必ず見ておいていただきたい本日付(8/30)の新聞記事情報 (コメント付き)
前略,田中一郎です。
別添PDFファイル4つ(添付できませんでした)は,いずれも本日付全国紙の朝刊(2013.8.30)に掲載された記事で,必ず目を通しておいていただきたいものです。以下,簡単にコメントを付してご紹介いたします。
<別添PDFファイル>
(1)被災者支援法,線量基準定めず(毎日新聞 2013.8.30)
(2)汚染水処理設備(ALPS)
国費で増設(日経 2013.8.30)
(3)東海村再処理工場
高レベル放射性廃液,処理に20年(東京新聞 2013.8.30)
(4)化学物質規制,アジアに拡大(日経産業新聞 2013.8.30)
(1)被災者支援法,線量基準定めず(毎日新聞 2013.8.30)
http://mainichi.jp/select/news/20130830k0000m010159000c.html
http://news.nicovideo.jp/watch/nw746072
毎日新聞・日野行介記者の迫真の取材・報道です。よく書けていると思います。先般お送りしたメールの続きです。是非,熟読されてみて下さい。
一つだけ補足説明をしておきますと,先般のメールのFOEジャパンの満田夏花さんのコメント「個人線量計による個人被ばく管理を過大評価すべきでない。政府は、<「場」の線量から「人」の線量へ>をキャッチフレーズに、個人線量計の配布による個人被ばく管理を進めていますが、本来、個人線量計をつけることは、やむをえず高い線量の場所に入るときの被ばく管理のためのはずです。「場」の線量を無視してよいはずはありません。」にもあるように,除染による空間線量低減ができない中で,原子力翼賛政府は,地域住民に放射線被曝を押し付けながら,避難している住民たちを何とか呼び戻そうと「悪知恵」を練りまわしておりましたが,ここにきて,各住民一人一人にポケット線量計のようなものを持たせることで被曝の個人管理を行い,その値が低ければ何の問題もない,という方法を編み出したようです。
何故,かようなひどいことをするのか,それは「(まともに支援をしたら)カネがかかる」からです。原子力ムラ・ゼネコンによる除染や放射能汚染がれきの広域処理については,自分達が潤う話なので,有権者・国民を騙してでも湯水のごとく税金を使うけれど,地域住民や被害者の方々の命や健康を守るためには,あるいは生活や家業の回復・再生のためには,びた一文出したくない,屁もでねえ,ということのようです。これが,霞が関の腐敗官僚たちを使いながら行う自民党政治の赤裸々な本質です。先般の国政選挙で自民党に投票をした有権者・国民は,自分達が投票をした政治家達が何をしているか,どういう魂胆で動いているかをよく見定める必要があるのです。(但し,民主党も似たり寄ったりですので,念のために申し上げておきます)
ところで,空間線量もまた,線量計が鉄板の上に置いてあったり周囲が除染されていたりして,たくさんの計測地点で線量の低い方へのごまかしが発覚していますが,更に今回の政府の基本方針は,個人用線量計の場合には様々な理由で,被ばく実態よりも低い線量値が出てしまう傾向にあることを狙ったものです。単純な線量計なのか,積算線量計なのかで,若干違ってくるとは思いますが,FOEジャパンの満田夏花さんが言うように,こうしたものは「やむをえず高い線量の場所に入るときの被ばく管理のためのはずです」なのです。
それから,個人線量計ではガンマ線による外部被曝の一部が計測できるだけで,内部被曝(ガンマ線以上にアルファ線(プルトニウムやウラン)やベータ線(放射性ストロンチウムやトリチウム)が危険です)はまったく計測できません。内部被曝の場合は,飲食のみならず,呼吸・吸引による被曝の危険性が,現状では最も懸念されるところだと思われます。
みなさま,汚染地域への帰還などは断固として拒否いたしましょう。そして,一に避難,二に避難,三四がなくて五に避難です。そのためにも「原子力事故による子ども・被災者支援法」の基本方針はかようなものであってはなりません。
