福島第1原発事故の実態は依然としてよく分からない,「放射能の濃い霧」の中だ
前略,田中一郎です。
別添PDFファイル4つ(添付できませんでした)は,ごく最近の福島第1原発の現状に関する新聞報道を若干集めたものです。これらを見ると,福島第1原発の現状や,それを巡る愚かな人間達の作為が少し見えてきて,ある程度の事故の教訓のようなものを感じることができますが,しかし,依然として福島第1原発で何が起きていたのか,今どういう状態なのかは「濃い霧」の中です。東京電力や原子力ムラ代理店政府によって隠蔽されている気配も濃厚です。
<別添PDFファイル>
(1)原子力学会「汚染水は薄めて海へ捨てろ」(東京 2013.9.3)
(2)ビデオは語る「弁の回路
死んじゃいました」(東京 2013.8.29)
(3)3号機湯気,最大2170mSv(東京 2013.7.24)
(4)溶けた燃料はどこにある?
(河北新報 2013.8.30)
(1)原子力学会「汚染水は薄めて海へ捨てろ」(東京 2013.9.3)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013090201002330.html
http://getnews.jp/archives/410017
溶融核燃料を冷却した汚染水がたまる一方の福島第1原発だが,他方では,東京電力によるケチケチ作戦のため,あちこちでいい加減な間に合わせの管理のボロが出始め,海への放射能汚染水漏れが止まらない。太平洋は日々,猛烈な放射能で汚染され続けていく。そんな中,原子力学会という典型的な御用学会が,あまりにもバカバカしい,子ども騙しのような提言を発表した。
その提言によれば,トリチウム以外の放射性物質は浄化装置アルプスで濃度を下げたうえで,猛烈なトリチウムは取り除けないまま,汚染水とともに海へ捨ててしまえ,とのことだ。捨てるに当たっては,トリチウムの濃度を下げるために「薄めて」捨てろ,と提言している。これがまともな物理学者・原子力学者の言うことか。
薄めようが,何をしようが,結果的に全部海に捨てるのなら,そんな手間暇かけたってしょうがない。全部捨てることに変わりはないのだから,すべてのトリチウムは海に行ってしまう。薄める水だって,所詮は海から蒸発した水が雨になって地上に降り注いだものだから,薄めようが濃縮しようが,そんなことは海に全部捨てる以上,人間の慰みもの以外の何物でもない。
この屁理屈が通るのなら,トリチウム以外の他の放射能だって同じことだ。みんな薄めて海に捨ててしまえということになる。こんなことをよく真顔で提言するものだ。この学会の連中,本当に根っからの阿呆か,それとも頭がおかしいのか? こういう馬鹿な提言をするから,たとえば農林水産省のように,放射能に汚染された農林水産汚染物は,肥料だろうが,餌料だろうが,木材だろうが,牛乳だろうが,汚染していないものと混ぜて薄めれば,どんどん使っていい,飲んで食べていい,などと言い出すのだ。
記事の終りの方には,「国会事故調が指摘した地震による重要機器の破損の可能性は,東電のデータなどから「健全性は保たれた」と否定した,とある。はて,原子力学会というのは科学の学界ではなく,宗教団体か何かの「学会」なのか。福島第1原発事故の現場検証もできていない,機器破損がなければ説明がつきにくいいくつかの事態への言及もない,空気圧で動かすベント弁やその他の制御系が動かなかったことも地震の揺れによる破損の可能性大だ,などなど,機器破損の有無についての実証性が乏しい中で,この「原子力学会」という宗教団体は何のアホダラ教を持ち出しているのだろうか。
そもそも事故を起こした東京電力のデータがそのまま信用できるのか? 東京電力の出している事故時における各号機の原子炉の状況の経時的推移などは,改ざんに次ぐ改ざんで,全く信用できないとも聞く。そもそも原子力学会は,自身の判断の根拠にした東京電力の出しているデータを疑ってかかったのか?
