放射性物質トリチウムと青森県六ケ所村再処理工場( 東北地方が今度は北から原子力ムラによって「毒殺」されようとしている)
前略,田中一郎です。
福島第1原発の海に近い掘削穴などから高い濃度のトリチウムが検出され,注目されています。しかし他方では,青森県六ケ所村の再処理工場が,(仮に何ら事故やトラブルを起こすことなく正常に運転されていたとしても)トリチウムを無制限に垂れ流す最悪の核燃料施設であることは,あまり有権者・国民の間では知られていません。下記はそれに関して書いております。
1.原発のトリチウムの排出規制値について
新聞情報,及び伝聞情報によると,日本における原発のトリチウムの排出規制値は下記のようである。
水になっているトリチウム 60ベクレル/cm3
一般化合物になっているトリチウム 40ベクレル/cm3
有機化合物になっているトリチウム 20ベクレル/cm3
私は上記の排出規制について,次のような問題があると考えている。
(1)トリチウムの規制値が政府各省のHPのいったいどこに掲載されているのか全く分からない。私のこの件に関する情報源は上記に書いた通りなので,本当にそうなのかどうかの確認ができていない。また,これらの法的な根拠も明らかではない(原子炉等規制法か?)。
⇒ 親切な方から教えていただきました。この施行令を一般の人が一見しただけでは,何のことなのかは分からないでしょう。文部科学省は,この施行令を一般向けに解説したものをHPに掲載すべきです。
<根拠法>
文部科学省(放射線障害防止法施行令)「放射線を放出する同位元素の数量等を定める件」
(法律の根拠は「放射線障害防止法」(「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」)で,その施行令に規定があるようです。この告示の14条に排水基準について書かれていますが,実際の濃度は別表第2に書かれています)。
(2)諸外国のトリチウムの排出規制値がいかほどなのかも日本政府は明らかにしない。だいぶ前に厚生労働省がEUとアメリカの放射性物質の飲食残留規制値を公表していた記憶があるが,そこではベータ核種一般とされていて,トリチウムだけの規制値ではなかったように記憶する。
(3)仮に上記の規制値が日本政府の打ち出している規制値だとして,この経験科学的根拠はどうなっているのか? 一般に化学物質や重金属の毒性であれば,マウスなどの動物実験をやり,そこでおおよその「しきい値」 (この値以上の濃度になれば危険性が顕在化・広範化するという一定の値) のようなものを仮定して,それに安全バッファとして1/100をかけて規制値とする方法がとられる。しかし,放射性物質の規制値の場合は「しきい値がない」ことを口実にして,この重要な「安全バッファ」が全くない状態で規制値が決められている。しかも,その規制値の数字には何の「経験科学的根拠」も示されないのである。
いや,むしろ,おそらくは,経験科学的な根拠は示せない=実証的な裏付けがない,のに違いないのだろう。およそ,トリチウムに限らず,放射性物質の危険性は,人間の放射線被曝リスク回避のために,客観的にきちんと研究・検証されたことなど一度もない,と言っていい。これでは,インチキおじさんがやっている「もじゃもじゃ占い師」の「これこれ危険値」と大して変りはしない。まさに似非科学だ。
トリチウムが放出するベータ線(電子線)のエネルギーが,他の核種のベータ線やガンマ線のエネルギーなどと比較して小さいし,トリチウムは水の形で存在する場合が多くて,体内に入っても再び体外に出やすい,などの理由から,比較的危険性は低い,というような説明が新聞等でなされている。しかし,その比較的小さなエネルギーであっても,人間や生物の体をつくる細胞やDNAや生命秩序を破壊するには十分すぎるくらいに高エネルギーである。また,体内に入ったものが出て行きやすいとしても,毎日のように入ってきたら,トリチウムは常に体内に存在することになる。しかも,福島第1原発や青森県六ケ所村の再処理工場から垂れ流されるトリチウムは,他のベータ核種(放射性ストロンチウム等)などと一体になっていて,放射能MIX液のようなものである。安全安心どころの話ではない。トリチウムだから比較的心配はいらない,などというのは,経験科学的な実証根拠を欠いている一種のデマにすぎない。
(福島第1原発の敷地で検出されているトリチウム他のベータ核種を高濃度で含む汚染水の,トリチウム以外の放射性核種の濃度はいったいいかほどなのか,また,濃度だけでなく,放射能総量はどれくらいなのか。発表もされなければ,報道もされない。どうしたの???)
