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2013年7月

2013年7月25日 (木)

放射能汚染に対する食品安全行政の現状 : お粗末極まりない食品検査の実態と,豪華絢爛たる「安全キャンペーン」文句の,このコントラストを見よ

前略,田中一郎です。

まず,本日付(7/25)『日刊アグリ・リサーチ』の巻頭言から一部引用してみよう。

 

「震災後、卸売市場では福島県産というだけで他産品に比べて低価格での取引が常態化していた。内閣府がとりまとめている「地域経済に関する報告書(二〇一二年)」の中でも福島県産のももの相対価格は、二〇一一・二〇一二年とも総じて震災前より下回っていることが示されている。福島県は農林水産物のモニタリングや産地における検査体制の強化、検査結果の公表など情報を「見える化」させる活動に力を入れてきた。原発事故当時と二年後の現在では、放射性物質の検査体制と流通対策の整備という安全面のレベルが全く異なる。一方で、きちんと検査され安全性が確認された上で出荷されている農産物にもかかわらず、「消費者の中で最も多いのが1Bqkgでも放射性物質が含まれる可能性があるものは全てイヤという『ゼロリスク型』層である」との指摘を福島大学・小山良太准教授の講演の中で聞いた。消費者の不安を完全に払拭するためには長い時間をかけて、農産物の「安心・安全」を粘り強く訴えていく以外には方法がないのかもしれない」

 

 さて,もっともらしく書かれているこのコメント,その中では「1Bqkgでも放射性物質が含まれる可能性があるものは全てイヤという『ゼロリスク型』層」などと,消費者を完璧に馬鹿にしたような言葉が,なんと福島大学の准教授の発言からの引用として使われている。大学の立派な学者先生から見れば,巷の放射能汚染リスクを懸念する消費者は,さぞかし愚か者のように見えるということなのだろう。それでは,福島県産など,福島第1原発事故による放射能汚染地域の農産品を回避している消費者は,ほんとうに愚かな馬鹿ものなのか,以下,少しだけ検証してみよう。(今回は水産物については省略して,もっぱら農林産物についてチェック・検証する:以下で検出されている放射能はすべて放射性セシウムで,他の放射能は無視されていること,水産物は農林産品に比べて輪をかけてひどいこと,を付記しておく)

 

1.厚生労働省HPに毎日掲載されている飲食品の放射能検査結果

 厚生労働省は「食品の放射性物質検査について」と題して,ほぼ毎日,東日本を中心に各都道府県の食品検査の結果をとりまとめて一覧表のPDFファイルにまとめて公表をしている(下記URL)。この一覧表は消費者としては「必見」の表で,今現在,公的機関として,どの程度の放射能検査をしているかが概ねわかる。結論を先に申し上げて申し訳ないが,こんな程度のもので,汚染地域産の飲食品が安全だなどとは口が裂けても言えそうにない,のであるが,それは下記にこれから具体的に申し上げよう。

 

*厚生労働省 報道発表資料

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/

(この中に毎日のように掲載されている)

 

*(7/24)食品中の放射性物質の検査結果について(第690報)|報道発表資料|厚生労働省

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000037dam.html

 

 上記は「1 自治体から入手した放射性物質の検査結果」(福島県以外で検査したものが主,但し東京都など消費地が検査したものは福島県産を含む)と「2 緊急時モニタリング又は福島県の検査結果」に分けてPDFファイルが添付されているので,それぞれに目を通す必要がある。

 

 <7/24検査結果の特記事項>

(1)この日は,水産物に100ベクレル/kg以上の規制値を超えるものが散見されたが,農林産物には規制値超はなし

 

(2)しかし,それで安心はできない。一覧表からいわゆる検出限界値を超えたもので目につくものを書き出すと

1.自治体から入手した放射性物質の検査結果

千葉県市川市 江戸川のウナギ(3匹) 皮つき筋肉部 3942ベクレル/kg

東京都    牛乳(流通品:産地不明) 2.9ベクレル/kg

山梨県北杜市 キノコ(タマゴタケ,ヤマイグチ)1519ベクレル/kg

 

2.緊急時モニタリング又は福島県の検査結果                

福島県金山町 干しゼンマイ         19ベクレル/kg

福島市    ブルーベリージャム(流通品) 12ベクレル/kg

福島県本宮市 梅干し            49ベクレル/kg

福島県桑折町 しそ塩漬け          3.4ベクレル/kg

 

 <厚生労働省HP:検査結果へのコメント>

(1)ウナギは江戸川だけでなく,茨城県や千葉県など,他の県でも放射性セシウムが検出されていて危険である。ウナギは汽水域に住む魚で,その汽水域が川を流れ下って来る放射性物質で猛烈に汚染され始めているのだから,ウナギが汚染されていて当然である。放射性セシウムだけでなく,放射性ストロンチウムなど,他の放射性核種の汚染も懸念されるが,検査されたためしはない。加えて,ウナギは産地偽装が横行するロクでもない流通を経由して消費者に届く水産物である。加工品(かば焼きなど)も同様だ。ウナギは絶滅危惧種にも挙げられている魚で,放射能汚染,産地偽装,絶滅危惧種の3つを考慮すれば,買わない・食べないを徹底した方がいいだろう。

 

(2)東京都が流通品をピックアップして検査した牛乳から2.9ベクレル/kgの放射性セシウムが検出されている。が,しかし,何故,産地が書かれていないのか。明らかに隠蔽である。流通品だから,産地もメーカーの名前もパックに書いてあるはずである。牛乳は,いわゆる汚染牛乳のロンダリングが業界を挙げて行われている。すなわち,牧場ごとに原乳を検査して,汚染していないものだけを集荷すればいいものを,汚染している・していないにかかわらず,全部ミルク・センターに集めておいて,そのミルクタンクごと(あるいはセンターごと)に検査して,規制値以下ならOKなどということを今でも続けている。汚染物を非汚染物で混ぜて規制値をくぐりぬけろ,というのが,木材製品なども含めて農林水産省の基本方針だからだ。いいんですか,こんなものを学校給食に使って子供に飲ませていて,ほんとうに大丈夫なんですか?

 

(3)山梨県の北杜市の天然キノコと思われるものから無視できない放射性セシウムが検出されている。私は天然キノコや山菜が,最も信頼のおける環境放射線モニターであると考えている(逆に,自治体や国などの行政が用意したモニター機器類や検査結果は最も信頼が置けないものである)。つまり,山梨県も少なくとも北杜市以東はすべて放射能汚染地帯であることを意味している。キノコが危ないのなら,木材や,その他の野生産品も危ない。

 

(4)福島市のブルーベリージャムもまた,上記の牛乳と同様,その原料ブルーベリーの産地が不明である。これも隠蔽だ。実はブルーベリーを含む「ベリー類」(○○ベリーと言われる食品)は,キノコと同様,放射性セシウムをため込みやすいようで,今でも欧州あたりから輸入されるベリー類のジャム等加工品からは,チェルノブイリ原発事故由来と思われる放射性セシウムが検出されている。福島県でもブルーベリーは生産されているようで,ならば,こうした検査結果が出たのであれば,大事を取って福島県のブルーベリー産地を徹底して調査・検査すればいいのに,そんなことはする気配もない。ブルーベリーを含むベリー類には,国産だろうが,海外産輸入品だろうが,近づかないに限る。

 

(5)福島県本宮市の梅干しの放射性セシウムはかなり高い。少しショックである。福島県産の梅や梅加工品などは避けた方がよい。何故,梅の残留放射性セシウムが高くなるのかはよくわからない。解説を見たことがない。また「干しもの」であることも放射性セシウムが残留する理由の一つの可能性もある。少し前,全く汚染していなかった大根を干して「干し大根」にしたら,大気中にただよう放射性セシウムで大根が数千ベクレルに汚染してしまったということが話題になった。はたしてこの梅干しはどうだったのか。福島県は,少しくらいこうしたことについて,説明したらどうか。

 

(6)福島県桑折町の「しそ塩漬け」の汚染値は小さいが,しかし,何故汚染値が出たのだろうか。シソが原因なのか。シソはよく調べてみたのか。値が小さかったからヤレヤレではダメだ。

 

(7)『日刊アグリ・リサーチ』の著者が高らかに謳い上げていた「福島県産のモモ」の検査結果は1粒たりとも見つからなかった。モモは福島県から,まだまったく出荷されていないのだろうか?

 

2.福島県のHPに毎日掲載されている飲食品の放射能検査結果

 次に,福島県庁のHPに掲載されている検査結果のURLをご紹介する。

 

*ふくしま新発売

 http://www.new-fukushima.jp/

(画面の右横に「品目から検索」と「地図から検索」とに分けて,検査結果へのアクセスができるようになっている)

 

*福島県の品目別放射能残留検査結果検索サイト

 http://www.new-fukushima.jp/monitoring/

(ここで「果実」を選択し,その中の「モモ」を選んで,採取日は初期状態の20135月~7月のままにして,「この条件で検索する」ボタンを押すと,全部で28件,施設モモ2件を加えて,トータルで30件の検査結果が表示されている)

 

 <福島県HP:検査結果へのコメント>

(1)伊達市産と桑折町産にモモに4ベクレル/kg弱の放射性セシウムが検出された以外は検出限界値以下だった。よかった。

 

(2)しかし,福島県は山梨県に次いで,日本で二番目のモモの産地である。たった30個のモモを調べて,それで安全云々が言えるのだろうか。原子力ムラの大先生諸君は,よく「かような放射線被曝の疫学的調査結果では,検査件数が少ないため,統計学的に有意ではない」などとのたまうが,このモモの「疫学的」検査ではどうなのか。チェルノブイリ原発事故後のベラルーシやウクライナでは,数万件,数十万件の検査が実施されたが,それでも統計学的に云々などとほざいて,放射線被曝の危険性を微塵も認めようとはしない。一方,福島県のモモの検査件数は,たったの30件である。

 ムムムムムム・・・・,ならぬ,モモモモモモ・・・・ではないか。

 

3.「安全キャンペーン」は全くのハッタリ・嘘八百の塊である。

 「食べて応援」などしなくていい,汚染物は「買ってはいけない」。今やるべきことは,検査体制の抜本的拡充と,生産現場を含む飲食の汚染状況の徹底検査である。お粗末極まりない食品の放射能検査の現状と,豪華絢爛たる「安全キャンペーン」大言壮語の,このコントラストをよく見ていただきたい。世にマスごみや腐敗官僚あるいは御用学者達が垂れ流す「安全安心キャンペーン」と,消費者愚弄の「風評被害」虚偽言論,それに現実を見ない・調べないままのマスごみのキャンペーンを受け売りする「アホダラ説教」をはねのけ,徹底的に批判しよう。我々は,知らず知らずのうちに,放射能汚染ゴミとしてドラム缶に入れられて永久保存されるべきものを,「安全な飲食品」とだまされて食わされている。冗談ではないのだ。

 

(1)飲食の残留放射能検査体制がいつまでたっても全然だめ。検査機器類も要員も全然足りないままに放置して,自治体へ責任も含めて丸投げで,国は全くやる気がない。その自治体も,食品を食べる消費者の身の安全や健康のことなど二の次で,農林水産業や食品産業のことだけを念頭に,売れればいい,その後は野となれ山となれの姿勢で一貫している。食品の検査はおろか,産地偽装を防ぐような姿勢も全くと言っていいほどない。

 

(2)言い尽くされているが,放射性セシウム以外の放射性核種が無視されている。放射性ストロンチウムなどのベータ核種や,ウラン・プルトニウムなどのアルファ核種は全く検査されない。危険極まりなし。

 

(3)厚生労働省の定める飲食の残留放射能規制値の数字が大きすぎる。これは恒常的な低線量内部被曝の危険性の軽視の結果である。有害化学物質や重金属などの場合に見られる「安全バッファ」(1/100)も,「閾値がない」ことを口実にして設けられていない。一般食品の100ベクレル/kgの数字が大きすぎる。これは放射能汚染ゴミとして管理するかしないかの基準であって,飲食物にしていいかどうかの基準とはなりえない。

 

(4)上記の厚生労働省の日々の検査結果をご覧になればお分かりのように,検査のし方自体も大問題である。

 

a.検査件数が少なすぎる(検査体制が貧弱極まりないことの結果)。これではとても安全と言えたものではない。

 

b.にもかかわらず,特定品目に検査が偏り過ぎている(牛肉と特定の水産物,及び早く出荷制限を外したい品目)。ということは,一般の農産品は,実はほとんど検査されずに出荷され,食品流通に乗せられているということだ。

 

c.検出限界値が大きい検査が多数みられる(牛肉だと放射性セシウム全体で25ベクレル/kgなど)。

 

d.生産地での検査が大半で,東京都を除けば,道府県で流通品をピックアップする抜き打ち検査をしているところはほとんどない。

 

e.加工品がほとんど検査されていない。製造業者に丸投げの状態で,定期的なチェックもしない。

 

f.上記の牛乳やブルーベリージャムでみたように,食品産業や供給側にとって都合の悪い情報は,すぐに隠蔽されて消費者には分からないようにされる。

 

g.上記f.への対策も含め,飲食の検査に関して,第三者的な業務監査や適正化チェックが入らず,供給サイドだけの談合で食品検査が行われている。これはいわゆる「利益相反」丸出しだということだ。

 

h.規制値を超えて出荷制限がかかった汚染飲食品の後始末が不透明(どうなっているの?),きちんと処分されているかどうかが怪しく,闇業者を通じて,再び食品流通に戻されている懸念は払しょくできていない。また,汚染物は一般ゴミのように捨ててはいけないことも現場では周知徹底されていない様子(ポイ捨ての可能性)。

 

i.飲食物の周辺が無検査状態(例:ヌカ類,食器,医薬品や化粧品,木材関連,花き,肥料・飼料,皮革等)

 

(5)「風評被害」とは消費者を馬鹿にした言葉で,飲食の放射能汚染に生産者や供給業者が苦しめられている原因を,加害者・東京電力や事故責任者・国に見るのではなく,それを棚上げにしておいて,放射線被曝を回避しようとする消費者に振り向ける,どうしようもないインチキ宣伝である。「風評被害」を声高に叫ぶ者たちこそ,逆の意味で「風評被害」をもたらしていることを認識すべきである。何故なら,食品の規制基準も検査も表示も流通も信頼が置けない状況下では,消費者が放射能汚染物を避けるためには,産地や品目にこだわるなど,自分なりに創意工夫をせざるを得ないわけで,それを「馬鹿な消費者の過剰反応だ」として「風評被害」が生産者にもたらされている,と大宣伝する方こそ,嘘八百の「風評」を垂れ流し,一般消費者が「被害」を被っているのである。我々は「風評被害」を言う似非「安全安心キャンペーン」に「逆襲」しよう。お前たちこそ「風評被害」の元凶だと。

 

(6)現状での恒常的な低線量内部被曝の危険性の軽視は目に余る。日本はチェルノブイリ原発事故後の旧ソ連諸国の悲惨な健康障害が,もっぱら飲食と呼吸の内部被曝によってもたらされているということを,どうして真摯に学ぼうとしないのか。しかも放射線被曝は,被ばくした世代にとどまることなく,何代もの子孫世代にまで遺伝的障害をもたらす可能性があることを,どうして危機的に受け止めようとしないのか。騙す方はもちろん極悪人だが,騙される方も悪いと言う他ない。

 

(7)『日刊アグリ・リサーチ』の巻頭言に出てくる福島大学の小山准教授の発言のうち,詳細な放射能汚染マップを作れ(特に,住宅地と農地)という主張は評価できる点である。福島第1原発事故後,早2年半近くになるが,未だに汚染マップさえつくられていないこの有り様はいったい何なのだろうか。もはやここまで「しない」というのは,放射能汚染の実態を隠したいという思惑が全てを支配しているからだ言わざるを得ないだろう。そんなことで,原発事故からの復興ができると思ったら大間違いである。

 

 そして,汚染マップが出来上がって来るのをのんびり待っているのではなく,せめてチェルノブイリ事故後の基準を参照しながら,放射線管理区域指定基準超の区域は全員避難,1mSv以上なら,子どもと妊婦は避難・一般人は避難の権利,1mSv以下は,放射線・放射能に感受性の高い人だけでも避難,という風に,無用の放射線被曝をまず回避する対策を先行実施させ,一時的にでもいいから汚染地域から人々を「解放」することが肝要である。それを実施するだけの経済力は,この日本にはまだ残っている。要は「やる気」の問題であり,人権の問題である。

 

(8)5.2mSv(放射線管理区域指定基準)を超える全ての放射能汚染地域で,農林水産業・食品産業を含む全ての産業を停止せよ。そして,それによって被害を受ける方々への万全の賠償・補償・再建支援に全力を挙げよ。できもしない除染で,被害者を煙に巻くのはもうやめよ。何故なら,産業や企業活動よりも人間の命と健康の方が大切であり,また,汚染地域での産業活動は,おのずと原料や生産品や人々の移動を通じて,放射能汚染を全国に拡散することを意味し,また他方で,大量の放射能汚染ゴミを生み出してしまうからである。愚かなことはもうやめよ。

 

(9)「消費者の不安を完全に払拭するためには長い時間をかけて、農産物の「安心・安全」を粘り強く訴えていく」(日刊アグリ・リサーチ)などということは全くの逆効果である。ろくすっぽ検査もせずに,安全だ,安心だ,風評被害だ,などと騒がれても,ただ,うるさいだけである。やるべきことはその真逆,つまり,徹底して検査体制を強化すること(早く検査機器類を増やせ,要員を増やせ),そして,放射性セシウム以外の放射性核種を含めて,徹底的に飲食品を調べること,そして汚染の原因を突き止めることである。やるべきことをやらないでおいて,わあーわあー,と無内容な翼賛的な旗振りをしていても,事態は何ら改善しない。

 

4.もう少し厚生労働省HPの検査結果を見てみよう

(1)(7/23)食品中の放射性物質の検査結果について(第689報)|報道発表資料|厚生労働省

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000377ie.html

 

 <特記事項>

1.自治体から入手した放射性物質の検査結果

  検査されたものの大半は牛肉であり,残りのほとんどは水産物である。農林産物を見つけるのに苦労する。

 

2.緊急時モニタリング又は福島県の検査結果

 福島県南相馬市 キャベツ 6.7ベクレル/kg

 福島県南相馬市 ピーマン 9.6ベクレル/kg

 

(2)(7/22)食品中の放射性物質の検査結果について(第688報)|報道発表資料|厚生労働省

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000373f9.html

 

 <特記事項>

1.自治体から入手した放射性物質の検査結果

 群馬県渋川市 タケノコ(マダケ) 最高で170ベクレル/kg(規制値超7件)