私の故郷・大阪難波のじゃりんこ達は,よくいやなものを見ると「やめて,染めて,薄めて消えて」と悪罵を投げつける。本来なら放射能汚染に対して「やめて,染めて,薄めて消えて」とやりたいところだが,それは放射能の場合にはよろしくない。「薄めて消して」はいけないのである。ここはひとつ,この原子力学会とその阿呆どもにこの悪罵を投げつけようではないか。「やめて,染めて,薄めて消えて」
(1-2)福島第一タンク漏水,300トン,不安な行方,海流出確実,一部地中に
それから,この記事の左横「300トン,不安な行方,海流出確実,一部地中に」という記事にも着目願いたい。ネット上に記事がないので,下記に一部抜粋して引用してみる。
「だが,東電は海水中のストロンチウムなどの濃度が上昇していないことを根拠に,外洋汚染を認めていない。海水は排水溝出口から南に300m以上離れたところで採取しており,海の動きで急速に拡散してしまう。」
「排水溝出口の海岸には小さな砂浜があり,そこの砂を調べれば事態ははっきりするはずだが,東電は「検討する」ばかりだ。」
「タンク群より海側の井戸では,漏えい発覚前より2~16倍の放射性トリチウムが検出されるなど,漏れた処理水が地中で拡散している可能性もある」
「東電はタンク群近くでボーリング(掘削)調査をし,地下水位まで到達しているかどうか調べるが,まだ結果は出ていない。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・(以上,抜粋引用終わり)
上記の記述の中では,「排水溝出口の海岸には小さな砂浜があり,そこの砂を調べれば事態ははっきりするはずだ」が重要である。更に申し上げれば,その砂浜にアサリやシジミや海藻など,定着性の生物を撒いて,その生物群にどんな放射性物質がどの程度蓄積していくかを定期的に,ロングランで調査していくべきである。
また,最後の地下水調査のためのボーリング調査だが,そもそも東京電力の現在のスタッフたちは,福島第1原発が建設されたときの地下水の制御について,どのように設計されていたかを把握していないし,そもそも地下水の制御・管理をゼネコンなどの土建業者に丸投げしてきた気配が感じられる。
原発敷地地下の地下水の流れや動向を探るには,相当数の地下水モニタリング用の掘削井戸がなければならないはずだが,現状では,元々あった井戸はわずか数本しかなく,汚染水問題が表面化してからあわてて,井戸を掘り始めているらしいという情報を昨今得た。これでは地下水の動きをつかめるはずもなく,地下水の方が東京電力よりもはるかに頭がいいのだから,汚染が海に広がるのは防げるはずもない。
危険極まる溶出した原子炉炉心に大量の水をぶっかけるといういうことをやるというのに,その水がどこへどう流れていくかを考えることもなく,地下水の動向に注意も払ってこなかったことが,このことでよくわかる。注意を払っていれば,ただちに地下水観測用の井戸をたくさん掘削していたはずだ。そもそも,こんな連中に原発など管理できるはずもない。
<汚染水がどのように海や環境に拡散していくか>
ここで「汚染水がどのように海や環境に拡散していくか」を簡単に箇条書きにしておきたい。このいくつかについては,全くその可能性が考慮に入れられておらず,近い将来,大問題として浮上してくる可能性は高い。
(A)排水溝など,地上を流れた汚染水が海に出ていく
(B)地下水に混じり込み,その地下水が原発敷地の海水面下の壁から滲み出て海に出ていく
(C)上記の汚染地下水が,海底を通じて海の底まで浸出していき,海の中で海底から「泉」のように汚染水が湧き出てくる
(D)地上を流れる・地上にたまる汚染水が蒸発し,水蒸気やミスト(霧)などとなって空気中を漂う
(E)海に入った放射性物質が,その後海面から蒸発し,霧や水滴に混じって海風に乗り,再び陸を襲う(放射性ミストが沿岸を襲う)
