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2013年4月 9日 (火)

木材が危ない!(続)(森林バイオマス発電他):森林や木材の汚染を軽視してはいけない

前略,田中一郎です。

 

 下記5つの新聞・雑誌記事は,201342日付東京新聞「こちら特報部」の記事「間伐材でバイオマス発電構想,福島で森林除染本格化,「一石四鳥」か,林業再生,雇用創出など狙う,汚染灰拡散か,作業員ら被ばくの恐れ,情報公開し議論必要」(下記URL参照)に関連した昨今の森林の放射能汚染に関する報道を集めたものである。以下,簡単にコメントする。

 

 <関連記事:図書館等でご覧下さい>

・福島県で森林バイオマス発電(201342日付東京新聞)

・森林と木材の放射能汚染(2013330日付日本農業新聞,213日,35日,39日の各日刊木材新聞)

・森林火災は放射能をまき散らす(2013323日付河北新報他)

・渡良瀬ヨシ焼き(2013318日付東京新聞)

・バイオマス発電の補助金と買取価格(『ウェッジ 2012.12』)

 

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1.201342日付東京新聞「福島県で森林バイオマス発電」

 http://www.asyura2.com/13/genpatu31/msg/130.html

 

 福島県は間伐材を木質バイオマス発電に利用する構想を練っている。森林除染のほか、発電、林業再生(森林整備)、雇用創出の「一石四鳥」を狙うのだという。だが、住民たちには、汚染木材の焼却が放射性物質の拡散につながるという懸念も強い。福島県のバイオマス発電所は,既に会津若松市と白河市で稼働中で,更に国の復興交付金で塙町にも新設を計画中である。さらに国の除染直轄事業とは別に、県も今月から除染間伐に力を入れるため、汚染のひどい相双地区(相馬郡、相馬市、南相馬市、双葉郡)に3カ所、県北・県中地区に1カ所を新設することを構想している。

 

 東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦教授(分子生物学)は「福島県の構想は良くできており、大事な提案だ」と高く評価している,とある。果たしてそうなのか,私は下記の理由から,児玉龍彦氏の見方は余りに楽観的で,放射線被曝を度外視した軽率な判断ではないかと思っている。

 

(1)バイオマスを森林から伐り出す林業労働の被曝はどうなるのか。福島県をはじめ,関東から東北にかけての森林は放射能に猛烈に汚染している。そんなところで林業労働をしていたら,猛烈に被曝を積み重ねることになり,極めて危険である。現下では,国有林野でさえ,林業労働者の被曝からの保護が不十分で,被曝量計測の線量計携帯ですらロクすっぽ守られていない。ましてや,非常に遅れた前近代的な労務管理で著名な林業の世界で,施業労働者の被曝回避がきちんとできるとはとても思えない。そもそも,そのための法令整備も労働安全管理体制もできていない。

 

(2)森林を除染目的で伐採(皆伐)し続けることは,山林を丸裸にしてしまうことを意味し,森林環境の破壊につながる。集中豪雨の時などは,土砂崩れや地滑りにつながり,自然災害を増大させ,従ってまた,放射能汚染を拡大してしまう恐れが高まる。逆に,森林を皆伐しないのであれば,森林の除染は極めて困難だ。(事実上不可能)

 

(3)林地残材や,用材に向かない間伐材をチップ化してバイオマス発電し,放射能はバグフィルターで99.99%とることができる,などとよく言われるが,①放射能回収とはいっても特定の放射性核種だけで,少なからぬ核種は回収できない,②放射能の大きさが小さいと,フィルターの目を通り抜けてしまう,③いくら回収率(%)が高くても,100%回収ではないのだから,分母が大きいと(つまり焼却される木質バイオマスの絶対量が多ければ),焼却で環境に排出される放射能の量は変わらないか,あるいは増える。④バグフィルターの性能がよくない場合もある。

 汚染バイオマスを燃やしてもフィルターで全部除去できる,などとは思わない方がいい。つまり放射能汚染の木質バイオマスを燃やせば,放射能汚染ゴミ以上に放射能を周囲一帯の環境にばら撒く結果となる。

 

(4)放射能汚染を濃縮した猛烈な汚染物である焼却灰が発生する。その焼却灰を適切に管理する「処分場」が存在しない。当面はその目途もたっていない(目途が立っていない最大の理由は,加害者・東京電力や事故責任者・国が被害者に対してきちんとした賠償・補償・再建支援を行わないからだ)。

 

(5)百歩譲って,上記(1)~(4)までの放射能汚染,及び放射線被曝管理が,最新鋭のバイオマス産業機器の新規導入により,克服可能だとしても,それでも,そうした最新鋭式の産業機器類が,福島県及びその周辺の森林汚染地帯でくまなく利用される(逆に言えば,この東日本の広大な汚染森林地帯では,旧式の機器類は一切使用されることはないということ),ということはありえない話である。それは,最先端医療が全国の病院でくまなく展開されることはありえないことによく似ている。つまり,汚染拡散防止・被曝防止の最新鋭林業機器類があるとして,それをモデル地区に部分的に入れて,実証的に事業を展開し,成功したら少しずつ拡大するというのなら分からないでもないが,少なくとも今,国や福島県が進めようとしている森林除染(皆伐)とバイオマス発電のセット事業は,そのような慎重さを欠いている。

