いずれタンクの水を含め,汚染水は海へ捨てる,と息巻いているではないか。

 

(同じ朝日新聞紙面の右側には,安倍晋三総理がオリンピック招致のためにアルゼンチンで放言した嘘八百の骨子が列記されている(6項目)。これも保存しておいた方がいいだろう。これから安倍晋三の行くところ,この嘘八百への追及が待っていることを覚悟させてやろう)

 

*【五輪】安倍首相は強弁、「汚染水は問題ない」「港湾内で完全にブロック」、IOC委員質問に回答…実際は外洋漏洩の可能性、極めて高く★5 にゅーすまとめログ

 http://matomelog.ldblog.jp/archives/32716757.html

 

(2)海近くの井戸でセシウム検出 福島第1原発の汚染水(日経 2013.9.5

 http://www.nikkei.com/article/DGXNZO59312780V00C13A9CR8000/

 

(上記から引用)

「敷地海側では汚染水が海に流出するのを防ぐため、護岸付近の地盤を水ガラスと呼ばれる薬剤で固めた遮水壁を造ったが、今回検出された井戸は壁より海寄り。遮水壁の内側(陸側)の井戸で2日に採取された水のセシウム濃度は93ベクレルで、海側の方が高い結果となった(1リットルあたり550ベクレルの放射性セシウムが検出)。」

 

 つまり,凍土方式の「遮水壁」など,役に立たないということだ。放射能汚染源の凍土壁の内側の方が,その外側よりも汚染度が低い,なんて,何のための壁なのでしょうか? 既に明らかになっているように,凍土方式の遮水壁は,2011年の福島第1原発事故直後の5月・6月に,馬淵澄夫総理補佐官らが中心になって「遮水壁」建設を検討した時も一つの方法として選択肢にのぼったが,結論は「実現可能性は低い」だった。下記サイトをご参照あれ。

 

*原発汚染水深刻!幻の遮水壁計画・漁師の怒り/報道特集  赤かぶ

 http://www.asyura2.com/13/genpatu33/msg/348.html

 

(3)リスキーです,言い切るのは(東京 2013.9.15

 東京新聞4面の,いつもの「東京電力テレビ会議システム」に記録され公開された事故対応のやりとりの記事である。記録された「やりとり」の日付は「2013314日の午後117分~」で,3号機爆発の少し後のことである。記事がネット上に見当たらないので,肝心の部分を抜き書きしてみよう。

 

「本店社員:福島事務所から依頼が来てます。次の第三報のプレス文(報道発表文)に,福島県庁,県知事から,この文言を入れてもらいたいという話がありました。『天候が崩れる予想だが,北西の風が吹いており,観測された放射線量から健康に被害が出る心配はない』。入れたいのはやまやまですが,こういうことでいいのかお諮りしたい」

 

「本店社員:国の本部の体制下において,ここまで電力から言っていいのか気になります。ちょっとリスキーですよね。ここまで言い切るのは。こういう話は国から言ってもらいたいところ。⇒ (本店社員「ちょっと調整

します」)」

 

 このとんでもないデマ=被ばくの健康影響は心配ない という文言を入れてくれ,と依頼をしたのは東京電力ではなくて,福島県庁である。ここまで言い切るのは,ちょっとリスキーだ,と言って躊躇しているのは,福島県庁ではなくて東京電力である。

 

 また一つ,福島県庁の原発事故時の反県民的行為が発覚した。福島県庁が福島第1原発事故後にやったことと言えば,たとえば,SPEEDIの情報を国からもらっているのに,それを市町村に伝えない・公開しない,事故直後の子どもの甲状腺検査をしようとした弘前大学や(独)放射線医学総合研究所のチームの邪魔をしてやめさせる,「福島県民健康管理調査検討委員会」秘密会議を開いて口裏を合わせる・「福島県民健康管理調査」自体が出鱈目,安定ヨウ素剤を町民に飲ませようとした三春町を脅して妨害しようとする,農地の汚染状況調査や飲食の検査体制もおぼつかないうちから福島県産品の安全宣言,学校給食に放射能汚染物の地産地消を押し付け,避難する人のための住宅援助を打ち切る,山下(だました)俊一を福島の放射線被曝健康管理の中心人物としてつれて来た,国際原子力マフィアIAEAと協定,などなど,数え挙げればきりがないくらい,反県民的な放射線被曝軽視・無視・押し付けの犯罪的行政を行ってきた。

 

 その福島県庁の罪状に,もう一つ,3号機爆発の段階から,県民を無用の放射線被曝から守ろうとしていなかったこと,東京電力でさえ躊躇してしまうような嘘八百を公表させろと,東京電力に迫っていたことがこれで分かった。私は福島県の方々に,こんな県庁,こんな県知事で,本当にいいのですか? とお聞きしたい。

 

(4)7か所の下水汚泥,セメント利用可能(河北新報 2013.8.31

 「2011年7月に完成した福島県二本松市の賃貸マンションの1階の室内で、1時間当たり最大 で1.24マイクロシーベルトと、付近の屋外より2倍近く高い放射線量が測定され、床のコンクリートから放射性のセシウムが検出されました。」というようなニュースが,衝撃を持って伝えられたのは記憶に新しい。しかし,それから早2年,もう忘れられてしまっているようだけれど,現下では恐ろしい事態が着々と進んでいる。

 

 放射能に汚染された下水汚泥が,コンクリートの原料として使われているというのだ。この記事によれば,セメント会社は,放射性セシウムが100ベクレル/kg以下であれば,汚染汚泥であってもセメント原料として受け入れているという。冗談ではない話で,これは非常に危険である。

 

 まず,100ベクレル/kgという汚染濃度は,下水汚泥の全部に対して,きめ細かくきちんと担保されるわけではなく,どうせ,わずかばかりのサンプル調査しかしないから,濃度には偏りがあって,場合によってはとんでもない汚染状態にあるかもしれない汚泥が,我々の居住空間を構築するコンクリートに使われる可能性がある。更には,100ベクレル/kgの放射性物質が放つ放射線も,安全なわけがない。何と言っても,ずっとそこに住んで,居続けて,被曝し続ける可能性があるのだから,ベクレル値が小さいから大丈夫,などということには絶対にならない。2011年当時は,少しでも放射能汚染がある汚泥や焼却灰は,セメント会社は受入れないと言っていたのが,いつのまにやら100ベクレル/kg以下ならOK,などということになってしまっている。

 

 すでに申し上げているが,この汚泥と似たような状況にあるのが「木材」「木質建材」「木質燃料」だ。林野庁が打ち出した木材・木質燃料の放射性セシウム汚染の上限値(ベクレル/kg)は単なる目安にすぎず,守らなくても,放射能を計測しなくても,何の罰則もない。それに上限値自体も高く,日常の居住空間を構成する建材としても,日常的に使われる燃料としても,とても安全とは言えない大きな値である。もちろん放射性セシウム以外の放射性核種は眼中にない(建材用木材に上限値はなく,業界で自主基準を定めているだけ,薪=40ベクレル/kg,木炭=280ベクレル/kg,バークペレット=300ベクレル/kg他)。

 

 コンクリートも木材も,その放射能汚染管理は腹が立つくらい,全くいい加減なもんです。これらは,8,000ベクレル/kg以下の放射能汚染物を「一般ゴミ」扱いしていいという,あの悪名高き環境省の放射能汚染ゴミ基準がベースになっているようです。しかし,このようにして非汚染地域にまでばら撒かれた放射能は,やがて我々自身に向かってブーメランのように戻ってきます。そして,その頃には,取り返しのつかないことになっているのです。 

 

*新築マンションから放射線管理区域の2倍の高放射線量!放射能汚染セメント使用が判明!! 福島県二本松市 - Everyone says I love you !

 http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/25d8c4eaa7d2b5ea361631fe4da36ca0

 

*林野庁-東日本大震災について~調理加熱用の薪及び木炭の当面の指標値設定に関するご質問と回答について(更新)~

 http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/tokuyou/111222.html

 

http://www.rinya.maff.go.jp/j/mokusan/sinsai/mokuzai.html

 林野庁-木材製品の取扱いに係る留意事項等(Q&A)について

早々

 

2013年9月 8日 (日)

(備忘録)第12回「福島県民健康管理調査検討委員会」結果(再度重要関連サイトをまとめておきます) +若干のこと

前略,田中一郎です。

 

 820日に開催されました「第12回「福島県民健康管理調査検討委員会」の結果と,それについてのコメントを,このメールに再度まとめておきます。ご参考までに。(重要なものだけを抜粋)

 

1.福島県ホームページ - 組織別 - 県民健康管理調査検討委員会

http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=24809

(ここに当日の配布資料があります)

 

2.委員会及び記者会見録画

(1)【前半】第12回福島県「県民健康管理調査」検討委員会(2013.8.20 - YouTube

 http://www.youtube.com/watch?v=NaNHGKX9Dhw

 

(2)【後半】第12回福島県「県民健康管理調査」検討委員会(2013.8.20 - YouTube

 http://www.youtube.com/watch?v=sVjJnnfFWZg

 

(3)(重要)20130820 記者会見のみ「福島県民健康管理調査」検討委員会 - YouTube

 http://www.youtube.com/watch?v=qU_-GsVIhUE

 

3.東京新聞甲状腺がん確定 6人増え18人に 福島の子ども、疑い10人増社会(TOKYOWeb)

 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013082102000122.html

 

4.今回の結果へのコメント(田中一郎):このサイトの最後にまとめています


 

5.グラフデータベース 部位毎の集計:[がん情報サービス 医療関係者の方へ](甲状腺ガン)((独)国立がん研究センターがん対策情報センター)

 http://ganjoho.jp/pro/statistics/gdball.html?16%258%252

 

6.(重要)「福島県民健康管理調査検討委員会」の問題点(少し前のもの)

(1)☆広めて下さい☆ 【図解】「原発事故子ども・被災者支援法」の理念に基づき、早期発見・早期治療の健康管理体制の確立を!~市民専門家委員会の提言を図にまとめました 「避難の権利」ブログ

 http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/post-4824.html

 

(2)「福島原発事故による健康影響の対応急げ」-専門家ら緊急提言を発出 「避難の権利」ブログ

 http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2013/03/post-64d2.html

 

