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2013年8月23日 (金)

第12回「福島県民健康管理調査検討委員会」の発表内容について(問題点とその批判)(その1:県民健康管理調査「基本調査」)

前略,田中一郎です。

 

 昨日お送りした第12回「福島県民健康管理調査検討委員会」の発表内容について,下記にその問題点と,それに対する当委員会ならびに福島県庁や福島県立医科大学などの対応のおかしさを批判する。この委員会は,事故後2年半が経過し,開催回数も12回を数えるというのに,未だ福島第1原発事故による理不尽極まる被害を受けた県民=被ばく者を十分には保護・サポートできず,政府や原子力ムラなどの被曝もみ消し・矮小化への圧力に抗することができないまま,あいまいな発信や中途半端な対応を続け,あるいは記者会見などでの核心をついた質問には「はぐらかし」の答弁をしているのである。

 

 この委員会は,発足以降,第10回までのメンバーや検討内容,運営の在り方があまりにひど過ぎ(たとえば秘密会の開催と二枚舌),弁護士会をはじめ様々な方面から厳しい批判を受けて,結局,前回以降メンバー交代となった。しかしながら,それでもまだ,委員会の本質的に歪んだ体質は改善されていないようである。原発安全神話に代えて放射線安全神話を確立するため,福島第1原発事故による放射線被曝の健康被害や遺伝的障害を,放射能との因果関係なしと強弁することで切り捨てんとする,人間として許し難い,科学者・医学者の風上にも置けぬような背信的姿勢が,今もって継続されているように思われてならない。私が前回の甲状腺ガン検査結果をまとめたレポートの中で,当委員会のメンバーの更なる更迭を求めたゆえんである。

 

(私は,この「福島県民健康管理調査検討委員会」の体質を抜本的に変えるためには,委員会の委員更迭のみならず,事務局もまた根本的に変えなければいけないのではないかと思っている。具体的には,事務局から福島県庁をはずし,民間のNPOで放射線被曝や放射能に対して警戒的で厳格な姿勢をとる団体(複数)からの人達に事務局を委ね,福島県庁はその下で,意思決定に関わらずに「作業」のみを請け負うことにすればいいのではないか。何故なら,3.11以降,福島県知事をはじめ,県庁の反道徳性や反県民性は目に余るものがあり,今後県民の被曝対策や健康管理を検討していく組織の事務局としては,とてもふさわしいとは思えないからだ)

 

 こうした「福島県民健康管理調査検討委員会」や福島県庁・福島県立医大の反道徳的・反県民的対応が継続されてしまう大きな原因の一つが,権力のウォッチドッグの役割を果たすべきマスコミ達の取材及び報道姿勢の稚拙さにある。既にご紹介している委員会後の記者会見(VTR)の質疑応答を見ると,中には朝日新聞の本田記者・大岩記者,毎日新聞の日野記者,アワプラの白石氏,あるいはおしどりマコちゃんなど,鋭い質問を発する記者もいるが,全体的には,概して質問内容がピンボケであったり,急所が外れていたり,委員会の歪んだスキームそのものを突き崩すような質問がほとんど出なかったりと,その本来果たすべき使命を果たしているようにはとても見えない。こんなマスコミ・記者達だったら,被ばく隠しの悪事を働く委員達も,さぞかしやりやすいことだろう。マスコミが「マスごみ」と揶揄されて久しいが,こんな記者会見なら「ゴミ」と言われたってしょうがないとさえ思うこともある。

 