(キノコ・山菜と並んでタケノコも危ない。竹林を含む森林が汚染されている証拠である。しかし,タケノコが危ないのはほぼ常識になっているにもかかわらず,今春,子どもたちを駆り立てて,実地学習だなどと称してタケノコ狩りを行い,それを給食の食材に使った学校がある(東京都江戸川区)。もちろん放射能の汚染など,きちんと調べもしていない。更に,その学校を指導すべき教育委員会が,このタケノコ狩りの件について,知らぬ存ぜぬのような姿勢を示すところもある。日本の義務教育の責任者達は相当程度まで腐っている。一掃しようではないか) 

 

2.緊急時モニタリング又は福島県の検査結果

 福島県二本松市 牛肉 8.7ベクレル/kg

 福島県玉川村  牛肉 12ベクレル/kg

 

(3)(7/19)食品中の放射性物質の検査結果について(第687報)|報道発表資料|厚生労働省

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000036y7k.html

 

 <特記事項>

 この日も,やたら牛肉が多く,次いで特定の水産物が多く,一般の農産物の検査数は少ない。

 

1.自治体から入手した放射性物質の検査結果

 岩手県一戸町 牛肉    18ベクレル/kg

 岩手県滝沢村 牛肉    13ベクレル/kg

 宮城県栗原市 タケノコ  最高で140ベクレル/kg(規制値超1件)

 宮城県登米市 原木シイタケ 6.9ベクレル/kg

 栃木県矢板市・高根沢町 菌床キノコ類 最高で15ベクレル/kg

 栃木県岩舟町 乾アワビタケ(菌床)加工品 52ベクレル/kg

 栃木県那珂川町 ワサビ(葉)     3.8ベクレル/kg

 栃木県矢板市 ミョウガ        50ベクレル/kg  

 千葉県香取市 ウナギ(皮つき筋肉部) 21ベクレル/kg

 

2.緊急時モニタリング又は福島県の検査結果

 福島県新地町 菌床なめこ(施設) 4.7ベクレル/kg

 福島市 大豆 最高で280ベクレル/kg100ベクレル/kg以上は8件)

 福島県南相馬市 エダマメ  4.6ベクレル/kg

 福島県金山町  バレイショ 3.9ベクレル/kg                               

 福島県新地町  ブルーベリー 19ベクレル/kg

 

(コメント)

 野生のキノコ類ではなく,菌床のキノコ類に放射性セシウムが検出されるのは何故なのだろうか。空気が汚染されているからか,それとも菌床の栽培土や肥料などが汚染されているからか。私は後者=つまり菌床栽培用の栽培土が汚染されているのではないかと推察している。何故なら,農林水産省は放射能で汚染されている栽培土を流通させてもよろしい,などと,気の狂ったようなことを言っているからだ。日本国内は汚染されたキノコ用の栽培土が流通しており,日本全国どこでも菌床キノコは危ない(この福島や栃木の菌床キノコの放射性セシウム汚染の原因を調べればいいのに,調べようとはしない)。

 

 福島市産大豆の放射性セシウム汚染の深刻さはショックである。土壌が放射能で汚染されているということだ。こんなところで農業をしてはいけない。一般論で恐縮だが,大豆や麦,あるいはイモ類(上記では福島県金山町のバレイショ,南相馬市のエダマメに若干の放射性セシウムを検出)は,米などよりも放射性セシウムをため込みやすいと思われるが,このことについても農林水産省は口を閉ざしたまま沈黙を守っている。福島県では,米だけを全袋検査しているが,本当は,麦・大豆・いもの全袋検査も必要なのだ。麦はビールに化けているかもしれず,福島県本宮市にはアサヒビールの工場があり,仙台市にはキリンビールの工場がある。原料麦の安全性をしっかり担保してほしい。それにしても,これで国産大豆が心配材料となった。加工品を含め,正しい食品表示が必要なのだが,これが怪しい。おい,厚生労働省・農林水産省・消費者庁,いったい何やってんだ!!!

 

 その他としては,ブルーベリーは生鮮品にも放射性セシウムを検出(予想通り),栃木県産のミョウガの50ベクレル/kgも少しショックで,関東産のものは,みなこんな感じかもしれない。また,宮城県栗原市は,基準値超のタケノコから見て取れるように,いわゆる遠隔地のホット・スポットの一つである。栗原市の農林業も福島第1原発事故のおかげで大変な苦労を余儀なくされている。にもかかわらず,加害者・東京電力や事故責任者・国は,栗原市の生産者・農家に対してまともな対応をしていないのが現状である。許し難いことである。

 

(残りは皆さまで,日にちを遡って,順番に見て行って下さい)

草々

2013年7月24日 (水)

やはり福島第1原発から放射能は海へ流れ出ていた

前略,田中一郎です。

 

 別添PDFファイル4つ(参考資料:添付できませんでした)は,昨今新聞報道されました福島第1原発からの海への放射能漏れに関する新聞記事です。みなさまは既に大凡の内容はご承知だと思いますので,備忘録用として,記事にある特に注目すべき点を以下に列記しておきます。

 

 東京電力は,福島第1原発からの放射能漏れをいつまでたっても認めようとせずに,汚染水漏出の適当な理由を場当たり的に乱発し,更に被害を受ける漁業者への賠償・補償もきちんとしないまま,汚染原因や汚染実体を漁業者に隠し続けつつ,原発敷地にたまる大量の汚染水を何とか海へぶんなげる算段を続けていました。何故なら,それが一番「安上がり」であるからです。

 

 「いつまでたってもだめな私」ではなく「いつまでたってもだめな東電」の,なさけなくも無責任な体質が浮き彫りになっております。また,この危険な海域で,苦し紛れに漁業や海水浴場を再開しようとする地元の一部の人達の姿勢も問題です。海の放射能汚染と放射線被曝を軽々に見てはいけないのです。

 

 <参考資料:別添PDFファイル>

(1)福島第一海付近 3600万ベクレル(東京 2013.7.20

 (代替記事) http://saigaijyouhou.com/blog-entry-515.html

 

(2)東電,汚染水海漏出認める(東京 2013.7.23

  http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013072302000110.html

 

(3)原発汚染水,東電,海洋流出認める(毎日 2013.7.23

  http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130723ddm001040120000c.html

 

(4)福島第一汚染水遮断対策,恒久性欠く「土の壁」(河北 2013.7.23

  http://www.kahoku.co.jp/news/2013/07/20130723t63009.htm

 

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(1)福島第一海付近 3600万ベクレル(東京 2013.7.20

 (代替記事) http://saigaijyouhou.com/blog-entry-515.html

 

 2号機の取水口まで伸びるトレンチ(地下トンネル)で3,600万ベクレル/リットルの放射性セシウムや,2,300万ベクレル/リットルのベータ核種(放射性ストロンチウム他)を含む高濃度の汚染水滞留を発見

 

 東京電力の説明は「トレンチはタービン建屋につながっているものの,途中で止水されている。一昨年の事故時に流出した高濃度汚染水がトレンチ内に残ったもので,建屋地下から継続的に漏れている可能性は低い」

 

(2枚目の『週刊金曜日 2013.7.19』記事は,NGO・グリーンピースJAPANの調査で,福島第1原発から南へ約10kmの海域で獲れた魚介類から,数十ベクレル/kgの放射性セシウム汚染が次々と検出されたことが報じられている)

 

(2)東電,汚染水海漏出認める(東京 2013.7.23

  http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013072302000110.html

 

 東京電力は,高濃度汚染水の一部が土壌中に残り,放射性セシウムは土に吸収され,残りのベータ線を発する放射性物質が地下水の影響で井戸に出てきた可能性が高いと説明。しかし,井戸からは高濃度の放射性セシウムも検出され説明が破綻

 

 1~4号機の取水口周辺の地下水の水位と,潮位や降雨量との関連を調査,その結果,潮の満ち引きに応じて地下水位が変動する他,雨が降ると地下水位が上昇し,特に3号機の取水口前では海水の放射能濃度が上昇する傾向が見られた。

 

 上記から東京電力は,海に近い地点では,地下水と海水は行き来しており,敷地内の放射性物質が海に流れ込んでいる可能性が高いと判断した(原子力「寄生」委員会が指摘した通り)。

 

 福島県漁連会長曰く「これまでの説明と違う。かなりショックだ」

 相馬双葉漁協組合長曰く「東電には具体的に汚染水を止める対策をしっかり説明してもらいたい」

 双葉町からの避難者曰く「水は低い所を目指して海に行きつくのだから当然だ。トラブル隠しの体質は変わっていない」(この人の発言が最も的を得ている)

 

*東電、汚染水流出問題でいわきの漁業者に謝罪 科学 YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130723-OYT1T01102.htm

 

(3)原発汚染水,東電,海洋流出認める(毎日 2013.7.23

  http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130723ddm001040120000c.html

 

 東電は22日、井戸の地下水位と海の潮位データとの関係を分析した結果「放射性汚染水を含む地下水が海へ流出している」との見解を発表した。2011年4月には2号機取水口付近などで高濃度汚染水が漏れる事故があったが、一連の収束作業で海洋流出を認めたのは初めて。東電は流出が始まったと確認できるのは「少なくとも、井戸の詳細な分析を始めた今年5月以降」と説明。流出量は「不明」としている。

 

 東電は「汚染は放射性物質の流出を防ぐシルトフェンス内側に限られ、沖合の影響はない」と説明するが、風評被害など周辺漁業への影響は確実。汚染源は海側トレンチ(地下に設置した配管用トンネル)とみられ、東電は同日、残る汚染水を回収する処理計画を発表した。しかし、トレンチ内部には大量の汚染水が未処理のまま残り、完了時期は未定で、今後も海洋汚染が続く恐れがある。

 

 ちなみに福島県では

 相馬双葉漁協が,20126月から福島県北部の海域で試験操業を継続

 いわき市漁協が,20139月から福島県いわき市沖で試験操業開始の予定

 

 また,海水浴場は

 いわき市の勿来(なこそ)海水浴場が昨年オープン(例年の客数の3%)

 いわき市で,今年更に四倉海水浴場もオープン

 (いずれも福島第1原発まで目と鼻の先)

 

*平成25年度いわき市海水浴場の開設について|いわき市

 http://www.city.iwaki.fukushima.jp/topics/016171.html

 

(4)福島第一汚染水遮断対策,恒久性欠く「土の壁」(河北 2013.7.23

  http://www.kahoku.co.jp/news/2013/07/20130723t63009.htm

 

 東京電力は,汚染水の海洋流出を防ぐ地盤改良工事を報道機関に公開した。「水ガラス」と呼ばれる特殊薬液を地盤に注入して「土の壁」を造り,汚染水を遮断する。効果は数年にとどまり,流出を食い止める決定打にはならない。

 

 工事は作業員が防護服,全面マスク姿で作業する。放射線量は毎時50200マイクロシーベルトと高く,完全防備は欠かせない。

 

 水ガラスは1,2号機の海側に広がる地盤に全長90メートル,幅1.5メートル,深さ15.5メートルにわたって「土の壁」を設け,水を遮る。

 

 (田中一郎の疑問)

 上記の東京新聞記事には「特に3号機の取水口前では海水の放射能濃度が上昇する傾向が見られた」とあるのに,どうして「水ガラス」を注入した「土の壁」は,1,2号機の海側にしかつくらないのか。少なくとも福島第1原発の全敷地の海側に造るべきである。これでは海への放射能の漏れ出しは止まらないではないか。

 

 また,効果がわずか数年しかもたないものを,作業員に猛烈な被ばくをさせながら造るというのはどうも納得がいかない。何故,もっと頑丈な遮水壁を造って恒久対策としないのか。かような場当たりのその場しのぎのようなことを繰り返すから,事態はどんどん悪化していくのだ。金をケチっている時なのか? (頑丈な鉄かコンクリートの「壁」で福島第1原発をとり囲め)。まるでアジア太平洋戦争時のガダルカナル島のようではないか。

草々

 

 

2013年7月23日 (火)

加害者・東京電力や事故責任者・国は,何故,福島第1原発事故の被害者に対してきちんと損害賠償・補償を行わないのか?

前略,田中一郎です。

 

 別添PDFファイル(参考資料:添付できませんでした)は,岩波書店月刊誌『科学』(20136月号)に掲載されました「原発事故の被害補償とエネルギー転換(除本理史(大阪市立大学教授))という小論文です。先日のメールでも申し上げましたが,福島第1原発事故に伴う放射能汚染と放射線被曝の被害者に対する損害賠償・補償が全くの出鱈目で,重大かつ巨大規模の人権侵害事件へと発展しております。以下,その告発を兼ねて,今回ご紹介申し上げる除本理史(大阪市立大学教授)氏の小論文に沿って重要部分をピックアップし,簡単にコメントしたいと思います。

 

 既に除本理史(大阪市立大学教授)氏は,多くの新聞・雑誌に諸論を発表されている他,自筆の著作も出版されているようです。岩波書店月刊誌『科学』の小論文のみならず,そうした同氏の他の著作にも目を通されることをお勧めします。但し,これら同氏の諸論文から受ける私の印象は,原発事故の損害賠償・補償の適正化へ向けた主張がやや弱いように感じられること,また,加害者・東京電力や事故責任者・国の責任なり,その悪行なりに対して,社会的な批判の観点が弱いようにも思われ,正直,物足りなさを感じています。そうした点も下記では補いながら,簡単なコメントをいたします。

 

 <参考:添付できませんでした>

・原発事故の被害補償とエネルギー転換(除本理史(大阪市立大学教授):『科学 2013 6』)

 

 <参考:原子力損害賠償紛争審査会(指針等):文部科学省

 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/index.htm

 

(1)「原子力損害賠償紛争審査会」が策定した指針

 除本理史(大阪市立大学教授)氏曰く

「原賠法によれば,補償すべき被害の範囲に関する指針を決めるのは,文部科学省に設置される原子力損害賠償紛争審査会(以下,紛争審)である。紛争審は20114月から20131月の聞に, 6つの指針(追補を含む)を順次策定してきた。加害者と被害者の間に争いがある場合,通常は,司法のような第三者に裁定が委ねられる。ただ,裁判では時間や費用がかかるので,それを避け,当事者間の自主的な解決を促進するため,紛争審の指針によって,最低限補償すべき被害の範囲が示される。今回の事故では,東電が指針を受けて補償基準をつくり,被害者からの請求を受け付けている。」

 

「ここで注意すべきは,紛争審の指針が,裁判等をせずとも補償されることの明らかな被害を列挙したものであり,補償範囲としては最低限の目安だということである。指針に書かれていないからといって,補償されないというわけではない。にもかかわらず,加害者たる東電は,これを補償の「天井」であるかのように扱ってきた。それだけでなく,指針よりも補償範囲を限定しようとする場面すらあった。これには被害者や世論の批判が大きく,国会などでも取り上げられたため東電は一部撤回を余儀なくされている。とはいえ全体としてみれば,加害者側が補償の枠組みを定め,それを被害者に押しつけてきたといえる。一言でいえば「加害者主導」である。」

 

(田中一郎コメント)

 そもそも「原子力損害賠償紛争審査会」(紛争審)そのものが,原発事故の被害者のために,その受けた損害の賠償・補償がスムーズにいくようにと創設されたものだったはずである。だからこそ,「紛争審の指針が,裁判等をせずとも補償されることの明らかな被害を列挙したものであり,補償範囲としては最低限の目安だということである。指針に書かれていないからといって,補償されないというわけではない」(除本氏)であり,指針に書かれていることぐらいは「さっさとやれよ」という性格のものなのだが,現実にはそれがそうはなっていない=つまり,東京電力が,指針だけをやっておけばよくて,それ以外のことは基本的にはやらなくていい,やってくれと言われても適当な言い訳をして放置しておけばいいという方針で臨んでいるためだ。

 

 この点については,次の3点に言及しておかなければならない。

<1>東京電力には国の巨額の財政資金が資本金や(一時的な)供与として投入されており(後日返還),実質的には国が東京電力の経営管理者である。だから,国がその気になれば,東京電力の経営陣や幹部の人事も含めて,その経営内容はいかようにでもすることができる。上記のような事態が発生しているのなら,国が乗り出して東京電力に是正させればいいだけの話である。国はいったい何をしているのか。

 

<2>更に,「原子力損害賠償紛争審査会」の指針は「最低限の目安」だというのであれば,その分くらいは国が東京電力になり代わって立て替え払いをすればいいではないか。国の財政資金を東京電力に「賠償・補償」を名目に注入するよりも,被害者各位に国がきちんと立て替え払いをする方が,よほど財政資金の有用性や効果が生きるというものだ。

 

<3>また,「原子力損害賠償紛争審査会」は何をしているのか。こんな程度のものは払えよ,という「最低限の目安」を答申してしまえば,この審査会の仕事は終わりなのか。そもそもそんなものは答申するまでもないではないか。本来,この審査会がすべきことは,今後の賠償・補償問題の中で,加害者・東京電力や事故責任者・国が言いだしてきそうな「不払いの理屈」を想定し,それらを退けるための論理と目安を明らかにすることこそ,この審査会の役目ではないのか。

 

 ただでさえ,福島第1原発事故で全てを奪われた被害者住民の方々は,日々の生活に経済的に苦労させられている。それを少しでも緩和し,少しでも早く万全の賠償・補償がスムーズに行われるよう,そのための「道路」を整備することが,この審査会の基本的使命ではないのか。言ってみれば当たり前の答申を出したら,その後は「知らん顔」というこの「原子力損害賠償紛争審査会」の姿勢はあまりに無責任すぎるのではないか。

 

(2)不動産等の損害賠償基準を東京電力と経済産業省が談合をして決めている=そんなバナナ

 除本理史(大阪市立大学教授)氏曰く

「たとえば昨年も,東電は経済産業省(以下,経産省)とともに,紛争審を差し置いて,額が大きい土地・家屋など財物の被害補償に関する基準を策定・公表した。紛争審は, 20123月から8月まで開催されなかったが,その間の7月に,経産省と東電が,財物の補償基準を公表してしまったのである。経産省が補償の「考え方」を示し(20127月初日),東電がそれを受けて,具体的な基準を公表するという形をとっている」

 

(田中一郎コメント)

 悪質な飲酒わき見運転で子どもを含む多数の人々を死傷させた車の運転手が,事故現場の道路を含む道路行政の欠陥を長らく指摘されてきたにもかかわらず放置していた交通行政担当の役所と談合をして,この交通事故の被害者への賠償金や慰謝料の金額は,こんな程度のもんでいいんです,と公表したようなものである。しかもその金額が,過去の交通事故時における賠償金や慰謝料と比較して,桁違いに少額である,そういうパターンとほぼ同じことである。こんなことが許されるのか? 日本という国は,こんなことが許される国なのか? 日本人という人種は,こういうことを見て見ぬふりをして放置しておくのか? 

