放射線の人体への影響(泉雅子:日本物理学会誌 2013年3月号)のおかしさ
前略,原子力資料情報室一般会員の田中一郎です。
<別添PDFファイル:データ量の関係で添付できず>
・放射線の人体への影響(泉雅子:日本物理学会誌 2013年3月号)
別添PDFファイルは,日本物理学会誌に掲載された「放射線の人体への影響」という論文です。この論文には,ところどころ知らないことが書かれていて,興味深い部分もありましたが,全体を通して,この論文はいけません。この論文はICRPをベースとする原子力ムラのでっちあげ放射線被曝論の枠組みの中で,従来の議論を演繹的に,教科書的に展開し,その中に昨今の生物学的知見や原子力ムラ関連文献の記載をちりばめているだけのものにすぎません。
まさに私が,いや私たちが,これまで批判してきたニセモノの,有害な,被曝矮小化の論文だと思います。私は,こうした論文に代表される放射線被曝の考え方を一掃し,放射線被曝理論が文字通りの経験科学的な,放射線被曝の危険性を多面的に総合的にとらえなおすものに「改造」されなければならないと思っています。
(私は,論文類や図書を読む際には,いつも蛍光ペンを持ちながら,ところどころチェックしたりメモを入れたりして読んでいますが,この論文については,一面「×」だらけになってしまいました)
書かれていることに逐一反論していると長くなりますので,ごくごく簡単に,この論文に代表されるICRP型放射線被曝論の問題点を若干だけ列記しておきます。問題点は下記だけではなく,もっとたくさんあると思います。
(1)経験科学的な実証的裏付けがないにもかかわらず,議論が断定的である。これは「科学」ではない。
(2)政治的理由から事実を見ようとせず,原子力推進に不利な方向には目をそらす。その典型例は,確率的影響はガン・白血病だけだ,としている点。
(3)恒常的な低線量内部被曝の総合的なイメージができていないため,その危険性評価があまりに軽率。その典型例は線量率の見方であり,内部被曝の捉え方。
(4)戦後一貫して米軍・米国が情報統制と放射線被曝対応を支配する下で,広島・長崎の被爆者データが政治的に細工され操作され歪められてきたことはもはや「公知の事実」である。それを無批判に使うことは許されず,もちろん放射線影響研究所(RERF)のデータや結論なども,そのままでは使えない。(詳しくは,中川保雄著『(増補)放射線被曝の歴史』参照)
(5)ICRPや放射線影響研究所(RERF),あるいはUNSCEARなどの放射線被曝理論に対しては,多くの批判があるにもかかわらず,それに対して真摯に向き合おうとしない,批判されても馬耳東風である。およそ科学者の態度ではない。今回の論文もそのスタイルを踏襲している。
(6)論者の生物学的・医学的知見が1960年代のDNA発見直後のレベルで停滞したままである。エピジェネティクスやがん理論など,その後の目覚ましい生物学や医学の発展が無視され,旧態依然の遺伝子中心主義的セントラルドグマを素人だましのように振り回している。
(7)科学的方法論の使い方がご都合主義的で我田引水である。その例は,一方で10mSvのリスク評価のためには500万人規模の疫学調査が必要だなどと無理難題を吹っ掛けておきながら,他方では,飲食の残留放射能の安全性や規制値を導くとき
は,ごくわずかな食品検査や疫学データを使って平然と安全論をぶち上げている。
(8)全く根拠のないことを平気で断定する:たとえば,今般の子ども甲状腺ガンについて
早々
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