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2013年5月22日 (水)

福島第1原発で何が起きていたのか(もうひとつの事故解析:日経産業新聞記事から)

前略,田中一郎です。

 

 このほど日経産業新聞(2013年5月14日,15日)に福島第1原発事故に関する興味深い記事が掲載されました。記事の最初で,この「もうひとつの事故解析」は「東北大学流体科学研究所の円山重直教授(58歳)が熱工学の観点から独自に事故を解析し、定説と異なる事故の推移を唱える」と紹介されています。

 

 この(上:1号機)(下:2,3号機)の2つの記事を読んでみますと,事務局を霞が関の官僚達が占拠していたどうもうさんくさい政府事故調とはまるで違い,むしろ真実に最も近い距離にあったと思われる国会事故調の報告に似た部分があります。でも,その分析は,国会事故調のものとも少し違うようです。今後の福島第1原発事故の原因究明には不可欠の議論の一つであるように思われましたので,簡単にご紹介申し上げます。

 

1.1号機,冷却系動いた(上)(2013514日付日経産業新聞)

 古い型の1号機には,事故を起こした他の号機とはちがい,非常用復水器(IC)と呼ばれる非常用緊急冷却装置が付いている。政府事故調は,このICについて「ICの弁について停電発生時に自動的に閉じる仕組みであり、全電源喪失後にICは動いていないと判断。IC稼働に関する証言は「見間違い」などとして退け」ていた。

 

 しかし,丸山教授の分析はこれと異なる。

(以下,記事の引用)

「円山シナリオは(作業員の)証言を重視し,ICの弁は前夜から翌12日午前4時15分まで開いていたとの前提にたつ。さらに地震直後に圧力容器に小さな漏洩(直径0・86センチ相当)が生じていたと仮定すると、熱力学モデルが実際に測定された圧力や温度とよく合うという。

 IC稼働の傍証として、圧力容器内に2つある水位計が異なる水位を示していた事実を指摘する。12日未明にしばらくA系がB系より高い水位を示していた。

 A系の水位計のある側では、ICからの戻り水のため沸騰が抑制されていたと考えると理解できる。B系水位計がある反対側では激しい沸騰でA系側より多量の泡が発生、水の密度が見かけのうえで小さくなるため水位が低く表示される。

 政府事故調は水位計表示の違いは説明せず、早期の炉心溶融で発生した高温蒸気(過熱蒸気)のため水位計は2つとも正常に機能しなくなっていたとみる。

 円山シナリオは、圧力容器からの漏洩で格納容器の内圧が次第に上昇し、12日午前4時ころに格納容器のどこかで亀裂が生じたとする。ICも蒸気を冷やす水(胴側の冷却水)が4時すぎには枯渇し圧力容器を冷却する機能を失った。

 その結果、圧力容器内部に高温蒸気が充満し新たな破壊が進むことになる。しかし仮に運転員が前夜にICを一時停止しなかったら、あるいはIC胴側への給水を続けていたら、事態はここまで深刻にならなかった可能性があるとする。」

(以上,記事の引用終わり)

 

 「地震直後に圧力容器に小さな漏洩(直径0・86センチ相当)が生じていたと仮定」の部分は,国会事故調の田中三彦氏らの「IC系配管その他の何らかの冷却系配管の破損の可能性」とほぼ同じ指摘であり,私もこの老朽化原発の圧力容器に直結する部分での地震の揺れによる破損の可能性は徹底して調査されなければならないと思っている。何らかの配管あるいは圧力容器に破損と,そこからの圧力の漏れ=つまりは圧力容器内の水蒸気その他の気体と放射能の漏れがあり,それがためにSRV(圧力逃し弁)が動かなかったし,格納容器の圧力が早い段階から上昇したり,1号機の建屋やその周辺での事故発生直後からの高い放射能が検出されていたのではないか,あるいはまた,作業員がICを手動で止めたりしたのも,IC稼働に伴って進展する圧力の急低下を防ぐためだったのではないか,と疑うからである。