 ふざけるな,バカ野郎!!! だよ,まったく。

 

 私は,日本のマスごみや日弁連などの法曹界にお聞きしたい。上記のようなことを放置しておいていいのですか? 特に不動産等の財産に係る賠償・補償は,被害者の方々がこれから立ち直っていくために必要不可欠な,住居その他の資産的・財産的な基礎となるものです。それがこんな出鱈目なことでいいのですか? マスごみ諸君は,何故,真剣に,こんなのは許せないと,報道しないのですか? 法曹界の皆さまは,何故,徹底した賠償・補償のための個別相談体制を創り,この許し難い人権侵害・財産権侵害を法的に是正しようとしないのですか。福島第1原発事故の加害者は強大で,被害者は弱小だからですか? それは社会正義に反しませんか? どうなんですか?

 

(3)不動産の賠償・補償は避難指示区域の再編と連動させ,その際,精神的損害などの補償は打ち切り

 除本理史(大阪市立大学教授)氏曰く

「その際,経産省と東電は「事故収束」を前提として,精神的損害などの補償を打ち切っていく方針も明らかにした。これは, 20124月以降実施されてきた避難指示区域の再編と連動している。避難指示が解除されれば,避難による費用や精神的苦痛もなくなるはずだから,それらに対する補償打ち切りが必然的に浮上してくる。避難指示の解除は,早いところでは来年にも予定されている」

 

(田中一郎コメント)

 上記の(2)には,更に,その理不尽に被害者を従わせるための「ムチ」が用意されていて,一つには,避難指示区域=すなわち警戒区域・計画的避難区域・特定避難勧奨地点の指定解除・再編と,不動産等の賠償・補償をセットとすること,もう一つには,これに伴って,精神的損害などの補償は打ち切りにすることである。絶句するようなひどい仕打ちではないか。(まるで沖縄の,島南部米軍基地用地返還と普天間基地の辺野古崎への移転とがセットです,とそっくり同じパターンだ:アメとムチ)

 

 申し上げるまでもない。不動産等の賠償・補償が避難指示区域の再編とセットにされるいわれはないし,そんなことは道理に反している。避難指示区域を再編するかどうかは,その区域の放射能汚染の度合いによるべきものであり(従って,現段階で再編など出来るはずもない),賠償・補償は別物だ。その無茶苦茶で暴挙極まりない避難指示区域再編とともに,精神的苦痛にかかる補償の打ち切りなど,許されるはずもない。

 

 除本氏は「避難指示が解除されれば,避難による費用や精神的苦痛もなくなるはずだから,それらに対する補償打ち切りが必然的に浮上してくる」などと,目を疑いたくなるようなことを書いているが,放射能汚染のままの地域を指定解除されて,さあ,お前はここにさっさと帰れ,精神的苦痛はもうおしまいだ(東京電力や国に甘えるな),(できもしない)除染は1回だけだが国がしてやるから早く帰れ,などと言われて,なるほどそうだ,と思う人がどこにいるのか。これが分からないのなら,あなたにも同じようにして差し上げましょうか? ということだ。

 

 私は怒りで頭が吹き飛びそうである。もう一度申し上げよう。

 ふざけるな,バカ野郎!!! だよ,まったく。

 

(4)東京電力の補償すべき被害の範囲が,いまだ不確定

 除本理史(大阪市立大学教授)氏曰く

「東電は,これまで約2兆円の補償を被害者に支払ってきた。ただし財物の補償がこれからであることからも明らかなように, 2兆円というのは全被害額の一部にすぎない。では,東電の支払う補償額は全体でどれほどにのぼるのか。これについて確実な見通しを述べることは難しい。」「東電の補償すべき被害の範囲が,いまだ不確定だという要因もある。」

 

20118月,紛争審はそれまでの指針を集成して「中間指針」を策定した。この指針は,政府や自治体の避難指示等が出されていない区域について,住民の被害をほとんど認めていなかった。(中略)政府の避難指示の目安は年間被爆量20mSvであり,通常時の基準である1mSvとはかなり開きがある。」

 

「被害者らの働きかけは紛争審を動かし, 201112月,この間題に関する指針の追補が決定された。これにより,政府の避難指示が出ていない福島市や郡山市など, 23市町村(すべて福島県内)の住民が,実際に避難したかどうかにかかわらず,新たに補償の対象となった。該当者は約150万人におよび,補償額は18歳以下の子どもと妊婦が1人あたり40万円,その他は8万円とされた。「自主避難者」からみれば,多くの場合,金額では実際の避難費用に届かないだろう。また,とどまった人びとにとっても十分な内容とはいえない。しかし被害者らの運動によって,補償の範聞が広がったのは画期的なことであり,これによって約3500億円が支払われている。」

 

(田中一郎コメント)

<1>「東京電力の補償すべき被害の範囲」とは,福島第1原発事故によって被害者が被った全ての被害である。それを加害者・東京電力や事故責任者・国から「お前の損害額はこれだけだ」などと言われる筋合いのものではない。

 

<2>「20118月「中間指針」には,いわゆる自主避難者の被害をほとんど認めていなかった」=これもふざけるなだ。こういう点が,私が「原子力損害賠償紛争審査会」もまた,大いに問題があると申し上げている理由の一つである。そもそも政府の避難の「基準」たるや,20mSvという出鱈目な「未必の故意」の「殺人基準」である。自主避難だろうが何だろうが,避難して当然であって,それにより多額の損害が発生していることは自明なことである。それをこの「原子力損害賠償紛争審査会」の御用委員たちは認めようとはしてこなかったというのである。どうぞ委員をおやめ下さい。

 

<3>被害者らの働きかけで「201112月,この間題に関する指針の追補が決定」,しかもその中身は「はした金」(40万円,8万円)であり,こんな金額では被害者の被害はとてもコンペンセイトされない。人を馬鹿にしている,とはこういう時に使う言葉である。しかも,対象となるのは福島県内の一部の市町村(23市町村)だけであり,他の福島県内の市町村や隣接県の市町村(たとえば宮城県丸森町)などは対象とされていない。

 この追補指針策定は,この紛争審なるものが,その御用聞き的使命を存分に発揮した瞬間であった。私はこの時点で,この紛争審は解散させられ,もっと被害者の側に立って,きちんと損害額を一般的に査定していく本来のあるべき紛争審が改めて設置されるべきであると思う。現紛争審の委員どもは恥を知れ!!! 

 

<4>東京電力が賠償・補償しなければならない範囲は大きく分けて下記の3分野であり,その総額は数百兆円となるだろう。だからこそ,東京電力1企業の支払能力をはるかに超えていて,こういう状態で東京電力をゾンビ状態で生かしておくことは,様々な意味でよろしくない(例えば事故責任が拡散する)。直ちに会社更生法を適用し,東京電力を解体・再編せよ。

 

 また,下記に掲げる金額は,原発の電気コストにカウントされるべきもので,カウントの仕方は,下記のような「保険金」を支払ってくれる一般の民間保険に加入した場合の,その年間掛け金としてカウントされるべきである。そうすることで原発の本当のコストが,市場価格ベースで(言い換えれば,政府による人為的な政策的作為なしに)算定されることになる。おそらく,数兆円/年・1基,原発銀座などの場合には,数十兆円/年・1基になるものと推定される。ずいぶんと原発とは「低コスト」の発電のようだ。

 

 <東京電力が賠償・補償しなければならない3分野とその金額>

 被害者への損害賠償・補償  数百兆円

 汚染地域の除染       数百兆円

 福島第1原発6基の廃炉   数十兆円

 

(5)原子力損害賠償法とはどういうものか

 除本理史(大阪市立大学教授)氏曰く

「そもそも被害補償は,被害を引き起こした関係主体の責任において行なわれるべきである。原賠法のもとで責任を負っている原子力事業者(福島原発事故では束電)はもちろん,被害を防ぐための規制や対策を怠った国も,責任は免れまい。また,原発プラントメーカーのような関連業界も,事故被害に対する「社会的責任」を問われるだろう。」

 

「しかし原賠法は,補償の責任を原子力事業者に集中する規定を置いており(4),国や関連業界には責任を負わせていない。ただし国については,原子力事業者に対する「援助」の規定がある。被害額が,原子力事業者の加入する保険などで賄えない場合,国が必要に応じ援助を行なうのである。」

 

(田中一郎コメント)

 原子力損害賠償法の問題点は山のようにあるが,若干を指摘すれば下記の通りである。この法律は,原発の過酷事故は起きないという建前論を押し通してつくられた法律であり,実効性に乏しい建前だけの「損害賠償法」である。それに加え,肝心の事故原発をつくった原子力産業・企業の賠償・補償責任が免除されている。それは,この法律が策定された当時は,原発を造る原子力産業が,アメリカを中心とする海外企業だったため,その事故責任を免除するために法制化されたためである。しかし,その後,原発が国産化しても,この原子力産業の賠償・補償免除規定は変わることがなかった。変えようとしなかったのは歴代の自民党政権である。

 

 <原子力損害賠償法の欠陥:例>

<1>賠償・補償総額の限度額が1,200億円と小さすぎる(これでも引き上げられてきた)。こんな金額では役に立たない。また,このことは,原発のリスク・コストがきちんと計上されていないことを意味しており,言い換えれば,原発事故の際は地域住民がその損害を甘んじて引き受けよ,ということが言外に暗黙の了解とされているのである(そして,今回の福島第1原発事故で,それが文字通り現実化している)。

 

<2>地震や津波などの天災による被害は民間保険ではなく,政府が電力会社と契約するもう一つの損害保険でカバーされるが,その保険掛け金がべらぼうに安く,事実上の電力会社への政府補助金になっている(この政府の原発保険会計は,今回の福島第1原発事故において1,200億円の支出が発生し,まっかっかの赤字会計となってしまった:しかし政府は,この保険掛け金を今もって抜本的に引き上げようとはしていない)。

 

<3>原子力産業を賠償責任から免除している(上記)。本来はP/L法(製造物責任法)と同じ並びで責任を問うべきもの。

 

<4>国の責任,とりわけ原発事故被害者への責任が全く不明確で,無責任状態でいいような法律になっている(わずかに「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」に限り,国会の議決の範囲内で国が「援助」するという規定があるのみ)。

 

<5>この「無責任法」とでも言うべき原子力損害賠償法を,更に改正して,原発事故を引き起こした電力会社の損害賠償責任を,電力会社が支払える範囲内の金額まで引き下げる方向で法改正を行えという,とんでもない動きが表面化しつつある。言い換えれば,原発事故が起きた時は,事故原因の電力会社や原子力産業の法的責任はごくわずかなものに抑え込み,あとは国が無限責任で対応すればいいという内容の法律にせよというのである。とんでもないモラルハザードの法改悪の陰謀である。こんなことをしたら,益々電力会社は原発の安全に対して無責任な態度をとるようになるだろう。断固阻止あるのみ。

 

*原子力損害賠償法

 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S36/S36HO147.html

 

(6)東京電力と国がグルになって「責任逃れ」をしている

 除本理史(大阪市立大学教授)氏曰く

「ここで重大な問題は,政府が原発事故の加害者として責任を認め,それにもとづく負担として東電を援助しているのではない,ということである。政府は,東電の責任「遂行Jを援助するにすぎない。破綻処理を免れ「延命Jされた東電は,原発再稼働をねらい,電気料金の値上げまでしている。つまり,東電と政府の「責任逃れ」が表裏一体となった仕組みなのである。」

 

(田中一郎コメント)

 20134月までに,ゾンビ会社東京電力につぎ込まれた公的資金は3兆4千億円を超える。その巨額な金額が,被害者の救済のためにではなく,被害者の救済を名目にしたゾンビ会社東京電力と国の延命・責任逃れのために使われている。許せない。

 

(7)東京電力と最大の債権者・金融機関がグルになって,貸出債権を無担保から有担保に切り替えている

 除本理史(大阪市立大学教授)氏の論文にはないが,これも付記しておく。既にメール等でご案内している通り,東京電力と取引金融機関が談合し,現在,無担保の貸出となっている債権を,貸出の期限が来る都度,有担保の私募債に切り替えている。会社全体の資産を担保にする「ゼネラル・モーゲージ」という方法である。

 

 こうすることで,金融機関は仮に東京電力が法的処理に入っても,貸出金が貸倒することはほぼなくなる。これによって一般債権者は金融機関に劣後して「割りを食う」形となるが,この一般債権者こそが,福島第1原発事故で被害を受けた被害者の方々である(損害賠償請求債権)。つまり,金融機関は自分達の貸出債権を守るために,被害者の債権を無担保のまま放置・切捨てさせ,それは国の税金で面倒を見ろよ,という態度で東京電力に対して臨んでいるということである。これも反社会的な出鱈目行為である。

 

(8)最後に(水俣問題と比較して)

 除本理史(大阪市立大学教授)氏曰く「水俣病事件と福島第1原発事故との類似点」

 

<1>被害者の分断

<2>加害者が補償範囲を決め,決着を図ろうとしたものの,被害者の抵抗にあい失敗していること

<3>加害者が被害補償の責任を果たしているようにみえても,費用負担の実態はそうなっておらず,実際には責任が唆味になっていること 

 

(田中一郎コメント)

 水俣病の被害者の方々が完全救済されていない今日の日本に,企業の環境破壊(汚染)犯罪(公害とも言う)がなくなる日が来なかったように,福島第1原発事故の被害者への完全救済が実現しなければ,日本には本当の意味での脱原発=脱被曝の日は訪れないだろう。福島県民をはじめ福島第1原発事故の被害の賠償・補償の問題は,まさに我々自身の問題なのである。

 

 そして,その賠償・補償問題の核心的なことの一つの期限が,今,目前に迫っている。民間債権消滅時効3年の問題だ。国会及び日本の法曹界は,福島第1原発事故に伴う賠償・補償請求債権の消滅時効の不適用(20143月で時効),ないしは大幅延長の特例法制定に向け全力を挙げていただきたい。このままでは,数百万人と思われる被害者の方々は救われないまま闇に葬り去られてしまうことになる。それは絶対にあってはならないことだ。

草々

 

 

2013年7月16日 (火)

放談 放射能と素粒子論のこと

前略,田中一郎です。

 

ある方へのメールです。

下記に関連して,放射能と素粒子論のことについて書いてみました。

もう少し勉強しておけばよかったと,つくづく反省します。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

中性子過剰の原子核では、核内の中性子が、陽子と電子及び▼反ニュートリノに崩壊する。

   n0 = p+ + e- + ν 0

これをβ-崩壊といい、中性子が陽子に変わる現象である。(肩の記号は電荷を表す。)

 

次に、陽子過剰の原子核では、核内の陽子が、中性子と▼陽電子及び▼ニュートリノに崩壊する。

   p+ = n0 + e + + ν 0

これをβ+崩壊といい、陽子が中性子に変わる現象である。(オーバーラインは、▼反粒子を表す。)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

1.素粒子の世界は「実体論」的に物事を考えると間違います。

 まず,素粒子論=超ミクロの世界では,原子とか,中性子とか,電子とか,陽子とか,ニュートリノとか,中間子とか,いろいろ「子」が付けられて説明されているものは,すべて物理学者が考え出した「説明の道具」=仮説の体系,と考えた方がいいと思います。たとえば電子とか中性子とか言った時には,まるで卵かリンゴのような丸い「実体」のある物質が,実存在していて,それがあちこち飛び回っているかのように説明されますが,それはあくまで説明の便宜上,そうした方がわかりやすいからであって,実際にそうなのかどうかはわかりません。

 

 超ミクロの世界には,有名な「不確定性原理」というものがあり,およそ超ミクロ物体は,その速度と位置を同時に正確には把握できない,というものです。我々が,ある物体の速度や位置を知ろうとすれば,それに光線をぶつけて,その反射光をとらえることでそれを把握できます。しかし,光線=光は波動であるだけでなく,光もまた光子という素粒子の一種でもあり,それはエネルギーをもっており,そのエネルギーが素粒子と衝突することで,素粒子の位置と速度を変えてしまうのです。これは原理的な不可能性なので,いかんともしがたいものがあります。

 

 その「不確定性原理」の上で,様々な物理的な観測機器類が開発され,その機器類によって,これこれの観測が得られたが,それを合理的・理論的に説明するには,今の物理学的な説明が最も整合的である,ということにすぎません。つまり,実体として素粒子が存在しているのではなくて,観測結果の説明体系として,言い換えれば,人間の経験に整合的な理屈付けとしてある,ということにすぎないのです。私が「科学とは経験科学である」と申し上げるのは,このようなところにもその根拠があります。

 

2.素粒子の世界=超ミクロを根源的に説明しているのは,素粒子ではなく,質量,エネルギー,電気(電場),磁気(磁場)の4つである。

 まず,素粒子はすべて,「粒子性」と「波動性」を併せ持つという点も重要です,言い換えれば,素粒子は,粒であり,波である,ということです。何のことかよくわかりませんが,要するに,素粒子の挙動を観測すると,粒のような性格もあれば,波のような性格もある,ということです。つまり,ここでも「実体論」ではなく「観測事実はこうだった」ということにすぎません。

 

 そして,この粒子性と波動性の電場や磁場でのありようが素粒子の挙動を決めるのではないかと,私は勝手に想像をしています。つまり,素粒子は「説明上の仮の姿」であって,実際には,電場と磁場が存在しているのだ,というイメージです。たとえば原子の周りを電子が飛び回っている,などとよく言われ,それはまるで太陽の周りを地球や火星などの惑星がくるくる回る太陽系のイメージでとらえられています。しかし,そんなものは,見た人など誰もいなくて,本当にそうなのかは今持って不明,と言っていいでしょう。私が数十年前に習った物理学では,電子は原子核の周辺に確率論的に存在していて,それぞれがエネルギーの「一定の状態」【励起状態】を持っている,というものでした。言ってみれば,原子核の周りの電子がかすみか雲に覆われていて,その中のどこかに電子はあるが,どこにあるかはわかりません,といった感じでしょうか? しかも,電子の大きさは,原子核と比較すると,とてつもなく小さいのです。そしてその電子の「実体」とは,一体何でしょう? と聞かれても,はて,電気の塊です,くらいにしか答えられません。

 

 また,陽子と反陽子とか,電子と陽電子,あるいはニュートリノと反ニュートリノ,などというのは一体何なんでしょう? それらは,足してやると「無」になる,ということですので,益々よくわかりません。反○○などというのは,私に言わせれば,単に物理学解説の中に出てくる「説明の便宜のための粒子」であり,実体のある粒子というよりは「説明」粒子といった方がいいかもしれないようなもので,もう信じるか信じないかの世界のような気がしています。少なくとも「反粒子」などは「観測」はできないでしょう(「場」として存在している?)。そして昨今では,ヒッグス粒子とかいう,大昔の「エーテル」のような素粒子まであると言われています。

 