 

(6)そもそも木質バイオマスは発電ではなく熱利用すべきもの。エネルギー資源のカスケード利用を考慮すれば,森林より産出される木材は,まず木材として利用した後に(枝葉や切株など,木材として利用できないものはそのままストレートに),熱源として利用するのが最もエネルギー効率がよい。木質資源を燃やして一旦電気に転換し,その電気を再び熱源としているような現代社会のエネルギー消費のありようは抜本的に転換されるべきである。

 

(7)林野庁が各種設備等や間伐等森林施業などを補助し,更に,経済産業省が決めた特別の高価格で電気を(電力会社が)買い入れる木質バイオマス発電には,別添PDFファイルの『ウェッジ』記事ような補助金にまつわる不透明=不公正な実態がある。この「補助金の汚れ」は起源が古く,かつ,いつまでたっても解消される様子がない。本来,補助金は否定されるべきものではなく,適正化されるべきものであるのだが,この20年間,いやというほど論じられ,いやというほどもてあそばれ,いやというほど歪められた運営が続いている。

 

 <ウェッジ記事から若干の問題点を抽出して列記してみると>

a.補助金なしで木質バイオマスを買い入れて発電した場合でも,十分に経営ができるような水準に電気の買入れ価格が決められているのに,更に3重の補助金が事業者に供与されている(やり過ぎだ=官庁のアリバイ行政の可能性大)。

 

b.木質バイオマス発電の電気の買取価格は,原料となる木質バイオマスの性質によって3つにランク分けされているが,それが適切に運営される保障がない(当事者らによって誤魔化されて書類上のつじつま合わせで,高価格の電気買取価格が適用される可能性がある)。つまり,適正化の保障のない下での三重価格は機能しない。

 

c.高い電気代に加え3重の補助金を享受しているにもかかわらず,そのバイオマス発電事業者が買い入れる木質バイオマスの価格は低いままである可能性がある(バイオマス発電申請や補助金申請の計画書に反して買いたたいている?)。木質バイオマス発電=木質バイオマス利用のメリットが山元に還元されない=森林の荒廃が続く。

 

(なお,ウェッジには書かれていないが,バイオマス事業を展開できる事業主体が地域に少なく,特定の事業者に様々な補助や支援が集中しがちであること,また,補助や支援を受けられるか否かが必ずしもフェアではないこと,補助を受けていることに伴う情報が公開されないこと(個人情報保護が口実にされる),行政オンブズマンなど有効かつ日常的に機能する第三者的な監視システム・検査監査制度が存在せず,不正の温床が闇の中で温存されている,行政が自分達の「やってまっせ」のアリバイ行為の手段として補助金を使っている,補助金なしで木質資源を使う他の用途をクラウディングアウトしてしまう可能性(例:木材チップを使うパーティクルボードが原料確保難に陥る),などが補助金行政の問題点として挙げられる)

 

2.森林と木材の放射能汚染(2013330日付日本農業新聞他)

 日本農業新聞記事を1つ,日刊木材新聞記事を3つ,紹介する。

 森林の除染が困難で,国はこれにまともに対応しようとはせず,住宅及びその周辺の除染さえままならない状態が続き,そうした中で,シイタケ栽培や林業経営を行う生産者には理不尽な重荷がのしかかっていることを日本農業新聞記事が伝えている。その記事はともかく,残り3つの日刊木材新聞記事にある,林野庁を含む関係当事者たちの森林及び木材の放射能汚染に関する認識や言動は軽率極まりない。

 

 諸悪の根源は農林水産省・林野庁である。森林の汚染が深刻な状態であるにも関わらず,森林施業に関する制限を全く行わず(いわゆる「警戒区域」等としての規制のみ),また,森林から産出される非食用の林産物についても,飲食調理用の木炭や薪を除けば,何の放射能規制値も打ち出さず,林産物の汚染検査体制さえ未だ創ろうとはしない。すべて木材関係業者に丸投げしている。当然ながら,残留放射能の検査がなされる木材や林産物はほとんどなく,汚染された森林の調査も,森林に住む生物群の生態調査もほとんど未着手のままだ。それでいて,例えば福島県では2011年度も2010年度より少し少ないくらいの木材生産(丸太:64万m3)が行われ,その材木や林産物が日本全国に流通していくのだから危険極まりない。

 

(例えば,危険な林産物として,スギの葉っぱを原料に造られる(国産)線香が挙げられる(茨城県が産地)。長時間,汚染された線香の漂う部屋にこもりきりになるのは,呼吸被曝の危険性が大きい)

 

(一昨年から昨年にかけて,浪江町の採石場から伐り出された放射能汚染の石が建築物や土木工事に使われていて大問題となったが,それと同じようなことが木材で起きる可能性がないとは言えない)

 