 

2.蒸気が逆流,漏れていた(下)(2013515日付日経産業新聞)

 では,2,3号機についてはどうか。2,3号機は1号機とは違い機種が新しいので,非常用復水器(IC)とは異なるタイプの「隔離時冷却系(RCIC)」と「高圧注水系(HPCI)」という2つの非常用冷却システムが稼働していた。特に3号機は直流電源がしばらく生き残ったために,1号機よりもより長く原子炉を冷却し続けることができるはずだった。

 

 しかし,事態はそのようにはならなかった。1号機が老朽化の危険性を示す事故の結末であるとすれば,2,3号機は地震の揺れに弱い原子炉そのものの設計上の欠陥を示すものではなかっただろうか。「円山重直・東北大学教授の熱工学的な解析によると、福島第1原子力発電所2、3号機も定説と異なる事故の推移が考えられる。冷却水の供給元であるはずの復水貯蔵タンクへ蒸気が逆流し、核燃料の一部露出につながった可能性があるという。原発が冷却系を失った場合に働くべき非常用システムの安全性に一石を投じた」と,記事には書かれている。少し詳しく見てみよう。

 

(以下,記事の引用)

「3号機は直流電源がしばらく生き残り、非常用冷却システムが稼働した。まず隔離時冷却系(RCIC)が動き、その停止後は高圧注水系(HPCI)が動いた。

 HPCIは圧力容器の高温蒸気の力でポンプを回し復水貯蔵タンクの水を圧力容器に注ぐ。注水能力が大きく圧力容器を短時間で満水にできる。満水に近づくと蒸気が減り、ポンプが通常にはない低速運転になる。

 この不安定な状態を心配した運転員が代替の注水手段を確保しないまま13日午前2時42分にHPCIを止めた。これが原子炉の破壊につながったと政府の事故調査・検証委員会はみる。

 円山教授はHPCIが手動停止まで動いていたとすると「測定データと矛盾する」と指摘する。実測値では停止後すぐに圧力容器の内圧が急上昇する。しかしHPCIが動いていたなら圧力容器は満水に近く直後の圧力急上昇はありえない。

 円山シナリオでは12日午後6時半ごろ、すでに蒸気圧低下のためHPCIは機能を止め、圧力容器の蒸気はHPCIの配管を逆流しタンクに逃げていたとみる。このため圧力容器の水位が徐々に低下し手動停止操作の時点では核燃料が一部露出していた。

 運転員が手動操作でHPCIの弁を閉じると、逃げ場を失った蒸気のため圧力容器の内圧が急上昇。圧力容器を守るため格納容器へ蒸気を逃がす弁(逃がし安全弁)が開き水位が急激に下がり空だき状態になった。

 圧力容器の破壊は13日午前9時ごろ。政府事故調の推定と同じだが、経過が異なる。このシナリオでは仮にHPCIの手動停止がなかったとしても蒸気が逃げ、いずれ空だきになった。」

(以上,記事の引用終わり)

 

 政府事故調の妙な説明よりも,丸山教授の説明の方がより説得力がある。上記の「円山教授はHPCIが手動停止まで動いていたとすると「測定データと矛盾する」と指摘する。実測値では停止後すぐに圧力容器の内圧が急上昇する。しかしHPCIが動いていたなら圧力容器は満水に近く直後の圧力急上昇はありえない」は,その通りなのではないか。

 

 加えて私は,上記の丸山教授の説明の「円山シナリオでは12日午後6時半ごろ、すでに蒸気圧低下のためHPCIは機能を止め、圧力容器の蒸気はHPCIの配管を逆流しタンクに逃げていたとみる」に着目する。これはひょっとして,HPCIが正常に動いてこうなったのではなく,地震の揺れによりHPCI系の配管に何らかの傷か破損が生じ,蒸気が漏れることで想定よりも早く圧力が低下して,HPCIとしての機能を想定されていたよりも早く喪失していたのではないか。