 更に,ここにアインシュタインの相対性理論が入り込みます,E=m×C×C という有名な数式はご存知ですか。Eとは物質のエネルギー,mとは質量,Cとは光速です。全ての物質はエネルギーに転換でき,その量は,質量×光速の2乗である,というものです。簡単に言えば,質量を消滅させると膨大なエネルギーが発生するということです。このアインシュタインの公式が,核エネルギーの膨大な大きさの利用につながっていて,のちに核兵器を開発した技術者達は,この超ミクロの世界のエネルギーをマクロ化していったということなのでしょう。

 

 しかし,アインシュタインは,上記で申し上げた「素粒子論」=言い換えますと量子力学の理論を死ぬまで認めなかったといいます。いかに小さな世界のこととはいえ,ものごとを,物理現象を,確率論的にとらえるということを拒否していました。逆に,私のようなボンクラ学徒は,アインシュタインの,質量=エネルギーというのがピンとこないのです。質量がこの世から消えてなくなれば,それは巨大なエネルギーに転換する,・・・・・何のことでしょう? では逆に,膨大なエネルギーは質量に転換をし,無から有が生じるということでしょうか。

 

 この辺で,もじゃもじゃ逡巡しているうちに,物理学の世界とは「さようなら」となり,私は経済学へと移住してしまったのですが,しかし,上記で言える唯一のことは,素粒子論の世界は,「実体」論ではなく,観測結果の集合体と,その合理的説明(定量化を含む)の体系である,と考えるべきだと思います。そしてそれは,経験科学として当然のあり方だろう,と思うのです。

 

3.原子核における中性子と陽子の存在の仕方

 私の想像するところは,核子(中性子または陽子)が寄りあって存在する場合に電場と磁場が形成され,その中で「中間子」のようなものを媒介にして相互に引きあう力が働けば安定的であり,引き合う力が弱ければ,あるいは反発し始めれば,不安定になる,そして,不安定になれば,その核子群の中から何らかのものが外へ飛び出てきて,新しい電場・地場を創る,そういうイメージです。出てくるものは,電子と呼ばれる「説明粒子」かもしれませんし,「ニュートリノ」とか「反ニュートリノ」とかいうものかもしれない,それは,観測したらこうだったというだけで,何故,こんなのがでてくるの? 中に電子やニュートリノが実態的に入っていて,ザクロかタラ子のようになっているの? ということではないだろうと思います。そこは,わかりまへん,の世界だと思うのです。

 

4.物理学はひょっとすると大きく転換するかもしれません

 これも私の直感ですが,宇宙論と素粒子論は似たようなところがあり,頭のいい方々がとことんおやりになったせいもあって,昨今,訳が分からなくなっています。宇宙は膨張しているとかいいますが,あれも,遠方の天体からやってくる光をとらえて,そのドップラー効果を計算すると,遠方の天体が地球から遠ざかっているように思えるということにすぎず,本当にそうなのかは,私は??? と思っているのです,素粒子論も同じで,観測事実は,その観測の仕方に問題がなければ普遍的なものですが,その説明の仕方は,あくまで「仮説」の体系であり(但し,徹底して合理的でなければなりませんが),それは大きく転換する可能性もある,ということです。

 

長々と申し上げましたが,答えになっていませんね。

 

「中性子は電子をおなかの中に含んでいるのですか?」との質問には,

そうかもしれませんし,そうでないかもしれません

 

しかし,とにかく中性子は電子を放り出したかのごとく運動していました

ということなのでしょう。    

草々

 

木質燃料が危ない(森林と木材の放射能汚染)

 下記は昨年秋(201211月頃)に書いた国産木質燃料の放射能汚染に関するレポートですが,事態は今に至るもほとんど改善されている様子がないので,若干の加筆修正を行った上で,再度みなさまにご覧いただくことにいたしました。前半の「1.」は薪・木炭,後半の「2.」は木質ペレットについてです。

 

1.薪・木炭・木質ペレットは危険なので,お使いにならないようご注意ください(その1:薪・木炭)

 このほど農林水産省(林野庁)は,「林野庁-木質ペレット及びストーブ燃焼灰の放射性セシウム濃度の調査結果及び木質ペレットの当面の指標値の設定について」(2012112日)という通知文書を発表し,木質ペレットの放射性セシウム汚染に対して「指標値」(=一定の使用可能限度の「目安」数値)を示しました。しかし,その通知文書の内容を詳細に見ますと,木質燃料の放射能汚染に対する軽率で無責任で危険な対応と思わしき記載が多く見られ,このままでは東日本を中心に国産の木質燃料の使用による意図しない呼吸内部被曝や,木質系の放射能汚染ゴミの拡散等を招いてしまう危険性が高いと思われます。以下,国産木質燃料の放射能汚染管理の状況を点検すべく,木質ペレットに関することだけでなく,少し前に発表されている薪及び木炭(但し調理加熱用に限る)に関する同様の汚染「指標値」(=「目安」)の通知文書に遡り,その内容の軽率さや無責任さ,あるいは危険性を指摘したいと思います。

 

<関連通知:林野庁HPから>

(1)(201211 2日)「林野庁-木質ペレット及びストーブ燃焼灰の放射性セシウム濃度の調査結果及び木質ペレットの当面の指標値の設定について」

 http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/riyou/121102.html

 

(2)(2012 119日)「林野庁-調理加熱用の薪及び木炭の安全確保について」

 http://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/shintan7.html

 

(3)(201111 2日)「林野庁-調理加熱用の薪及び木炭の当面の指標値の設定について」

 http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/tokuyou/111102.html

 

(4)(20111222日)「林野庁-調理加熱用の薪及び木炭の当面の指標値設定に関するQ&Aについて」(いわゆる「Q&A」)

http://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/shintan4.html

 

(5)(20111118日)「林野庁-調理加熱用の薪及び木炭の放射性セシウム測定のための検査方法について」

 http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/tokuyou/111118.html

 

 いずれの通知文書も,テクニカルな話である「検査方法」の記述を除けば,Q&Aを含めて平易な内容なので,直接お読みになることをお勧めします。なお,前半の「1.」では,上記の(2)~(5)を問題にします。ただ,今般発表された(1)の木質ペレットに関する通知は,それより少し前に通知された(2)~(5)よりも,一段とその内容がひどくなっており(放射能汚染をほとんど無視した軽率極まりない被曝判断等),農林水産省・林野庁の現下における放射能汚染管理の方針や姿勢を象徴的に表しているものと思われます。その点については「2.」で厳しく批判いたします。

 

 また,上記で私は「木質燃料の使用は東日本産を中心に危険である」と書いていますが,他方では,福島第1原発事故に伴う放射性物質の環境への拡散はかなりの広範囲に広がっていて,各地の森林をも汚染していると思われることや,東日本一帯の汚染地域から産出された木質燃料は,全国各地へと,ほとんど何のチェックも受けずに,きちんとした表示もなされずに流通しているようですから,今後,行政及び業界・業者が放射能汚染対策をキチンとして,危険な汚染物が出回ることがないことが確認されるまでの間は,全国各地どこでも,国産の木質燃料(薪・木炭・木質ペレット等)の使用は差し控えた方がよさそうです。従ってまた,木質燃料を燃やしている場所(炭火焼肉・焼きとり,キャンプファイアー,焚火,暖炉やストーブやボイラーなど)には近づかない方が賢明ですし(呼吸被曝の可能性大),特に学校や保育園・幼稚園,あるいは老人施設などでは,万全の注意が必要ではないかと思われます。(以下,「ですます」調から「である」調に切り替えます)

 

1-1.調理加熱用の薪及び木炭の当面の指標値の設定

 上記(3)が,この問題に関する大黒柱の通知文書である。当面の指標値等について,通知には下記の通り書かれている。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以下,引用)

<主な内容>

調理加熱に使用されている薪や木炭については、燃焼に伴う放射性物質の移動や食品への影響を判断するための科学的知見が乏しいことから、調査を実施していたところです。今般、この調査において、薪及び木炭から食品への移動についてはわずかでしたが、焼却灰には一定レベルの放射性物質が残留するとの知見が得られたため、調理加熱用の薪及び木炭の今後の取扱いについて、当面の指標値を定めました。なお、この指標値の設定については、本日、都道府県及び関係団体へ通知しました。

 

<当面の指標値(放射性セシウムの濃度の最大値)>

1)薪   40ベクレル/kg(乾重量)

2)木炭 280ベクレル/kg(乾重量)

 

<関係者に対する指導>

 生産者及び流通関係者に対し、指標値を超えている薪及び木炭の流通を行わないよう指導を行うこと等について、都道府県及び関係団体に要請します。具体的な指導内容は添付資料をご参照ください。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以上,引用終わり)

 

 ここでの問題は

① この指標値はあくまで「指標値」であって,違反した場合の罰則もなければ,法的な強制規制でもない,単なる「目安」にすぎず,指標値を大きく上回るものが販売されても,それを停止させることも,業者を罰することもできない。

 

② 更に,都道府県と関係団体に通知はなされるが,通知の後,政府(農林水産省・林野庁)は「あなた達(業界)で勝手にやってくれ」という姿勢なので,どこまでこの「指標値」が守られるのかは定かでない。通知が現場に周知徹底されているかどうかや,通知内容が現場で守られているかどうかのモニタリング体制さえ取られていないので,単に通知をしただけ,に終わっている。つまり,この「指標値」に実効性がない。(いつもの「やってまっせ」のアリバイ行政)

 

③ この「指標値」の対象となる薪や木炭が「調理加熱用」に限られていることが問題である。上記(3)「Q&A」によれば,最も使用頻度が高いと思われる薪ストーブなどの小規模な家庭用暖房器具についてはこの指標値が準用されるが,大規模な工業用のボイラーで薪及び木炭を燃やす場合は対象としていないとされた(それについての「指標値」は存在しない)。

 

 また,沖縄のソバのアク抜きに使用されて大問題となった放射能汚染の木質灰の飲食関係への使用に関しても,使用禁止の通知も,注意喚起も,指標値もない状態が続いている。木炭なども場合によっては飲食用の補助資材として直接使われる場合もあるが,それも放置状態だ。薪や木炭の使用に係る総合的な指標値が必要であるし,流通過程での適切な表示や,消費者向けの注意喚起なども必要だろう。

 

④ 指標値は放射性セシウムについてだけであり,それ以外の放射性核種が無視されている。しかし,薪や木炭を産出する森林の放射能汚染は深刻で,放射性セシウムだけを調べればそれでいいということには絶対にならない。(放射性ストロンチウム,プルトニウム,ウラン,テルル,アンチモン,放射性ヨウ素129他)

 

1-2.指標値設定の考え方

 (4)のQ&Aには,指標値設定の考え方として次のように書かれている。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以下,引用)

Q1:なぜ、調理加熱用の薪及び木炭に当面の指標値をつくったのですか。

A1: 東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴い、放射性物質が大気中に放出され、樹木に放射性セシウムが付着しました。これらの樹木を原料とする薪及び木炭は放射性セシウムを含有するので、調理加熱に使用すれば食品に放射性セシウムが移動する可能性があるのではないかと考え、食品の調理を念頭に実証実験を行いました。

 この結果、薪及び木炭の放射性セシウムの2%以下が食品に移ったのに対して、残りの多くが燃焼灰に留まりました。そこで、飲食店及び一般家庭において薪及び木炭により調理加熱が行われた場合に生じる灰に着目し、実証実験により得られたデータや専門家の助言を踏まえて当面の指標値を設定しました。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以上,引用終わり)

 

 つまり,木質燃料に付着あるいは含まれている放射性物質について,燃焼に伴う食品への移行と,焼却灰への移行を考慮したが,煙となって拡散する分については全く考えていない,ということを意味している。これはあまりに乱暴であり,また危険である。

 

1-3.薪=40ベクレル/kg(乾重量),木炭=280ベクレル/kg(乾重量)はどうやって算定したか

 同じく(4)のQ&Aには,指標値設定の考え方として次のように書かれている。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以下,引用)

Q2:なぜ、調理加熱用の薪として利用できる放射性セシウム濃度を40ベクレル/kg以下、木炭として利用できる放射性セシウム濃度を280ベクレル/kg以下としたのですか。

A2:実証実験により、薪1kgを燃焼させると灰5g、木炭1kgを燃焼させると灰30gが残り、薪及び木炭に含まれていた放射性セシウムの約9割がその灰に残るとのデータが得られました。これは、灰1kg当たりの放射性セシウムの濃度が薪1kgと比べて182倍、木炭1kgと比べて28倍となることを意味します。

 このため、薪及び木炭の燃焼により生じる灰が、セメント等で固化する等の対策を講じなくても一般廃棄物最終処分場での埋立処分が可能な放射性物質の濃度である8,000Bq/kg以下となるよう、薪の指標値を40Bq/kg8,000÷1824440)、木炭の指標値を280Bq/kg8,000÷28286280)としました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以上,引用終わり)

 

 放射性物質が煙となって拡散する分については全くの考慮外であると確認されること,指標値の裏付けとなった実証実験の詳細が公表されていない=わずかばかりのデータで「決めつけ」を行っている可能性があること,食品などの安全規制には常に用いられている「安全バッファ」が全くない状態で数値が導出されていること,そして何よりも,8,000ベクレル/kgもの放射能汚染ゴミを「捨てていいもの」としていること,などが根本的に間違っている。

 

 一般に,放射性物質に係る安全(規制)指標の算定の場合は,しきい値がないことが口実にされ,常に「安全バッファ」をすっ飛ばし(無視し),更に,我田引水的な奇妙な「仮定」をいくつも置いて,放射能汚染や被曝を軽い方へ軽い方へと解釈し,誘導する手法で評価され,物事が決められていることが大問題である。この薪や木炭の指標値についても「しかり」のようだ。

 

1-4.指標値の対象となる都道府県の範囲

 同じく(4)のQ&Aによると,対象都道府県は下記の17都県である。

 17都県とは,青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県及び静岡県,のこと

 

1-5.指標値を超えた薪及び木炭や,指標値以下の薪及び木炭を燃焼した際に生じる灰の処理

 それらは,①廃棄物として適切に処分(いわゆる8,000ベクレル/kg基準),②安全が確保される範囲内で調湿用等の他の用途に転用,③肥料・土壌改良資材・培土及び飼料などとして使用(但し,農林水産省の定める暫定許容値(400Bq/kg)(飼料は100Bq/kg他)を下回っている場合のみ),などとされている。

 

信じがたい話である。放射能の拡散を防ぐため,できるだけ密閉した場所に汚染物を厳重保管して環境を汚さないようにする,という発想はゼロで,8,000ベクレル/kg以下なら適当に捨ててしまえ,そもそも農林水産省の所管ではない(環境省所管)という姿勢がありありと透けて見えている。これは,他の放射能汚染ゴミ,汚染がれき,汚染汚泥などの処理とともに,農林水産汚染ゴミが日本を「放射能汚染列島」に変えて行く有力な汚染物質になることを意味している。

 

1-6.「Q7:指標値を超えた薪及び木炭と指標値を超えていない薪及び木炭とを結束や梱包して組み合わせて流通させてもいいですか?」

 同じく(4)のQ&Aによると,この「問い」に対する回答は下記となっている。

「A7:結束や梱包して組み合わせた薪及び木炭の放射性セシウムの濃度が指標値以下となる場合は、自都道府県内に限り流通させてもかまいません。この場合、指標値を超えているロットと超えていないロットのそれぞれの放射性セシウムの濃度や重量を管理し、例に示すように、組み合わせた薪及び木炭の放射性セシウムの濃度が必ず指標値以下となるようにしてください。

 また、組み合わせた薪及び木炭から分析用試料2検体を調整し、放射性セシウムの測定を行い、指標値を超えていないことを確認してください。」

 

 これも信じがたい話で,まさに薪及び木炭における「放射能汚染ロンダリング」そのものだ。汚染されたものとされていないものとを混ぜ合わせて,濃度規制をくぐりぬけるようなことは許されるわけがない。発生地の都道府県内に限り流通させてもよい,などというのは,ご都合主義以外の何物でもないではないか。

 

1-7.(2)(2012 119日)「林野庁-調理加熱用の薪及び木炭の安全確保について」の通知について

 上記の通知類の日付をご覧いただけばわかるように,昨年201111月に,薪や木炭の放射能汚染に係る「指標値」と,その関連通知が出されたのも関わらず,その後も事態の改善があまり見られないまま,翌年1月早々には「こうした中、一部地域の薪を燃焼させた際の灰から高濃度の放射性セシウムが検出される事例が発生しているところです。」ということになり,慌てて出したのがこの通知である。

 

 高濃度の汚染灰の発覚をマスコミが報道したために,農林水産省(林野庁)としては,改めて薪や木炭の放射能汚染対策の実効性を高めることを余儀なくされた次第である。上記で申し上げた問題点の②,すなわち「・・・・通知の後,政府(農林水産省・林野庁)は「あなた達(業界)で勝手にやってくれ」という姿勢なので,どこまでこの「指標値」が守られるのかは定かでない。通知が現場に周知徹底されているかどうかや,通知内容が現場で守られているかどうかのモニタリング体制さえ取られていないので,単に通知をしただけ,に終わっている。つまり,この「指標値」に実効性がない。・・・・」が,そのまま表面化してしまった。

 

 もちろん,その後も,この通知を出して「それっきり」で,事態が更に改善に向かっているとはとても感じられない。薪や木炭などの国産木質燃料は,依然として放射能に汚染されたままの状態で流通しており危険である。

 

 ところで,この通知には「福島県内の一般家庭における薪ストーブの使用に関する放射性核種分析結果」という興味深いレポートが添付されている。環境省が外部の調査機関に委託して分析させたものらしい(詳細不明:こういう点も情報公開の面から問題あり)。それを見ると,薪やその焼却灰の放射能汚染値のみならず,排煙の汚染値も掲載されている。これは見ておかれた方がいい。

 

(該当箇所を抜き書き)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以下,引用)

排煙

11月にストーブで薪を燃やし、煙突からの排ダストサンプラーによりろ紙に捕集し,核種分析を実施した。

16サンプルの測定結果を表3に示す。

・ろ紙の下流側の活性炭カートリッジ、4サンプルの測定結果を表4に示す。

・排煙による被曝の影響は表5に示すとおりであり、煙が煙突から出た途端に希釈・拡散されるため、ほとんど無視できる。

 

表3 .ろ紙の核種分析結果

ろ紙サンプルNO.3  放射性セシウム134が「2.146E-05」(ベクレル/cm3

            放射性セシウム137が「3.055E-05」(ベクレル/cm3

 

表4 .活性炭カートリッジの核種分析結果

ろ紙サンプルNO。1  放射性セシウム134が「1.201E-06」(ベクレル/cm3

            放射性セシウム137が「1.690E-06」(ベクレル/cm3

 

上記で「E-05」とは,10のマイナス5乗=×0.00001ということ,つまり「2.146E-05」は,0.00002146ということを意味している。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以上,引用終わり)