 絶対にそうなるとまでは申し上げないが,今のような健康管理の水準や内容では,将来に向けて大きな懸念が残る。欠落しているもののうち最も重大なことは,甲状腺ガン以外の放射線被曝健康障害に対する警戒や備えが皆無にちかく,従ってまた,甲状腺検査以外に必要だと思われる検査(=具体的には,尿検査,血液検査・染色体検査・DNA検査,心電図,放射線障害が多い内臓疾患検査など)も同時並行で行われるべきものが,なされていないことである。もちろん,甲状腺検査のやり方についても,多くの人達が批判しているように問題だらけであり(例えば,18歳以上の人達への検査の未実施,福島県立医大の検査体制の問題,検査のなされ方が雑,などなど),しかもそれが一向に改まる陽子がうかがえないのである。簡単に言えば,チェルノブイリ原発事故の教訓がほとんど活かされていない(無視されている)。そこでは,放射線被曝を矮小化し,もみ消したいという,ひたむきな姿勢が透けて見えている。

 

 また,そもそも放射能の汚染地域は福島県だけではないにもかかわらず,何故,福島県以外の地域で「県民健康管理調査検討」がなされていないのだろうか。福島県外にも福島県以上の放射能汚染状態のホット・スポット地域はたくさんある。それを現状のように放置しておいていいのか。何故,マスごみは,これは重大な人権侵害である,大問題である,不公平である,将来へ向けて大きな懸念あり等々と,問題化し報道しないのか。

 

 福島第1原発事故の被害は,まず,物損や精神的被害のレベルで,そのほとんどがまともに賠償も補償もされず,まもなく民法上の時効を迎えようとしている。つまり日本という国では,原発事故による被害は,地域住民の物損や精神的被害・あるいは生活破壊である限りはほとんど踏み倒してもいい,それはさしたる問題にもならず,法曹界も官僚達も自治体も政治家達も,知らぬ・存ぜぬ・他人事で,加害者・原子力ムラの大喜びに帰結するという,信じ難くも許し難いことが「慣習法」化しようとしている。まさに原子力ムラ天下の「無法国家」「人権無視国家」である。

 

 加えて,このままでは,事故後の被ばく対策が適切になされておれば放射線被曝を重ねる必要もなかった多くの人達が,それとは知らずに被ばくを続けて健康を害し,あるいは遺伝的障害を被り,そしてそれに対しても加害者・原子力ムラからは「放射能とは因果関係なし」「立証できず」で,賠償も補償も,場合によっては適切・必要十分の治療さえも受けられず,闇から闇へと消されていく,そういう時代がやってくるのではないか。加害者・原子力ムラ達は,そういう時代に備えて,証拠隠滅(被曝実証データなど)や放射線安全の屁理屈構築に余念がなく,似非科学者達はそれを「科学」の名において合理化している。

 

 既に福島県では放射線被曝による健康上の懸念さえ,口に出しては言えないというではないか。財産・精神・健康・生活の4つの被害をほとんどまともに償ってもらえず,口を開けば「復興・復旧」「企業・産業」「地域振興」「除染・定住・帰還」,そうでない奴は非国民・非県民,出ていけと言わんばかりの暴圧的な社会的雰囲気,こんな息の詰まりそうな「被曝押し付け合い社会」=原子力翼賛社会がすぐそこに見えている。

 

 いいのだろうか,こんな社会にしてしまって。この巨大な福島第1原発事故被害者に対する理不尽極まりない対応を,まるで他人事かの如く見過ごし,馬鹿マスコミの嘘八百報道に惑わされて放射線安全神話にのめり込み,そしてまた,原発・核燃料施設再稼働を容認する,そんなことをしていて,ほんとうにいいのか? 自分達の子どもや孫たちがかわいそうだとは思わないのか。今度は自分達の番だとは思わないのか,フクシマのことは他人事・他県ごとにしておいて,ほんとうにいいのか。原発・核燃料施設は日本全国各地に散在しており,そのどれが大事故を起こしてもおかしくない状態であることを知らないまま,かような「安眠」「お気楽」を福島第1原発事故後においても続けて行こうというのか。

 

