« 2013年7月 | トップページ | 2013年9月 »

2013年8月

2013年8月31日 (土)

必ず見ておいていただきたい本日付(8/30)の新聞記事情報 (コメント付き)

前略,田中一郎です。

 

 別添PDFファイル4つ(添付できませんでした)は,いずれも本日付全国紙の朝刊(2013.8.30)に掲載された記事で,必ず目を通しておいていただきたいものです。以下,簡単にコメントを付してご紹介いたします。

 

 <別添PDFファイル>

(1)被災者支援法,線量基準定めず(毎日新聞 2013.8.30

(2)汚染水処理設備(ALPS) 国費で増設(日経 2013.8.30

(3)東海村再処理工場 高レベル放射性廃液,処理に20年(東京新聞 2013.8.30

(4)化学物質規制,アジアに拡大(日経産業新聞 2013.8.30

 

(1)被災者支援法,線量基準定めず(毎日新聞 2013.8.30

 http://mainichi.jp/select/news/20130830k0000m010159000c.html

 http://news.nicovideo.jp/watch/nw746072

 

 毎日新聞・日野行介記者の迫真の取材・報道です。よく書けていると思います。先般お送りしたメールの続きです。是非,熟読されてみて下さい。

 

 一つだけ補足説明をしておきますと,先般のメールのFOEジャパンの満田夏花さんのコメント「個人線量計による個人被ばく管理を過大評価すべきでない。政府は、<「場」の線量から「人」の線量へ>をキャッチフレーズに、個人線量計の配布による個人被ばく管理を進めていますが、本来、個人線量計をつけることは、やむをえず高い線量の場所に入るときの被ばく管理のためのはずです。「場」の線量を無視してよいはずはありません。」にもあるように,除染による空間線量低減ができない中で,原子力翼賛政府は,地域住民に放射線被曝を押し付けながら,避難している住民たちを何とか呼び戻そうと「悪知恵」を練りまわしておりましたが,ここにきて,各住民一人一人にポケット線量計のようなものを持たせることで被曝の個人管理を行い,その値が低ければ何の問題もない,という方法を編み出したようです。

 

 何故,かようなひどいことをするのか,それは「(まともに支援をしたら)カネがかかる」からです。原子力ムラ・ゼネコンによる除染や放射能汚染がれきの広域処理については,自分達が潤う話なので,有権者・国民を騙してでも湯水のごとく税金を使うけれど,地域住民や被害者の方々の命や健康を守るためには,あるいは生活や家業の回復・再生のためには,びた一文出したくない,屁もでねえ,ということのようです。これが,霞が関の腐敗官僚たちを使いながら行う自民党政治の赤裸々な本質です。先般の国政選挙で自民党に投票をした有権者・国民は,自分達が投票をした政治家達が何をしているか,どういう魂胆で動いているかをよく見定める必要があるのです。(但し,民主党も似たり寄ったりですので,念のために申し上げておきます)

 

 ところで,空間線量もまた,線量計が鉄板の上に置いてあったり周囲が除染されていたりして,たくさんの計測地点で線量の低い方へのごまかしが発覚していますが,更に今回の政府の基本方針は,個人用線量計の場合には様々な理由で,被ばく実態よりも低い線量値が出てしまう傾向にあることを狙ったものです。単純な線量計なのか,積算線量計なのかで,若干違ってくるとは思いますが,FOEジャパンの満田夏花さんが言うように,こうしたものは「やむをえず高い線量の場所に入るときの被ばく管理のためのはずです」なのです。

 

 それから,個人線量計ではガンマ線による外部被曝の一部が計測できるだけで,内部被曝(ガンマ線以上にアルファ線(プルトニウムやウラン)やベータ線(放射性ストロンチウムやトリチウム)が危険です)はまったく計測できません。内部被曝の場合は,飲食のみならず,呼吸・吸引による被曝の危険性が,現状では最も懸念されるところだと思われます。

 

 みなさま,汚染地域への帰還などは断固として拒否いたしましょう。そして,一に避難,二に避難,三四がなくて五に避難です。そのためにも「原子力事故による子ども・被災者支援法」の基本方針はかようなものであってはなりません。

 

(2)汚染水処理設備(ALPS) 国費で増設(日経 2013.8.30 他)

 http://netnavi.appcard.jp/e/12bw6

 

 福島第1原発から海への放射能汚染水漏れの騒動で,1つだけ,新聞などで報道されていない重要なことがあります。それは,まもなく福島第1原発を大地震・大津波が再び襲う可能性があり,その場合,大地震の方はともかく,大津波に対しては,あの猛烈な放射能を含む間に合わせの小型タンク群ではひとたまりもないだろうということです。少し前のインドネシア・スマトラ沖の大地震と大津波が,約2年を挟んで連続して起きたことを思い出すべきです,

 

 従って,今言われている「海への放射能流出防止」に加えて,同時並行で「大津波対策」=小型汚染水タンクが「桃太郎が生まれた桃」のように,どんぶらこ,と海へ流れていかないような対策をしておかなければなりません。今のままでは,大津波=全汚染水の海への流出,ということになりかねないのです。

 

 対策として考えられるのは

<1>汚染水のタンクの水から,トリチウム以外の放射性物質を一刻も早く除去すること=ALPSを大動員して,とにかくトリチウム以外の放射性物質を取除くことです。ALPSが水漏れしているから使わない,などというのは,ここまでじゃじゃ漏れ状態の中では説得力に欠けています(但し,ALPSの水漏れ対策もしなければいけませんが)。これについて報じられているのが,本日付の日経記事,及び毎日新聞記事です。

 

*汚染水抜本対策、9月に公表 政府、東電の廃炉会議- 毎日jp(毎日新聞)

 http://mainichi.jp/select/news/m20130830k0000m010059000c.html

 

<2>間に合わせの仮設タンクの汚染水を早急に別のタンクへ移す。具体的には,①大型タンカーの使用,②大型備蓄タンクの大増設(敷地は福島第1原発だけでなく福島第2原発も使用),③福島第1原発をとり囲む遮水壁を「鉄板」でつくる(凍土方式はダメ)。④その他(液体危険物の貯蔵に関する専門家で適切な方法を考えて下さい:地下水流出が激しかった青函トンネルをはじめ,過去に多くの土木工事を手掛けてきた日本の技術者達にとって,1日400トン程度の地下水のマネジメントができないはずがありません)

 

<3>巨大タンク群の設置場所は,津波に襲われない高台であることと,地盤強化をしっかりやること,の2点が必須

 