(以下は「おまけ」の追加情報です)(重複を深謝)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 1.にご注目。泉田裕彦新潟県知事の姿勢は,危険な原発・核燃料施設が立地する都道府県知事としては,ごくごく当然の対応であり,言論活動です。外国特派員教会での記者会見では,福島第1原発事故の収拾をよそに,オリンピック招致に邁進している日本政府や東京都などに厳しい質問・疑問が投げかけられています。世界は日本政府・原子力「寄生」委員会,及び東京都の,福島第1原発事故対応のいい加減さに怒っているのです。

 

1.福島第1原発汚染水問題:東電と規制委を批判 知事、外国特派員協会で会見 新潟 (産経新聞) - Yahoo!ニュース

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130830-00000054-san-l15

 

2. 2013.06.09 野呂美加さんお話 41 - YouTube

 http://www.youtube.com/watch?v=wxRPe-y3k7I&feature=youtube_gdata_player

 

3.オリンピック候補会場の放射線を測る市民グループの報告会を開催しました!

 http://olympicsokuteikai.web.fc2.com/

 

4.「子ども被災者支援法」関連

(1)復興庁HP:パブコメ「「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」に対する意見募集について」

http://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat8/sub-cat8-1/20130830193010.html

 

(2)「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」の公表  及びパブリックコメントについて

http://www.reconstruction.go.jp/topics/m13/08/20130830_hisaiseikatusyasiensuisin.pdf

 

(3)USTREAM フクロウ・FoEチャンネル (「子ども・被災者支援法」基本方針)

 http://www.ustream.tv/recorded/38229889

 

 

12回「福島県民健康管理調査」の結果について(加筆後)

2013820日付「第12回福島県民健康管理調査検討委員会」資料)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1.2011年度,2012年度,2013年度の甲状腺検査結果概要

 検査対象の子どもの数 約37万人

 一次検査終了子ども数 約21.3万人(58%終了)  

(以下,「○○年度対象」は,「○○年度対象市町村」の略)(人)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

          2011年度対象  2012年度対象    小計   前回公表

 一次検査結果確定者① 41,080 135,173 176,253

 B・C判定②      214     952   1,166

(②/①)       (0.5%)   (0.7%)    (0.7%)

二次検査実施者③    174     594     768

 悪性(疑い含む)④    13      30      43  27

(④/③)       (7.5%)    (5.1%)   (5.6%)

うち確定          9       9      18  11

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

          2013年度対象            総合計    

 一次検査結果確定者① 16,633           192,891

 B・C判定②      113             1,279

(②/①)       (0.7%)              (0.7%)

二次検査実施者③   以下,未了               

 悪性(疑い含む)④                 

(④/③)                     

うち確定                     

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

2.コメント

(1)子ども甲状腺ガンが更に急増:恐ろしいことが引続き起きている?

一次検査進捗率は58%,二次検査進捗率は60

前前回公表時の悪性は7人,疑いは7人 計10人 「疑い」はほぼ9割が悪性

前回は    悪性は11人,疑いは16人 計27人  同 上

今回は    悪性は18人,疑いは25人 計43人  同 上

(子ども甲状腺ガン増加が止まらない,検査が進めば更に増える可能性大)

 

一次検査結果確定者の約0.7%が二次検査を受け,そのうちの約5.6%が悪性

ここから今後確認するであろう悪性の子ども甲状腺ガン(疑い含)を推定すると

  二次検査未了の子ども約511人×5.6%=28人

一次検査未了の子ども約15.7万人×0.7%×5.6%=62人

  今回までの確認43人との合計で,20137月までに約133人の子どもが悪性甲状腺ガンと推定される  

更に,時間の経過とともに発見数は増大し,その増大速度も加速の可能性

 

(2)この数字は福島県の子ども達だけの数字である

 福島県の大人,福島県以外の都道府県の大人・子供・妊婦(胎児)を入れると更に数字は大きくなっていく(推定で133人×5=665人)

 上記は甲状腺ガンだけの数字だが,甲状腺機能障害が無視されている

何故福島県以外の県民・都民に対しても甲状腺のエコー検査をしないのか

 何故山下俊一が甲状腺学会を通じて出した通知を回収・撤回しないのか

 

(3)政府・福島県・「福島県民健康管理調査検討委員会」のマンネリ説明

まず最初に「放射線被曝とは関係がない」がアプリオリの大前提で来る=アホダラ教,では「何故過去に比べて増えたのか」への彼らの答え

・比較するものがないから「多発」と言えるかどうかは分からない

 ・大規模な調査は今までなかった

 ・スクリーニングで早く見つかった

 ・スクリーニングの機器類の性能が良くなって発見数が増えた

(岡山大学の疫学の専門家・津田敏秀教授が上記の見解を誤りであると指摘:増えていることは認めるべきである ⇒ 問題は「何故増えてきているか」(予防原則)

 

(4)過去の数字と比べると 

 子ども甲状腺ガンは非常にまれな病気

 10歳以上だと,100万人あたり3~5人/年程度

 10歳未満だと,100万人あたりほぼゼロ(1千万人に1~2人/年程度)

 

平均有病期間を極端に長い10年としても今回の数字は非常に大きい(10倍以上)

 

(参考)有病率=発生率×平均有病期間

 

(5)非ガンリスクに注目し警戒せよ

 放射線被曝,特に恒常的な低線量内部被曝は,ガン・白血病や流産・死産だけでなく,人間に遺伝的障害を含む様々な健康障害をもたらす可能性が高い

 

<健康障害の事例:これがすべてではない>

極度の慢性疲労・倦怠感(いわゆる「ぶらぶら病」),各種臓器不全,消化器系疾患,免疫力低下・ホルモン異常,病弱化・虚弱体質,循環器系疾患・心臓病と突然死,神経系疾患,呼吸器疾患・ぜんそく,糖尿病,白内障,脳障害・知能低下,膀胱炎,生殖異常・遺伝病・奇形児,短寿命化他

 

<参考(重要):ある方の第12回委員会発表分の検査結果分析です>

  常套手段:一次検査者数と悪性判定の母数のズレ

8/22の報道でも概ね「21万人余検査して44名の癌疑い」とのことでした。

単純割で5千人に一人の甲状腺癌(及び癌疑い)発見と言うことになります。ですが、福島県のいつもの手で一次検査受診者・確定者と二次検査受診・終了者にはズレがあります。一次検査者216,809(結果確定者192,886)の内、B判定=要二次検査者は1,280名です。要二次検査者1,280名の内、二次検査受信者は771(6割)に留まっています。依然として二次検査が遅れているわけです。



 更に、「二次検査終了者」は625名で、1280名の半数以下です。この「終了者」も一概に終了判断として良いのかどうかです。「終了者」の中で二次検査の結果A判定とされた子どもが164名(終了者の4分の1。この子ら+細胞診受信者が現時点で二次検査終了者と呼ぶべきでしょうか)。

A判定以外の残り4分の3461名は「経過観察」です。経過観察と言ってもA判定の2年後検診ではなく、「保健診療枠」つまり診療の扱いで、半年または1年後に再検査対象とされています。その「経過観察」461名の中で、203名(終了者625名中の3分の1)が穿刺細胞診実施者で、この内44名が悪性細胞と判断されたとのことです。



 細胞診の5人に1人=2割が悪性判定です。経過観察で細胞診が終わっていない258名(終了者扱い中の4割に相当)に、細胞診を実施した場合、その2割に当たる子どもたちが悪性判定となるのか? はたまた未実施者は細胞診の必要なしと判断されていて、その中からは悪性該当者が少ないのか? については発表された資料からは読み取りにくいように思います。

 

最悪の悪性判定割合は,二次検査対象者の4分の3(=二次中のA判定者割合1/4を除く)の中の2割=約15%と単純計算されます。経過観察258名からは悪性判定が出ないという最良の場合は、二次検査者中の悪性割合は約7%(44/625)に留まります。



 192,886
名中の要二次検査1,280名の検査が終了(あくまで現段階で)した時点で、

最悪の場合は1280×0.15190名ほど、最も良い場合で1280×0.0790名ほどの癌及び強い疑い、となる計算です。最悪で千名強に一人、最良で2100名程に一人(=百万人あたり467)が癌及び疑いというのが今回発表の発見率(有病率)となるのでしょうか。これは4月時点で山下・鈴木両氏が言っていた「4千人に一人が今後の福島のベースとなる」(4/21甲状腺乳腺超音波診断学会での講演)という小児甲状腺癌の有病率予想を更に超えているものです。

 

  意図的にC判定としない発表

この間、C判定(直ちに要二次検査)は一人も増えていません。

C判定とはされていないが、悪性が44名という話です。 つまり実際はB判定の中に、C判定該当者が多数あった(ある)わけです。本来C判定であるのに、B判定と発表する政治的判断がなされているのではないかと思います。

二次検査に当たっては、人によって待たされる期間に違いがあるようなので、

福島医大内では、公表した判定とは別の評価がされていると言うことだと思います。

 

3.提言:なすべきこと

(1)「福島県民健康管理調査」の抜本改革  

  福島県以外の都道府県でも実施,18歳以上の大人についても検査・診断の実施

  検査すべきは甲状腺ガンだけではない


甲状腺エコー,尿検査,血液検査(染色体異常・エピジェネ異常他),心電図,

WBC検査,バイオアッセイ(検便・脱歯・髪の毛他:ストロンチウム,α核種)他)


全国でワンストップで上記の全部の検査を同時にやる=体制づくり

各検査の内容充実(甲状腺検査はスクリーニングではなく,いきなり本検査でいい

 検査頻度を増やす(受検者の状況に応じて3~12か月に1度)

 検査結果の本人還元の徹底と検査結果やカルテを含む全記録類の永久保存

 セカンド・オピニオンの利用充実とその活用

 健康保険対象+補助金で受験者は無料化 ⇒ 東京電力負担

 各検査について比較可能とするための西日本や北海道での疫学的大調査の実施

 体制の抜本改革(政府が前面に出よ,「福島県民健康管理調査検討委員会」のメンバーの更なる刷新,医療関係者・団体の救国的一致団結,財政サポート他)

  

(2)放射線被曝の未然予防

 まず避難,除染するにしてもまず一時避難

 放射線管理区域指定基準(5.2mSv/年以上)は全員避難

   1mSv~5.2mSvは避難の権利

 子どもは集団疎開,大人も子供も「コミュニティごとの移転」

 汚染地域に残る人にも「無用の被曝回避」のガイダンス徹底

 飲食品の検査体制の抜本改善と規制値の更なる厳格化,放射性セシウム以外核種検査

 政府が前面に出よ:「原子力事故による子ども・被災者支援法」他

 自然環境モニタリングの拡充(野生生物の変化をつかまえよ)