 

 ずいぶんと小さい値だから,やれやれ,と思われるかもしれない。がしかし,単位が「ベクレル/cm3」であることに留意されたい。この「cm3」は,排煙の体積のことだが(つまり排煙1cm3に含まれる放射性セシウムの量),通常,呼吸被曝などを考慮する際には「cm3」ではなく「m3」とすべきである。そうすると,立方センチを立方メートルに換算するため,100cm×100cm×100cm=1,000,000=100万倍(10の6乗)しなければならないので,上記の値は,それぞれ上から

 

21.46ベクレル(セ134),30.55ベクレル(セ137),合計で52ベクレル

 1.20ベクレル(セ134), 1.69ベクレル(セ137) 合計で 3ベクレル

 

ということになる。

 排ダストサンプラーのろ紙や,ろ紙の下流側の活性炭カートリッジで,すべての排煙の放射能が吸い取れるわけではないが,その大半は捕獲できたとして,上記で見れば,およそ単位体積当たりで 55ベクレル/m3 程度の放射能汚染排煙が発生していることになる。

 

 この数値で見て,放射能汚染の薪を燃やした際の排煙にはほとんど放射性物質が含まれていないので,気にする必要などまったくない,などとは「全く言えない」ことがわかる。本来であれば「m3」単位で計算して表示すべきものを,まるで素人騙し・国民騙しをするかのごとく,数値が小さく見える「cm3」単位で表示するなど,姑息極まりない態度である。許し難いものを感じる。

 

 そして,例によって例のごとく,この半ばチョロマカシの数値を,今度は疑問だらけの「シーベルト」という放射線被曝量単位に換算して,年間0.0105mSvなので,全然心配しないでよろしい,などと説明している。「シーベルト」という評価単位は,別送の私のレポート「(増補版)シーベルトへの疑問」に書いたように,「数値が小さく出るように仕組まれている」と考えた方がいい。

 

 「シーベルトの値が小さいからといって,信用して安心することは極めて危険です。シーベルトは原子力村のインチキの可能性があります」,これは私の毎週金曜日の抗議行動の際の「辻立ち演説」のセリフの一部である。

 

 上記に書かれているような「排煙による被曝の影響は表5に示すとおりであり、煙が煙突から出た途端に希釈・拡散されるため、ほとんど無視できる。」などということは,全くありえない,ということを申し上げておきたい。「希釈・拡散される」ということは,危険な放射能が辺り一帯にばら撒かれるということを意味し,危険極まりないことなのだ。

 

(ちなみに,この分析結果等の添付文書は環境省が作成し,環境省が所管しているもの:こんなところの外局に,原子力に「寄生」する「原子力「寄生」委員会・「寄生」庁」があるのだから,役に立ちそうにないのは,およそ想像がつく。それから,繰り返しになるが,上記はあくまで放射性セシウムのみの話であり,他の放射性物質=特に呼吸被曝の際に危険と思われるプルトニウム他の放射性核種は不問とされたまま,「安全」だけがむなしく強調されていることも付記しておきたい)

 

1-8.(薪・木炭について)最後に

 薪や木炭,あるいは木質ペレットを産出する森林は,もっと丁寧に,かつ継続的に放射能による汚染状況が調査されなくてはならない。いわゆるきめ細かで正確な「森林の汚染マップ:湖沼・河川を含む」が必要なのだ。福島第1原発事故後1年8カ月の間に,文部科学省が航空機からの測定と推定に基づいて,大雑把な汚染マップを作成しているが,全く不十分だと思われる(また,原子力推進の総本山である文部科学省が,環境の放射能汚染を測定すること自体が明確な「利益相反行為」であり,汚染状況のゴマカシ・隠蔽をはじめ,様々な弊害をもたらす可能性が高いと言える。止めさせるべきでしょう)。

 

 そして,その汚染マップをもとに,少なくとも放射線管理区域指定基準である5.2mSvを超える汚染森林・山林は,立入禁止の「閉山」とし,林業・林産事業(木材伐採搬出)や,キノコ・山菜採取などの特用林産業などを含め,そこでの全ての産業活動を中止し,それによって損害を受ける方々にきちんとした賠償・補償・再建支援を行うべきである(森林・山林の所有者を含む)。福島県を中心に,東日本の森林・山林は,かなりの程度まで放射能に汚染されており,そうした森林・山林で無原則に林業活動を行ったり,林産物を軽率・安易に利用したりすることは,無用の放射線被曝や環境汚染の拡大をもたらす愚かな行為であることを,しかと認識すべきである。

 そして,そうすることが,林業や林産業に携わる地域の人々の恒常的な放射線被曝を防ぐ最も適切な方法でもある。 


2.薪・木炭・木質ペレットは危険なので,お使いにならないようご注意ください(その2:木質ペレット)

 上記「1.」に続いて,ここでは,国産木質燃料の放射能汚染対策に関する農林水産省・林野庁の軽率で無責任で危険な方針・姿勢を,「木質ペレット及びそのストーブ焼却灰」に関する今般の通知で具体的に見てみることにする。

 

<関連通知:林野庁HPから>

(1)(201211 2日)「林野庁-木質ペレット及びストーブ燃焼灰の放射性セシウム濃度の調査結果及び木質ペレットの当面の指標値の設定について」

 http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/riyou/121102.html

 

(別添資料2)木質ペレットの当面の指標値の設定、検査方法等についてのQ&A

 http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/riyou/pdf/121102-04.pdf

 

 上記「1.」でも申し上げたが,今般発表された上記(1)の木質ペレットに関する通知は,それより少し前に通知された(2)~(5)の通知類よりも,一段とその内容がひどくなっており(放射能汚染をほとんど気にしない軽率極まりない被曝判断等),農林水産省・林野庁の現下における放射能汚染管理の方針や姿勢を象徴的に表しているものと思われる。

 

 さて,上記(1)の木質ペレットに関する通知には,概ね下記のことが,その内容として含まれている。

 

(以下,林野庁HPより)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以下,引用)

1.主旨

 林野庁は、昨年12月以降、木質ペレット及びストーブ燃焼灰の放射性セシウム濃度の調査を実施しました。全国各地で採取した木質ペレット41検体の放射性セシウム濃度は、検出下限濃度(2Bq/kg)未満~78Bq/kgとなりました。ストーブ燃焼灰(31検体)の放射性セシウム濃度は、2009,800Bq/kgとなりました。

 調査の結果に基づき、木質ペレットのストーブ燃焼灰が一般廃棄物として処理可能な放射性物質濃度8,000Bq/kgを超えないようにするため、木質ペレットの当面の指標値を設定し、検査方法とともに関係者に通知しました。

 

2.検体(調査対象となった木質ペレット41検体の概要)

(ア)全国各地で製造された木質ペレット41検体

・ホワイトペレット(樹皮を除いた木材が原料):21検体

・全木ペレット(樹皮を含んだ木材が原料):16検体

・バークペレット(樹皮が原料):4検体

 

(イ)上記のうち、岩手県、宮城県、福島県、山形県、群馬県、栃木県、埼玉県、千葉県で製造された木質ペレット計31検体(ホワイトペレット16検体、全木ペレット11検体、バークペレット4検体)をペレットストーブで燃焼して発生した灰

 

3.「木質ペレット」に係る指標値の設定および通知

 本調査の結果を用いて、ストーブ燃焼灰が一般廃棄物として処理可能な放射性物質濃度8,000Bq/kgを超えないようにするため、木質ペレットの当面の指標値を以下のとおり定め、関係者に通知しました(別添1)。

 

・ホワイトペレット、全木ペレット:40Bq/kg

・バークペレット:300Bq/kg

 

 木質ペレットの放射性セシウム濃度が当面の指標値を超えた場合、製造業者等はストーブ燃焼灰の放射性セシウム濃度も併せて測定。燃焼灰が8,000Bq/kg以下と確認される場合を除き、販売、流通等の停止を関係者に要請。

 これに関連し、木質ペレットに含有する放射性セシウムの当面の指標値への適合性を判断するための検査が的確かつ適正に進められるよう、別添のとおり「木質ペレット及びストーブ燃焼灰の放射性セシウム測定のための検査方法」を定めました(別添1)。

 

4.添付資料

(1)(別添1)木質ペレットの当面の指標値の設定及び「木質ペレット及びストーブ燃焼灰の放射性セシウム測定のための検査方法」の制定について

(2)(別添2)木質ペレットの当面の指標値の設定、検査方法等についてのQ&A

・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以上,引用終わり)

 

(以下,筆者のコメント)

2-1.今回通知の問題点

(1)指標値を出すのが遅すぎることに加え,検査した木質ペレットの検体の数が少なすぎる

 指標値を出すのが遅すぎる。薪や木炭に関する指標値が出たのが昨年の11月で,それから1年も経過している。いったい農林水産省(林野庁)は何をしていたのだろうか。また,今回の通知出状にあたり,全部で41検体しか検査されていない。肝心の森林汚染地帯である上記7県で製造されたものは,わずかに31検体に留まっている。対象検体数が少なすぎて「木質ペレット」の汚染状況を代表しているとは言い難い。

 

(2)バーク(木の皮)ペレットの検体があまりに少ない

 バークは素材丸太を製材した際に必ず出てくる廃棄物で「木の皮」のこと。これが今回の福島第1原発事故の影響で放射能に汚染し,処分できなくなって製材工場等に山積みになっている。従来は,家畜の敷料や肥料用などとして使われていたが,これができなくなてしまった。

 

 森林を汚染した放射性物質,特に放射性セシウムなどは,樹木の表皮に固着している場合が多く,バークを原料とする製品は放射能に汚染されている度合が,他の木材製品等に比べて大きいことが予想される。つまり,バークを用いた「木質ペレット」を含む木材製品については要警戒であるということだが,上記のとおり,検査されたバークペレットはわずかに4検体,全木ペレット(バークを含む)でも16検体にすぎなかった。まるで汚染物のバークをわざと外しているかに見える。

 

(3)福島県以外の汚染地域の森林や産出木材はどうなっているのか

そもそも,福島県を含む上記7県(岩手県、宮城県、福島県、山形県、群馬県、栃木県、埼玉県、千葉県)の森林は,かなりの程度にまで汚染されており,中には極めて高い高濃度を示す森林もある。にもかかわらず,福島県浜通りの「警戒区域」を除くと,他の地域では,禁止らしい禁止もなく,入山制限や林産業制限もないままに,これまでと同じように「木質ペレット」や木質燃料が生産されていることに強い抵抗を感じる。

 

 これでは,生産される林産物の放射能汚染で消費者・国民が危険にさらされるだけでなく,この地域の汚染森林で作業をする林業労働者や生産者・農家が恒常的な放射線被曝に曝され,今後,健康被害が出てくる可能性が高く,取り返しのつかない事態になりかねない。

 

(4)情報公開不十分:「1検体(9,800Bq/kg)」はどこで生産されたものなのか?

「全国各地で採取した木質ペレット41検体の放射性セシウム濃度は、検出下限濃度(2Bq/kg)未満~78Bq/kgとなりました。上記のペレットのうち31検体をペレットストーブで燃焼させた際に発生した燃焼灰の放射性セシウム濃度は、2009,800Bq/kgとなりました。8,000Bq/kgを超える燃焼灰は1検体(9,800Bq/kg)でした」とあるが,

 このうち「1検体(9,800Bq/kg)でした」は,どこで生産されたものなのだろうか。今回も情報公開が不十分である。検査結果については,固有名詞を明らかにする必要はないが,消費者・国民が知っておくべき事項が,統計的記載で,可能な限り詳細・具体的に公開されるべきである。

 

(5)下記の諸点については,「1.」の「薪・木炭」に関すること同様である。

① この指標値はあくまで「指標値」であって,違反した場合の罰則もなければ,法的な強制規制でもない,単なる「目安」にすぎない。

 

② 都道府県と関係団体に通知はなされるが,通知の後,国(農林水産省・林野庁)は「あなた達(業界)で勝手にやってくれ」という姿勢。この「指標値」に実効性がない。(いつもの「やってまっせ」のアリバイ行政)

 

③ 放射性物質が煙となって拡散する分については全く考慮外である他,指標値の裏付けとなった実証実験の詳細が公表されていない,「安全バッファ」が全くない状態で,数値が導出されている。

 

④ 指標値は放射性セシウムについてだけであり,それ以外の放射性核種が無視されている。

 

(6)バークペレットの指標値が甘いのではないか

 以下の指標値のうち,バークペレットの指標値が甘いのではないか。バークはあちこちの製材工場で処分不可能のまま山積されており,これを使ったペレットに対して甘い指標値を設けることは,バークをペレット生産へと誘導することになりかねない。もともとバークは福島第1原発事故による放射性物質を吸着している可能性が高いことから,厳しい値(数ベクレル)以下のものを使用禁止として,厳重管理・密閉の措置をとるべきである。

 

<指標値>

・ホワイトペレット、全木ペレット: 40Bq/kg

・バークペレット        300Bq/kg

 

(7)指標値を超えた木質ペレット,及びその焼却灰の処理

 これも上記「1.」と同様に問題がある。すなわち,それらは,①廃棄物として適切に処分(いわゆる8,000ベクレル/kg基準),②安全が確保される範囲内で他の用途に転用(園芸用マルチング材、畜産用敷料等),③異なる検査ロットを混ぜて販売することをせずに、原料の種類や産地、配合比率等を変えるなどして、異なるロットとして再度検査を実施してください,などとされている。信じがたい話である。

 

放射能の拡散を防ぐため,できるだけ密閉した場所に汚染物を厳重保管して環境を汚さないようにする,という発想はゼロで,8,000ベクレル/kg以下なら適当に捨ててしまえ,そもそも農林水産省の所管ではない(環境省所管)という姿勢がありありと透けて見えている。

 

 加えて問題なのは上記③で,この記述はいったい何なのだろうか。検査して指標値を超えたら,それはもう販売できない汚染物として扱いなさい,というのではなく,「原料の種類や産地、配合比率等を変えるなどして、異なるロットとして再度検査を実施してください」などと「助言」している。グチャグチャいじくって,何とか検査をクリアさせて,販売してしまいなさい,と役所が指導しているわけである。こんなことは監督官庁の言うべきことなのか。「汚染木質ペレット・ロンダリング」とは,まさにこのことではないのか。

 

1-2.(別添資料2)「木質ペレットの当面の指標値の設定、検査方法等についてのQ&A」における「極めつけ」の2つの記述

 この通知の(別添2)にあるQ&Aには次のようなことが書かれていた。特に「3.その他」の「Q20-A20」の記述は,いったい何なのだろうか。これらの記述は,木質ペレットの放射能汚染を過小評価し,危険で軽率な対応へとユーザーを誘導するものであり,撤回されるべきではないかと思われる。それはまるで,農林水産省(林野庁)に,もう一人の枝野幸男(民主党)が存在しているかのごとくである。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以下,引用)

Q19:仮に、8,000 Bq/kg に近い濃度の灰が発生した場合、健康への影響はあるのですか。

A19:家庭用ストーブで発生する燃焼灰の量は少ないため、仮に家庭でのペレットストーブの通常の利用で、8,000 Bq/kg 前後の燃焼灰が発生したとしても、その放射線影響は限られ、直ちに健康に影響が出ることはありません

 参考として申し上げると、家庭用ペレットストーブで仮に8,000 Bq/kg の燃焼灰が発生し続け、年間6ヶ月間にわたり掃除したり、その灰を室内に保管したりした場合の被ばく線量を計算したところ、約3μSvとなりました。この値は、一般公衆に対する通常時の被ばく限度1 mSv/年の1/300程度であり、生活において特段の配慮を必要とするものではありません。

 

Q20:仮に、8,000 Bq/kgの灰をあやまって吸い込んだり、食べたりした場合、大丈夫ですか。

A20:ペレットストーブを使用して発生した燃焼灰を仮に誤って体内に摂取した場合を想定しても放射線による影響は比較的低く、直ちに健康に影響がでることはありません。

 食品摂取による追加被ばくの規制値1 mSv/年を目安にすると、幼児が間違って8,000

Bq/kg の灰を約1.3 kg 吸い込んだり、約10 kg 食べたりした場合の被ばく線量が1mSv

となります(幼児1 2 歳、全量がCs-137 と仮定して計算)。したがって、仮に、ごく少量の灰を吸い込んだり、間違って食べたりした場合でも、放射線による健康影響を心配する必要はありません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・(以下,引用終わり)

 

放射線被曝を過小評価してはいけない。木質燃料を燃やすことからくる呼吸被曝を含め,恒常的な低線量内部被曝の危険性は,何度申し上げても言い尽くせないものがあります。放射線被曝の評価単位である「シーベルト」は,内部被曝の実態を現わさない原子力ムラがでっちあげたインチキの可能性が高いと言えます。そして,私たちは,原子力ムラに牛耳られる政府・農林水産省・林野庁にだまされてはならないのです。

以 上

2013年7月13日 (土)

「ニセモノ仮面王国」の諸侯たちの「仮面」をひきはがせ(「福島県民健康管理調査検討委員会」の2人の清水委員)

前略,田中一郎です。

 

 下記VTRは,先般65日に開催されました第11回「福島県民健康管理調査検討委員会」後の記者会見の模様が録画されたものです。既にご承知の通り,この第11回委員会において,福島県での子ども甲状腺ガンの検査結果の中途状況が発表され,驚くべきことに,悪性の甲状腺ガン,またはその疑いが濃い子どもたちが27人もいることが明らかとなりました。一次検査を終了した子どもは約17万人と,数は増えてきましたが,肝心の甲状腺ガンかどうかを見定めて行く二次検査を終了した子どもは,6月5日発表時点では,まだまだ少なく,二次検査の対象となるB/C判定者のうちの,わずか1/3~1/4を調べただけです。しかし,わずかそれだけの数の検査で,これだけの悪性ガンが発見されているのです。心配にならないはずはありません。

 

 福島第1原発事故前は,子ども甲状腺ガンは,100万人に対して多くて3~4名程度の発生率でした。しかし,今回の検査結果中間報告で見る限りは,その10倍以上もの発生率であることが見て取れ,とても「今までは検査機器の性能がよくなったから,あるいは大規模な子どもの甲状腺検査をしたことがなかったから,これまでわからなかったものが分かるようになった」程度の,まるで検査受検者を小馬鹿にしたような説明ですむ話ではありません。

 

 しかし,下記のVTRをご覧いただければわかりますが,「福島県民健康管理調査検討委員会」及び福島県庁は,委員会メンバー入れ替え後においても(今回が入れ替え後初めてのミーティング及び記者会見),依然として,福島第1原発事故による放射線被曝(特に初期被曝)の影響の可能性を認めようとはせず,従ってまた,当委員会及び福島県庁は,様々な懸念される観点から,先手を打って,子ども達,ひいては県民の命と健康を守る対策を取ろうとはしていないようです。