<4>凍土方式がダメなのは,メンテナンスが必要な様子がうかがえるため。これから100年以上もかかりそうな廃炉作業を考慮した場合,事後的にかような手間暇やデリケートなメンテが必要となるものは,かえって将来的に負担増となる。そもそも大津波が襲えばひとたまりもない。

 

<5>トリチウムを含む汚染水は絶対に海へ放出してはならないこと。原発山側から流入してくる水が汚染水になる前に汲み上げて海に放出する,などと,もっともらしいいい加減なことが言われておりますが,こんなのは十中八九,トリチウム汚染水の海洋放出になるのは目に見えています。絶対にダメです。トリチウムは,水と区別がつかないので,全く持って危険です。

 

<6>東京電力は放射能で汚した海をきれいにすること。汚したものは,汚した奴がきれいにする,ごくごく当たり前のことです。海外に逃げている勝俣恒久元東電会長,清水正孝元社長ら,元東京電力幹部数名を海外から呼び戻し,この海の放射能除去対策に従事させよ。

 

(3)東海村再処理工場 高レベル放射性廃液,処理に20年(東京新聞 2013.8.30

 

*朝日新聞デジタル:「ガラス固化に20年超」 東海再処理施設の放射性廃液 - ニュース

 http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201308290654.html

 

*毎日新聞「東海再処理工場の廃液保管状況調査へ」 - リリウムの会 ブログ - Yahoo!ブログ

 http://blogs.yahoo.co.jp/liliumnokai/9977984.html 

 

 数日前よりお騒がせしております東海村の高レベル放射性廃液の件です。(独)日本原子力研究開発機構が,またぞろ「冷却ができなくなった場合,24時間で1千億ベクレルの放射性物質が外に放出される可能性がある」「ガラス固化のための全ての処理を終えるのに20年かかる」などと嘘八百をついて,この超危険物の対策を先延ばししようとしております。

 

 冷却できなくなったら,環境や海に出ていく放射性物質の量は「1千億ベクレル」ではなく,1千億ベクレルの1千億倍くらいを見ておかなけれななりません。要するに天文学的な数字だということです。1千億ベクレル程度で済むわけがありません。(1千億=1012乗,他方で「アボガドロ数」=6.02×1023乗=1モル=炭素12g)

 

*アボガドロ数

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9C%E3%82%AC%E3%83%89%E3%83%AD%E5%AE%9A%E6%95%B0

 

 従ってまた,20年かけてゆっくりやりましょう,などと悠長なことは言っておれないのです。(独)日本原子力研究開発機構の馬鹿者どもと心中させられるのはまっぴらごめんです。さすがに原子力「寄生」委員会も,この「20年」の悠長さを問題にしているようです。それにしても,この(独)日本原子力研究開発機構,いつまでウソばっかりついてんだよ!!。まるで「日本ハッタリ研究開発機構」ではないか。

 

 そもそも,何故,今までガラス固化せずに廃液のままにしていたのでしょうか。その理由や(無責任極まりない)責任者を明らかにしていただきたい。日本滅亡画策グループの名前とその実態を明らかにせよ。冗談ではないのだ,まったく(脱原発派の市民の皆様,危ないのは東海第二だけではありません。一刻も早く,東海村と青森県六ケ所村に保管されている高レベル放射性廃液の危険性をクローズアップして下さい)。

 

(4)化学物質規制,アジアに拡大(日経産業新聞 2013.8.30

 「今,化学物質規制強化の波がアジアに広がっている」と報ずるこの記事は要注目です。今から数年前,EUは「RoHS指令」(有害物質使用制限:鉛やカドミウムなどの有害金属類等)と「REACH規制」(新化学品規制)を発し,大量生産・大量消費・大量廃棄の経済メカニズムに乗って,毎年溢れかえらんばかりの様々な化学物質や有害物質が野放図に環境にばら撒かれていることにストップをかけました。

 

 農薬や化学肥料をはじめ,樹脂やプラスチック,食品添加物や各種溶剤や塗料などなど,我々の日常生活の中でも,隅々にまで化学物質がいきわたっています。そして,それらの少なくないものは,例えば環境ホルモンであったりして,決して安全とは言えないものです。

 

 こうした氾濫する化学物質に対して,持続可能な社会・かけがえのない地球・健康で安全な生活の観点から,一定の歯止めと規制をかけようとする動きが,ヨーロッパのみならずアジア諸国においても,ここにきて一気に動きが強まってきたというのがこの記事の書き出しです。但し,記事の内容の大半は,アジア諸国の化学物質の規制の仕方がいい加減で現場が混乱していることを伝え,実務的な観点から対応策などを書いていますので,記事の主旨は化学物質による環境破壊や危険性への警告ではありません。

 

 さて,当の日本ですが,情けないことに化学物質の管理については「化審法」と「化管法」という2つの中核的な法律がありますが,どうもそれだけでは極めて不十分な様子で,欧米諸国の化学物質管理の今日的な流れについていけないばかりか,アジア諸国の新しい動きにさえ,これからは劣後していきそうな雰囲気になってきております。

 

 日本の企業や企業経営者の劣化とともに,日本の行政当局=産業政策や環境政策を司る行政の劣化も目立ち始めています。しかし,化学物質はナノテクなどとともに,ともすると人類や国を滅ぼす重大な危機を招く可能性がないとは言えない潜在的な危険を抱えています。いい加減で甘い対応・対策・方針は禁物です。もう化学物質の「大量生産・大量消費・大量廃棄」はとりやめにしなければなりません。そして,厳しいくらいの化学物質管理の法的規制を入れて行く必要があります。

早々

 

2013年8月23日 (金)

第12回「福島県民健康管理調査検討委員会」の発表内容について(問題点とその批判)(その1:県民健康管理調査「基本調査」)

前略,田中一郎です。

 

 昨日お送りした第12回「福島県民健康管理調査検討委員会」の発表内容について,下記にその問題点と,それに対する当委員会ならびに福島県庁や福島県立医科大学などの対応のおかしさを批判する。この委員会は,事故後2年半が経過し,開催回数も12回を数えるというのに,未だ福島第1原発事故による理不尽極まる被害を受けた県民=被ばく者を十分には保護・サポートできず,政府や原子力ムラなどの被曝もみ消し・矮小化への圧力に抗することができないまま,あいまいな発信や中途半端な対応を続け,あるいは記者会見などでの核心をついた質問には「はぐらかし」の答弁をしているのである。

 