 

(3) 賠償・補償・再建支援:5原則+α(同時代に生きる人間としての使命・倫理)

賠償・補償・再建支援が全く不十分で出鱈目=21世紀最大の人権侵害事件

原発震災被害者の賠償・補償請求権を民法上時効の除外とせよ(特別立法必要)

賠償・補償・再建支援がきちんとならないと被害者はいつまでも救われない

 

 全ての被害者の全ての被害・損害が何の留保条件を付けられることなく全額賠償または原状復帰されること(逸失利益含む)

 全ての被害者の生活及び経営が再建されること(費用,段取り,その他の負担のすべてを加害者が負うこと)

 上記(2)再建が確認できるまでの間,全ての被害者の生活及び経営を補償すること

 2011311日以降,上記の賠償・補償・再建費用が実払いされるまでの間,電気料金遅延にかかる「遅延損害金」と同利率の「遅延損害金」が被害者に支払われること

 悪質な交通事故被害の場合以上の慰謝料(迷惑料)が被害者に支払われること

 (+α)被害者の被害は「お金」に変えられないものも多い。その部分を加害者・事故責任者が万全にフォローすること

以 上

 

 

2013年9月 7日 (土)

大飯原発レスキュー部隊=原子力「寄生」委員会,フクシマを踏みつぶす東京リドケンピック(東京「利権」「土建」オリンピック)

前略,田中一郎です。

 

 <別添PDFファイル:データ量の関係で添付できませんでした:図書館等でご覧下さい>

(1)活断層がないわけじゃない(東京 2013.9.7

(2)大飯再稼働,なお関門(日経 2013 9 6 他)

(3)東京オリンピック 放射線量の高い競技場が複数(『週刊金曜日 2013.9.6』)

 

1.大飯原発レスキュー部隊=原子力「寄生」委員会

(本日付東京新聞朝刊の「こちら特報部」に,渡辺満久東洋大学教授へのインタビュー記事が掲載されています。必読の重要記事です)

 

 みなさまご承知の通り,田中俊一委員長と島崎邦彦委員長代理の茶番劇で「活断層なし」が演出され,またも言行不一致の「再稼働審査開始」がなされています。原発建設時のずさんきわまりない敷地調査が今回発覚し,あると言っていたF-6断層が,あると言っていた場所にはなく,関係のない小断層を見つけてきて,これは活断層ではない,などと,馬鹿丸出しのことをやっているのです。今回の調査で,敷地のどこにどんな(活)断層があるのか全く分からなくなりました。これでは地層の厳格な審査どころか,何も調べず,適当にそこここを掘り返して,活断層はないない,もういいよ,OK,とやっていることになります。出鱈目どころの話ではありません。

 

 それに加えて,渡辺満久東洋大学教授が言うように,大飯原発のすぐそばを海から陸に続く巨大な活断層が通り,それが昔動いた結果,大飯原発の敷地地層を傾けた形跡があるのです。これは現在,日本の地下が大地殻変動の時代に入ったことを鑑みれば,再び起きうることであり,原発・核燃料施設の稼働を審査する場合には絶対に避けて通ってはいけない審査事項です。敷地が傾いて無事にいられる原発・核燃料施設など存在しません。それに大飯原発には,フィルタ付きベント装置も緊急時対策所(免震重要棟)もありませんから,あっという間に破局にいたることになりかねないのです。

 

 しかし,田中俊一・島崎邦彦の「ひょっとこ・おかめ」茶番劇コンビは,こうしたことを無視して「活断層はないようだ,じゃあ,再稼働審査開始だ」と,破滅への第一歩を踏み出しました。調べるべきものも調べず,事実に目をつむり,非科学的な楽観論で「破滅へ道」を選ぶ,それは日米開戦へ突入していった大日本帝国と同じ構図です。今の日本は「大日本原子力プチ帝国」といったところでしょうか。

 

(事の進め方から見て,田中・島崎両氏には,背後で[天の声]の圧力がかかった可能性があります。「先生,大飯ですが,そろそろ片付けませんか」てな具合です)

 

*東京新聞 大飯、再稼働審査へ 活断層否定 根拠のデータ示さず社会(TOKYO Web)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013090602000150.html

 

*日本経済新聞社 大飯再稼働 なお関門 規制委、審査再開を決定

http://www.nikkei.com/news/special/top/?ng=DGXDASFS0502Q_V00C13A9EE8000&uah=DF040620133269

 

2.東京オリンピック 放射線量の高い競技場が複数

 今週号の『週刊金曜日』の記事です。先般の「オリンピック会場測定会」の結果報告の様子が報じられています。本日付東京新聞朝刊2面には「五輪招致委,「250キロ離れ東京は安全」,福島県民「差別的」」との記事が出ています(各紙が報道)。全く「差別的」で,福島第1原発事故が東京をはじめ首都圏の住民に赤裸々に示した「原発の差別構造=犠牲のシステム」が,まだ理解できていないのか,と思います。

 

 多くの被災者の方々の救済が,「子ども被災者支援法」一つ見ても,全くと言っていいほど進まない中で,あるいは多くの汚染地域の人々が,日々,放射線被曝の不安に晒されている中で,あるいは,多くの子ども達に甲状腺ガンが出始めているというのに,これら多くの犠牲を見て見ぬふりをして,つまりは踏みにじり,東京「利権」「土建」オリンピック(東京リドケンピック)で馬鹿騒ぎをしようというのが,JOCや猪瀬直樹東京都知事以下の愚かもの達です。


 

 加えて,下記の測定結果報告にありますように,「東京は安全」というのは明らかに事実と反する無責任な発言です。東京はチェルノブイリ原発事故の後のウクライナ・キエフ市とよく似た状態にあり,あちらこちらにホット・スポットが存在しています。可能ならば,子どもたちや妊婦,若者など,放射線感受性の高い世代は避難をしておいた方がいい地域です。空間線量は,そもそもきちんと測定されていませんし,土壌汚染に至っては無視されており,更に,放射性セシウムと放射性ヨウ素以外は眼中になし,という,まるで旧日本帝国陸海軍のような「精神注入棒」方式の汚染・被ばく認識で,東京は安全とうそぶいているのです。はっきり言って,阿呆です。

 

 オリンピック開催地がどこなのかは,明日にでも決まるのでしょう。仮に東京で,ということになっても,測定会では引き続き活動を続けて行きたいと考えています。近々に,再度の報告会を開催したいとも思っております。

 

2013828日報告会における測定データ解説まとめ(私=田中一郎が書いたものです,ご参考までに)

 http://olympicsokuteikai.web.fc2.com/matome0828.html

 

2020年「オリンピック候補会場の放射線を測る会」市民グループのHP

 http://olympicsokuteikai.web.fc2.com/

 

*20年五輪招致委理事長「東京は安全」…福島は反発- 毎日jp(毎日新聞)

 http://mainichi.jp/sports/news/20130907k0000m050053000c.html

早々

 

 

 

重要なパブコメ3つ,について参考にして下さい,& 福島第1原発「お漏らし」は地下水にまで達していた=地下水を汲み上げて海へ捨てないでよかった

前略,田中一郎です。

 

1.重要パブコメ(3つ)

 出しても無意味,という意見もありますが,出さないよりは出した方がいいと思います。簡単に「反対です,やめて下さい」でもいいと思います。

 

(1)9月9日(月)まで:

「原子力発電所の廃炉に係る料金・会計制度の検証結果と対応策(案)」に対する意見募集について

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620213008&Mode=0

 

 このサイトにある「原子力発電所の廃炉に係る料金・会計制度の検証結果と対応策(案)」をご覧下さい。

 このメールの最後のところに私の考え方を書いておきましたので,ご参考にして下さい。

 

(2)9月13日(金)まで:

「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」に対する意見募集について

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=295130830&Mode=0

 

 下記のような「出鱈目」のプロセスを経たのちに出てきた「子ども被災者"切り捨て”法」(案)です。

 

*被災者支援法復興庁、議事録作らず 会議資料も開示せず- 毎日jp(毎日新聞)

 http://mainichi.jp/select/news/20130906k0000m010135000c.html

 

(3)「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対する意見募集について

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=060130903&Mode=0

 

(既にメールでお知らせ済みですが,下記に関係する新聞記事を再度添付しておきます)

● 秘密保全法案の「闇」(2013817日付東京新聞)

 http://blog.livedoor.jp/shootque/archives/51908163.html

 

● 刑事司法改革 盗聴の制限 大甘に(2013829日付東京新聞)

 http://toracyan53.blog60.fc2.com/blog-entry-5363.html

 

2.福島第1原発の「お漏らし」=もう地下水をくみ上げて海に捨てるのはできないぞ

 福島第1原発の「お漏らし」報道で重要なものを2つご紹介します。 (地下水バイパス計画は頓挫した) 


 重要なことは,汚染された地下水が,①福島第1原発の海岸壁の海水面下から海に浸み出す,②福島第1原発沖合の海底のどこかから泉のように湧き出す(地下水は海底の土壌へも流れて行く,③汚染地下水が福島第1原発周辺の地下へと広がり,地下水汚染域を広げていく,ということです。馬鹿の一つ覚えのごとく,姿を現わさない炉心・核燃料に水をぶっかけるだけで,その後のことをまともに考えなかったツケが今来ております。

 

 更にもう一つ重要なことは,下記(1)の記事の続きに次のように書かれていることです(朝日新聞 2013.9.638面)

「(今回放射性ストロンチウムなどのベータ核種の汚染が確認された)観測井戸から130メートル海側には,東京電力が汚染する前の地下水をくみ上げて海に流そうと計画している井戸がある。」

 

 今回の地下水汚染確認により,東京電力が汲み上げて捨てようとしている地下水は,既に放射能により猛烈に汚染されていることがわかりました。これはもうやってはいけない「愚にもつかない対策」ということになります。漁業者の方々が,原子力「寄生」委員会の田中俊一委員長や原子力学会,あるいは漁連・漁協幹部達の腰抜け態度を退けて,地下水の汲み上げ・海への廃棄を認めなかったことは,やはり正解でした。これからもかような安直・軽率極まりないことは,認めてはならないのです。

 

(1)朝日新聞デジタル:福島第一の汚染水、地下水に混入 ストロンチウム確認 - ニュース

(朝日)http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201309050781.html

(時事)http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130905-00000098-jij-soci