 

(ご承知のことと思いますが,甲状腺の被曝は,放射性ヨウ素によるもののみならず放射性セシウムによるものも無視できません。そして,原発事故による環境汚染放射能からの被曝の場合には,大人よりも子どもの方がより感受性が高く,深刻な事態に陥りやすいことは,甲状腺被曝においても同様です)

 

 私は記者会見の状況の一部始終をVTRで見て,猛烈に腹が立ちました。事故後2年たった今日においても,まだ,かような言辞を弄して,記者会見で(つまりは県民や国民から)逃げ回る「ニセモノ王国」の「仮面」をかぶった諸侯たちが「福島県民健康管理調査検討委員会」を占拠し,3.11以降,ろくでもない反県民行政を展開する福島県庁とともに,被害者住民とその子どもたちを切り捨てようとしていることを確認させられました。そして,これでは子どもたちが救われない,ダメだ,こんなことをしていちゃダメだ,早く救ってあげないとと,いたたまれない思いがこみ上げ,目がしらが熱くなりました。

 

 清水一雄氏,清水修二氏,この2人は,委員の中でもリベラルな言動で知られる立派な医系ないしは文系の学者として世の中では評価されているといいいます。確かに,形だけの記者会見をやり,さしたる説明責任も果たさず,多忙を理由に逃げるように記者会見場から立ち去っていく「ニセモノ仮面」の諸侯達に比べれば,その後も会場に残って厳しい記者らからの質問に答えようとした2人の姿勢は評価されるでしょう。

 

 しかし,その質問に対するこの2人の回答はいったい何なのでしょうか。たとえば文系の清水修二氏(福島大学副学長)。100mSv以下なら安全であるかのごとき嘘八百が巷に意図的に流布され,さまざまな(本当の意味での)「(安全安心)風評被害」を生んでいる現状を改めるべく,朝日新聞の本田雅和記者の「説明の仕方を少なくとも国際放射線防護委員会(ICRP)のLNT仮説に沿って変える,というおつもりはあるのか」の質問に対して,まるで入れ歯の入れ替えをしているかのごとき「ふにゃふにゃ」答弁を行い,「100mSv=事実上閾値説」のインチキを,学界・学者の一般的見解と県民・国民一般人の受け止め方との差に解消する,いわゆる「安全と安心の違い」論のようなものに矮小化しています。

 

 あるいは,医系の清水一雄氏(日本大学内分泌外科教授)。甲状腺検査機器類が新しく精緻になったから,これまでみつからなかった甲状腺ガンやその兆候が見つかったにすぎない(子ども甲状腺ガンの数が増大しているとは言えない),放射線被曝線量と甲状腺ガンとの関係も,ガンにはさまざまな原因があるから何とも言えない,青森・山梨・長崎での疫学的調査との比較も有意な何かを引き出せるようなものではなく,またチェルノブイリ原発事故後の旧ソ連諸国での子ども甲状腺ガンの発生状況との比較も単純にはできない,などなど,現段階で子ども甲状腺ガンについて心配などしなくてもよい,と言わんばかりの回答を,ながながと,つべこべと並べ立てて行いました。また,朝日新聞の本田雅和記者の「検査結果は本人が情報公開請求をしなければ入手できないような現状を医者としてどう考えるのか」の質問に対しても,はぐらかしのような回答しか行おうとはしないのです。

 

 彼らは,このままでは「ニセモノ仮面王国」の仮面をかぶった諸侯達のままで終わってしまいそうです。そしてそんなことが許されるはずもありません。記者会見場では,フリーの記者を中心に鋭い質問が飛んでいましたが,概して,回答に対する再追及が甘い・弱いことに加え,既存メディアの記者の中には,依然としてボケたような質問や,バカバカしい「ちょうちん質問」をする者もいます。いささか,物足りなさを感じさせる記者会見での記者達の追求ですが,それにさらなる迫力を持たせるためにも,この「ニセモノ仮面」諸侯たちの「仮面」を,徹底してひきはがしてやろうではありませんか。

 

 彼らに必要なのは,求められているのは,「福島県民健康管理調査検討委員」としての「特権」や「保護」や「秘密の厳守」や「安定した検討の場」などではなく,県民・国民に対する説得力のある説明責任であり,それ以上に,一人でも原発事故による放射線被曝での健康被害を出さないための施策を徹底して前広に打ち出して行くということです。子ども甲状腺ガンについて言えば,それは従来型の大人の甲状腺ガンとは違い,ガン化の進行が早く,年齢が若いほどダメージも大きく,そして危険性も高いことを念頭に,早期の発見・早期治療や,これ以上の被曝を避ける・させないための多くの対策などが打ち出されてしかるべきなのです。また,当然のことですが,甲状腺ガン以外の放射線被曝による健康被害,とりわけ恒常的な低線量内部被曝に対する徹底した警戒に基づく対策・施策・被曝医療なども検討されなければなりません(例:甲状腺検査以外に,血液検査,尿検査,心電図検査(セシウム心筋症他),DNA/エピジェネ検査,WBC,バイオアッセイ(歯や髪の毛等)などの定期的セット検査)。

 

 もし,それができないような委員であるのなら,即座に自ら委員を辞任していただきたいものです。リベラルと言われる2人の清水氏についても同様です。

 

*(必見)記者会見~第11回「県民健康管理調査」検討委員会 - YouTube

 http://www.youtube.com/watch?v=ktOjc0zllcQ

 

*「県民健康管理調査」検討委員会 委員名簿(2013524日:新メンバー)

 http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/kentouiinkai-meibo.pdf

 

*「福島県民健康管理調査検討委員会」HP

 http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=24809

 

「福島県民健康管理調査」の結果について

 

 

 
http://onndannka.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/post-6f0b.html

 <別添PDFファイル:田中一郎作成>

(1)レジメ201365日付「福島県民健康管理調査検討委員会」資料より(201367日)

(2)「福島県民健康管理調査検討委員会」資料から(2013年6月9日)

 

 <記者会見VTRにおける記者達の質問:例>

 記者達の質問は核心をついた鋭いものが多く出されたが,それに対する回答のほとんどは「はぐらかし」である。しかし,その回答に対する更なる追及は,ちと甘い・弱い。具体的な回答はVTRを直接ご覧いただきたい。下記には,代表的な質問だけをいくつか例として書き出しておく。

 

<1>説明責任を果たさずに一方的に記者会見を打ち切らないでいただきたい。別途,記者会見の時間を十分にとって,納得のいく説明をしていただけないか。

 

<2>子ども甲状腺ガンの検査結果(今回は中間報告)をどのように評価しているか,一次検査・二次検査終了者のそれぞれの数字に対してどうなのか,2011年度・2012年度の違いや地域(3.11時点居住地)での相違を踏まえての評価はどうか,現状は子ども甲状腺ガンの多発と言えるのか,福島第1原発事故との関係はどうか,基本調査の線量評価とのマッチングはしないのか

 

<3>秘密会などの経緯から委員の入れ替えが行われたが,①弁護士への委員就任(再)要請をなぜしないのか,②責任重大の事務局が変わってないのはおかしいではないか

 

<4>妊産婦の異常出産の現状を福島県の過去の状況と比べないのか

 

<5>血液検査結果は性別・年齢別だけでなく地域別・線量別に出さないのか

 

<6>甲状腺検査をしているのが技師で受検者の質問に答えられない人が多いが,どう改善するのか,福島県ではなく,国が引き受けて体制を充実させるべきではないのか

 

<7>100mSv以下では健康被害は認められない=心配ないという説明や表現はおかしいので,どう変えるのか(上記)

 

<8>環境省の青森・山梨・長崎の疫学的調査(4,500人)では44人の二次検査が必要とされたが,この調査結果と比較してどうか,また,この44人の二次検査は行わないのか。母数の数が少ないし年齢調整を行っていないので,甲状腺ガンなどの比較資料として使うのは難しいのではないか

 

<9>甲状腺ガン検査の対象者年齢を引上げないのか(年齢が上がるにつれて甲状腺ガンの発見数が増える傾向あり)

 

10>嚢胞の発見数に対する所見は,それは専門家としての根拠のある見解か,それとも感想か

 

11>甲状腺ガンの発見人数についてどう受け止めているか

 

12>大規模な子ども甲状腺ガンの疫学的調査を長期にわたってやることについて,やるべきだとおっしゃっているので,国に対して今後要請するのか

 

13>発見された甲状腺ガンの数は統計学的に多発ではないのか。統計学的な考察や判断をまずやって,多発かそうでないかをはっきりさせてから,その原因究明に向かうのが筋ではないのか

 

14>鈴木真一氏(福島県立医大)の話では,チェルノブイリでは子ども甲状腺ガンの潜伏期間は4年としているが,スクリーニングの機械がよくなっている現状では,この4年はもっと早くなる可能性はありますね?

 

15>「福島県民健康管理調査検討委員会」は3か月に1回しか開催されず,記者会見も不十分なまま打ち切られている。改めて,別の場を設けて説明会開催をお願いしたい。

 

16>甲状腺検査の結果の本人への還元の仕方がおかしいのではないか(何故情報公開請求などをさせるのか),医者として,こんなことが許されるとお思いか,モラル的にどうか

 

17>甲状腺ガンの発生と放射線被曝線量との関係をどう考えているのか

 

18>国連人権理事会のアナンド・グローバー氏の特別報告(日本政府への勧告)をご存じか,それをどう生かすのか,清水一雄氏は「知らない」と答えたが,その勧告は「福島県民健康管理調査検討委員会」の委員への皆さまへお配りしたというNPOがあって,それに関する要望書まで出して記者会見もしている,委員会で配布されていないのか

草々

 

2013年7月 9日 (火)

原発の再稼働を許さない全国集会(2013年7月8日)

前略,田中一郎です。

 昨日(7/8),北電,関電,四電,九電の各社は,多くの市民が反対・抗議する中で,5原発・10基の原発再稼働の申請書を原子力「寄生」委員会に提出いたしました(東京電力は柏崎刈羽原発の申請を見送り)。他方では,原発再稼働に反対する市民らが中心になって,参議院議員会館101において,記者会見並びに「原発の再稼働を許さない全国集会」,及び原子力「寄生」庁交渉が行われました。北は北海道の泊原発から,南は鹿児島の川内原発まで,地域で原発の稼働に反対している方々が参集し,原子力「寄生」委員会・「寄生」庁が昨日より開始した,いい加減極まる「新規制基準」に基づく原発再稼働へ向けた「審査」についての抗議記者会見が行われ,その後,全国各地からの状況報告,続いて今後の再稼働阻止行動のあり方などが話し合われた後,原子力「寄生」庁との交渉となりました。当日の参議院議員会館は,参議院選挙運動期間中ということで,ほとんど人がいない閑散とした状態でした。

 集会では,
原子力「寄生」委員会が定めた新規制基準がそもそもおかしい,そのおかしな規制基準を,最初から満たしていないことが明らかな原発が4社・5原発・10基も再稼働申請されている=こんなものをなぜ受け付けるのか,つき返せ,福島第1原発の事故の収拾もできておらず危険なままで,被害者の救済もしないで放置状態,かつ福島第1原発事故の教訓もほとんど活かされていない,各原発の立地地域自治体による「原子力防災計画」が実効性を持たない「単なる作文」にすぎない。このまま原発が事故を起こせば,多くの立地地域住民は逃げることもできず,放出された大量の放射能によって猛烈な被曝を余儀なくされ「棄民」されてしまう。要するに過酷事故が起きたら地域住民は「死ね」ということだ,基準も何もないプルサーマルが同時申請されている,危なくて見ていられない,など,多くの懸念が出されていました。

 詳しくは,当日配布された別添資料をご覧ください。

 一方,原子力「寄生」庁の方は,交渉の場において,あいも変わらず「個別原発の審査の中身については,具体的なことを申し上げられない」と,いつものごとく終始一貫して「のたら,くたら」を繰り返し,福島県から避難されておられる被害者の方から「あなた方原子力「寄生」庁の姿勢はあまりに不誠実である」と,怒りの叱責をかっておりました。

 具体的に出された原子力「寄生」庁への質問についても,たとえば,

(1)最近,政府の地震調査研究推進本部(推本)が九州の活断層調査結果を発表したが,そこでは川内原発周辺に新たな活断層が見つかり,九州電力の活断層調査があまりにずさんでいい加減であると批判されていた,地震や津波,あるいは原子炉構造などについて,シロウトばかりの集まりである原子力「寄生」委員会・「寄生」庁では,原発再稼働の審査はやり切れないはずで,今後,こうした専門家の意見はどうくみ上げるのか,の質問に対して,原子力「寄生」庁は「専門家の意見をどういう形で求めて行くかは未定だ」と回答した(
 そういう状態で,何故,審査の受付を開始するのか,と怒りの疑問が多発)。

また,川内原発では,火山活動による火砕流の危険が現実的であることが判明しつつある。地元市民団体の人の話によれば,原発敷地のすぐそば数十メートルのところに火砕流の痕跡のようなものまで発見されているというのに,九州電力は敷地内には火砕流の痕跡はないとしてこれを無視,火山の心配は無用だとしているという。しかし,原子力「寄生」庁の役人達は,このことも知らなかったし,知ろうともしていない様子だった。


(2)伊方原発で事故が起きれば。佐田岬半島にある原発の西側に住む住民数千人は逃げられないが,どうするのか。また,高浜や大飯の原発が地震・津波に襲われれば,唯一の海沿いを走る国道は海水の下に沈んで使えない,山越えの道路もがけ崩れ等で使えない,住民はどうやって逃げるのか。また,防災計画では事故を起こした原発に向かって一目散に走って駆け抜けろ,となっているが,こんなものが「防災計画」と言えるのか,との厳しい質問に,「防災計画は原発再稼働の法的条件ではない,政府は自治体がつくる防災計画のお手伝いをするだけ」(田中俊一原子力「寄生」委員長が「防災計画の整備は必要不可欠」などと言っていることは単なるリップサービス)と,完璧な逃げの姿勢に終始した。(会場参加者が激怒,ヤジと怒号)

注:原子力「寄生」庁によれば,防災計画を策定すべき原発30km圏内の自治体のうち,道府県は福井県を除いて全部が策定済み,基礎自治体の市町村では,136自治体のうち114自治体が策定を終了(未了は22自治体:20136月末)とのことだった。しかし,策定されたとされる防災計画のほとんどは「実効性」をもたず,実際に原発に過酷事故が起きれば,ほとんど住民は逃げることができないまま,猛烈な放射能の被曝に曝されることとなる。地震・津波の災害と原発事故が同時並行で起きれば,事実上,お手上げ状態であることが,この防災計画の中身が顕著に示していると言える。また,福井県の原発での1つの過酷事故は,若狭湾沿岸の15の原発・核燃料施設の「将棋倒し」を招き,全機が冷却不能の「恐怖の死神ゾーン」となる可能性や,放出された放射能によって琵琶湖の水が汚染され,関西地区の飲料水がなくなる懸念も出されていた。

(3)原子力「寄生」庁は,大飯原発再稼働までの「審査」期間中に,関西電力と80回以上にわたる「裏談合」を繰り返していたにもかかわらず,この「裏談合」については「非公開」とする姿勢を変えないと強弁,返す刀で,福島県民をはじめ,福島第1原発事故で被害を受けた人々や,審査に係る原発の立地地域住民の声を聞く場を設けるべきだとする声に対しては,回答せず。

(4)免震重要棟や防潮堤の確保などについては,今回の新規制基準見直しの目玉的な重要要件であり,猶予期間も設けずに即時適用とされているにもかかわらず,これらがなければ再稼働はあり得ないのだな,との確認質問に対しては,「機能的に見ているから,想定される目的が達せられるのであれば,必ずしも設置が絶対条件となるものではない」などと答弁した。このままでは,大飯原発同様,重要免震棟も防潮堤もないまま再稼働が認可されかねない様子がうかがえた。(参加者全員呆れてしまった)

(大飯原発3,4号機では,隣の1,2号機の建屋の中にある面積の狭い会議室が重要免震棟の代わりとされた。代わりとなれるはずもないが,それを原子力「寄生」委員会は認めて運転継続にGOサインを出した。福島第1原発事故の際は,免震構造でつくられていて放射能が中に入ってこないように設計されていた重要免震棟がなかったら,ほとんど事故対策が打てず,大変な事態に陥っていたと言われている。その「原発の命綱」とも言える免震(放射能遮断)重要棟を,大飯原発でやったように,狭い会議室で代替して「安全上,重要な問題はない」などとしていて,ほんとうにいいのか。また,防潮堤については,多言を要しないだろう)

(5)ウラン原子炉でプルトニウムを燃やすことにより,格段に原子炉としての危険性を増すプルサーマルについては,特段の新規制基準はない状態のまま,恣意的な審査を繰り返す様子がうかがえた。今から10年以上も前の原子力安全委員会時代の古文書を参考にするだの,しないだのというやりとりがあったが,ほとんど無意味。福島第1原発3号機事故では,プルトニウム燃料が核爆発を起こしている可能性もあるとされているにもかかわらず,事故3号機の検証もしないで,プルサーマルも同時並行で認めて行きそうな雰囲気だった。

 また,プルサーマルについては,使用済み(MOX)燃料の後始末をどうするのかも決まっていない(質問事項)。経済産業省の若い役人が交渉の場に同席していて,再処理方針を続けます,などとふざけたことを繰り返し発言して,さっさと引き上げて行った。プルトニウムが多く含まれている使用済みMOX燃料は,原発のウラン使用の使用済み核燃料に比べると,格段に汚い=扱いにくい放射能がたくさん含まれている,にもかかわらず,その後始末を決めないで,いい加減なままプルサーマルを続けて行くという。プルサーマルは,経済的に見ても,ウラン燃料原発に比べてかなりの高コストである。いったい何のために,そのような馬鹿なことを続けるのか。

 まだ,個別問題ではいろいろあるが,それらを総じて申し上げれば,もはや原子力「寄生」委員会・「寄生」庁は,福島第1原発事故前の原子力安全委員会・原子力安全保安院の時代と同レベルか,場合によってはそれよりもひどい状態に転落しつつあり,福島第1原発事故の教訓を踏まえて厳しく規制するなどというのは,単なる紙に書かれた「お題目」か,原子力「寄生」委員の「リップサービス」にすぎない状態にされようとしている。

 大飯原発がその典型的な事例となって危険なままで「先駆けし」,続いて今回,最初から新規制基準を満たさないことが分かっているのに再稼働申請された5原発・10基が,その後を追いかけて行く。そして,更にその後,国民が福島第1原発事故を忘れた頃に,法定寿命40年を超えた老朽化原発のなし崩し的稼働継続や,全く稼働の意味をなさないにも関わらず,危険極まりなくて,放射能丸出しの核燃料サイクル施設の再稼働が続いていくに違いない。