*浪江町の汚染コンクリート福島県内に流通拡大! - 放射能対策@sos子供を守ろう!

 http://sos-japan.seesaa.net/article/246470149.html

 

 その「ウソつき太郎」の林野庁,「ハッタリ次郎」の森林総合研究所(林野庁傘下)が,別添PDFファイルの記事にあるように,放射能や被曝情報に疎い林業関係者・木材関係者をそそのかし,福島の森林もそれ以外の汚染地域の森林も安全だ,汚染は全く心配いらない,林産物は懸念するに及ばない,「風評被害」を気にするな,などとするデマ宣伝をあちらこちらで吹聴している。許し難い行為ではないか。

 

 <日刊木材新聞記事より:軽率極まりない姿勢>

(1)「木材業界・製材工場の方と話していると,風評被害を気にする人もいる。ただ,どうもセシウムという言葉だけで危険視していることもある」(林野庁の発言:「福島県産材の安全性を証明」(2013213日付日刊木材新聞より))

 

(2)「警戒区域等の立ち入り制限がある地区を除くと森林内部の放射性セシウムの濃度は低く,森林を流れる川にはセシウムはほとんど流れていない」(森林総研の発言:「福島県産材の安全性を証明」(2013213日付日刊木材新聞より))

 

(3)「放射性セシウムを含む木材で囲まれた居室(497ベクレル/kg)を想定した林野庁試算結果を引き合いに,自然放射線による年間被曝量に比べ桁が2つ違う低い値と説明した」(森林総研の発言:「福島県産材の安全性を証明」(2013213日付日刊木材新聞より))

 

(4)「製材品の表面線量調査の結果,201111月~20131月で最大値は92CPMで,健康や環境に影響を与える可能性がある表面線量は測定されていないことを指摘した」(福島県農林水産部の発言:「福島県産材の安全性を証明」(2013213日付日刊木材新聞より))

 

(5)「(福島)県内の大部分の森林は空間線量率が1マイクロシーベルト以下で,現在生産した製品の表面線量をシーベルトに換算すると,直近データで最大約0.0017マイクロシーベルトで,放射線専門家から健康への影響はないと評価されている」(木材合板博物館長の発言:「福島県産材の安全性を証明」(2013213日付日刊木材新聞より))

 

 まだまだいくらでもあるが,キリがないのでこれくらいにしておく。発言する当事者たちは,これで森林や木材の安全が証明できた,世の中を説得できた,と思っているようだ。いやはや,こういう人達が福島県やその周辺の放射能汚染木材や,汚染森林を取扱っているのかと思うと,もう危なくて近寄りたくもない。皆さまにも,放射能汚染地域の森林や木材や林産物には絶対に近寄らないようご注告申し上げたい。薪や木炭のあるところは危険です。焼き鳥屋・焼肉屋要注意。

 

3.放射能に汚染した森林を燃やすな,枯れ草・葦を燃やすな(2013323日付河北新報他)

 放射能に汚染された森林が火災で燃え上がれば,深刻な放射能汚染の拡散になることは「火を見る」よりも明らか。チェルノブイリ原発事故後も,現地旧ソ連諸国では,森林火災に対しては全力で防災対策が組まれていた。他方で,日本では,福島県をはじめ東日本の放射能汚染地帯では,森林の火災に対して余りに無防備であり警戒心が低すぎる。

 これもひとえに農林水産省・林野庁が諸悪の根源であり,それに福島県庁をはじめ都県庁が加担をしている。「山を燃やすな!」は,原発事故により放射能を浴びた地域では最も重視されなければならない防災対策の一つである。これについて,国や農林水産省・林野庁から,厳重な注意勧告や,防災・防火体制強化の呼び掛けが出されたことはない。

 

 そして,愚かにも,先日318日には,渡良瀬遊水地の葦に人為的に火をつけて燃やしたという記事が東京新聞1面に掲載された。しかも,おりからの強風にあおられて,計画していた以上の区域にまで火が広がり,他人の小屋までもを焼いてしまったのだそうである。当然ながら,煙となって空に飛び出た放射性物質は,強風に乗って,相当遠くまで飛んでいったことだろう。渡良瀬遊水池に留まってくれていた各種の放射性物質を,人間があっちこっちへ向けてばら撒いた,まさに放射能と被曝への無頓着から来る愚行だった。

 

*東京新聞3年ぶりヨシ焼き 強風で炎広がり、物置焼く 渡良瀬遊水地社会(TOKYO Web)

 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013031802000116.html

 

310日の砂埃が舞い上がった強風の1日,埼玉県で計測された放射能(放射性セシウム)のベクレル値は最高で4,000ベクレル/kgを超えた。野外にいた多くの関東地方の人々は,かなりの量の放射性セシウムを吸い込むことになってしまった。それと似たような状態が,いやそれ以上の状態が,人為的につくられたことになる)

 

 記事を読んでみると,この葦焼きは,何と,ある自然保護団体が要請し,地元の自治体行政までが参画していたというから驚きである。馬鹿なことをしてはいけないのだ。

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草々

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