(阿修羅)http://www.asyura2.com/13/genpatu33/msg/428.html

 

(2)東京新聞福島第一 タンク漏水 地下水到達 井戸から放射性物質福島原発事故(TOKYO Web)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2013090602100007.html

 

(参考)除染見直し、海洋放出提言=汚染水トリチウム薄めて―原子力学会が報告案・福島原発 – ガジェット通信

 http://getnews.jp/archives/410017

 

(「廃炉負担先延ばし策」についての私の考え方:参考にして下さい)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(1)「原子力発電所の廃炉に係る料金・会計制度の検証結果と対応策(案)」に対する意見募集について

(原子力発電所の廃炉に係る料金・会計制度の検証結果と対応策(案))

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620213008&Mode=0

 

 このやり方は典型的な「後出しじゃんけん」方式である。原発は他のいかなる発電手段よりも安くて安全,と言っていたではないか。そうじゃないのなら,まず,そうではないと明言して,消費者・国民に詫びてからにしたらどうか。原発の出鱈目と危険性が福島第1原発事故後の今頃になって表面化してきて,廃炉などの後始末が大変でコストもかさむので,その負担を少しでも軽くするため(単年度決算をしている電力会社の場合は1年ごとの負担軽減のため),償却期間を長くして単年度負担を薄めることで当面をしのぎ,原子力・原発の延命を図ろうというものです。

 

 それでいて,

(1)原発が他の発電よりも最も安価であるという「原子力安価神話」「原発安価神話」はそのままにしている(この対応策(案)のどこにも言及なし)。

(2)最も肝心な使用済み核燃料や放射性廃棄物の後始末についても何の言及も考察もなく「あとは野となれ山となれ」の無責任態度のままである。

 

 こんなもの認められるか,バカヤロー,ですよ(この対応策(案)を書いた御用人間・御用学者がどういう連中かは,この対応策(案)の最後の部分に名前が出ていますので,よく覚えておきましょう。まるで電力業界代理店業務の報告書のようです。

 

 しかし他方で,政府や電力業界が「脱原発」の方針を明らかにし,今後廃炉を精力的に,かつ安全に進めて行くに当たり,消費者・国民への協力を求めたいということであれば,話は違ってくる。国策に基づいて電力会社は原発・核燃料施設へ突き進んだ,というのなら,今後の廃炉負担の一部について,国や消費者が電力会社とともに痛み分けをして,各1/3ずつでも負担を分担する方法はあるだろう。もちろん廃炉だけでなく,使用済み核燃料や放射性廃棄物の取り扱いも含めての話だ。しかし,そうではなく,原子力や原発・核燃料施設の延命措置のための負担増であるのなら,もってのほか,である。断固拒否。

 

(以下,対応策(案)のエッセンスを批判しておきます)

(1)「後出しじゃんけん」は認められない。手抜きだらけで安全でもない原発を,「原発は一番安くて経済性が高く安全である」などとウソまでついて推進してきて,今頃になって「早めに廃炉にすることもあるので,その時は回収できなかったお金は,原発が電気を提供できなくても,我々電力会社が損をしないように引き続き支払ってください」と言っているようなもの。あほかいな,そんなことを言って通る産業がどこにあるのか。地域独占に胡坐を欠いているからこそできる優越的地位の乱用以外の何物でもない。

 

(2)そもそも,原発が廃炉になれば,全く電気を生まない「ただの汚染ゴミの山」になるだけだ。それをあたかも企業会計上「資産」として計上し,減価償却を続けたり,原発保有に見合う積立金(引当金)を積み続けるというのは,会計上「粉飾決算」と言われているものだ,国際会計上の基準や考え方から見ても許されるものではない。

 

(3)「「想定総発電電力量」は、運転期間を40年、平均的な設備利用率を76%として、その間に認可出力で稼働した場合を前提に設定されている」(P6)=つまり稼働率76%,運転寿命40年という無理な前提でコスト計算をするからおかしな話になってくるのである。この部分を,もっと実態に合わせて厳しくすることが先決である(運転期間30年,稼働率50%くらいか?)。おのずと原発のコストは跳ね上がるが,それは消費者・国民にその事情をしっかりと説明せよ。(原発は高くつくからやめてくれ,という消費者・国民の要望が高まることを恐れているので避けている)

 

(4)P5やP9を見ると,一般の原発だけでなく,出鱈目・手抜き管理の積み重ねの上で大事故を起こした福島第1原発に関する廃炉のための追加設備その他のメンテナンス費用についても,コスト負担を消費者・国民に転嫁した上で,廃炉後も長期にわたり電力料金に算入しようとしている。けしからん話である。

 

(5)「同法(改正原子炉等規制法)に基づき東電福島第一原発が「特定原子力施設」として指定されたが、上記のような料金原価上の取扱い及び会計処理を継続した場合には、円滑かつ安全な廃止措置に支障が生じるおそれがある。」(P6)などと書かれているが,福島第1原発の事故後処理に支障が生じるのであれば,一刻も早く東京電力を会社更生法にかけて破綻させ,負担すべきものに応分の負担をさせた上で,当事者能力の欠如した東京電力を解体し,それに代わる「日本総力を結集した,担当者もエンカレッジされ,身分も保障された,健全で強力な組織体制」を創設して,事に当たるべきである。ゾンビ企業=東京電力をこうした形で延命させることは事態を一層悪くする。

 

(6)「廃炉の作業も電力会社の活動の一環として事業目的に適うものとして、電力の安定供給に資することと整理した。廃止措置の期間も電気事業を継続するための期間と考えた場合、これも含めて事業の一環と捉えられるのではないか」(P8)などと書くのであれば,何故,使用済み核燃料や放射性廃棄物の処理処分についても検討・言及しないのか。それはどうしようもないから,とりあえず先送りして今日に至っているのに,まだ先送りするのか。許されないことである。

 

(7)原発は,その巨大な危険性に加えて,廃炉の処理や使用済み核燃料・放射性廃棄物の処理・処分のことを考えれば,とても費用対効果がペイしない,典型的な「ごくつぶし」施設である。さっさとやめればいいだけの話である。まして,福島第1原発事故のような大事故を引き起こしては,たくさんのものを汚染し,たくさんの人々を被ばくさせるのであるから,その賠償・補償費用や除染費用までを入れれば天文学的な金額となり,およそ事業などとは言えない代物となる。やめろといったら,さっさとやめろ。

早々

 

2013年9月 6日 (金)

輸入食品の安全性のこと,マグロなどの水産資源のこと,厚生労働省の食品安全パンフのウソ(松の木小唄),そして森林除染のこと

前略,田中一郎です。

食品の安全等に関する昨今の情報をお送りいたします。

 

1.週刊文春記事(添付できませんでした:ご紹介のみ)

 2013.9. 5号 「食品表示ラベルのウソ」

 2013.9.12号 「危ない中国産を見破る方法」

 

2.平成24年度輸入食品監視指導計画に基づく監視指導結果,及び平成24年度輸入食品監視統計の公表について |報道発表資料|厚生労働省

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000016388.html

 

 たった400人程度の担当者が膨大な量の輸入食品の検査を担当させられ,機能不全に陥っています。こんな状態はもうかれこれ20年近くも続いているようです。検査されているのは,輸入されるもののうちの1割程度,それも輸入手続きを安全検査よりも先に済ませ,流通させておいて,検査で有害と分かれば流通を止める,などという商売優先のやり方をとっているものが大半です。有毒だとわかっても後の祭りで,消費されていたり,どこへ流れていったか分からない,ということがしょっちゅう起きています。

 

 検査の仕方も,山のように積み上げられた輸入食品の中からほんのちょっぴりサンプルを取り出して検査するだけです。その抽出の仕方が適正かどうかなど,分かったものではありません。検査項目も絞られていて,多様化する食品のリスク・危険性にとても対応できない状態です。要するに,世界最大の食品輸入大国日本は,およそまともに輸入食品の検査をしていないということです。残留農薬,抗生物質,遺伝子組換え,食品添加物,有害物質,病原菌,変質劣化などなど,毒まみれの海外産「食品」がわんさと入り込む日本,もはや世界の「食品ゴミ市場」とまで言う人もいます。何故なら,日本へ持ち込むことに成功すれば高く売れますから,他国では危ないとハネられてしまったものでも,どんどん日本へ入ってくることになるのです。

 

 TPPは,この状態を益々ひどくし,日本の食卓を世界の食品ゴミだらけにしてしまうことでしょう。安ければいい,などと言って消費者・国民がそれを選択するか否かです。知らぬが仏は,ほんとうに仏にされてしまう時代です。

 

3.農林水産省:201392日付「食品安全エクスプレス」より

(1)放射線照射に係る輸入時検査の強化について(食安輸発08294号)[PDF]

 http://www.mhlw.go.jp/topics/yunyu/other/2013/dl/130829-01.pdf

 

 輸入食品で最も放射線照射の可能性があるのは胡椒や香辛料などです。昨今では,輸入農産物にも放射線照射が目立ち始めました。放射線が照射されると,その食品には発がん性物質などの有害物質が生じると言われています。その安全性は検証されておりません。そもそも生物に放射線があたることは有害であるのに,その放射線を食べ物に当てて殺菌する,などということは,他人の食うものだから食中毒などの急性障害さえ防げば,後は野となれ山となれ,の発想そのものです。おれは食わねえから,どうでもええ,と。

 

 ちなみに国内では,北海道の士幌農協だけが,長きにわたり放射線照射に対して多くの消費者から批判が出ているにもかかわらず,未だにジャガイモ発芽防止の放射線照射を続けています。協同組合の風上にも置けない,と思います。同農協の全ての取扱商品をボイコットすべきです。

 

*士幌農協に照射ジャガイモ提供の申し入れ 自社の放射能測定機器で検査を希望大地を守る会

 http://www.daichi.or.jp/info/press/2013/02/post-44.html

 

(2)「平成25年度輸入食品等モニタリング計画」の実施について(中国産ごぼうのパクロブトラゾール及びタイ産モロヘイヤのヘキサコナゾール)(食安輸発08293号)[PDF]

 http://www.mhlw.go.jp/topics/yunyu/monitoring/2013/dl/03-130829-01.pdf

 

 この手の有害物質検出は日常茶飯です。何と言っても中国産が多い。

 