 正気を取り戻せ。目を覚まそう。原子力翼賛の社会を拒否するためには,まず真っ先に,福島県民をはじめ,福島第1原発事故で被害を受けられた方々の完全救済を,力を合わせて実現させ,そして,これ以上の無用の放射線被曝を回避し,これからの健康管理に万全の手を尽くすことである。放射能は当然ながら密閉して厳重管理し,人間社会や自然環境から隔離されなければならない。

 

 人の「きずな」だの,「食べて応援」だの,汚染地域への帰還だの,「心のケア」だの,「地域の結束と振興促進」だの,産業振興だの,無責任な時々の作為的な宣伝文句に乗せられることなく,しっかりと方法論を見定めて,ポスト福島第1原発事故の脱原発・脱被曝社会を築いていかなければならない。原発震災への対応・対策に,人間の命と健康を最優先する断固たる信念を置かねばならない。何故なら,人間の復興なくして地域の復興はありえず,また,人間も自然も地域も,およそ原子力や放射能と共存することなど,できっこないからである。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

以下,下記の2つの資料をベースに,「福島県民健康管理調査検討委員会」の発表内容を簡単に検証する。

 

*福島県ホームページ - 組織別 - 県民健康管理調査検討委員会HP

 ((今回)第12回「県民健康管理調査」検討委員会(平成25820日開催)に注目:画面上部)

http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=24809

 

*第12回福島県「県民健康管理調査」検討委員会 次第

 http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/250820sidainado.pdf

 

20130820 記者会見のみ「福島県民健康管理調査」検討委員会 - YouTube

 http://www.youtube.com/watch?v=qU_-GsVIhUE

 

1.資料1 県民健康管理調査「基本調査」の実施状況について

(1)問診票の回答率が23.5%と低いことについて

 委員会では「問診票記入を容易にすれば,より多くの県民の方が問診票を提出できる可能性がある,と考えられた」としているが,この考え方は「上滑り」なのではないか。回収率が低迷しているのは,そんな小手先細工の問題ではないのではないか。

 

 何故,問診票を用いて「基本調査」をするのか,それが回答する県民にとって,どういう利点や効果があるのか,どういう意味や意義があるのかがはっきりしないから,回答が寄せられていないのではないのか。そして,県民がそのように感じているのは,そもそも「福島県民健康管理調査検討委員会」が,県民の健康維持や放射線被曝被害の防止や被ばく治療のためにあるのではなく,被害者を「上から目線」で管理して,県民がが大きな賠償・補償の動きや,原子力・放射能否定につながる動きが出ないよう,県民をある種の「檻」の中に入れて,放射線被曝が問題化するのを未然防止するために作られているのではないか,と疑問に思っているからではないのか。

 

 口先だけでなく,内実ある形で真の意味で県民のための健康調査に取り組めば,調査であろうが検査であろうが,参加してくる人は一気に増えるに違いない。

 

(2)被曝線量推定作業について

 説明資料では「(独)放射線医学総合研究所が開発した評価システムを用いて外部被曝積算実効線量を推計」とある。しかし,この推計モデルはどのように第三者によって検証され,また,県民に対して説明されているのか。私には,中身が「ブラックボックス」のまま,原子力ムラの端くれの研究所がつくったモデルなるものが用意され,それで計算した結果だけが県民に通知されている,結果をもらった方は「こんなもんか?」と,わけがわからないままに当惑している,という状態ではないのか。

 

 だからこそ「放射線業務従事経験者を除く435,788人の推計結果は,県北・県中地区では90%以上の方が2mSv未満,県南地区では約91%の方が,合津・南合津地区では99%以上の方が1mSv未満となり,相双地区は約78%の方が,いわき地区でも99%以上の方が1mSv未満となっている」などと,どうみても過小評価のような外部被曝評価を打ち出しているのではないか。また,このモデルでは内部被曝は全く分からないから,被曝評価としては欠陥品であるが,それについても県民にきちんと説明がなされているのであろうか。およそ外部被爆は推計できるが,内部被曝は推計できない,などということは非科学的である(福島第1原発事故直後に放射性ヨウ素のプルームが低空飛行で流れた地域などは特に心配:いわき市や福島第1原発の北西方向・真北方向など)。