 日本列島は地殻変動期に入り,太平洋側のみならず日本海側や北海道・沖縄も含め,いつ巨大規模の大地震・大津波が起きてもおかしくない時期に突入した。狭い国土に50基以上の原発・核燃料施設をならべ,代替手段ならなんぼでもあるのに,たかが発電のために危険極まりない原子力=核分裂エネルギーをもてあそび,福島第1原発事故の事も忘れ,事故被害者は切捨て,いい加減な規制基準でさえも棚上げにしながら,これからやっていくのだという。その旗振りの親方=自民党と安倍晋三達こそが,(間一髪で最悪事態を免れた)福島第1原発事故を引き起こした張本人達ではなかったのか。日本の原発は「世界一規制の厳しい安全な原発」という「虚偽表示」された「世界一危険な原発」に生まれ変わろうとしている。

 原子力ムラとの「最終戦争」は「生き残り勢力」が劣勢のまま,いよいよ滅亡へ向けてのカウントダウンに入った。原子力ムラとの妥協などありえず,また,自分だけが原発・核燃料施設と無関係であることもできない。もしもの事故の際に逃げる場所も存在しないし,逃げたところで,その後,放射能汚染列島で生活し続けることも出来なくなるだろう。まさに,彼らに放射能まみれにされて殺されてしまうのか,彼らを社会的に葬り去るのかの,2つに1つの「最終戦争」が激戦となってきた。我々一人一人の命の行方を決めるのは,まさに我々一人一人なのである。

 原子力ムラを撲滅・一掃せよ。それ以外に,我々が生き残る方法はない。

 <録画>
(1)2013070008 UPLAN 原発の再稼働を許さない・記者会見&全国集会
 http://www.youtube.com/watch?v=14EDdm_un78

(2)20130708 UPLAN 原発の再稼働を許さない!規制庁交渉
 http://www.youtube.com/watch?v=8qbF4caynF0

 <別添PDFファイル:添付できませんでした>
(1)原発の再稼働を許さない全国集会(201378日)
(2)原発の再稼働を許さない!7・8声明(201378日)

(3)原子力規制を監視する市民の会ニュース「再稼働への申請」(2013.7.8

(4)「国民の多数は原発再稼働を望んでいない」(阻止ネット 2013.7.8
(5)5原発10基再稼働申請(1)(東京新聞 2013.7.8夕刊)
(6)5原発10基再稼働申請(2)(東京新聞 2013.7.9
(7)5原発10基再稼働申請(3)(毎日新聞 2013.7.8夕刊)
(8)5原発10基再稼働申請(4)(朝日新聞 2013.7.9

*例えば201379日付東京新聞朝刊1面には次のように書かれている

 http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013070990071328.html

(1)地震・津波の想定について

a.北海道電力は泊原発の想定津波の高さを従来より2.5m低くした

b.関西電力大飯原発34号機では,①周辺の3つの活断層の連動を考慮するよう原子力「寄生」委員会より指示されていたが,今回申請時は従わず2連動で計算(9月までの運転継続時は3連動で計算),②津波の高さは,海底地滑りによる従来より高い値を想定せよと原子力「寄生」委員会に指示されたが,今回申請時はそれを無視して従来のままとした。

c.残りの今回申請原発も,地震・津波の想定は新基準前とほぼ同じ水準

(2)今回の4電力・5原発・10機以外に,早期申請が明らかな2原発(玄海・柏崎刈羽)を加えた7原発の周辺62市町村の原発事故への備えについてヒヤリング他

a.原発の新規制基準は,地域の防災体制が整っているかどうかを審査する仕組みになっていない(原子力「寄生」委員会が逃げている)。

b.避難計画は,63%の39市町村がまだ策定していない。

c.住民がどこのどの施設に避難するかは,65%の40市町村が詰め切れず

d.福井県や鹿児島県は,住民避難先を県内に限定するというおかしなことをやっている。
草々

2013年7月 7日 (日)

放射性物質トリチウムと青森県六ケ所村再処理工場( 東北地方が今度は北から原子力ムラによって「毒殺」されようとしている)

前略,田中一郎です。

 

福島第1原発の海に近い掘削穴などから高い濃度のトリチウムが検出され,注目されています。しかし他方では,青森県六ケ所村の再処理工場が,(仮に何ら事故やトラブルを起こすことなく正常に運転されていたとしても)トリチウムを無制限に垂れ流す最悪の核燃料施設であることは,あまり有権者・国民の間では知られていません。下記はそれに関して書いております。

 

1.原発のトリチウムの排出規制値について

 新聞情報,及び伝聞情報によると,日本における原発のトリチウムの排出規制値は下記のようである。

 

 水になっているトリチウム            60ベクレル/cm3

 一般化合物になっているトリチウム   40ベクレル/cm3

 有機化合物になっているトリチウム   20ベクレル/cm3

 

 私は上記の排出規制について,次のような問題があると考えている。



(1)トリチウムの規制値が政府各省のHPのいったいどこに掲載されているのか全く分からない。私のこの件に関する情報源は上記に書いた通りなので,本当にそうなのかどうかの確認ができていない。また,これらの法的な根拠も明らかではない(原子炉等規制法か?)。

 

 
  ⇒ 親切な方から教えていただきました。この施行令を一般の人が一見しただけでは,何のことなのかは分からないでしょう。文部科学省は,この施行令を一般向けに解説したものをHPに掲載すべきです。

 

<根拠法>

 文部科学省(放射線障害防止法施行令)「放射線を放出する同位元素の数量等を定める件」

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/anzenkakuho/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2012/04/02/1261331_15_1.pdf

(法律の根拠は「放射線障害防止法」(「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」)で,その施行令に規定があるようです。この告示の14条に排水基準について書かれていますが,実際の濃度は別表第2に書かれています)。

 

(2)諸外国のトリチウムの排出規制値がいかほどなのかも日本政府は明らかにしない。だいぶ前に厚生労働省がEUとアメリカの放射性物質の飲食残留規制値を公表していた記憶があるが,そこではベータ核種一般とされていて,トリチウムだけの規制値ではなかったように記憶する。

 

(3)仮に上記の規制値が日本政府の打ち出している規制値だとして,この経験科学的根拠はどうなっているのか? 一般に化学物質や重金属の毒性であれば,マウスなどの動物実験をやり,そこでおおよその「しきい値」 (この値以上の濃度になれば危険性が顕在化・広範化するという一定の値)  のようなものを仮定して,それに安全バッファとして1/100をかけて規制値とする方法がとられる。しかし,放射性物質の規制値の場合は「しきい値がない」ことを口実にして,この重要な「安全バッファ」が全くない状態で規制値が決められている。しかも,その規制値の数字には何の「経験科学的根拠」も示されないのである。

 

 いや,むしろ,おそらくは,経験科学的な根拠は示せない=実証的な裏付けがない,のに違いないのだろう。およそ,トリチウムに限らず,放射性物質の危険性は,人間の放射線被曝リスク回避のために,客観的にきちんと研究・検証されたことなど一度もない,と言っていい。これでは,インチキおじさんがやっている「もじゃもじゃ占い師」の「これこれ危険値」と大して変りはしない。まさに似非科学だ。

 

 トリチウムが放出するベータ線(電子線)のエネルギーが,他の核種のベータ線やガンマ線のエネルギーなどと比較して小さいし,トリチウムは水の形で存在する場合が多くて,体内に入っても再び体外に出やすい,などの理由から,比較的危険性は低い,というような説明が新聞等でなされている。しかし,その比較的小さなエネルギーであっても,人間や生物の体をつくる細胞やDNAや生命秩序を破壊するには十分すぎるくらいに高エネルギーである。また,体内に入ったものが出て行きやすいとしても,毎日のように入ってきたら,トリチウムは常に体内に存在することになる。しかも,福島第1原発や青森県六ケ所村の再処理工場から垂れ流されるトリチウムは,他のベータ核種(放射性ストロンチウム等)などと一体になっていて,放射能MIX液のようなものである。安全安心どころの話ではない。トリチウムだから比較的心配はいらない,などというのは,経験科学的な実証根拠を欠いている一種のデマにすぎない。

 

(福島第1原発の敷地で検出されているトリチウム他のベータ核種を高濃度で含む汚染水の,トリチウム以外の放射性核種の濃度はいったいいかほどなのか,また,濃度だけでなく,放射能総量はどれくらいなのか。発表もされなければ,報道もされない。どうしたの???)

 

(4)上記規制値の単位にご注目されたい。単位は「/cm3」である。本来は「/m3」でなければならないはずなのを,見かけ上,「/cm3」にして数字が小さく出るように仕掛けがしてある。「/cm3」を「/m3」に変えるには,1m=100cmだから,100cm×100cm×100cm=100万倍すればいいということで,上記はそれぞれ上から順に,6千万ベクレル,5千万ベクレル,3千万ベクレルである。そして,原発から排出されるトリチウムを含む水の量は,おそらくトン単位で,それもすさまじい量のトン数なので,実際に排出されるトリチウムの量たるや猛烈な量ということになる。

 

こんな量のトリチウムを「これ以下なら安全です」などと称して環境中にばら撒いているなどということは,私は信じがたいことである。原発周辺で白血病が増えたり,健康障害が他地域より多くなるのは,言ってみれば当たり前のような気がしてならない。そもそも排出の規制値が,単位当たりいくら,の形になっていることがおかしい。原発廃炉までの総量規制を入れよ。

 

(5)トリチウムについて少し考えてみると,原発・原子力の出鱈目さ加減がくっきりと浮かび上がる。原子力ムラよ,いい加減にしろ,この馬鹿ども,である。

 

2.青森県六ケ所村の再処理工場について

 以前にも申し上げましたが,再度,青森県六ケ所村の再処理工場について,その桁違いの危険性=放射能垂れ流し放題について申し上げます。

 

(1)原発には放射性物質の法的な排出規制値はあるが,再処理工場など,核燃料サイクル施設にはない。あるのは青森県との安全協定という「口約束」だけで,それに違反しても,何の罰則もおとがめもない。文字通りの「原子力無法地帯」である。にもかかわらず,「マスごみ」どもは,この重大な原子力ムラ代理店(日本)政府の出鱈目を国民・読者の前に明らかにしようとはせず,批判報道も行わない。まさに「原子力翼賛社会」である。

 

(2)トリチウムの排出は,下記にもある通り,再処理工場の廃液排出パイプをむつ小川原港の沖合3kmの海中にまで延長し,そこから何の放射能除去対策もしないまま,ドバーと海の中に,大量の他の放射性物質・核種とともに放出される。まさにこれは,海に対する殺人行為=海洋環境破壊犯罪の何物でもない。いわば,青森県六ケ所村の再処理工場は,毎日が福島第1原発事故状態ということになる。放出される廃液に含まれる放射性物質はトリチウムだけでなく,プルトニウム,ウラン,放射性ストロンチウム,放射性セシウム,炭素14などなど,いろんな危険な放射性物質がよりどりみどりである。いわば「海の毒殺カクテル」だ。

 

 また,放出されるトリチウムの量=218614237000万ベクレルにしても,その他の放射性核種にしても,その数値に根拠などありはしない。いい加減な仮定の上で計算してはじき出されたもので,それが実証的に確認されるわけでもない。ともかく天文学的な量の放射能が,毎日,毎日,海に垂れ流されるということである。

 

 そして,許しがたいことに,事業者=日本原燃も,規制すべき政府や青森県も,放出されるトリチウムを含む大量の放射性物質は,海水によって薄められて拡散するので心配はいらない,排出に伴う県民の平均被ばく線量は,ほんの僅かばかり増えるだけで無視できる量である,と説明している。

 ♪♪うみはひろいな,おおきいな,ほうしゃのう,ながしても,うすまるぞ♪♪ と歌っているようなものだ。

 

 ぞっとするような話である,上記のようなことが許されるのであれば,太平洋に向かっては,どんな有害物質も,ほぼ青天井に垂れ流していいことになるではないか。これがまともな企業,あるいは政府や自治体のやることか? 言うことなのか? 青森県民はこれを知っていて黙っているのか? 

 

 そしてもう一つ許しがたいのは,排出口があるむつ小川原港沖合は,北方から親潮が流れてきていて,おそらく海に排出された大量の放射能は,この親潮に乗って南へ,つまり三陸海岸沿岸・沖合へと流れて行くということである。そこは,世界でも指折りの好漁場であり,日本で最も漁業が盛んな地域である。しかも,ついこの間の東日本大震災で大変な被害にあい,更にまた,福島第1原発事故による海洋汚染で,南から放射能汚染の危機にさらされているところである。現下,多くの被害者の方々が,悲しみと苦しみの中で,必死に再建・復興に尽力している,その地域の海に向けて,地域復興の土台となる海に向けて,この青森県六ケ所村の再処理工場は,大量の危険極まりない放射能を解き放つのである。「北方のトラ,南方のオオカミ」,三陸地方の方々は,理不尽極まる放射能に包囲されようとしている,こんなことは絶対に許すわけにはいかない。

 

(3)青森県六ケ所村の再処理工場から放出されてくる放射性物質は,原発が放出する放射性物質とは少し違うものも大量に出てくる。その代表格が,①トリチウム,②クリプトン85,③炭素14,④放射性ヨウ素129である。①と②の半減期は8~12年(うろ覚え)だが,炭素14は約5700年,放射性ヨウ素129は約1600万年である。再処理工場が排出するこれら4つの放射性核種の危険性については,故高木仁三郎氏の著書などを参照されたい。

 

特に付記しておくべきことは,上記のうち,①と②は,まったく除去の処理もされずに,発生したものすべてが環境中にばら撒かれることになっているということである。その量たるや気の遠くなるような量で,たとえばクリプトン85は,煙突から大気中にばら撒かれ,そして「クリプトンは不活性ガスだから心配いらない」という全くインチキの説明がなされている。ここでも上記のトリチウムと同じで,♪♪空は広いな大きいな♪♪ で,どうってことないでしょ,ということにされている。

 

(4)海に垂れ流されたトリチウムなどの大量の危険極まりない放射性物質は,容易には拡散などしない。海中で固まりとなって,海流に乗って移動し,その間に,海洋生物の体内に取り込まれ,食物連鎖を通じて濃縮・蓄積され,そしてまもなく人間の食卓にブーメランのように返ってくるのである。「海にツバする」愚かものには「天にツバ」した時のように,そのツバが戻ってくるのだ。

 

(5)青森県六ケ所村の再処理工場は,放射能の無限の排出という狂気の上に,まもなく再開されようとしている。狂気の次に来るのは「永遠の死の世界」である。

早々

 

2013年7月 1日 (月)

「原子力翼賛社会」とはどういうものか?

みなさま,こんばんわ

今日は,私がよく申し上げている「原子力翼賛社会」って,いったい何? どんなもんでんねん? これについて,可能な限り分かりやすく論じたいと思います。下記は,それのトライアル版です。自分で読み返してみて,作文のつたなさを強く感じますが,他方で,能力の限界も感じますので,さしあたりこれで失礼いたします。

 

まず,「翼賛」の「翼」と「賛」に注目してみましょう。

「翼賛」の「翼」とは文字通り「つばさ」です。あれが欲しい,これが欲しいの「欲」ではありません。また「賛」とは「賛成」の「賛」であり,漢和辞典で調べましたら「すすめる,たすける,さあさあと前に押しすすめる,わきから励まして力を添える」などと書かれておりました。

 

「翼賛」を,その漢字の意味だけから類推するに,広げた翼のようになって,あるいは翼を広げたような喜びと賛同の力を開花させて,さあさあと前に押しすすめる,わきから励まして力を添える,といったくらいの意味だと推測されます。ちなみに,国語辞典(広辞苑)では「力をそえて(天子などを)たすけること」とありました。

 

「翼を広げる」で,まず私が思いつくのは,鳥達の翼を広げた姿です。下記のサイトをご覧ください。

 

*【可愛い!】ちょっと変わった鳥たちのプロポーズ【何これ?】 - NAVER まとめ

 http://matome.naver.jp/odai/2133544565637968701

 http://blogs.yahoo.co.jp/samberasam51/39588130.html

 

でも「原子力翼賛」の「翼賛」って,この鳥達のかわいらしくも,ちょびっとほほえましい「求愛」とはちょっと違うように思います(原子力に求愛する変態がいないわけではありませんが)。

 

では,こっちはどうでしょう?