 

 私が少し前に読んだ3号機の事故解析では,①作業員がシューシューという音を聞いた,②建屋内及び周辺の放射能が異常に高くなった,という記述を見たことがあり,この疑問と平仄が合う。また,作業員が「代替の注水手段を確保しないまま13日午前2時42分にHPCIを止めた」のも,この配管破損に気づいていて,これ以上放置できないと判断したからではないのだろうか。

 

 しかし,3号機の問題についてはもう一つ重要なことがある。それは以前から申し上げているように,3号機の爆発が1号機のような白く横に広がる煙の水蒸気爆発ではなく,縦に黒く急上昇する煙の核爆発ではなかったか,しかも爆発したのは建屋内に充満した水素ではなく,使用済み核燃料プールの核燃料だったのではないか,という疑問である。これについては,記事には何の言及もない。丸山教授の見方ではどうなっているのだろうか。

 

 次に2号機だが,記事にある丸山教授の説明は,2号機は水蒸気爆発に似た現象を起こしていたらしい,というもので,大変興味深い。ただ,2号機については,4つの事故炉の中では,4号機の爆発原因とともに,その事故原因や事故の推移がよくわからない状態が続いている。4つの原子炉の中で,最も大量に放射能を排出し,汚染状況も一番ひどい,というのも,それが何故なのかまるでわからないままだ。私は何かが隠されているのではないか,と疑っている。

 

(以下,記事の引用)

「2号機も似た状況だった。定説ではRCICが14日午後1時25分まで動いたとされる。RCICも蒸気でポンプを動かし注水する装置だ。

 円山シナリオでは午前10時ごろにRCICが機能を停止し蒸気がタンクに逆流し水位が下がり始めた。同日夜に運転員が逃がし安全弁を強制的に開くと、減圧により圧力容器内で突沸が起き核燃料がいったん完全に露出した。

 その後に消火系による注水が始まると、溶融した燃料と水が接触する。水蒸気爆発に近い現象が起き午後10時50分ごろ圧力容器が壊れた。

 この破壊で格納容器に蒸気が噴出した。格納容器の圧力急上昇が実測データに残っている。格納容器の圧力が上昇し、15日午前7時40分ごろに格納容器も壊れた」

(以上,記事の引用終わり)

 

 ただ,上記については次のような記事のコメントがあるのでテークノートしておく必要があるだろう。

(以下,記事の引用)

「円山シナリオは復水貯蔵タンクに炉心の蒸気が入ったと想定するが、現時点で知られる事実と矛盾する。東電はタービン建屋地下の汚染水への対処の一環で同タンクの水を移送した。タンクが汚染されていたなら、その際に気がついた可能性があるが、報告はない」

(以上,記事の引用終わり)

 

 「報告がない」のは,ただただ東京電力がいつものように都合の悪いことを隠しているだけかもしれない。

 

3.結論

 いずれにせよ,福島第1原発事故の原因や,その事故の推移が確定的に究明されるまでは,いや,究明されてその教訓が原子炉の圧力容器や格納容器や冷却システム等々に反映させられ,今後は絶対に過酷事故を起こさないまでに原発施設や原子炉が「改造」「改善」されるまでは,その再稼働などはもっての他の話である。

 

 福島第1原発事故の教訓が活かされることもなく,あたり一面を放射能だらけにして,この現代の「巨神兵」はグロテスクにも再び息を吹き返そうとしている。オームの怒りは頂点に達するだろう。日本に「風の谷のナウシカ」が求めらている。

 

*「巨神兵」画像

http://image.search.yahoo.co.jp/search?rkf=2&ei=UTF-8&p=%E9%A2%A8%E3%81%AE%E8%B0%B7%E3%81%AE%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%B7%E3%82%AB+%E5%B7%A8%E7%A5%9E%E5%85%B5

草々

 

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