4.グリーンピースMGより

 ピンチなのはマグロだけではありません。少し前は,ニシン,ハタハタ,サワラ,ホッケ,ズワイガニ,キンキ,イワシ,クジラ,タラ,スケソウダラ,天然ヒラメ,天然タイ,ハマグリ,シジミなどがピンチ,昨今では,マグロに加えて,カツオ,サンマ,ウナギ,サメ,タラバガニなどが危なくなっています。

 

 思い出していただきたいのですが,数年前,モロッコ国王の提唱でクロマグロをワシントン条約上の絶滅危惧種に指定しようとする動きがありましたが,日本政府(民主党政権:赤松農相)はこの時,漁業乱獲を続ける漁業国や,魚にほとんど興味のない国々を大使館に招いてクロマグロの寿司や刺身をふるまい,愚かな多数派工作をして,絶滅危惧種指定をつぶしています。

 

 日本政府(=水産庁)の言う「(水産)資源管理」など,きちんとできたためしがありません。つい先日「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)第9回 北小委員会」というマグロ資源の国際管理機関で,日本が漁獲の15%削減を提案して,それが合意されたと誇らしげに報告されております。しかし,これも15%減どころか,漁獲しようとしても漁獲できないので,実際の漁業者・漁船の漁獲減は何10%にも落ち込んでいるという「実態」を,ただ後から追認しただけの,くだらない決めごとにすぎません。「漁獲上限」が実質的に意味をなしていないのです。本来なら,3年間の漁獲禁止,くらいが妥当なところです。

2013年9月6日付朝日新聞6面の記事によれば,15%削減後の日本の漁獲上限は年間6,800トンとなりますが,2010年~12年の実際の漁獲量は平均6,100トンです。つまり,実際の漁獲量の10%くらい上に,漁獲上限を逆算して決めた,ということを意味しています。「漁獲上限」の体をなしていない茶番=資源管理しているポーズの「手抜き」=「本当の意味での資源管理の妨害行為」以外の何物でもありません。

 日本国内では,クロマグロの稚魚「ヨコワ」の大量乱獲が続いています。これは,金になる「クロマグロ養殖」に大手資本が我も我もと参入し,日本国中のあちこちにクロマグロの養殖場をつくり,そこで稚魚の「ヨコワ」を大量蓄養しようとしているからです。水産庁は早い段階からこの動きをつかんでいて,口先では節度ある資源の利用をなどと,体裁のいいことを言ってきましたが,その陰で「ヨコワ」の漁獲高をひた隠しに隠してきた経緯があります。乱獲が発覚することを恐れていたのです。(みなさま,回転ずしなどで,トロマグロは食べない方がいいでしょう。だいたいが養殖マグロで,かつトロ=脂身には,様々な有害物質がたまりやすいのです(例:PCB,ダイオキシンなどの油に溶ける有害物質))

 

 驚くなかれ,昨今ではサンマやカツオも危ないと言われ始めました。カツオについては,南方の太平洋でのアジア諸国や太平洋島しょ国による巻網漁業の乱獲でカツオ資源が細り始め,日本列島沖合の太平洋を北上するカツオが激減しています。また,サンマについては,ついこの間まで,資源は無尽蔵にあるからどんどん獲りなさい,などと調子のいいことを言っていたのが,3年くらい前からサンマの漁獲が減り始めているのです。いい加減な資源管理の象徴のような出来事です。(サンマについては,そのほとんどを漁獲しているサンマ棒受け網業界が自主規制としてサンマの乱獲を防ぎ,水産庁が決める「TAC」(トータル・アロウワブル・キャッチ)と呼ばれる年間漁獲枠を大幅に下回る漁獲に抑えていました。何故なら,サンマを大量水揚げしても,価格が暴落するだけなので,そうしていたのです:サンマ資源の乱獲は中国船などの外国船も寄与するところ大と思われます)(ちなみにサンマやカツオは福島第1原発事故による放射能汚染の影響が少ない,比較的安心な水産物です)

 

 タラバガニの乱獲と日本への密輸はよく知られた話で,暴力団が絡んでいる可能性もあります。だいぶ前の日本TV「NNNドキュメント」では,このタラバガニ乱獲と日本への密輸入に,稚内市当局が「黙認」している様子があると,告発されておりました。金になるから,カニが獲れるうちに獲れるだけ獲っておく,そんな関係者の証言まで出ていましたから事態は深刻です。稚内市など行政当局は,目先のことしか考えている様子はなく,北の海のタラバガニ資源は風前の灯です。

 

 ことほど左様に,政府・水産庁・行政・漁業団体などの言うとおりにしておれば,やがて世界から魚はいなくなってしまうのです。

 

 解決策=絶滅危惧状態の魚を買って食わないことです。フカヒレスープなどは,食べないように致しましょう。また,かつて差し網漁業が公海で操業禁止となったように(1990年ころ),少なくとも乱獲体質の抜けない大中型巻網漁業と,大中型沖合底引網漁業(トロール)の2つを禁止する,漁業を禁止する「サンクチャリ―海域」を設定する,というのが漁業政策としては最も適切な方法です。

 

*水産庁-「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)第9回北小委員会」の結果について

 http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kokusai/130905.html

 

*夏のウナギに続き秋のサンマも高騰? 推定資源量激減と水産庁予測 - SankeiBiz(サンケイビズ)

 http://www.sankeibiz.jp/macro/news/120801/mca1208010502005-n1.htm

 

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マグロがピンチ 「原発広告」って何?

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スーパーマーケットなどで刺身として販売され、日本で消費されるマグロの

30%を占めるメバチマグロ。

このメバチマグロが獲れる海域で漁業管理を行ってきた

中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)は2005年からメバチマグロの乱獲を指摘、

管理強化を訴えてきました。

しかし、8年たっても問題解決に近づくどころか、ますます乱獲が進み、

メバチマグロの数はどんどん減っています。

 

827日から3日間、WCPFCの熱帯マグロに関するワーキンググループが

東京で開催され、加盟国政府の代表がメバチマグロなどの保護管理措置に

ついて話し合いました。

グリーンピースではこれに先駆けて26日に日本外国人特派員協会(FCCJ)で

記者会見を開きました。詳細はウェブサイトでご覧ください。

 

ブログ:熱帯マグロに関するWCPFCワークショップの前にブリーフィング/提言

http://a06.hm-f.jp/cc.php?t=M281570&c=44071&d=938d

 

グリーンピースでは、豊かな食文化と海洋生態系を子どもたちの世代に

残すために、大手スーパーマーケットに調達方針の見直しと情報公開を求める

オンライン署名を実施中です。

是非あなたの声で、未来の食卓をまもってください。

http://a06.hm-f.jp/cc.php?t=M281571&c=44071&d=938d

 

・・・・・・・・・・(以上,引用終わり)

 

5.食品安全関係のパンフレット|厚生労働省

 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/pamph.html

 

 昔の古い歌に♪「うそ,うそ,うそよ,みんなうそ,あなたの言うこと,みんなウソ」♪とかいう歌がありました(松の木小唄)が,この厚生労働省HPにある食品安全パンフは,まさにそれです。みんなでこれを読んで,「うそ,うそ,うそよ,みんなウソ」の歌を歌いましょう。

 

*【カラオケ】松の木小唄 - YouTube ♪

 http://www.youtube.com/watch?v=kHLt-vBzafg

(「うそ,うそ,うそよ,みんなうそ」は4番です)

 

(歌詞:4番 http://www.utagoekissa.com/matsunokikouta.html

 うそうそうそよ みんなうそ

 あなたの言うこと みんなうそ

 うそじゃないのは ただ一つ

 あの日別れの サヨウナラ

 

6.(おまけ)農林水産省・林野庁:森林汚染調査結果報告

 福島第1原発事故による森林の放射能汚染から2年半もたつというのに,こんな程度のことしか報告ができない「森林の除染」。落葉等の除去で20%程度、伐採で10%程度(合計30%程度),チップを地面に敷いて10%,合計40%,バカバカしいとは思いませんか。要するに森林の除染など,できないということです。落ち葉を拾って,木をみんな伐って,その後に一面にチップを敷きつめて,大雨がきたら放射能もろとも流されて,・・・・そんな馬鹿なことを大金を使ってやってられるか,馬鹿!!

 

 チェルノブイリ原発事故後の旧ソ連諸国での経験から,森林の除染はできないということが分かっている。それを日本政府は,汚染地域の住民を汚染地域に縛り付けるため,一方では,賠償・補償を蹴飛ばすことで地域住民を経済的に困難な状況に陥れ,他方では,放射能や放射線はそれほど危なくないと嘘八百の大合唱を創作し,きずなだ・支援だ・復興だと,原子力翼賛状況をつくっておいて,できもしない除染に邁進している。この報告書は,その除染をあたかもできるかの如くでっちあげるための,一種の似非学術書である。その割にはできが悪い。それもこれも,原子力の昔通りの推進体制の回復と,原発過酷事故も原子力ムラ一族の利権と金儲けに資するものにしていくためである。

 

 原子力ムラ代理店政府は,99%の有権者・国民の敵である。打倒あるのみ。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ○森林における放射性物質の拡散防止技術検証・開発事業の結果について

 

  農林水産省は、平成24年4月から平成25年6月にかけて、福島県内の川

 内村、広野町及び飯舘村の試験地において、落葉等の除去や伐採等による

 空間線量率の低減効果の検証、作業実施箇所からの放射性セシウムの移動

 状況の把握等を行い、その結果について取りまとめました。

 

  主な点は次のとおりです。

 ・落葉等の除去により20%程度、さらに伐採を行うことで追加的に10%程

 度(合計30%程度)の線量低減効果が確認されました。また、木材チップ

 で森林の地表面を被覆することにより、10%程度の線量低減効果が確認さ

 れました。

 ・一方、落葉等除去を実施した箇所では、土砂や放射性セシウムの移動が

 多くなることが確認されました。

 ・放射性セシウムの森林からの流出割合は小さいものでしたが、その多く

 は土砂とともに流出することから、間伐を実施して下草を繁茂させること

 などにより、森林内の土砂の流出を抑制することが重要と考えられました。

 

 詳しくはこちらを御覧ください。

 http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/kaihatu/130827_1.html

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

早々

 

2013年9月 5日 (木)

食品の放射能汚染近況報告 (厚生労働省発表の検査結果などから)

前略,田中一郎です。

 

 食品の放射能汚染(放射性セシウム汚染)の近況と,若干のマスコミ情報からのコメントです。

 