 

 県民への説明の仕方も,私はいい加減でお粗末なのではないかと直感的に思われてならない。たとえば1020くらいのモデルケースを想定して,それぞれが,どれくらいの外部被曝を受けたと計算されるのか,具体例で示して説明し,世の中の各方面からの批判や検討も受けた上で,少なくとも「ハウツー」については,透明・全面公開の形で被曝線量の推定が行われるべきである。しかもここで示される外部被曝の値はあくまで参考値にすぎず,主として「相対比較」がある程度の有効性を持っているだけの数値であることを明記した上で,くれぐれも放射線被曝の過小評価や歪曲につながらないよう「用心」をした上で使用されるべきである。

 

 また私は,上記にように放射線被曝が「たいしたことはない」と説明する際にはたいへん「能弁」な当委員会及び事務局が,逆に,大量被曝の危険性・可能性を検証する際には,個人情報保護などを口実に,情報を隠しに隠し続けているような印象も持っている。この方法論的二重人格性は,徹底して追及されなければならない点だ。

 

 しかし,いずれの点についても,マスコミ記者達の追及は弱く,問題意識は低い。しっかりしていただきたいものである。

 

(3)(朝日新聞・本田雅和記者が質問=とてもいい鋭い質問である)

 当委員会発表のレジメには次のように書かれている(P3)。「これまでの疫学調査により100mSv以下での明らかな健康への影響は確認されていない(*)ことから,4か月間の積算実効線量推計値ではあるが,「放射線による健康影響があるとは考えにくい」と評価される」「(*)「放射線の線源と影響 原子放射線の影響に関する国連科学委員会 UNSCEAR2008年報告書[日本語版]第2巻 (独)放射線医学総合研究所)」

 

 本田記者は,「100mSv以下での明らかな健康影響は確認されていない」という文章前半を理由にして,後半の「健康影響があるとは考えにくい」と評価を導くのは誤りで,そこには因果関係などはなく,正確には「健康への影響は分からない」とすべきではないか,と追及した。何故なら,「(健康影響が)確認されていない」とは「統計学的に有意ではない」ということであって,「健康に影響がない」ということではないからだ。本田記者の追及質問は,まことにもっともなものだったが,その回答は,座長の星北斗氏自身のものも含めて「はぐらかし」である。詳細は記者会見ビデオをご覧いただきたい。

 

 私は「まだ,こんなことを書いているのか」という印象である。因果関係については本田記者の言う通りで,仮に「これまでの疫学調査により100mSv以下での明らかな健康への影響は確認されていない」を認めるのであれば,結論は「統計学的な有意性が確認できず,結果として健康への影響は分からない」とすべきものである。明らかな,放射線被曝軽視・無視へのバイアスがかかった不当な記述だ。

 

 しかし,問題はそれだけではない。まずもって「これまでの疫学調査により100mSv以下での明らかな健康への影響は確認されていない」が嘘八百である。逆に,100mSv以下でも明らかな健康への影響が確認されたデータはたくさんあるし,昨今では,10mSvかそれ以下でも,健康影響が出ているとするデータも出始めている。チェルノブイリ原発事故後のウクライナやベラルーシからの報告などにも,低線量での健康被害のデータは多く存在し,およそ恒常的な低線量被曝の危険性は,今では多くの人々の「常識」となってきている。何が「確認されていない」なのか!!!,いつまで嘘八百をついているのか。

 