 この委員会は,発足以降,第10回までのメンバーや検討内容,運営の在り方があまりにひど過ぎ(たとえば秘密会の開催と二枚舌),弁護士会をはじめ様々な方面から厳しい批判を受けて,結局,前回以降メンバー交代となった。しかしながら,それでもまだ,委員会の本質的に歪んだ体質は改善されていないようである。原発安全神話に代えて放射線安全神話を確立するため,福島第1原発事故による放射線被曝の健康被害や遺伝的障害を,放射能との因果関係なしと強弁することで切り捨てんとする,人間として許し難い,科学者・医学者の風上にも置けぬような背信的姿勢が,今もって継続されているように思われてならない。私が前回の甲状腺ガン検査結果をまとめたレポートの中で,当委員会のメンバーの更なる更迭を求めたゆえんである。

 

(私は,この「福島県民健康管理調査検討委員会」の体質を抜本的に変えるためには,委員会の委員更迭のみならず,事務局もまた根本的に変えなければいけないのではないかと思っている。具体的には,事務局から福島県庁をはずし,民間のNPOで放射線被曝や放射能に対して警戒的で厳格な姿勢をとる団体(複数)からの人達に事務局を委ね,福島県庁はその下で,意思決定に関わらずに「作業」のみを請け負うことにすればいいのではないか。何故なら,3.11以降,福島県知事をはじめ,県庁の反道徳性や反県民性は目に余るものがあり,今後県民の被曝対策や健康管理を検討していく組織の事務局としては,とてもふさわしいとは思えないからだ)

 

 こうした「福島県民健康管理調査検討委員会」や福島県庁・福島県立医大の反道徳的・反県民的対応が継続されてしまう大きな原因の一つが,権力のウォッチドッグの役割を果たすべきマスコミ達の取材及び報道姿勢の稚拙さにある。既にご紹介している委員会後の記者会見(VTR)の質疑応答を見ると,中には朝日新聞の本田記者・大岩記者,毎日新聞の日野記者,アワプラの白石氏,あるいはおしどりマコちゃんなど,鋭い質問を発する記者もいるが,全体的には,概して質問内容がピンボケであったり,急所が外れていたり,委員会の歪んだスキームそのものを突き崩すような質問がほとんど出なかったりと,その本来果たすべき使命を果たしているようにはとても見えない。こんなマスコミ・記者達だったら,被ばく隠しの悪事を働く委員達も,さぞかしやりやすいことだろう。マスコミが「マスごみ」と揶揄されて久しいが,こんな記者会見なら「ゴミ」と言われたってしょうがないとさえ思うこともある。

 

 絶対にそうなるとまでは申し上げないが,今のような健康管理の水準や内容では,将来に向けて大きな懸念が残る。欠落しているもののうち最も重大なことは,甲状腺ガン以外の放射線被曝健康障害に対する警戒や備えが皆無にちかく,従ってまた,甲状腺検査以外に必要だと思われる検査(=具体的には,尿検査,血液検査・染色体検査・DNA検査,心電図,放射線障害が多い内臓疾患検査など)も同時並行で行われるべきものが,なされていないことである。もちろん,甲状腺検査のやり方についても,多くの人達が批判しているように問題だらけであり(例えば,18歳以上の人達への検査の未実施,福島県立医大の検査体制の問題,検査のなされ方が雑,などなど),しかもそれが一向に改まる陽子がうかがえないのである。簡単に言えば,チェルノブイリ原発事故の教訓がほとんど活かされていない(無視されている)。そこでは,放射線被曝を矮小化し,もみ消したいという,ひたむきな姿勢が透けて見えている。

 

 また,そもそも放射能の汚染地域は福島県だけではないにもかかわらず,何故,福島県以外の地域で「県民健康管理調査検討」がなされていないのだろうか。福島県外にも福島県以上の放射能汚染状態のホット・スポット地域はたくさんある。それを現状のように放置しておいていいのか。何故,マスごみは,これは重大な人権侵害である,大問題である,不公平である,将来へ向けて大きな懸念あり等々と,問題化し報道しないのか。

 

 福島第1原発事故の被害は,まず,物損や精神的被害のレベルで,そのほとんどがまともに賠償も補償もされず,まもなく民法上の時効を迎えようとしている。つまり日本という国では,原発事故による被害は,地域住民の物損や精神的被害・あるいは生活破壊である限りはほとんど踏み倒してもいい,それはさしたる問題にもならず,法曹界も官僚達も自治体も政治家達も,知らぬ・存ぜぬ・他人事で,加害者・原子力ムラの大喜びに帰結するという,信じ難くも許し難いことが「慣習法」化しようとしている。まさに原子力ムラ天下の「無法国家」「人権無視国家」である。

 

 加えて,このままでは,事故後の被ばく対策が適切になされておれば放射線被曝を重ねる必要もなかった多くの人達が,それとは知らずに被ばくを続けて健康を害し,あるいは遺伝的障害を被り,そしてそれに対しても加害者・原子力ムラからは「放射能とは因果関係なし」「立証できず」で,賠償も補償も,場合によっては適切・必要十分の治療さえも受けられず,闇から闇へと消されていく,そういう時代がやってくるのではないか。加害者・原子力ムラ達は,そういう時代に備えて,証拠隠滅(被曝実証データなど)や放射線安全の屁理屈構築に余念がなく,似非科学者達はそれを「科学」の名において合理化している。

 

 既に福島県では放射線被曝による健康上の懸念さえ,口に出しては言えないというではないか。財産・精神・健康・生活の4つの被害をほとんどまともに償ってもらえず,口を開けば「復興・復旧」「企業・産業」「地域振興」「除染・定住・帰還」,そうでない奴は非国民・非県民,出ていけと言わんばかりの暴圧的な社会的雰囲気,こんな息の詰まりそうな「被曝押し付け合い社会」=原子力翼賛社会がすぐそこに見えている。

 

 いいのだろうか,こんな社会にしてしまって。この巨大な福島第1原発事故被害者に対する理不尽極まりない対応を,まるで他人事かの如く見過ごし,馬鹿マスコミの嘘八百報道に惑わされて放射線安全神話にのめり込み,そしてまた,原発・核燃料施設再稼働を容認する,そんなことをしていて,ほんとうにいいのか? 自分達の子どもや孫たちがかわいそうだとは思わないのか。今度は自分達の番だとは思わないのか,フクシマのことは他人事・他県ごとにしておいて,ほんとうにいいのか。原発・核燃料施設は日本全国各地に散在しており,そのどれが大事故を起こしてもおかしくない状態であることを知らないまま,かような「安眠」「お気楽」を福島第1原発事故後においても続けて行こうというのか。

 