 <別添PDFファイル:添付できませんでした,代替のネット上のURLをご紹介しています>

(1)被災漁船,気仙沼,沖縄,尖閣を経て福井沖で回収(河北 2013.8.31

(2)被ばく不安,果樹農家(東京新聞 2013.7.30

(3)食卓の魚は大丈夫か(毎日新聞夕刊 2013.9.3

 

1.厚生労働省HP「食品中の放射性物質の検査結果について」から(放射性セシウムのみの検査)

(1)201394日 食品中の放射性物質の検査結果について(第720報)

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000021665.html

 

 宮城県栗原市  ツキノワグマ肉 野生鳥獣肉(非流通品) 240ベクレル/kg

 宮城県七が宿町 イノシシ肉   同 上         290ベクレル/kg

 栃木県那珂川町 イノシシ肉   同 上         140ベクレル/kg

 山形県小国町  エゾハリタケ  野生キノコ(非流通品)  10ベクレル/kg

 福島県福島市  イワナ    (横川:阿武隈川)    140ベクレル/kg

 福島県白河市  梅漬(小梅)  製造・加工場所      14ベクレル/kg

 福島県福島市  ドライフルーツ(桃) 製造・加工場所   11ベクレル/kg

 

 <コメント>

 クマやイノシシなど,野生の動物は,放射能汚染や放射線被曝の影響を検証するための貴重なサンプルです。未だに政府・霞が関各省・自治体にその意識が乏しいのは嘆かわしい限りです。汚染・被ばくの隠蔽体質を告発されてもいたしかたないでしょう。また,天然キノコは,政府や自治体などが設置しているモニタリングポストなどよりも,よほど信頼性が高い放射能汚染状況のモニターです。山形県小国町といえば,福島県からはかなり離れた山形県と新潟県との県境の町ですが,こんなところのキノコからも無視できない放射性セシウムが検出されるのはショックです。山形県=安全安心ではないのです。

 

 イワナをはじめ淡水魚は絶対に口にしてはいけません。キノコ・山菜,ベリー・かんきつ類,乾燥食品,魚介類,内臓肉などと並んで,放射能が蓄積しやすい食品です。また,梅加工品やドライフルーツなど,放射能がたまりやすい素材を使った加工品・乾燥品についても注意が必要であることが上記で分かります。それから上記には書きませんでしたが,福島県産の多くの海産物からは放射性セシウムが検出されておりますし,宮城県産の海産物についても放射性セシウム検出が散見されます。

 数字の値が小さいのは,さしあたりホッとさせられますが,安心はできません。たまたま測った数少ないサンプルの値が小さかったにすぎない可能性があるからです。安全性の証明など,全くできておりません。

 

(2)201393日 食品中の放射性物質の検査結果について(第719報)

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000021134.html

 

 北海道札幌市  桃   流通品(福島県産)  8.5ベクレル/kg

 北海道札幌市  梨   流通品(福島県産)  1.7ベクレル/kg

 北海道札幌市  ナメコ 流通品(山形県産)  1.6ベクレル/kg

 岩手県軽米町  牛肉             15ベクレル/kg

 岩手県滝沢村  牛肉             12ベクレル/kg

 岩手県奥州市  牛肉             16ベクレル/kg

 茨城県     牛肉  栃木県産       15ベクレル/kg

 福島県南相馬市 小麦             46ベクレル/kg

 

 <コメント>

 牛肉については,常々申し上げているように,検査されている食品の大半を占めています。単純にウェイトだけを見た場合,異常と言えるでしょう(牛肉の検査件数が多すぎて異常なのではなく,牛肉以外の検査品目が極端に少なすぎて異常=つまり少ない検査品目が牛肉に偏り過ぎているのです)。ところで,その牛肉についてですが,①岩手県産の牛肉からは,時折,上記のように無視できない放射性セシウムが検出されます。飼料に問題があるのかもしれません,②牛肉の検査機器は検出限界値が1015ベクレル/kgのものが多いようなので,きめ細かな検出ができていない様子です,③上記のように,放射性セシウムが検出された牛肉ですが,同じ牛の内臓肉はもっと多くの放射性セシウムを含んでいる可能性があります。しかし,内臓肉は検査されたためしがなく(少なくとも検査結果は公表されたためしがない),牛肉トレーサビリティ制度の対象外にされ,まるで闇から闇へ消えていくように流通しているようです。内臓肉=いわゆるホルモン焼き等はお勧めできません。

 

 一方,南相馬市の小麦の放射性セシウムは非常に気になります。これはもう安全とは言えない数値でしょう。何故,南相馬のようなところで麦などを作っているのでしょうか。放射性セシウム以外の放射性物質についても気になります。農林水産省は,農作物に放射性セシウムが滞留するのはコメが最も高く,移行係数(土壌汚染からどの程度作物へ汚染が移行するかの割合)が最高で0.110%と見ておけばいいようなことを言っております。しかし,私がここ2年間くらい汚染状況を見ている限りでは,コメだけでなく,ムギ,ソバ,大豆,いも類などが放射性物質をため込みやすい性質があるようで要注意かと思われます。移行係数が最大で「0.1」というのも信用できません。ひょっとすると,わずかばかりの実験・実証試験で強弁している可能性があります。コメよりも,麦や大豆やソバやイモの方がより危険かもしれません。また,麦についてはビール麦=二条大麦はどうなっているのでしょう。福島県は本宮市にアサヒビール工場があります。ここの工場のビールの原料の大麦や水などの放射能汚染はどのようにチェックされているのでしょうか? アサヒビール本宮工場のHPを概観するだけでは分かりません。

 

*福島工場 行こう!工場見学!! アサヒビール

 http://www.asahibeer.co.jp/brewery/fukushima/

 

 一方,札幌市の検査結果は,いわゆる流通過程にある商品の抜き取り検査結果です。札幌市がそのような検査を行っていることは高く評価されていいでしょう。何故なら,他でやっている自治体が極度に少ないからです(東京都くらい?)。結果は,値は小さいですが福島県産の果実と山形県産のキノコから放射性セシウムが検出されました。イエローカードだと言っていいと思います。

 

(3)201392日 食品中の放射性物質の検査結果について(第718報)

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000021134.html

 

 青森県八戸市  マダラ  三沢市沖     4.2ベクレル/kg

 茨城県     ウナギ  涸沼       11ベクレル/kg

 茨城県     シラウオ 霞ヶ浦(西浦)  17ベクレル/kg

 茨城県     ワカサギ 同 上      16ベクレル/kg

 

 <コメント>

 青森県産のマダラが放射性セシウムで汚染されていることは,既にだいぶ前に報道されています。ちなみに,海産魚の中で放射性セシウムがよく検出されるのは,マダラの他に,スズキ,カレイ・ヒラメ,カスベ(えい),海底魚(アイナメやメバルなど)などが挙げられます。これらの海産魚の放射性セシウム汚染は,福島・宮城・茨城沖合で獲れるものに限らず,広く東日本の太平洋域に広がっています。それから,茨城県産の魚介類についても,福島県産ほどではありませんが,多くの魚介類に放射性セシウムが検出されています。私は,茨城県沖や宮城県沖についても,福島県沖と同様に,当分の間は漁業をやめるべきであると考えております(当然,加害者・東京電力や事故責任者・国が漁業者に万全の賠償・補償をし,移転・移住の支援を行うべきです)。

 それから,淡水魚については,上記の通り危険信号が出ています。ウナギはいけません。資源の面から見てもウナギは絶滅の危機にあり,当分の間,食するのをやめましょう。

 

(4)2013829日 食品中の放射性物質の検査結果について(第716報)

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000019311.html

 

 神奈川県    牛肉   北海道川上郡標茶町産 56ベクレル/kg

 福島県南相馬市 かぼちゃ            16ベクレル/kg

 同 上     オクラ              9.4ベクレル/kg

 同 上     ニガウリ            11ベクレル/kg

 福島県南相馬市 カボス             65ベクレル/kg

 

 <コメント>

 神奈川県の,おそらくは流通過程での抜き取り検査で発覚したのであろうこの牛肉の放射性セシウム汚染はいったいどうしたことでしょうか。規制値を下回っているとはいえ,これは危険物です。しかし,我々が分かるのはこれだけのことで,何故,神奈川県はこれについて詳細を発表しないのでしょう? 検査したのは「県衛生研究所」とあります。そもそもどこの市町村で抜き取ったのかもわからないし,それ以上に,産地が北海道の川上郡標茶町(釧路市の北,丹頂ヅルの飛来地)だというのですから,何故? と聞きたくなります。北海道の牛の肉が何故こんなに汚染しているの? 何故? 何故? これははっきりさせないといけないことではないですか? だって汚染している牛は,この発見されたものだけではないかもしれませんから。

 

 それから南相馬市の野菜類の汚染ですが,やはり上記の小麦の汚染と同様に,南相馬市での農業には無理があるように思えます。カボスなどは危険ゾーンの汚染度です。これだけの汚染が検出されると,作付をしている生産者・農家の放射線被曝が非常に心配になります。「食べて応援,買って支援」することは,生産者・農家を恒常的な低線量被曝(外部被曝・内部被曝=特に呼吸被ばく)の状況下に縛り付けることを意味するのです。何の「支援・応援」なのか,わかりません。 

 

2.昨今の新聞情報から

(1)被災漁船,気仙沼,沖縄,尖閣を経て福井沖で回収(河北 2013.8.31

 http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/nation/incident/20130829k0000e040263000c.html

 

 ネット上の記事は毎日新聞の同主旨のものです。驚くべきか,東日本大震災により気仙沼沖で行方不明になった漁船が,太平洋をぐるっと回って,沖縄 ⇒ 尖閣諸島沖 ⇒ 経由で日本海の福井県沖にたどりつき,ようやく回収されて気仙沼に帰ってきたという話です。美談として記事を読むのはいいのですが,漁船がそうなら,汚染水も,魚類も,プランクトンやその他の海洋生物も,同じように海を広い範囲で動きまわっていておかしくないでしょう。少し前には,福島県沖のヒラメが,北海道の東・太平洋沿岸で発見されたとの業界記事を見たことがあります。海に「境界」はありません。このままでは,日本の海は東京電力に殺されます。

 

(2)被ばく不安,果樹農家(東京新聞 2013.7.30

 http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/tohokujisin/fukushima_report/list/CK2013073002000171.html

 