(4)上記規制値の単位にご注目されたい。単位は「/cm3」である。本来は「/m3」でなければならないはずなのを,見かけ上,「/cm3」にして数字が小さく出るように仕掛けがしてある。「/cm3」を「/m3」に変えるには,1m=100cmだから,100cm×100cm×100cm=100万倍すればいいということで,上記はそれぞれ上から順に,6千万ベクレル,5千万ベクレル,3千万ベクレルである。そして,原発から排出されるトリチウムを含む水の量は,おそらくトン単位で,それもすさまじい量のトン数なので,実際に排出されるトリチウムの量たるや猛烈な量ということになる。
こんな量のトリチウムを「これ以下なら安全です」などと称して環境中にばら撒いているなどということは,私は信じがたいことである。原発周辺で白血病が増えたり,健康障害が他地域より多くなるのは,言ってみれば当たり前のような気がしてならない。そもそも排出の規制値が,単位当たりいくら,の形になっていることがおかしい。原発廃炉までの総量規制を入れよ。
(5)トリチウムについて少し考えてみると,原発・原子力の出鱈目さ加減がくっきりと浮かび上がる。原子力ムラよ,いい加減にしろ,この馬鹿ども,である。
2.青森県六ケ所村の再処理工場について
以前にも申し上げましたが,再度,青森県六ケ所村の再処理工場について,その桁違いの危険性=放射能垂れ流し放題について申し上げます。
(1)原発には放射性物質の法的な排出規制値はあるが,再処理工場など,核燃料サイクル施設にはない。あるのは青森県との安全協定という「口約束」だけで,それに違反しても,何の罰則もおとがめもない。文字通りの「原子力無法地帯」である。にもかかわらず,「マスごみ」どもは,この重大な原子力ムラ代理店(日本)政府の出鱈目を国民・読者の前に明らかにしようとはせず,批判報道も行わない。まさに「原子力翼賛社会」である。
(2)トリチウムの排出は,下記にもある通り,再処理工場の廃液排出パイプをむつ小川原港の沖合3kmの海中にまで延長し,そこから何の放射能除去対策もしないまま,ドバーと海の中に,大量の他の放射性物質・核種とともに放出される。まさにこれは,海に対する殺人行為=海洋環境破壊犯罪の何物でもない。いわば,青森県六ケ所村の再処理工場は,毎日が福島第1原発事故状態ということになる。放出される廃液に含まれる放射性物質はトリチウムだけでなく,プルトニウム,ウラン,放射性ストロンチウム,放射性セシウム,炭素14などなど,いろんな危険な放射性物質がよりどりみどりである。いわば「海の毒殺カクテル」だ。
また,放出されるトリチウムの量=2186兆1423億7000万ベクレルにしても,その他の放射性核種にしても,その数値に根拠などありはしない。いい加減な仮定の上で計算してはじき出されたもので,それが実証的に確認されるわけでもない。ともかく天文学的な量の放射能が,毎日,毎日,海に垂れ流されるということである。
そして,許しがたいことに,事業者=日本原燃も,規制すべき政府や青森県も,放出されるトリチウムを含む大量の放射性物質は,海水によって薄められて拡散するので心配はいらない,排出に伴う県民の平均被ばく線量は,ほんの僅かばかり増えるだけで無視できる量である,と説明している。
♪♪うみはひろいな,おおきいな,ほうしゃのう,ながしても,うすまるぞ♪♪ と歌っているようなものだ。
ぞっとするような話である,上記のようなことが許されるのであれば,太平洋に向かっては,どんな有害物質も,ほぼ青天井に垂れ流していいことになるではないか。これがまともな企業,あるいは政府や自治体のやることか? 言うことなのか? 青森県民はこれを知っていて黙っているのか?
そしてもう一つ許しがたいのは,排出口があるむつ小川原港沖合は,北方から親潮が流れてきていて,おそらく海に排出された大量の放射能は,この親潮に乗って南へ,つまり三陸海岸沿岸・沖合へと流れて行くということである。そこは,世界でも指折りの好漁場であり,日本で最も漁業が盛んな地域である。しかも,ついこの間の東日本大震災で大変な被害にあい,更にまた,福島第1原発事故による海洋汚染で,南から放射能汚染の危機にさらされているところである。現下,多くの被害者の方々が,悲しみと苦しみの中で,必死に再建・復興に尽力している,その地域の海に向けて,地域復興の土台となる海に向けて,この青森県六ケ所村の再処理工場は,大量の危険極まりない放射能を解き放つのである。「北方のトラ,南方のオオカミ」,三陸地方の方々は,理不尽極まる放射能に包囲されようとしている,こんなことは絶対に許すわけにはいかない。
(3)青森県六ケ所村の再処理工場から放出されてくる放射性物質は,原発が放出する放射性物質とは少し違うものも大量に出てくる。その代表格が,①トリチウム,②クリプトン85,③炭素14,④放射性ヨウ素129である。①と②の半減期は8~12年(うろ覚え)だが,炭素14は約5700年,放射性ヨウ素129は約1600万年である。再処理工場が排出するこれら4つの放射性核種の危険性については,故高木仁三郎氏の著書などを参照されたい。
特に付記しておくべきことは,上記のうち,①と②は,まったく除去の処理もされずに,発生したものすべてが環境中にばら撒かれることになっているということである。その量たるや気の遠くなるような量で,たとえばクリプトン85は,煙突から大気中にばら撒かれ,そして「クリプトンは不活性ガスだから心配いらない」という全くインチキの説明がなされている。ここでも上記のトリチウムと同じで,♪♪空は広いな大きいな♪♪ で,どうってことないでしょ,ということにされている。
(4)海に垂れ流されたトリチウムなどの大量の危険極まりない放射性物質は,容易には拡散などしない。海中で固まりとなって,海流に乗って移動し,その間に,海洋生物の体内に取り込まれ,食物連鎖を通じて濃縮・蓄積され,そしてまもなく人間の食卓にブーメランのように返ってくるのである。「海にツバする」愚かものには「天にツバ」した時のように,そのツバが戻ってくるのだ。
(5)青森県六ケ所村の再処理工場は,放射能の無限の排出という狂気の上に,まもなく再開されようとしている。狂気の次に来るのは「永遠の死の世界」である。
早々
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