 正気を取り戻せ。目を覚まそう。原子力翼賛の社会を拒否するためには,まず真っ先に,福島県民をはじめ,福島第1原発事故で被害を受けられた方々の完全救済を,力を合わせて実現させ,そして,これ以上の無用の放射線被曝を回避し,これからの健康管理に万全の手を尽くすことである。放射能は当然ながら密閉して厳重管理し,人間社会や自然環境から隔離されなければならない。

 

 人の「きずな」だの,「食べて応援」だの,汚染地域への帰還だの,「心のケア」だの,「地域の結束と振興促進」だの,産業振興だの,無責任な時々の作為的な宣伝文句に乗せられることなく,しっかりと方法論を見定めて,ポスト福島第1原発事故の脱原発・脱被曝社会を築いていかなければならない。原発震災への対応・対策に,人間の命と健康を最優先する断固たる信念を置かねばならない。何故なら,人間の復興なくして地域の復興はありえず,また,人間も自然も地域も,およそ原子力や放射能と共存することなど,できっこないからである。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

以下,下記の2つの資料をベースに,「福島県民健康管理調査検討委員会」の発表内容を簡単に検証する。

 

*福島県ホームページ - 組織別 - 県民健康管理調査検討委員会HP

 ((今回)第12回「県民健康管理調査」検討委員会(平成25820日開催)に注目:画面上部)

http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=24809

 

*第12回福島県「県民健康管理調査」検討委員会 次第

 http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/250820sidainado.pdf

 

20130820 記者会見のみ「福島県民健康管理調査」検討委員会 - YouTube

 http://www.youtube.com/watch?v=qU_-GsVIhUE

 

1.資料1 県民健康管理調査「基本調査」の実施状況について

(1)問診票の回答率が23.5%と低いことについて

 委員会では「問診票記入を容易にすれば,より多くの県民の方が問診票を提出できる可能性がある,と考えられた」としているが,この考え方は「上滑り」なのではないか。回収率が低迷しているのは,そんな小手先細工の問題ではないのではないか。

 

 何故,問診票を用いて「基本調査」をするのか,それが回答する県民にとって,どういう利点や効果があるのか,どういう意味や意義があるのかがはっきりしないから,回答が寄せられていないのではないのか。そして,県民がそのように感じているのは,そもそも「福島県民健康管理調査検討委員会」が,県民の健康維持や放射線被曝被害の防止や被ばく治療のためにあるのではなく,被害者を「上から目線」で管理して,県民がが大きな賠償・補償の動きや,原子力・放射能否定につながる動きが出ないよう,県民をある種の「檻」の中に入れて,放射線被曝が問題化するのを未然防止するために作られているのではないか,と疑問に思っているからではないのか。

 

 口先だけでなく,内実ある形で真の意味で県民のための健康調査に取り組めば,調査であろうが検査であろうが,参加してくる人は一気に増えるに違いない。

 

(2)被曝線量推定作業について

 説明資料では「(独)放射線医学総合研究所が開発した評価システムを用いて外部被曝積算実効線量を推計」とある。しかし,この推計モデルはどのように第三者によって検証され,また,県民に対して説明されているのか。私には,中身が「ブラックボックス」のまま,原子力ムラの端くれの研究所がつくったモデルなるものが用意され,それで計算した結果だけが県民に通知されている,結果をもらった方は「こんなもんか?」と,わけがわからないままに当惑している,という状態ではないのか。

 

 だからこそ「放射線業務従事経験者を除く435,788人の推計結果は,県北・県中地区では90%以上の方が2mSv未満,県南地区では約91%の方が,合津・南合津地区では99%以上の方が1mSv未満となり,相双地区は約78%の方が,いわき地区でも99%以上の方が1mSv未満となっている」などと,どうみても過小評価のような外部被曝評価を打ち出しているのではないか。また,このモデルでは内部被曝は全く分からないから,被曝評価としては欠陥品であるが,それについても県民にきちんと説明がなされているのであろうか。およそ外部被爆は推計できるが,内部被曝は推計できない,などということは非科学的である(福島第1原発事故直後に放射性ヨウ素のプルームが低空飛行で流れた地域などは特に心配:いわき市や福島第1原発の北西方向・真北方向など)。

 

 県民への説明の仕方も,私はいい加減でお粗末なのではないかと直感的に思われてならない。たとえば1020くらいのモデルケースを想定して,それぞれが,どれくらいの外部被曝を受けたと計算されるのか,具体例で示して説明し,世の中の各方面からの批判や検討も受けた上で,少なくとも「ハウツー」については,透明・全面公開の形で被曝線量の推定が行われるべきである。しかもここで示される外部被曝の値はあくまで参考値にすぎず,主として「相対比較」がある程度の有効性を持っているだけの数値であることを明記した上で,くれぐれも放射線被曝の過小評価や歪曲につながらないよう「用心」をした上で使用されるべきである。

 

 また私は,上記にように放射線被曝が「たいしたことはない」と説明する際にはたいへん「能弁」な当委員会及び事務局が,逆に,大量被曝の危険性・可能性を検証する際には,個人情報保護などを口実に,情報を隠しに隠し続けているような印象も持っている。この方法論的二重人格性は,徹底して追及されなければならない点だ。

 

 しかし,いずれの点についても,マスコミ記者達の追及は弱く,問題意識は低い。しっかりしていただきたいものである。

 

(3)(朝日新聞・本田雅和記者が質問=とてもいい鋭い質問である)

 当委員会発表のレジメには次のように書かれている(P3)。「これまでの疫学調査により100mSv以下での明らかな健康への影響は確認されていない(*)ことから,4か月間の積算実効線量推計値ではあるが,「放射線による健康影響があるとは考えにくい」と評価される」「(*)「放射線の線源と影響 原子放射線の影響に関する国連科学委員会 UNSCEAR2008年報告書[日本語版]第2巻 (独)放射線医学総合研究所)」

 

 本田記者は,「100mSv以下での明らかな健康影響は確認されていない」という文章前半を理由にして,後半の「健康影響があるとは考えにくい」と評価を導くのは誤りで,そこには因果関係などはなく,正確には「健康への影響は分からない」とすべきではないか,と追及した。何故なら,「(健康影響が)確認されていない」とは「統計学的に有意ではない」ということであって,「健康に影響がない」ということではないからだ。本田記者の追及質問は,まことにもっともなものだったが,その回答は,座長の星北斗氏自身のものも含めて「はぐらかし」である。詳細は記者会見ビデオをご覧いただきたい。

 