(F)地下水の汚染は,その全てが海に行くとは限らない。東西南北,汚染水は自在に地中を動いて原発周辺の地下汚染を広げる
(2)ビデオは語る「弁の回路
死んじゃいました」(東京 2013.8.29)
この記事は,東京電力がだいぶ前に発表したTV会議システムにある(本店と福島第1原発間の)やりとりを活字化して記事にしたもので,毎日4面に掲載されているもの。別添したこの日の記事のポイントは次の2つの会話である。
●第一社員「PCV(格納容器)ベント(排気)弁の回路が,(3号機の)爆発で死んじゃいました。復旧させないと弁があかないんで早急に対応します」
⇒ これは,原発を同じ敷地に何基も隣接させてつくってきたことの危険性が顕在化したものと考えるべきである。実は本日付の東京新聞の同様の記事にも「吉田昌郎福島第1所長:今回の3号機の爆発で予想以外にいろいろなものが壊れている可能性があります。これは使えるだろうと思いこまないで,丁寧に見て下さい。」という吉田所長の発言が記載されていた。
要するに,1か所にいくつもいくつも原発を並べて建てるな,ということである。しかし,この教訓は,このほど原子力「寄生」委員会・「寄生」庁によって制定された原発の新規制基準の中には反映されていないようである。
●吉田昌郎福島第1所長「かなり緊急度の高いのは2号機のブローアウトパネル(原子炉建屋から水素を抜くための窓)。今回のようなことにならないためにも」
⇒ 原子炉建屋の上部に取り付けられている「窓」から,発生した水素ガスを大気中に逃がすために,早く窓を開けなくてはならない,というのが吉田所長の発言の主旨である。ということは,この時は2号機の原子炉建屋では,この窓が閉まったままだったということである。窓を開けるための制御系装置が,地震による破壊・破損のため(例えば空気圧で動かす装置には,そのための空気を送るパイプなどの装備が付いているが,それが地震で破損・破壊し空気が抜けてしまった等),あるいは停電のため,あるいは隣接原子炉の爆発の影響で動かなくなってしまい,人間が手動で開けに行くにも建屋の中の放射能の値が大きくて近づけない,そういう事態に陥っていたのではないか。
つまり,建屋には水素ガスを抜くための「窓」を用意するだけでなく,これが必要とあらば,いかなる場合でも人間が自由に開けたり閉めたりできる仕組みがないといけない(たとえば建屋の外から紐を引っ張る,など)。2号機について,これがうまくいかなかった,あるいは苦労した,というのは,そういう危機時における装置の有効性についての考えが足りなかった,ということを意味している。
(3)湯気発生の3号機5階,最大2,170ミリシーベルト計測 福島第1(東京
2013.7.24)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2013072402100012.html
3号機の放射能汚染が猛烈である。記事によれば,湯気の発生現場近くの25カ所で放射線量を計測。毎時137~2,170mSvを計測したという。3号機ではこれまで,格納容器近くの床で毎時4,780mSvを計測するなど現場の線量が作業の障壁となっている。
これは,前々から申し上げているように,3号機の爆発が単純な水素爆発ではなく,使用済み核燃料プール内のプルトニウム燃料などの臨界核爆発だった可能性を示唆している。3号機はそもそも,プルトニウム燃料をたくさん使う,いわゆる「プルサーマル炉」だった。
政府のIAEA提出の報告書では,福島第1原発で最も大量に放射能を環境に放出したのは2号機で,その量は全体の80%超とされていたが,それさえも3号機の核爆発による放射能汚染を隠蔽する作為だった可能性を否定できない。その証拠に,未だその2号機が今現在どうなっているのかが分からないままだし,調査される気配もない。最も大量に放射能を出したのなら,真っ先に優先的に調査が入ってもおかしくはないはずだ(無人調査を含めて)。
<福島第1原発3号機が核爆発である可能性の根拠>