「除染作業が進む中で、年間一ミリシーベルト以下の環境に戻すのは難しいことがわかってきた。ゼネコン頼みの除染は、技術と費用の両面で行き詰まったのだ。別の方策を探るときだろう」との記載があります。

 

 全くその通りです。マスコミの記事が,生産者・農家の農作業に伴う放射線被曝への懸念を取り上げるのは珍しいと言えます。東京新聞らしいと言っていいでしょうか。(この記事は東京新聞の福島特別支局の記事のようです。ようやく東京新聞も福島に出先をつくったようです)

 

(3)食卓の魚は大丈夫か(毎日新聞夕刊 2013.9.3

 http://mainichi.jp/feature/news/20130903dde012040014000c.html

 

 記事に出てくる2人の学者=神田穣太東京海洋大学教授と水口憲哉東京海洋大学名誉教授の話には耳を傾けてもいいかもしれません。デモ,私には,素直に「はいそうですね」とはとても言えない不信感がある。そもそも,魚介類・水産物の汚染検査や生態系調査が全く不十分なのではないですか? そんな中で,あまりにはっきりと安全を言う人,信用し難いですね。少なくとも,私が下記に書いているような飲食にかかる放射能検査・汚染対策についての抜本改善を,大学教授の皆さんにも提言していただきたいものです。

 

(神田穣太東京海洋大学教授の発言を抜粋)

「警戒すべきはセシウムだけではない。骨への蓄積が懸念されるストロンチウム90が港湾内で検出されている。神田教授によると、減少ペースはセシウムよりストロンチウムの方が遅い。「港湾内に流れ込むセシウムの量が1日30億ベクレルとすれば、最低でもその3倍のストロンチウムが流れ込んでいる。セシウムより土に吸着されにくいので、湾内に流出しやすいからかもしれません」。原発敷地内の地上タンクに保管中の汚染水には特に高濃度のストロンチウム90が含まれる。地上タンクについては8月20日、300トンもの汚染水漏れが発覚した。「まだ魚への影響が出ていないとしても、ストロンチウムのモニタリングを強化すべきだ」と神田教授は強調する。」

 

(水口憲哉東京海洋大学名誉教授の発言を抜粋)

「「小さな子どもには国の基準値の10分の1、1キロ当たり10ベクレル以下の魚を食べさせた方がいい」と言い、現在は流通していない福島県を除いて、主に隣県の宮城、茨城の底魚の数値に注意すべきだと説く。」

 

 <少なくとも現段階で取られるべき行政的措置>

 現状でのいい加減極まる食品の残留放射能検査体制を抜本的に改め,消費者・国民の命と健康をしっかり守るため,少なくとも下記のような行政的対応が必要不可欠かと思われる。科学的な実証的根拠もなく飲食の安全・安心キャンペーンが繰り返され,かつ加害者・東京電力や事故責任者・国の賠償・補償負担を軽減するためという,本当の目的を隠蔽したまま「食べて応援,買って支援」などのインチキ宣伝がなされている今の異常な事態は早期に解消し,事故後2年半経過した今を持ってしても,依然として無用の被曝の危険にさらされている消費者・国民に,「本当のこと」を伝えていく必要がある。

 

(1)検査数や検査品目を抜本的に増やすこと(現状は検査対象が牛肉やコメや特定の水産物などの特定品目に極度に偏っていて,かつ検査件数が少なすぎるため,食品の汚染状況の全体像は分からない:少なくとも全流通品の半数以上のロット検査を行うこと,生産者段階だけでなく流通過程での抜き取り検査も抜本的に拡大すること,加工食品や外食の検査を業者任せにせず行政が主体的に計画的に実施すること)

 

(2)放射性セシウム以外の放射性物質についても綿密な検査を行うこと(特にベータ核種=放射性ストロンチウム等やアルファ核種=プルトニウム等)。政府は福島第1原発事故により環境に放出された全ての放射性核種を,娘核種や孫核種なども含めて明らかにし,その放出推定量,並びに各核種ごとの物理学的(半減期や崩壊系列等),化学的(類似元素等),生物学的(生物体内での挙動等)特性を消費者・国民に対して説明し,放射線被曝防止の観点より留意すべきことを明らかにすること

 

(3)検査状況の第三者による抜き打ち検査,検査に関連した利益相反の排除,検査サンプルの抽出の適正性確認など,検査の適正化をはかる仕組みを導入するとともに,検査結果を含め,全ての事項を公開すること(検査結果は原則表示する)。

 

(4)学校給食は,すべての放射性物質について,いわゆる「ゼロベクレル」とすること。放射性セシウムだけではありません。

 

(5)検査体制(人員・検査機器・予算等)の抜本的な拡充を図ること

 

(6)飲食のみならず,その周辺(食器,肥料,飼料,木材・燃料,医薬品,皮革,調味料,化粧品,食料助材(ぬか等)等)も検査すること

 

(7)飲食にかかる規制値をさらに引き下げるとともに,子どもなどの放射線感受性の高い世代へのより厳しい規制値を定め,それにより被害を受ける生産者や流通業者・加工業者などの関係者に対して万全の賠償・補償を行うこと(国が立て替えよ)

 

(8)食品偽装や規制値を超える汚染食品を意図的に流通させたものに対する厳しい罰則(経済的制裁)

早々

 

 

2013年9月 3日 (火)

福島第1原発事故の実態は依然としてよく分からない,「放射能の濃い霧」の中だ

前略,田中一郎です。

 

 別添PDFファイル4つ(添付できませんでした)は,ごく最近の福島第1原発の現状に関する新聞報道を若干集めたものです。これらを見ると,福島第1原発の現状や,それを巡る愚かな人間達の作為が少し見えてきて,ある程度の事故の教訓のようなものを感じることができますが,しかし,依然として福島第1原発で何が起きていたのか,今どういう状態なのかは「濃い霧」の中です。東京電力や原子力ムラ代理店政府によって隠蔽されている気配も濃厚です。

 

 <別添PDFファイル>

(1)原子力学会「汚染水は薄めて海へ捨てろ」(東京 2013.9.3

(2)ビデオは語る「弁の回路 死んじゃいました」(東京 2013.8.29

(3)3号機湯気,最大2170mSv(東京 2013.7.24

(4)溶けた燃料はどこにある? (河北新報 2013.8.30

 

(1)原子力学会「汚染水は薄めて海へ捨てろ」(東京 2013.9.3

 http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013090201002330.html

 http://getnews.jp/archives/410017

 

 溶融核燃料を冷却した汚染水がたまる一方の福島第1原発だが,他方では,東京電力によるケチケチ作戦のため,あちこちでいい加減な間に合わせの管理のボロが出始め,海への放射能汚染水漏れが止まらない。太平洋は日々,猛烈な放射能で汚染され続けていく。そんな中,原子力学会という典型的な御用学会が,あまりにもバカバカしい,子ども騙しのような提言を発表した。

 

 その提言によれば,トリチウム以外の放射性物質は浄化装置アルプスで濃度を下げたうえで,猛烈なトリチウムは取り除けないまま,汚染水とともに海へ捨ててしまえ,とのことだ。捨てるに当たっては,トリチウムの濃度を下げるために「薄めて」捨てろ,と提言している。これがまともな物理学者・原子力学者の言うことか。

 

 薄めようが,何をしようが,結果的に全部海に捨てるのなら,そんな手間暇かけたってしょうがない。全部捨てることに変わりはないのだから,すべてのトリチウムは海に行ってしまう。薄める水だって,所詮は海から蒸発した水が雨になって地上に降り注いだものだから,薄めようが濃縮しようが,そんなことは海に全部捨てる以上,人間の慰みもの以外の何物でもない。

 

 この屁理屈が通るのなら,トリチウム以外の他の放射能だって同じことだ。みんな薄めて海に捨ててしまえということになる。こんなことをよく真顔で提言するものだ。この学会の連中,本当に根っからの阿呆か,それとも頭がおかしいのか? こういう馬鹿な提言をするから,たとえば農林水産省のように,放射能に汚染された農林水産汚染物は,肥料だろうが,餌料だろうが,木材だろうが,牛乳だろうが,汚染していないものと混ぜて薄めれば,どんどん使っていい,飲んで食べていい,などと言い出すのだ。

 

 記事の終りの方には,「国会事故調が指摘した地震による重要機器の破損の可能性は,東電のデータなどから「健全性は保たれた」と否定した,とある。はて,原子力学会というのは科学の学界ではなく,宗教団体か何かの「学会」なのか。福島第1原発事故の現場検証もできていない,機器破損がなければ説明がつきにくいいくつかの事態への言及もない,空気圧で動かすベント弁やその他の制御系が動かなかったことも地震の揺れによる破損の可能性大だ,などなど,機器破損の有無についての実証性が乏しい中で,この「原子力学会」という宗教団体は何のアホダラ教を持ち出しているのだろうか。

 

 そもそも事故を起こした東京電力のデータがそのまま信用できるのか? 東京電力の出している事故時における各号機の原子炉の状況の経時的推移などは,改ざんに次ぐ改ざんで,全く信用できないとも聞く。そもそも原子力学会は,自身の判断の根拠にした東京電力の出しているデータを疑ってかかったのか?