 私は「まだ,こんなことを書いているのか」という印象である。因果関係については本田記者の言う通りで,仮に「これまでの疫学調査により100mSv以下での明らかな健康への影響は確認されていない」を認めるのであれば,結論は「統計学的な有意性が確認できず,結果として健康への影響は分からない」とすべきものである。明らかな,放射線被曝軽視・無視へのバイアスがかかった不当な記述だ。

 

 しかし,問題はそれだけではない。まずもって「これまでの疫学調査により100mSv以下での明らかな健康への影響は確認されていない」が嘘八百である。逆に,100mSv以下でも明らかな健康への影響が確認されたデータはたくさんあるし,昨今では,10mSvかそれ以下でも,健康影響が出ているとするデータも出始めている。チェルノブイリ原発事故後のウクライナやベラルーシからの報告などにも,低線量での健康被害のデータは多く存在し,およそ恒常的な低線量被曝の危険性は,今では多くの人々の「常識」となってきている。何が「確認されていない」なのか!!!,いつまで嘘八百をついているのか。

 

 実は「(健康への影響は)確認されていない」のではなく,上記の根拠とされたUNSCEARをはじめとする「国際原子力マフィア」と呼ばれる被曝評価矮小化の集団が,多くの低線量域での健康被害を「確認しようとしない」だけなのである。UNSCEARとICRP(国際放射線防護委員会)は表裏一体の国際組織で,戦後一貫して米国の核戦略の支配下にあって,執拗に放射線被曝の評価を矮小化し,歪曲してきた「諸悪の根源」のようなところである(特に内部被曝)。そんな組織の勧告や報告書を,何らの検証もチェックも行わず,我田引水的に,つまみ食いをするかのごとく,自己都合に合わせて放射線被曝軽視・無視・矮小化の根拠にするなど,「福島県民健康管理調査検討委員会」にあってはならない背信行為ではないかと思われる。

 

 そもそも記者会見での記者達の追及が甘すぎる。たとえば「これまでの疫学調査により100mSv以下での明らかな健康への影響は確認されていない」の嘘八百を,具体的な事例を挙げて突けばいいではないのか。本田記者の追及はもっともではあるが,更にそれに加えて,UNSCEARやICRPの報告書や勧告などを無批判・無検証で使うことのおかしさを,何故マスコミ達は追及しないのか。UNSCEARやICRPの報告書や勧告の,どこにその実証的根拠があるというのか。何もないではないか。

 

(UNSCEARにしろICRPにしろ,その委員たちは,原子力の推進当事者であったり,それと密接に関係して利害を共有する人間達であったりしていることは,すでに伝えられているところだ。また,日本などの国では,委員に就任した者が電力を含む原子力事業者から金品他の多くの便宜供与を受けていることもあり,これら国際的な放射線被曝評価機関と原子力推進との癒着や利益相反が無視できないレベルにある。にもかかわらず,日本のマスごみ達は,UNSCEARやICRPの組織としてのあり方,あるいは委員達やその勧告・報告書の公正性・公明性を問うこともなく,ましてやその内容の真偽性や実証的根拠を問うこともなく,更には,それら組織や勧告・報告書への多くの人達の批判を顧みることもなく,それら組織の(原子力推進に偏った)(被曝の軽視へバイアスのかかった)主義主張を,あたかも放射線被曝を考える際の「共通インフラ」「コモンセンス」であるかのごとき扱いをしながら取材や報道に臨んでいる様子がうかがえるのである。不勉強甚だしきを通り越して,マスごみよ,あんたらも仲間なの? と申し上げたくなるではないか)

 

*(参考)『放射線被曝の歴史:アメリカ原爆開発から福島原発事故まで(増補)』(中川保雄著:明石書店)

 http://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784750334820

 

(4)記者会見について(「福島県民健康管理調査検討委員会」の公開性)

 質疑応答の声が小さい。もっと大きな声で,せめて星北斗座長くらいの大きさの声で,はきはきと,VTRを見ている人にも聞こえるように発言すべきである。質問をしている記者の方が,自信がないのかどうかわからないが,まるで病み上がりのような,風呂の中で放屁をしているような,ひょろひょろ声で発言している。そんなんでは,マスコミ記者とは言えないぞ。

 

 それから,この記者会見の設営はいったいどうなっているのか。いわゆる「記者クラブ」方式なのか。もしそうであるのなら,それを抜本的に転換して,もっと多様な独立系の記者達も記者会見に立ち会い,質問できるようにしたらどうか。時間が足りないのなら,別途,公聴会なり,説明会なりを設けて,いわゆる「リスク・コミュニケーション」なるものを充実させるべきである(私はこの「リスク・コミュニケーション」という言葉も,その考え方も大嫌いであるが,今はその説明は省略)。前回,時間切れ・記者会見の打ち切りに抗議して,朝日新聞・本田記者が別途説明会を開催するよう要請していた通りである。「福島県民健康管理調査検討委員会」は十全の説明責任を果たすべきである。

 

 ふとどき千万だった「秘密会」をやめたら,「福島県民健康管理調査検討委員会」の公開性が確保されたということではない。「公開性」と「説明責任」は表裏一体であり,記者会見に臨む記者の質問は,参加できない無数の国民・県民の代わりに,その記者が質問をしていると考えていい。委員会にも記者にも,そういう関係にあることをしっかり認識していただきたいものである。従ってまた,記者会見や委員会そのものの録画も,委員会事務局が責任を持って,参加できなかった人にもわかるように,適切・的確に用意され,公開されるべきである。(以降,次回)

早々 

 

 <追>清水修二副座長(福島大学副学長)の発言より

 記者会見のVTRで,開始後13分ぐらいのところで清水修二副座長(福島大学副学長)(委員会副座長で座長の右横)の「(100mSv以下の被曝と健康影響について)統計学上の有意さと健康被害の有無」に関する質問への答弁が出てきます。

 

 そこでは同氏は「統計上の有意な関連が見えないということで,それ以上でもそれ以下でもない,(放射線被曝による健康被害が)他の要因にまぎれて調査しても解明ができない,参考文献として記載されているUNSCEARの文献には,内部被曝と外部被曝が合算なのか,外部被曝だけなのか,その記述についてはわからないので,わかるようにしたほうがいいのではないか」などと発言している。

 

 が,しかしである。100mSv以下の領域での健康被害の実証研究はたくさんあり,清水氏が言うような「調査しても解明ができない」などというようなことではないし,また,参考文献として記載されたUNSCEARの文献記述がよくわからないものならば,こんな公表資料からは削除させればいいだけの話である。いずれにしても「「放射線による健康影響があるとは考えにくい」と評価される」などという記述には絶対にならないだろう(少なくとも公表資料を書いた人間や,当委員会の委員達に良識と良心があるのなら)。