 実は「(健康への影響は)確認されていない」のではなく,上記の根拠とされたUNSCEARをはじめとする「国際原子力マフィア」と呼ばれる被曝評価矮小化の集団が,多くの低線量域での健康被害を「確認しようとしない」だけなのである。UNSCEARとICRP(国際放射線防護委員会)は表裏一体の国際組織で,戦後一貫して米国の核戦略の支配下にあって,執拗に放射線被曝の評価を矮小化し,歪曲してきた「諸悪の根源」のようなところである(特に内部被曝)。そんな組織の勧告や報告書を,何らの検証もチェックも行わず,我田引水的に,つまみ食いをするかのごとく,自己都合に合わせて放射線被曝軽視・無視・矮小化の根拠にするなど,「福島県民健康管理調査検討委員会」にあってはならない背信行為ではないかと思われる。

 

 そもそも記者会見での記者達の追及が甘すぎる。たとえば「これまでの疫学調査により100mSv以下での明らかな健康への影響は確認されていない」の嘘八百を,具体的な事例を挙げて突けばいいではないのか。本田記者の追及はもっともではあるが,更にそれに加えて,UNSCEARやICRPの報告書や勧告などを無批判・無検証で使うことのおかしさを,何故マスコミ達は追及しないのか。UNSCEARやICRPの報告書や勧告の,どこにその実証的根拠があるというのか。何もないではないか。

 

(UNSCEARにしろICRPにしろ,その委員たちは,原子力の推進当事者であったり,それと密接に関係して利害を共有する人間達であったりしていることは,すでに伝えられているところだ。また,日本などの国では,委員に就任した者が電力を含む原子力事業者から金品他の多くの便宜供与を受けていることもあり,これら国際的な放射線被曝評価機関と原子力推進との癒着や利益相反が無視できないレベルにある。にもかかわらず,日本のマスごみ達は,UNSCEARやICRPの組織としてのあり方,あるいは委員達やその勧告・報告書の公正性・公明性を問うこともなく,ましてやその内容の真偽性や実証的根拠を問うこともなく,更には,それら組織や勧告・報告書への多くの人達の批判を顧みることもなく,それら組織の(原子力推進に偏った)(被曝の軽視へバイアスのかかった)主義主張を,あたかも放射線被曝を考える際の「共通インフラ」「コモンセンス」であるかのごとき扱いをしながら取材や報道に臨んでいる様子がうかがえるのである。不勉強甚だしきを通り越して,マスごみよ,あんたらも仲間なの? と申し上げたくなるではないか)

 

*(参考)『放射線被曝の歴史:アメリカ原爆開発から福島原発事故まで(増補)』(中川保雄著:明石書店)

 http://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784750334820

 

(4)記者会見について(「福島県民健康管理調査検討委員会」の公開性)

 質疑応答の声が小さい。もっと大きな声で,せめて星北斗座長くらいの大きさの声で,はきはきと,VTRを見ている人にも聞こえるように発言すべきである。質問をしている記者の方が,自信がないのかどうかわからないが,まるで病み上がりのような,風呂の中で放屁をしているような,ひょろひょろ声で発言している。そんなんでは,マスコミ記者とは言えないぞ。

 

 それから,この記者会見の設営はいったいどうなっているのか。いわゆる「記者クラブ」方式なのか。もしそうであるのなら,それを抜本的に転換して,もっと多様な独立系の記者達も記者会見に立ち会い,質問できるようにしたらどうか。時間が足りないのなら,別途,公聴会なり,説明会なりを設けて,いわゆる「リスク・コミュニケーション」なるものを充実させるべきである(私はこの「リスク・コミュニケーション」という言葉も,その考え方も大嫌いであるが,今はその説明は省略)。前回,時間切れ・記者会見の打ち切りに抗議して,朝日新聞・本田記者が別途説明会を開催するよう要請していた通りである。「福島県民健康管理調査検討委員会」は十全の説明責任を果たすべきである。

 

 ふとどき千万だった「秘密会」をやめたら,「福島県民健康管理調査検討委員会」の公開性が確保されたということではない。「公開性」と「説明責任」は表裏一体であり,記者会見に臨む記者の質問は,参加できない無数の国民・県民の代わりに,その記者が質問をしていると考えていい。委員会にも記者にも,そういう関係にあることをしっかり認識していただきたいものである。従ってまた,記者会見や委員会そのものの録画も,委員会事務局が責任を持って,参加できなかった人にもわかるように,適切・的確に用意され,公開されるべきである。(以降,次回)