下記はある方よりいただいた資料である(別添PDFファイルの2枚目)。
<1>ピカッと光った後の黒煙(きのこ雲) VS 水素爆発は水蒸気の断熱膨張(白煙)
<2>飯館村、米国まで飛散したプルトニウム
<3>屋根フレーム鉄骨が飴細工のようにひん曲がっている。VS
水素爆発(福島1号・4号)の場合は、超高温にはならず、発生熱量も少なく、フレーム鉄骨自体は曲らない。
<4>福島3号の使用済み核燃料プール床面に燃料被覆管破片が発見された(無人ヘリコプター撮影)VS
水素爆発の場合は、水中にある使用済み核燃料は無傷
<5>福島3号きのこ雲からの落下瓦礫により3号ターピン建屋屋根に大穴2個(直径14mと直径4m)。屋根修理の作業員が12mSvの被ばく。VS 水素爆発では、大量放射能なし。
<6>2013年7月23日、24日に、東電が、福島3号機コンクリートシールドプラグ周辺の雰囲気線量測定し、最大値2,170mSv/時を確認した。高放射線源の場所は,コンクリートシールドプラグ上の瓦礫集積場所であった。コンクリートシールドプラグ上の瓦礫は,使用済み核燃料プール核爆発で生じたものと推定できる。高放射線源は、瓦礫中の核燃料ペレットである可能性大。
(4)溶けた燃料はどこにある?
(河北新報 2013.8.30)
この河北新報の記事に見出しは「溶けた核燃料,格納容器に,1・2号機,東電分析」とある。記事の主旨は,東京電力が,1号機及び2号機のトーラス室(圧力抑制室の上部)の堆積物に含まれるアメリシウム241が「検出されなかった」とする分析結果を公表した,アメリシウム241はプルトニウム241の核分裂反応で生成されるもので,これがトーラス室になかったということは,核燃料が溶け落ちて固まった燃料デブリが原子炉格納容器にとどまっている可能性を示している,とのこと。他方で,同じ核分裂生成物のセリウム144は,1,2号機ともに検出された。東電は「何らかの経路で燃料から放出された」とみている,とある。
どうもよくわからない。プルトニウム241の核分裂生成物のアメリシウム241だけを見て,これがトーラス室にないから,溶け落ちた燃料は,まだ格納容器内にある,というのは少し乱暴なのではないか。それ以外の核種にも着目して,緻密に考える必要がある。アメリシウムにしろ,セリウムにしろ,あまりなじみのない放射性物質だ。マスコミはこういう記事を書く時には,他の御用ではない科学者に,この論証の是非をチェックしてもらってほしい。
素朴に考えると,近い将来,格納容器外に漏れていました,なんてことになりかねない。事故を小さく見せようとするのではなく,廃炉や後始末の参考になるよう,オネストベースでの情報が欲しいところだ。
それから,私は常々,何度も申し上げているのだが,アメリシウムにせよ,セリウムにせよ,福島第1原発事故に伴い環境に放出された放射性物質・核種について,その娘核種や孫核種なども含め,日本政府や日本の科学者たちは,何故,丁寧に詳細に説明しようとしないのか。放射性セシウムや放射性ヨウ素だけでなく,全部で数百種類以上の放射性核種が環境に放出されているのだから,その推定放出量とともに,各核種ごとに物理学的,化学的,生物学的な特性について説明してもらわなければ,事故による放射能汚染に対して正確な認識ができないではないか。日本の科学者たちは,いったい何をしているのか!!
(たとえば,各放射性核種の崩壊系列と娘核種・孫核種,半減期,放出する放射線の種類とエネルギーなど(物理学的特性),娘核種や孫核種を含む各放射性核種核種の化学的特性(たとえばどの元素に似ているか)や存在形態(固体か液体か気体か)など,更には,植物を含む生物=つまりは人間の食べ物をどのように汚染するか,どこに多く集積したり滞留したりするか,人間のどの臓器や部位が危ないか,などなど)
早々
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