*エリマキトカゲ - YouTube

http://www.youtube.com/watch?v=soiaP_5rjJI

 

ガニマタで,翼のような「えりまき」を精一杯広げているのは,外敵から身を守るための威嚇行為なんだそうです。我々はおもしろおかしくトカゲ君を見ているのかもしれませんが,トカゲ君にとっては命にかかわる一大事で,おそらくは敵と思わしき相手を威嚇しておいて,すきを見て一目散に逃げてしまうのでしょう。

 

これは,ひょっとすると人間様の「翼賛」に似たところがあるかもしれません。でも,トカゲ君が威嚇する「敵」は,はっきりと物理的に明らかであって,トカゲ君の勘違いの場合もないことはありませんが,彼の経験則からいって,十中八九彼の命にかかわる「敵」であり,しかも,この威嚇は相手をやっつけるよりも,自分の身の安全をはかることに焦点が絞られています。

 

よく,外敵に対して国民は一致団結を,などと軽率に叫ぶ政治家がいますが,それとエリマキトカゲは似ていなくもありませんが,しかし,トカゲ君の方がもっと純情・率直で,文字通り,自己防衛の本能で動いているだけです。他方,政治家の方は,たいていの場合がろくでもないことを念頭に置き,「外敵」なるものをでっちあげておいて,自分の政治目的を達成するために国民を煽っている場合が多いのです。そして,そういう政治家は,たいていが「イザ」となると,エリマキトカゲ君のようなガニマタで一目散に逃げてしまうのです。数年前の第一次安倍内閣の時に,参議院選挙に負けて思うように行かなくなり,入院を口実にして総理大臣を辞任した安倍晋三などはその典型でしょう。エリマキトカゲにも劣るろくでなしです。

 

つまり,鳥やトカゲたちの「翼賛」は,人間のものとは違って,それはそれは美しくも,あるいは至極まっとうな生き残りのための自然な態度であって,納得感はわいても,嫌悪感や不快感はありません。でも,人間社会の「翼賛」はどうでしょうか?。

 

上記で見た国語辞典の解説「力をそえて(天子などを)たすけること」で,「天子」とは「天使」(エンジェル)ではなく「天子」=「天命を受けて人民を治める者,国の君主,天皇」です。しかも,そこには「天子など」と「など」が付いています。

 

話が広がり過ぎるので「天皇論」はやめておきましょう。でも,アジア太平洋戦争(第二次世界大戦)の前は,国語辞典にあるような「力をそえて天子をたすける」ことが全ての国民に義務付けられ,押しつけられ,そして他方で国民の方もそれが当然だ,そうするのが国民としての使命だ,喜びだ,などと思っていた節があります。ちなみに,当時は国民とは言わずに,臣民と言っておりました。

 

実は「翼賛」の特徴は,「翼賛」に圧倒的多数の国民が参画し,しかもそれが,「上からの押し付け」ではなく,「下からの自発」「多くの国民の積極的な参加・賛同・賛美・協力」に支えられているということなのです。私が「フクシマ・エートス」を「原子力翼賛」の典型的な事例だと申し上げるのは,「翼賛」という社会現象のこういう特徴にその根拠があります。

 

そして,今は,この「天子などを」のところが「原子力」なのです。何を翼賛するかは,人でもいいし,王様でも天皇様でもいいし,物でも事でもいい。大半の国民が,翼を広げてそれを讃え,力をそえてそれを=原子力をたすける,そういう状態です。

 

ここで,ちょっと素朴に考えてみましょう。「翼賛」するものは「何でもいい」と申しました。では,どのようなものでも「翼賛される」ものになり得るのでしょうか。たとえば,川原に転がっている石ころを大半の人達が「それを讃え,力をそえてそれをたすける」などということがあるでしょうか。あるいは,田んぼによくいるアマガエル,このカエル君を「それを讃え,力をそえてそれをたすける」などということがあるでしょうか。もちろん,そんなことはあり得ません。

 

つまり「翼賛」されるものは,なんでもいいのではなくて,政治的なものであり,もっといえば「権力」というものの象徴的なものでなければならない,社会的にシンボル化されるものでないと「翼賛」の対象にはなりにくい,ということです。「権力」なんて言われてもわからん,という方には,国語辞典をお勧めします。広辞苑には次のように書かれています。

 

「権力=他人を押さえつけ支配する力,支配者が被支配者に加える強制力」

 

支配者とは,安倍晋三,経団連,霞が関の高級官僚,アメリカ,そして電力・原子力産業くらいをイメージすればいいでしょうし,被支配者とは我々のことです。強制力なんか受けてない,と思っている人は,国会議事堂の前に行って,警察が歩道の隅っこの方で抗議行動をやれと言って,大ぜいの人達を押しこめているのに逆らって,車道の真ん中に行ってみたら「強制力」の何たるかがよくわかると思います。デモ行進の時に警察の指示に逆らうことでも,よく理解できます。要するに,警察の指示に徹底して逆らってみれば「権力の強制」はよく見えるということであり,つまりまた,警察とは「権力の強制暴力」であることが身にしみて体感できます。

 

(言い換えますと,みなさま・我々の「自由」とは,権力が強制をしている「枠」の範囲内で「自由」である,ということです。そして,現代社会では,これに「経済的強制」が加わります。たとえば,避難したい人は勝手に避難・移住しなさい,それは「自由」ですと,どこぞのクソ裁判官は判決でほざいておりましたが,定住せよ・避難や移住は許さん,との「経済的強制」があって,たいていの人は自由に避難・移住はできません)

 

それはともかく,「翼賛」の対象になるものは,何でもいいとは言っても,ただの石ころやカエル君ではだめで,やはり,政治性を帯びたもの,権力の象徴となるようなものでなければならないのです。

 

それでは,何故,こんな,よく考えるとちょっとおかしな「翼賛」などという人間の集団的行動が生まれてきてしまうのでしょう。どうして,みんなで,「天子」や王様や,どうも胡散くさそうな「原子力」なんぞを「力をそえてたすける」などということをしてしまうのでしょうか?

 

ここがポイントです。なんでやねん。「翼賛」なんか,なんでしまんねん?

「放射能,みんなで浴びれば,こわくない」・・・・・ウソや,でも,なんで?

 

今から80年くらい前に,ヨーロッパにE・フロムさんという,鋭い視野を持った偉い学者さんがいて,このフロムさんは,あの犯罪ファシスト集団のナチスドイツとヒットラーが,ドイツの大衆の絶賛を受けて台頭してきた歴史を振り返り「自由からの逃走」という本を書いています。ちなみに,ファシストとはファッショな状態を創りだす人くらいの意味で,ファッショとは「束になる」「束にする」ということです。つまり「国民を束にしてしまう人達」ということでファシストです。

 

「自由からの逃走」=自由から逃げる,なんか変ですね。学校で習った歴史の話では,ひどい抑圧体制や専制政治体制などの不自由から逃げる・逃走する,というのはよく出てきましたが,その逃げる先は「自由」な所だったはずです。誰からも束縛も抑圧も受けない自由な天地,それを我々の先祖の人々はどれだけ心からその実現を願ったことでしょう。たとえば,ミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」にも,ナチスドイツに併合されるオーストリアから逃げ出す家族達がいましたね。行先は,自由な隣国・スイスでした。

 

日本でも,アジア太平洋戦争とその少し前の時代は,軍人やその協力者たちが,何かと一般庶民の日常生活にがちゃごちゃと干渉し,天子様(天皇)への忠誠を大義名分に,不自由生活を押し付けていたものです。人間は,第一義的には,何よりも不自由を嫌って,自由へ向かって逃走したり,自由を獲得せんと闘ったりしていたのではなかったのでしょうか。それが「自由から逃げる」??? 何で?

 

Eフロムさんの説明はこうです。

「○○からの自由は,たしかに(ワイマール憲法)でかなりの水準で達成された。ドイツ国民は自由になった」(ワイマール憲法を日本国憲法と置き換えれば,そのまま日本にも当てはまります)。

 

「でも,その幸せはや高揚感はいつまでも続かず,自由になったその時から,人々は自分達のこと,自分達の社会のこと,人間関係のあり方のこと,政治や経済のあり方のことなど,たくさんのことを,今度は自分で,自分達で判断して決めなくてはならなくなった。不自由であった時代は,そんなことは,誰か「偉い人」が決めてくれて,それを自分が気に入ろうが,気に入ろまいが,それに黙って従う他なかった。他人が決めてくれて,従う他ないのだから,考える必要もなければ,悩む必要もなく,ただ,好きか嫌いか,うれしいか悲しいか,気持ちいいか悪いか,それだけを感じるだけでよかった(時折,陰口もたたきながら)。でも,今度は,押しつける人がいなくなると同時に,決めてくれる人,考えてくれる人もいなくなったので,代わって自分で考えて決めていかなきゃなんない,しかも,誰も彼もが同じように考えるわけではない中で,ああでもない,こうでもない,が繰り返されるのを我慢して,今まで思いもしなかったようなことまで,ぜーんぶ自分達で決めていかなきゃなんない,そんなことになっちゃった。良くも悪くも,今までは「安定」していたのが,たちまち「不安定」な状態になってしまった」

 

「しかもしかも,そんなこんなで苦労してやってみたはいいが,ちっともうまくいかない,うまくいかないどころか,自分の生活も含めて毎日がどんどん悪くなっていくような気がしてならない。よくわからないが,何か悪魔でもとりついているような,そんなしんどい社会情勢が一向に収まらない。喧騒に,争いごとに,不運が重なって,待ち望んでいたはずの自由が,だんだんと疎ましく,つらいものに思えるようになってしまった。だから,不安にもなる。心細いし,時間がたてばよくなるようにもとても思えない。みんな,よくわからない中で,情勢が悪くなって行って,生活も苦しくなって,不安になって,いらいらして,こういう状態が日々続いていく」

 

「そこに,ウソは何度も何度もつき続ければ本当になる,と信念を持って考え行動したヒットラーとその一味が登場し,大丈夫です,皆さま,我がゲルマン民族の民族魂を信頼いたしましょう,諸悪の根源はユダヤ人と共産主義です,彼らを撲滅し,我ら誇り高きゲルマンの純潔を,ここに政治的に力強く実現いたしましょう。我々に全てを任せて下さい,とやり始めた。ゲルマン民族万歳と,全国各地で不安と猜疑心に陥った国民を扇動しまくって,これが大当たりしてしまった。」(ゲルマン民族万歳は,やがてゲルマン民族の他民族に対する優越へと変質し,そこから,その優越民族ゲルマン統一国家の世界支配が政治的課題として浮上してくるのです。詳しくは,チャップリンの映画[独裁者]をご覧下さい)

 

(上記で,ヒトラーを原子力ムラ,その一味を自民党,ゲルマン民族・民族魂を大和魂,ユダヤ人を風評被害,共産主義者をクソ左翼,と置き換えて,少し前の文章から続けて読んでみて下さい。今の日本にそっくりそのままです)

 

概ね,お分かりいただけたかと思いますが,「自由からの逃走」は,社会的不安と生活苦にあえぐ多くの国民が,自分の判断や意思で社会的な物事の決定を行うことの重さや責任に耐えきれず,何か自分以外の大きなもの,しかも,自分の周囲の大勢の人が,そうだそうだといっているような人や物に,そうした意思決定や社会的善悪・よしあしの判断を委ね,自分はそれに盲目的に従っている方が,精神的にも情緒的にも楽であり,みんなでワーとやっている間は,何となく安定した気分になる,自分が苦しんで考えたり悩んだりする必要もない,そういう精神構造から生まれてくるのです。この「ワーとやる」こそが「翼賛」です。

 

そして,みんなと一緒に「ワーとやって」いれば,それが「翼賛」と同じ内容のことであるならば,周囲のみんなが助けてくれたり,応援してくれたりもする。だから,こちらの方がずっと居心地がいい,みんながユダヤ人を虐待するなら,自分はユダヤ人じゃないから,一緒になってやっつけてやれ,原子力は,どえらい学者さんや政府・お上が「大丈夫」と言ってんだから,放射能の「ほ」の字も知らない我々は,つべこべいわずにそれを信じていればいいんだ,みんなもそうしているではないか。考えなくてすむ,悩まなくていい,周りのみんなと同じだ,放射能,みんなで浴びれば怖くない,「原子力翼賛社会」はこうして出来上がっていきます。

 

「翼賛」にとっては幸いなことに,と言うか,人間にとっては不幸なことに,放射能には,色もなければ臭いもなく,体に触っても体内に入っても,痛くもかゆくもなく,人間の五感では感じられない,目に見えない,音も聞こえない,そんな「悪魔の道具」なのです。「翼賛」して「不安を吹き飛ばす」には,さしあたり,とても都合のいい危険物です。そして悪魔は,忘れた頃に,人伐り斧を担いで忍び寄ってくるのです。

 

上記のようなことを,被曝に着目すれば,放射線被曝翼賛社会と言ってもいいのですが,こうした放射線被曝を「何でもない」「大したことはない」と,嘘八百をふれて回るその目的が,放射線被曝をさせること,そのものにあるのではなく,少々の放射線被曝は我慢させて,病気になった被害者は切り捨てて,そして原子力・核兵器・原発・核燃料施設を推進していくことが目的ですので,「放射線被曝翼賛社会」ではなく「原子力翼賛社会」と申し上げています。

 

更に,大事なことは,この「原子力翼賛」ができあがる土壌となっている「不安」や「生活苦」や「悩み」というのは,実はいい加減で出鱈目な原発の安全管理から生じた福島第1原発事故と,その後の加害者・東京電力や事故責任者・国の不誠実極まる態度によってもたらされた,社会的・国家的犯罪行為の結果であることを忘れてはなりません。きちんと安全管理をしていれば,いや,そもそも原発なんぞをやめておけば,福島第1原発事故はなかっただろうし,事故後においても,加害者・東京電力や事故責任者・国が被害者の方々に万全の賠償・補償・再建支援を行い,汚染地域からの移住や避難を保障しておれば,そのような「不安」「生活苦」「悩み」などは,生じるはずもなかったのです。つまり,完璧に人為的に創られた苦境であり,悲劇であり,人権侵害であり,不安であり,悩みであり,生活苦であり,従ってまた,この「翼賛」とは,実に非人間的な原子力推進権力のなせる,許しがたい「巨大なやらせ」だと言えるでしょう。

 

そして,この「翼賛社会」の最も特徴的,かつ深刻な欠点は,「翼賛しない奴は非国民である」として,翼賛を是とする者たちが大勢で,翼賛を拒否する人達をぶったたき続けるという点です。いわば,社会的なヒステリー状況が,少数者あるいは社会的弱者へのいじめとなって,歪んだ形で出てくるということです。

 

そして,そこで犠牲になる人達の「しくみ」というのは,日本の社会がこれまでも引きずってきた様々な差別や偏見,遅れた意識や固定観念,あるいは貧富の差などの上に無反省に乗っかり,多勢に無勢の勢いで,多数の勢いを借りて,そして権力のお墨付きをもらって展開されるのです。私はかような人間社会のありようを,心の底から嫌悪いたします。(原子力翼賛と直接は関係がありませんが(間接的には関係があります),昨今の生活保護バッシングと,保護受給希望者への瀬戸際政策=追い払い政策などはその一事例ではないかと思っております)

 

また,「原子力翼賛社会」について,もう一つ強調しておかなければならないことがあります。それは,「原子力翼賛社会」では,権力と国民が分断され,その権力が秘密のベールに包まれる,言い換えれば,強度の「情報コントロール社会」とされてしまうことも忘れてはなりません。「翼賛体制」とは,この情報コントロールを通じて,「翼賛」させられる側が,させる側の事実上の「家畜」となってしまうという,息の詰まるような近未来でもあるのです。

 

3.11福島第1原発事故以降だけでも,多くの大事な「本当のこと」が国民に対して隠蔽され,「裏委員会」だの,「秘密事項」だの,「二枚舌」だのがはびこっていたことが明らかにされました。また,市民団体などが原子力関連の情報公開請求をしても,公開されるものは,そのほとんどが「黒塗り」の「ブラック・ペーパー」であることがほとんどです。テロやスパイ行為防止,あるいは個人情報保護などがその口実とされますが,しかし,公開・非公開の判断は全く恣意的で不適切で,要は権力の側・原子力推進の側に不利益となるものは,そのほとんどが隠されてしまっているのです。

 

更に,国際放射線防護委員会(ICRP)が提唱する放射線被曝管理の枠組みは,実は広島・長崎の原爆被曝者のデータを歪曲したり,都合のいいように取捨選択したりしてきた広島の「放射線影響研究所(RERF)」や,その前身の「原爆傷害調査委員会(ABCC)」のデータを土台にしており,かつそれらが,第二次世界大戦後の冷戦時代の米国の核(兵器)戦略に厳格に従属させられてきたことも明らかになっています。つまり,「原子力翼賛社会」では,放射線被曝のデータさえもが原子力推進権力側によって,容赦なく改竄されたり歪曲されたりしてしまうということを意味しています。これを更に演繹して申し上げれば,およそ原子力や放射能・放射線被曝に関する「科学」が,経験科学ではなくなり,原子力を推進していくための「御用学者」達の「讃美歌」や「お経」のようになってしまうことを意味します。「原子力翼賛社会」では,「科学」が(正確には「経験科学」が)歪められ,貶められ,真実が隠され,真実を追求するものが追い払われ,「科学」が死滅するのです。

 

このように考えてくると,鳥たちやエリマキトカゲ君達は,同じ「翼賛」でも,とても健全で持続可能ですよね。一方,人間の方の「翼賛」は,これはもう破滅への第一歩です。我々は,頭に冷水をかけてでも,鳥たちやエリマキトカゲに教えを請う,そういう時代に差し掛かっているのかもしれません。

 

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私は「原子力翼賛」を拒否いたします。

私は「原子力翼賛」による放射線被曝の押し付けに対して嫌悪いたします。

クソ食らえ「原子力翼賛」司祭の原子力ムラ・原子力マフィアども,です。

クソ食らえ「原子力翼賛」の下僕たる政治家,官僚,マスごみども,です。

 

私は「原子力翼賛」が押しつける人工放射能による一切の被曝を断固として拒否いたします。

0.0000000000000000001mSvだろうが何だろうが,そんなものは,汚染した者がすべて持ち帰ればいいのです。

そして,放射線被曝回避よりも「郷土」復興を上位に置く,言い換えれば,人間の命や健康よりも,物と金と産業と企業に重きを置く「集団的倒錯」を,私は一切受け入れることはありません。被曝は,恒常的な低線量内部被曝は,決定的に危険です。わが身のみならず,末永き子孫にまで遺伝的障害が出る可能性があります。

 

加害者・東京電力や事故責任者・国は,つべこべいわずに,汚染がもたらしたあらゆる損害を,さっさと賠償していただきたい。

びた一文,おまけするつもりはありません。ちゃんと,支払日までの遅延損害金もあわせて払ってください。

私は,今までもこれからも,子どもたちの命を,家族の命を,未来の命を,最優先で守る,そういう復興と社会を求めます。

私は,被曝拒否の頑固者です。恒常的な低線量内部被曝は,受入れないと言ったら絶対に受け入れません。

「原子力翼賛」など,クソ食らえです。

 

<追>「ショック・ドクトリン」

 最近よく耳にする言葉です。ネット上の解説は下記のようなものです。

 

「「大惨事につけ込んで実施される過激な市場原理主義改革(The Rise of Disaster Capitalism)」という意味で、カナダのジャーナリスト、ナオミ・クライン(Naomi Klein)氏が昨年著した本のタイトルである。新自由主義の経済学者ミルトン・フリードマンの「真の変革は、危機状況によってのみ可能となる」という主張に対する批判となっている。」

 

「本書は,2007年秋に刊行された"The Shock Doctrine――The Rise of Disaster Capitalism"の待望の翻訳です.

 著者のナオミ・クラインは1970年生まれのカナダ人.「罪びとの罪を糺す天使」とまで呼ばれる気鋭のジャーナリストです.本書でクラインは,アメリカの自由市場主義がどのように世界を支配したか,その神話を暴いています.ショック・ドクトリンとは,「惨事便乗型資本主義=大惨事につけこんで実施される過激な市場原理主義改革」のこと.アメリカ政府とグローバル企業は,戦争,津波やハリケーンなどの自然災害,政変などの危機につけこんで,あるいはそれを意識的に招いて,人びとがショックと茫然自失から覚める前に過激な経済改革を強行する…….」

 

 私・田中一郎の考える「ショック・ドクトリン」とは,大事故や大災害などの「ショック」「大惨事」につけ込んで社会を不安に陥れ,その情勢を利用して,よからぬ政治家どもが,通常時・平常時にはできないような人権侵害や乱暴行為を,「やむをえない」と称して国民に押し付ける策略のことで,これを繰り返せば,「翼賛」体制へ限りなく近づいていく,というものです。ショック・ドクトリンの典型が戦争です。まんまと乗せられてはいけない,ということです。

 ショック・ドクトリン,言ってみれば現代の「火事場どろぼう」のようなものです。

 

*『ショック・ドクトリン 上・下 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』moreinfo

 http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/023493+/top.html

草々

 

 

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