 

 私の故郷・大阪難波のじゃりんこ達は,よくいやなものを見ると「やめて,染めて,薄めて消えて」と悪罵を投げつける。本来なら放射能汚染に対して「やめて,染めて,薄めて消えて」とやりたいところだが,それは放射能の場合にはよろしくない。「薄めて消して」はいけないのである。ここはひとつ,この原子力学会とその阿呆どもにこの悪罵を投げつけようではないか。「やめて,染めて,薄めて消えて」

 

(1-2)福島第一タンク漏水,300トン,不安な行方,海流出確実,一部地中に

 それから,この記事の左横「300トン,不安な行方,海流出確実,一部地中に」という記事にも着目願いたい。ネット上に記事がないので,下記に一部抜粋して引用してみる。

 

「だが,東電は海水中のストロンチウムなどの濃度が上昇していないことを根拠に,外洋汚染を認めていない。海水は排水溝出口から南に300m以上離れたところで採取しており,海の動きで急速に拡散してしまう。」

 

「排水溝出口の海岸には小さな砂浜があり,そこの砂を調べれば事態ははっきりするはずだが,東電は「検討する」ばかりだ。」

 

「タンク群より海側の井戸では,漏えい発覚前より2~16倍の放射性トリチウムが検出されるなど,漏れた処理水が地中で拡散している可能性もある」

 

「東電はタンク群近くでボーリング(掘削)調査をし,地下水位まで到達しているかどうか調べるが,まだ結果は出ていない。」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・(以上,抜粋引用終わり)

 

 上記の記述の中では,「排水溝出口の海岸には小さな砂浜があり,そこの砂を調べれば事態ははっきりするはずだ」が重要である。更に申し上げれば,その砂浜にアサリやシジミや海藻など,定着性の生物を撒いて,その生物群にどんな放射性物質がどの程度蓄積していくかを定期的に,ロングランで調査していくべきである。

 

 また,最後の地下水調査のためのボーリング調査だが,そもそも東京電力の現在のスタッフたちは,福島第1原発が建設されたときの地下水の制御について,どのように設計されていたかを把握していないし,そもそも地下水の制御・管理をゼネコンなどの土建業者に丸投げしてきた気配が感じられる。

 

 原発敷地地下の地下水の流れや動向を探るには,相当数の地下水モニタリング用の掘削井戸がなければならないはずだが,現状では,元々あった井戸はわずか数本しかなく,汚染水問題が表面化してからあわてて,井戸を掘り始めているらしいという情報を昨今得た。これでは地下水の動きをつかめるはずもなく,地下水の方が東京電力よりもはるかに頭がいいのだから,汚染が海に広がるのは防げるはずもない。

 

 危険極まる溶出した原子炉炉心に大量の水をぶっかけるといういうことをやるというのに,その水がどこへどう流れていくかを考えることもなく,地下水の動向に注意も払ってこなかったことが,このことでよくわかる。注意を払っていれば,ただちに地下水観測用の井戸をたくさん掘削していたはずだ。そもそも,こんな連中に原発など管理できるはずもない。

 

 <汚染水がどのように海や環境に拡散していくか>

 ここで「汚染水がどのように海や環境に拡散していくか」を簡単に箇条書きにしておきたい。このいくつかについては,全くその可能性が考慮に入れられておらず,近い将来,大問題として浮上してくる可能性は高い。

 

(A)排水溝など,地上を流れた汚染水が海に出ていく

(B)地下水に混じり込み,その地下水が原発敷地の海水面下の壁から滲み出て海に出ていく

(C)上記の汚染地下水が,海底を通じて海の底まで浸出していき,海の中で海底から「泉」のように汚染水が湧き出てくる

(D)地上を流れる・地上にたまる汚染水が蒸発し,水蒸気やミスト(霧)などとなって空気中を漂う

(E)海に入った放射性物質が,その後海面から蒸発し,霧や水滴に混じって海風に乗り,再び陸を襲う(放射性ミストが沿岸を襲う)

(F)地下水の汚染は,その全てが海に行くとは限らない。東西南北,汚染水は自在に地中を動いて原発周辺の地下汚染を広げる

 

(2)ビデオは語る「弁の回路 死んじゃいました」(東京 2013.8.29

 この記事は,東京電力がだいぶ前に発表したTV会議システムにある(本店と福島第1原発間の)やりとりを活字化して記事にしたもので,毎日4面に掲載されているもの。別添したこの日の記事のポイントは次の2つの会話である。

 

●第一社員「PCV(格納容器)ベント(排気)弁の回路が,(3号機の)爆発で死んじゃいました。復旧させないと弁があかないんで早急に対応します」

 

 ⇒ これは,原発を同じ敷地に何基も隣接させてつくってきたことの危険性が顕在化したものと考えるべきである。実は本日付の東京新聞の同様の記事にも「吉田昌郎福島第1所長:今回の3号機の爆発で予想以外にいろいろなものが壊れている可能性があります。これは使えるだろうと思いこまないで,丁寧に見て下さい。」という吉田所長の発言が記載されていた。

 

 要するに,1か所にいくつもいくつも原発を並べて建てるな,ということである。しかし,この教訓は,このほど原子力「寄生」委員会・「寄生」庁によって制定された原発の新規制基準の中には反映されていないようである。

 

●吉田昌郎福島第1所長「かなり緊急度の高いのは2号機のブローアウトパネル(原子炉建屋から水素を抜くための窓)。今回のようなことにならないためにも」

 

 ⇒ 原子炉建屋の上部に取り付けられている「窓」から,発生した水素ガスを大気中に逃がすために,早く窓を開けなくてはならない,というのが吉田所長の発言の主旨である。ということは,この時は2号機の原子炉建屋では,この窓が閉まったままだったということである。窓を開けるための制御系装置が,地震による破壊・破損のため(例えば空気圧で動かす装置には,そのための空気を送るパイプなどの装備が付いているが,それが地震で破損・破壊し空気が抜けてしまった等),あるいは停電のため,あるいは隣接原子炉の爆発の影響で動かなくなってしまい,人間が手動で開けに行くにも建屋の中の放射能の値が大きくて近づけない,そういう事態に陥っていたのではないか。

 

 つまり,建屋には水素ガスを抜くための「窓」を用意するだけでなく,これが必要とあらば,いかなる場合でも人間が自由に開けたり閉めたりできる仕組みがないといけない(たとえば建屋の外から紐を引っ張る,など)。2号機について,これがうまくいかなかった,あるいは苦労した,というのは,そういう危機時における装置の有効性についての考えが足りなかった,ということを意味している。

 

(3)湯気発生の3号機5階,最大2,170ミリシーベルト計測 福島第1(東京

2013.7.24

 

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2013072402100012.html

 

 3号機の放射能汚染が猛烈である。記事によれば,湯気の発生現場近くの25カ所で放射線量を計測。毎時1372,170mSvを計測したという。3号機ではこれまで,格納容器近くの床で毎時4,780mSvを計測するなど現場の線量が作業の障壁となっている。

 

 これは,前々から申し上げているように,3号機の爆発が単純な水素爆発ではなく,使用済み核燃料プール内のプルトニウム燃料などの臨界核爆発だった可能性を示唆している。3号機はそもそも,プルトニウム燃料をたくさん使う,いわゆる「プルサーマル炉」だった。

 

 政府のIAEA提出の報告書では,福島第1原発で最も大量に放射能を環境に放出したのは2号機で,その量は全体の80%超とされていたが,それさえも3号機の核爆発による放射能汚染を隠蔽する作為だった可能性を否定できない。その証拠に,未だその2号機が今現在どうなっているのかが分からないままだし,調査される気配もない。最も大量に放射能を出したのなら,真っ先に優先的に調査が入ってもおかしくはないはずだ(無人調査を含めて)。

 

 <福島第1原発3号機が核爆発である可能性の根拠>

 下記はある方よりいただいた資料である(別添PDFファイルの2枚目)。

 

<1>ピカッと光った後の黒煙(きのこ雲) VS 水素爆発は水蒸気の断熱膨張(白煙)

<2>飯館村、米国まで飛散したプルトニウム

<3>屋根フレーム鉄骨が飴細工のようにひん曲がっている。VS 水素爆発(福島1号・4)の場合は、超高温にはならず、発生熱量も少なく、フレーム鉄骨自体は曲らない。

<4>福島3号の使用済み核燃料プール床面に燃料被覆管破片が発見された(無人ヘリコプター撮影)VS 水素爆発の場合は、水中にある使用済み核燃料は無傷

<5>福島3号きのこ雲からの落下瓦礫により3号ターピン建屋屋根に大穴2個(直径14mと直径4m)。屋根修理の作業員が12mSvの被ばく。VS 水素爆発では、大量放射能なし。

<6>2013723日、24日に、東電が、福島3号機コンクリートシールドプラグ周辺の雰囲気線量測定し、最大値2,170mSv/時を確認した。高放射線源の場所は,コンクリートシールドプラグ上の瓦礫集積場所であった。コンクリートシールドプラグ上の瓦礫は,使用済み核燃料プール核爆発で生じたものと推定できる。高放射線源は、瓦礫中の核燃料ペレットである可能性大。

 

(4)溶けた燃料はどこにある? (河北新報 2013.8.30

 この河北新報の記事に見出しは「溶けた核燃料,格納容器に,1・2号機,東電分析」とある。記事の主旨は,東京電力が,1号機及び2号機のトーラス室(圧力抑制室の上部)の堆積物に含まれるアメリシウム241が「検出されなかった」とする分析結果を公表した,アメリシウム241はプルトニウム241の核分裂反応で生成されるもので,これがトーラス室になかったということは,核燃料が溶け落ちて固まった燃料デブリが原子炉格納容器にとどまっている可能性を示している,とのこと。他方で,同じ核分裂生成物のセリウム144は,1,2号機ともに検出された。東電は「何らかの経路で燃料から放出された」とみている,とある。

 

 どうもよくわからない。プルトニウム241の核分裂生成物のアメリシウム241だけを見て,これがトーラス室にないから,溶け落ちた燃料は,まだ格納容器内にある,というのは少し乱暴なのではないか。それ以外の核種にも着目して,緻密に考える必要がある。アメリシウムにしろ,セリウムにしろ,あまりなじみのない放射性物質だ。マスコミはこういう記事を書く時には,他の御用ではない科学者に,この論証の是非をチェックしてもらってほしい。

 

 素朴に考えると,近い将来,格納容器外に漏れていました,なんてことになりかねない。事故を小さく見せようとするのではなく,廃炉や後始末の参考になるよう,オネストベースでの情報が欲しいところだ。

 

 それから,私は常々,何度も申し上げているのだが,アメリシウムにせよ,セリウムにせよ,福島第1原発事故に伴い環境に放出された放射性物質・核種について,その娘核種や孫核種なども含め,日本政府や日本の科学者たちは,何故,丁寧に詳細に説明しようとしないのか。放射性セシウムや放射性ヨウ素だけでなく,全部で数百種類以上の放射性核種が環境に放出されているのだから,その推定放出量とともに,各核種ごとに物理学的,化学的,生物学的な特性について説明してもらわなければ,事故による放射能汚染に対して正確な認識ができないではないか。日本の科学者たちは,いったい何をしているのか!!

 

(たとえば,各放射性核種の崩壊系列と娘核種・孫核種,半減期,放出する放射線の種類とエネルギーなど(物理学的特性),娘核種や孫核種を含む各放射性核種核種の化学的特性(たとえばどの元素に似ているか)や存在形態(固体か液体か気体か)など,更には,植物を含む生物=つまりは人間の食べ物をどのように汚染するか,どこに多く集積したり滞留したりするか,人間のどの臓器や部位が危ないか,などなど)

早々

 

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