 

 そもそも「統計上の有意な関連が見えない」ということを問題にすること自体があやしいのであって,統計学的に有意な放射線被曝を人間がするには何百万人もの人が一度に同じような条件で放射線被曝せねばならず,所詮は無理な話である。彼ら原子力ムラ=UNSCEARやICRPらの狙いは,このように言うことで,あらゆる100mSv以下の被曝実証の結果を「科学」の名のもとに一掃し否定してしまうこと自体を目的としており,それはとりもなおさず恒常的な低線量被曝の危険性の矮小化や過小評価へとつながっていくのである。(それでいて,ほんのわずかの飲食品を検査した結果をもって,放射能汚染食品は安全である,などと平気で強弁する「二枚舌」の持ち主達である。飲食品の検査結果は統計学的な扱いの例外なのか? ご都合主義もいい加減にしたらどうか)

 

 統計学的に厳密な有意性がない,としても,人体実験ができない以上,それはそれでいたしかたないことで,その範囲内で最も蓋然性が高いと見られる実証結果を使って,かつ充分な安全バッファも確保して,予防原則的な被曝管理や放射線防護の考え方ないしは基準を打ち出せばいいだけの話である。既に動物実験では,100mSvどころか,もっともっと低い低線量の領域で,放射線による健康障害や遺伝的障害が多発する結果が多く確認されている。人間がそうした恒常的な低線量被曝の危険性の例外であるはずもない。100mSvなど,冗談ではないと言うべき「殺人的」数字である。

 

 清水氏はVTRで見せたようなつまらぬ形式論ではなく,

100mSvの被曝は,それが外部被曝にせよ内部被曝にせよ,統計学的な有意性云々がなくても,他の様々な実証研究から鑑み,懸念するに値する十分な危険性があるのであり,放射線被曝に閾値がないことと併せて考えれば,県民が受けた被曝について,安心できない,看過することのできない事実が存在している。県民健康管理は,そうした無視できない放射線被曝の結果に対して万全を期すためにこそ行われるべきであり,「放射線による健康影響があるとは考えにくい」などという軽率な表現を用いることで,逆に県民の不安と誤解を招くことを避けるべきである。」

 

 とでも言うべきではなかったのか。リベラルと言われる福島大学の副学長が,何故,人間としての覚悟を決めて,真の意味で県民の命と健康を守るために全力を尽くせないのか,私には理解ができないところである。

 

福島第1「汚染水300トン」の衝撃, 「事故収束はウソ」

前略,田中一郎です。

 

 福島第1原発の汚染水問題について,2013823日付の東京新聞朝刊「こちら特報部」に,「福島第1「汚染水300トン」の衝撃,「事故収束はウソ」」という記事が掲載されました。下記はそれに関する私のコメントです。政府や官僚達,あるいは当事者の東京電力らが,どこまでこの危機的状況を真摯に認識しているかが問題です。何故なら,彼らはこれまでもずっと,こうしたいい加減なことを繰り返してきているからです。

 

*東京新聞福島第一「汚染水300トン」の衝撃 「事故収束はウソ」特報(TOKYO Web)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013082302000157.html

 

*ウィンディーの間にまに日記 福島第一原発事故(906)-原子力規制委、排水弁全開を放置ー

 http://ik8160.blog.ocn.ne.jp/wieblo/2013/08/post_82c7.html

 

 ポイントは次のようなことです。

 

(1)原子力安全保安院の時代に,汚染水タンクの排水弁を全開したいという東京電力の申し出を,原子力安全保安院が愚かにも,よく検討せずに認めてしまっていた。何のための「堰」であり,排水弁が何のためについているのかも考えず,OKを出した。

 

(2)それを新たに発足した原子力「寄生」委員会が放置した。事務局の原子力「寄生」庁は原子力安全保安院の「看板の掛け替え」組織なので,この件についての事情は承知していたが,原子力「寄生」委員会の委員たち5人は,このことを伝えられていなかった可能性もある。がしかし,そんなことはエクスキューズにはならない。原子力「寄生」委員会の責任は重大で,他のことも含め,原子力安全保安院時代の点検状況その他をすべて総レビューする必要が出てきている。要するに,原発・核燃料施設の管理など,いい加減の塊のようなもので,このまま放置し続ければ,今後,次から次へとトラブルや事故が多発して来るだろうということだ。

 

(3)漏れた汚染水の量が300トンなどと報道されているが,これもあやしい。実際はその数十倍,数百倍の可能性もある。おそらく,どれだけ超高濃度の放射能汚染水が漏れて海に流れ出ているのかが全く分からないということだ。他のタンクだって,おそらく「お漏らし」をしているに違いないが,計測メーターさえついていないのだから把握のしようがないのだ。

 

(4)東日本の太平洋側沿岸・沖合で獲れる水産物・魚介類は,益々心配になってきた。特に放射性ストロンチウムが大きな懸念核種だが,これまでほとんど検査されていない。福島県の漁協が試験操業を中止したのは当然だし,漁業者達が烈火のごとく怒っているのもまた当然である。彼ら被害を受けた漁業者に対して,加害者・東京電力や事故責任者・国は万全の対応をする義務がある。

 

(5)ALPSという放射性セシウム以外の約60種類の放射性物質(但し,トリチウムは除去できない)を取除く浄化装置を稼働させ,一定程度,放射性物質を除去した上でタンクに入れておけば,漏れ出した汚染水の放射能の量も,少しは少なかったかもしれない。しかし,ALPSは試験操業中に水漏れを起こしたために,まだ稼働されていない。言ってみれば,比較的量の少ない水漏れに大事をとって,高濃度汚染水の浄化対策をぐずぐずとやっていたら,結果として,その高濃度汚染水が大量にドバーと漏れて海に出てしまったということだ。間抜けを絵にかいたような対応ではないか。

 

(6)東京電力は,福島第1原発事故後の原子炉を冷却した汚染水が,それこそ致死量をはるかに超える危険極まりない高濃度の放射能汚染物である,という認識が乏しいのではないか。だからこそ,汚染水を「簡易型」の寿命5年程度の脆弱なタンクに入れてみたり,汚染水を運ぶのに家庭用の塩化ビニルホース類似の軟弱なものを使ったために,雑草の「とげ」で穴があいて汚染水漏れを起こしたり,あるいはビニルシートを敷いただけの大きな穴に,その猛烈な汚染水を入れて管理しようとしたりと,シロウトの私が見ても首をかしげる「馬鹿丸丸丸丸丸丸丸丸出し」の対処を続けているのだろう。