(2)汚染水処理設備(ALPS)
国費で増設(日経 2013.8.30 他)
http://netnavi.appcard.jp/e/12bw6
福島第1原発から海への放射能汚染水漏れの騒動で,1つだけ,新聞などで報道されていない重要なことがあります。それは,まもなく福島第1原発を大地震・大津波が再び襲う可能性があり,その場合,大地震の方はともかく,大津波に対しては,あの猛烈な放射能を含む間に合わせの小型タンク群ではひとたまりもないだろうということです。少し前のインドネシア・スマトラ沖の大地震と大津波が,約2年を挟んで連続して起きたことを思い出すべきです,
従って,今言われている「海への放射能流出防止」に加えて,同時並行で「大津波対策」=小型汚染水タンクが「桃太郎が生まれた桃」のように,どんぶらこ,と海へ流れていかないような対策をしておかなければなりません。今のままでは,大津波=全汚染水の海への流出,ということになりかねないのです。
対策として考えられるのは
<1>汚染水のタンクの水から,トリチウム以外の放射性物質を一刻も早く除去すること=ALPSを大動員して,とにかくトリチウム以外の放射性物質を取除くことです。ALPSが水漏れしているから使わない,などというのは,ここまでじゃじゃ漏れ状態の中では説得力に欠けています(但し,ALPSの水漏れ対策もしなければいけませんが)。これについて報じられているのが,本日付の日経記事,及び毎日新聞記事です。
*汚染水抜本対策、9月に公表 政府、東電の廃炉会議-
毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/m20130830k0000m010059000c.html
<2>間に合わせの仮設タンクの汚染水を早急に別のタンクへ移す。具体的には,①大型タンカーの使用,②大型備蓄タンクの大増設(敷地は福島第1原発だけでなく福島第2原発も使用),③福島第1原発をとり囲む遮水壁を「鉄板」でつくる(凍土方式はダメ)。④その他(液体危険物の貯蔵に関する専門家で適切な方法を考えて下さい:地下水流出が激しかった青函トンネルをはじめ,過去に多くの土木工事を手掛けてきた日本の技術者達にとって,1日400トン程度の地下水のマネジメントができないはずがありません)
<3>巨大タンク群の設置場所は,津波に襲われない高台であることと,地盤強化をしっかりやること,の2点が必須
<4>凍土方式がダメなのは,メンテナンスが必要な様子がうかがえるため。これから100年以上もかかりそうな廃炉作業を考慮した場合,事後的にかような手間暇やデリケートなメンテが必要となるものは,かえって将来的に負担増となる。そもそも大津波が襲えばひとたまりもない。
<5>トリチウムを含む汚染水は絶対に海へ放出してはならないこと。原発山側から流入してくる水が汚染水になる前に汲み上げて海に放出する,などと,もっともらしいいい加減なことが言われておりますが,こんなのは十中八九,トリチウム汚染水の海洋放出になるのは目に見えています。絶対にダメです。トリチウムは,水と区別がつかないので,全く持って危険です。
<6>東京電力は放射能で汚した海をきれいにすること。汚したものは,汚した奴がきれいにする,ごくごく当たり前のことです。海外に逃げている勝俣恒久元東電会長,清水正孝元社長ら,元東京電力幹部数名を海外から呼び戻し,この海の放射能除去対策に従事させよ。
(3)東海村再処理工場
高レベル放射性廃液,処理に20年(東京新聞 2013.8.30)
*朝日新聞デジタル:「ガラス固化に20年超」 東海再処理施設の放射性廃液 - ニュース
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201308290654.html
*毎日新聞「東海再処理工場の廃液保管状況調査へ」 - リリウムの会 ブログ - Yahoo!ブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/liliumnokai/9977984.html