早々 

 

 <追>清水修二副座長(福島大学副学長)の発言より

 記者会見のVTRで,開始後13分ぐらいのところで清水修二副座長(福島大学副学長)(委員会副座長で座長の右横)の「(100mSv以下の被曝と健康影響について)統計学上の有意さと健康被害の有無」に関する質問への答弁が出てきます。

 

 そこでは同氏は「統計上の有意な関連が見えないということで,それ以上でもそれ以下でもない,(放射線被曝による健康被害が)他の要因にまぎれて調査しても解明ができない,参考文献として記載されているUNSCEARの文献には,内部被曝と外部被曝が合算なのか,外部被曝だけなのか,その記述についてはわからないので,わかるようにしたほうがいいのではないか」などと発言している。

 

 が,しかしである。100mSv以下の領域での健康被害の実証研究はたくさんあり,清水氏が言うような「調査しても解明ができない」などというようなことではないし,また,参考文献として記載されたUNSCEARの文献記述がよくわからないものならば,こんな公表資料からは削除させればいいだけの話である。いずれにしても「「放射線による健康影響があるとは考えにくい」と評価される」などという記述には絶対にならないだろう(少なくとも公表資料を書いた人間や,当委員会の委員達に良識と良心があるのなら)。

 

 そもそも「統計上の有意な関連が見えない」ということを問題にすること自体があやしいのであって,統計学的に有意な放射線被曝を人間がするには何百万人もの人が一度に同じような条件で放射線被曝せねばならず,所詮は無理な話である。彼ら原子力ムラ=UNSCEARやICRPらの狙いは,このように言うことで,あらゆる100mSv以下の被曝実証の結果を「科学」の名のもとに一掃し否定してしまうこと自体を目的としており,それはとりもなおさず恒常的な低線量被曝の危険性の矮小化や過小評価へとつながっていくのである。(それでいて,ほんのわずかの飲食品を検査した結果をもって,放射能汚染食品は安全である,などと平気で強弁する「二枚舌」の持ち主達である。飲食品の検査結果は統計学的な扱いの例外なのか? ご都合主義もいい加減にしたらどうか)

 

 統計学的に厳密な有意性がない,としても,人体実験ができない以上,それはそれでいたしかたないことで,その範囲内で最も蓋然性が高いと見られる実証結果を使って,かつ充分な安全バッファも確保して,予防原則的な被曝管理や放射線防護の考え方ないしは基準を打ち出せばいいだけの話である。既に動物実験では,100mSvどころか,もっともっと低い低線量の領域で,放射線による健康障害や遺伝的障害が多発する結果が多く確認されている。人間がそうした恒常的な低線量被曝の危険性の例外であるはずもない。100mSvなど,冗談ではないと言うべき「殺人的」数字である。

 

 清水氏はVTRで見せたようなつまらぬ形式論ではなく,

100mSvの被曝は,それが外部被曝にせよ内部被曝にせよ,統計学的な有意性云々がなくても,他の様々な実証研究から鑑み,懸念するに値する十分な危険性があるのであり,放射線被曝に閾値がないことと併せて考えれば,県民が受けた被曝について,安心できない,看過することのできない事実が存在している。県民健康管理は,そうした無視できない放射線被曝の結果に対して万全を期すためにこそ行われるべきであり,「放射線による健康影響があるとは考えにくい」などという軽率な表現を用いることで,逆に県民の不安と誤解を招くことを避けるべきである。」

 

 とでも言うべきではなかったのか。リベラルと言われる福島大学の副学長が,何故,人間としての覚悟を決めて,真の意味で県民の命と健康を守るために全力を尽くせないのか,私には理解ができないところである。

 

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