 

(7)先般も申し上げたように,東京電力は会社存続を最優先し,金のかかる福島第1原発事故後の対策については,外部業者などからの提案をことごとく拒否しているという。また,最も重要な原発事故被害者に対する賠償金・補償金も,原子力損害賠償紛争審査会の指針さえも無視して極度に出し渋り,また,除染費用も支払いを拒否する始末である。

 もはや東京電力に当事者能力はない。もともと無能で怠慢で傲慢で慇懃無礼な連中の集まりだった。最後通牒を東京電力につき付け,直ちに会社更生法適用を申請すべきである。東京電力の解体は,日本と福島の再生の第一歩である。

 

*放射性ストロンチウムをなぜ調べないのか (放射性セシウムの数百倍の危険性を警戒しよう) 原発ゼロ・脱被曝 どうしたらできる?

 http://onndannka.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/post-c8f4.html

 

*放射性ストロンチウムをなぜ調べないのか(その2) 原発ゼロ・脱被曝 どうしたらできる?

 http://onndannka.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-6c34.html

早々

 

2013年8月11日 (日)

福島第1原発の汚染水対策:またやってる東京電力のいい加減対応3つ=海の汚染対策のための費用をケチるな

前略,田中一郎です。

 

ご承知の通り,福島第1原発から2年以上にわたり,海へ猛烈な放射性物質が漏れ出ていたことが明らかになってきました。2年以上も前から分かっていることを,何を今ごろ大騒ぎしているのか,ということですが,そのいい加減さは,深刻な事態が発覚してからも続いています。以下,簡単に指摘しておきます。

 

*福島第一 地下水1日400トン海へ 汚染2年以上続く? (東京新聞)

 http://www.asyura2.com/13/genpatu32/msg/751.html

 

*(参考)福島第一原発直下を流れる地下水の水位と流速はどうなっているのか? 3.11東日本大震災後の日本

 http://tsukuba2011.blog60.fc2.com/blog-entry-606.html

(批判的にご覧下さい)

 

(1)地下水に漏れ出した放射能が海に出てくるまでには10年かかると真顔で解説,放射性ストロンチウムにいたっては,100年から数百年かかるなどと説明していた:実際は,本当のことがバレルまでに3カ月もかからずだった(東京電力,原子力「寄生」委員会)。(ほんまに,いつまででも,ようゆうとるで,あんたら)

 

東京電力 福島第一原子力発電所 汚染水の海洋流出は10年後から - YouTube

 http://www.youtube.com/watch?v=YiiSWIYiaTs

 

*福島第一原発の汚染水漏れ 最速で10年後に上限濃度超え 地震予測検証 - 防災情報 Hazard Lab【ハザードラボ】

 http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/1/0/1032.html

 

 東京電力福島第一原発で地下貯水槽から汚染水漏れが相次いだ問題で、原子力規制委員会は19日、早ければ約10年後に海に流入する水に含まれる放射性ストロンチウムの濃度が法令上限を超えるとの試算結果を公表した。日本原子力研究開発機構が試算。敷地内に7ヶ所ある貯水槽のうち、最大量の漏れがあったとみられる2号貯水槽から、汚染水120トンが地中に漏れたと想定。約880メートル離れた海に流れ込むまでの時間や放射性物質の濃度について、地下水の流速や放射性物質の砂質層での拡散率などから解析した。その結果、砂質層で土壌に吸着する割合が低く、地下水が1日30センチで流れた場合、放射性ストロンチウムは10年ほどで法令限度濃度の1リットルあたり30ベクレルに到達。約30年後にピークを迎え、同約1000ベクレルとなる。ただし、土壌への吸着率が高ければ、法令上限に達することはなく、原子力規制委は「正確な移行を評価するには、砂質層での分配係数の把握が重要」としている。

 

 ご試算あそばされたのが日本原子力研究開発機構,いつものあそこです。みな,同じ穴のムジナです。

 そして,ついこの間も,東京電力は次のように語っている。

「流出が始まった時期は不明だが、事故発生二カ月後の二〇一一年五月以降、流出が続いていると仮定し、放射性トリチウムの漏出量を試算、約二年間で二〇兆~四〇兆ベクレルが海に漏れたとはじき出した。福島第一で認められるトリチウムの年間放出量は二二兆ベクレルのため、東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は「通常の管理と差がない範囲。ただ、問題がないと言うつもりはない」と強調した。骨などにたまりやすく、より害の大きい放射性ストロンチウムは試算しなかった。」

 

 こんな東京電力の話を聞いて,そうか,それなら安心だね,と思う馬鹿がどこにいるのか? いつになったら,人を馬鹿にしたような,こんな説明をやめるのか?

 

(2)海岸べりで組み上げた放射能汚染水は,どこへ持って行くのか?

 「くみ上げた汚染水は、タービン建屋と岸壁の間の坑道に移す」=こんなことして,何の意味があるの? 

 

*朝日新聞デジタル:放射能汚染水くみ上げ開始 やっと防止策 福島第一原発 - 社会

 http://www.asahi.com/national/update/0809/TKY201308090245.html

 

 くみ上げた汚染水は、タービン建屋と岸壁の間の坑道に移す。坑道は建屋とつながっており、建屋にたまっている汚染水とともに放射性物質を除去し、敷地内のタンクにためる。汚染水が増えることで、管理がさらに難しくなる。

 

 今ある汚染水だけでも四苦八苦している状態で,そこへ海側岸壁近くから汚染水を組み上げて持ってきて,それに加えて併せて処理します,などという,明らかに阿呆がやりそうなことを,対策としてやるのだという。ただのアリバイ工作であり,「対策」にもならない,ただの「お遊び」である。さっさと抜本対策を取れ!!!