数日前よりお騒がせしております東海村の高レベル放射性廃液の件です。(独)日本原子力研究開発機構が,またぞろ「冷却ができなくなった場合,24時間で1千億ベクレルの放射性物質が外に放出される可能性がある」「ガラス固化のための全ての処理を終えるのに20年かかる」などと嘘八百をついて,この超危険物の対策を先延ばししようとしております。
冷却できなくなったら,環境や海に出ていく放射性物質の量は「1千億ベクレル」ではなく,1千億ベクレルの1千億倍くらいを見ておかなけれななりません。要するに天文学的な数字だということです。1千億ベクレル程度で済むわけがありません。(1千億=10の12乗,他方で「アボガドロ数」=6.02×10の23乗=1モル=炭素12g)
*アボガドロ数
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9C%E3%82%AC%E3%83%89%E3%83%AD%E5%AE%9A%E6%95%B0
従ってまた,20年かけてゆっくりやりましょう,などと悠長なことは言っておれないのです。(独)日本原子力研究開発機構の馬鹿者どもと心中させられるのはまっぴらごめんです。さすがに原子力「寄生」委員会も,この「20年」の悠長さを問題にしているようです。それにしても,この(独)日本原子力研究開発機構,いつまでウソばっかりついてんだよ!!。まるで「日本ハッタリ研究開発機構」ではないか。
そもそも,何故,今までガラス固化せずに廃液のままにしていたのでしょうか。その理由や(無責任極まりない)責任者を明らかにしていただきたい。日本滅亡画策グループの名前とその実態を明らかにせよ。冗談ではないのだ,まったく(脱原発派の市民の皆様,危ないのは東海第二だけではありません。一刻も早く,東海村と青森県六ケ所村に保管されている高レベル放射性廃液の危険性をクローズアップして下さい)。
(4)化学物質規制,アジアに拡大(日経産業新聞 2013.8.30)
「今,化学物質規制強化の波がアジアに広がっている」と報ずるこの記事は要注目です。今から数年前,EUは「RoHS指令」(有害物質使用制限:鉛やカドミウムなどの有害金属類等)と「REACH規制」(新化学品規制)を発し,大量生産・大量消費・大量廃棄の経済メカニズムに乗って,毎年溢れかえらんばかりの様々な化学物質や有害物質が野放図に環境にばら撒かれていることにストップをかけました。
農薬や化学肥料をはじめ,樹脂やプラスチック,食品添加物や各種溶剤や塗料などなど,我々の日常生活の中でも,隅々にまで化学物質がいきわたっています。そして,それらの少なくないものは,例えば環境ホルモンであったりして,決して安全とは言えないものです。
こうした氾濫する化学物質に対して,持続可能な社会・かけがえのない地球・健康で安全な生活の観点から,一定の歯止めと規制をかけようとする動きが,ヨーロッパのみならずアジア諸国においても,ここにきて一気に動きが強まってきたというのがこの記事の書き出しです。但し,記事の内容の大半は,アジア諸国の化学物質の規制の仕方がいい加減で現場が混乱していることを伝え,実務的な観点から対応策などを書いていますので,記事の主旨は化学物質による環境破壊や危険性への警告ではありません。
さて,当の日本ですが,情けないことに化学物質の管理については「化審法」と「化管法」という2つの中核的な法律がありますが,どうもそれだけでは極めて不十分な様子で,欧米諸国の化学物質管理の今日的な流れについていけないばかりか,アジア諸国の新しい動きにさえ,これからは劣後していきそうな雰囲気になってきております。
日本の企業や企業経営者の劣化とともに,日本の行政当局=産業政策や環境政策を司る行政の劣化も目立ち始めています。しかし,化学物質はナノテクなどとともに,ともすると人類や国を滅ぼす重大な危機を招く可能性がないとは言えない潜在的な危険を抱えています。いい加減で甘い対応・対策・方針は禁物です。もう化学物質の「大量生産・大量消費・大量廃棄」はとりやめにしなければなりません。そして,厳しいくらいの化学物質管理の法的規制を入れて行く必要があります。
早々