 

(3)原発汚染水抑制、凍土で遮水壁設置へ=その場限りの安上り・いい加減対策

 こんなことを1回やってしまうと,半永久的にそのメンテナンスで難儀することになる。しかも,そのメンテナンスができなかったら,岸壁周辺は「穴だらけ」と言うことになり,福島第1原発地下の汚染水は海へ一気に流れ出て来ることになる。

 

*福島第1原発汚染水抑制、凍土で遮水壁設置へ- 毎日jp(毎日新聞)

 http://mainichi.jp/select/news/20130531k0000m040075000c.html

 

 計画案によると、凍土遮水壁は全長1.4キロで1〜4号機建屋を囲むように設置される。凍結管を1メートル間隔で地表から20〜30メートルの深さまで垂直に打ち込み、管内部に氷点下40度以下の冷却材を循環させて、周りの土を凍らせて壁を造る。地震などでひびが入っても、再び凍らせれば済む。しかし、地下水がせき止められると、凍土遮水壁と原子炉建屋間の地下水位が建屋内の水位より下がって、建屋の破損部から汚染水が外部に漏れかねない。このため、ポンプで水位を調節する必要があるほか、冷却のための電気代など多額の維持費もかかる。さらに、凍土遮水壁は大規模なもので10年以上の運用実績の例はなく、廃炉まで30〜40年かかるとされる福島第1原発で恒久的な有効策になるかは不透明だ

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 上記(1)(2)(3)のようないい加減で,手抜きで,その場しのぎの対策が何故出てくるかと言うと,それは「海への汚染防止対策」や「作業員・住民の被ばく防止対策」などは,まともに検討されておらず,世論に押されて恰好だけ付けているだけだからに他ならない。要するに,費用がかかるならやらない,というスタンスである。伝え聞くところでは,東京電力は,外部からの,あるいは外国からの,汚染水対策をはじめ放射能汚染拡大防止・被ばく防止対策の諸提案等のうち,費用のかかりそうなものはことごとく拒否しているらしい。汚染水などは,最終的に海へ捨ててしまえばいい,と考えているからに他ならない。この点は原子力「寄生」委員会・「寄生」庁も同じだ。

 

 思い出していただきたいのだが,少し前のマスコミ報道では,汚染水をためるタンクが「にわか造りの仮のもの」で,数年たつと耐久性に限界が来て,新しいものに取り換えなければいけない,と伝えられた。溶接やボルト・ナットなどの箇所が弱いという。その少し前には,汚染水を流すホースが,家庭用の塩化ビニル樹脂のような「かよわい素材」で作られたものを使っていたために,雑草のとげで穴があき,そこから猛烈な放射能汚染水が漏れたという報道がなされていた。その前には,これまた間に合わせの配電盤をいつまでも野外に放置していたため,ネズミがかじって停電した,などという「大山鳴動の」お粗末話もあった。

 

 これらみんな,金をかけないで,その場しのぎで,きり抜けようとした,東京電力の無能・無知・愚かさの結果である。東京電力に原子力「寄生」委員会「寄生」庁に経済産業省,この3馬鹿トリオに福島第1原発の事故後処理を任せておいても,ろくなことにはならないだろう。もし万が一,再度,福島県を震度7クラスの地震や波高30m級の津波が襲ったらどうなるか,その時が日本のいっかんの終わりかもしれないし,少なくとも,汚染水タンクの放射能はすべて,海へ流れて出て行くだろう。

 

 そうした危機的な状況の下で,今日もまた,東京電力・原子力「寄生」委員会「寄生」庁・経済産業省のいい加減と,その場しのぎと,トンチンカンな対策が続き,口から出まかせの説明がまことしやかに行われ,マスゴミがそれを何のチェックも批判もせずに垂れ流す日々が続いている。

早々

 

2013年8月 1日 (木)

福島第1原発事故の被災者を切り捨てるなど,絶対に許さない(脱原発=脱被曝=被害者完全救済)

span lang="EN-US">

 

1.被災者支援先送り密議,復興庁3月「参院選後に」(毎日新聞 2013.8.1)

またまた「密議」発覚です。

被災者支援先送り密議,復興庁3月「参院選後に」,が毎日新聞によってスクープされました。

 

被災者救済より自己保身が何より大事の霞が関官僚達

追及されてもとぼけた回答を繰り返しているだけ,完璧に被害者や有権者・国民を馬鹿にしている。

被災者支援対象を決める放射線被曝線量限度の検討を拒否する原子力「寄生」委員会

そして,こうした動きを重々承知で素知らぬ顔しながら原発再稼働と原発輸出に邁進する安倍晋三政権・自民党

信じられない奴らだ。

 

経済的な困窮から疲弊し,再建どころか日々の生活に苦しむ避難した被災者の方々

猛烈な放射能汚染地帯へ帰れと言われ,危険極まりない被曝生活を押し付けられる被災者の方々

もちろん賠償打ち切りとセットである。

そもそも政策支援の対象ともされず,放射能汚染と被曝に苦しめられる各地の人々

それでも「原子力事故による子ども・被災者支援法」は発動されない。

 

これがまともな国の在り方なのか

これが人間の国か

私は絶対に許せない,このままにはしておけない。

 

みなさま,被害者完全救済のために立ち上がりましょう。

 

*復興庁被災者支援 先送り密議 暴言ツイート裏付け- 毎日jp(毎日新聞)

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130801-00000023-mai-pol

 

2.緊急報告会&政府交渉:「原発被災者の権利を守ろう」(2013731日)

昨日(2013.7.31),参議院議員会館101にて「緊急報告会&政府交渉:「原発被災者の権利を守ろう」が開催されました。別添PDFファイルはその時の資料です。ご参考までにお送り申しあげます。

 

*FOEJAPN(主催者団体)

 http://www.foejapan.org/energy/evt/130731.html

 

20130731UPLAN 「強制」される帰還?...避難指示解除と賠償打ち切り

 http://www.youtube.com/watch?v=Zu47bI8VG4Q

 

3.【開催報告】「福島県県民健康管理調査」に関するダイアローグ会合

 http://www.foejapan.org/energy/evt/130727_2.html

 

4.プレスリリース「被災者のいのちと暮らしにかかわる問題が国の思惑て棚ざらし?」

 http://www.foejapan.org/energy/news/130801.html

 

早々

 

核燃料サイクル施設等の危険極まりない手抜き「新規制基準」は許されない

前略,田中一郎です。

 

このほど原子力「寄生」委員会は,核燃料サイクル施設,使用済み核燃料保管施設,放射性廃棄物処分施設等の「新規制基準」の骨子(案)を決定し,パブコメに付しました。別添PDFファイルは,それに対する批判的コメントです。

 

*(別添PDFファイル)

「核燃料サイクル施設等に係る新規制基準は手抜きだ」「kakunenn_shinnkijunn.pdf」をダウンロード


 
*「核燃料施設等に係る新規制基準骨子案」に対する意見募集について|意見公募(パブリックコメント)|原子力規制委員会

 http://www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu130724_1.html

 

*原子力規制委原発並み地震・津波対策 核施設、規制基準案了承- 毎日jp(毎日新聞)

 http://mainichi.jp/select/news/20130724dde001010014000c.html

以 上

 

« 2013年7月 | トップページ | 2013年9月 »

最近の記事

無料ブログはココログ